電「この後はどうしますか?着任初日なので荷物の整理でもしますか?」
提督「いや、ちょっと施設を見回ってみようかな」
ここにくる途中に気になるところもあったから早めに見ておきたい、
電「了解なのです。どこから見ますか?」
提督「とりあえず工廠から」
電「では行きましょう」
提督「ここだな」
予定通り工廠に着いた。やはり重要施設なだけあって非常に大きい。
提督「にしてとこの鎮守府広いな。結構歩いた気がする」
電「確かにこの鎮守府は広いのです。電もまだどこに何があるのかは完全に把握しきれてないのです」
提督「電も来たばっかりじゃん。仕方ないだろ」
とはいえ、流石に早く覚えないとまずいかな?今度電に鎮守府の案内図でも作らせるかな〜。
提督「入るか」
電「なのです」
扉に手をかけ力を入れて引く。錆びついた扉は耳障りな音を響かせながら横にスライドしていく。開いた扉から中を覗くとそこには建造や開発する為の大きな設備があり、またその各設備の周辺にはそれらを稼働させる為のスイッチや器材があった。シンプルな作業机には設計図らしき紙などが乱雑に投げ出されてあり、それもまたこの光景の良さを引き立てている。
提督「おー、すげ〜」
感動で思わず語彙力が低下してしまった。やはり男だったらこの光景には心躍らせてしまうのも仕方ないのかもしれない。軍人は整理整頓を基本だがここだけは散らかっていた方がいいな。
電「早く入りませんか?」
提督「そうだな」
中に入り、少し奥に進むと不自然な机があった。散らばってるネジなどの部品やつけっぱなしのライト、飲みかけのコーヒー。明らかに誰か居たであろう痕跡だった。
電「侵入者ですか」
提督「そうみたいだな」
周囲を見回してみる。多少荒らされてはいるが、破壊活動などの痕跡は無い。まだ敵の仕業ではないと断定は出来ないが、これを見た印象はここで何かしらを作ろうとしていた感じがする。
提督「ん?これは12.7㎝連装砲の設計図か?」
机の上の紙を見てみるとそこには艦娘専用装備の設計図があった。
電「なんですかこれ?設計図?」
提督「すげーな。こんなものがあるなんて」
電「こんなの役に立たないのです。捨てましょう」
提督「いや、これ結構詳しく書いてある。もしかしたらこれ通りにやれば作れるかもしれない」
電「あり得ないのです。私たちの装備は設計図なんて無いのです。司令官も知っているはずなのです」
そう、艦娘の装備に設計図は無い。なぜなら妖精さんによる未知の技術で出来ているからだ。まだ人類はその未知の技術を解析できていないため、設計図など存在しない。あってもそれはこうだろう的な予想図でしかない。それに妖精に設計図を渡したところで妖精さん達は設計図通りに作ってはくれない。たぶん技術力が違いすぎてお互いが理解出来てないから。
提督「ちょっとでもいいから作り方教えてくれればいいのにな。むしろその方が妖精さん達も楽だろう」
電「原始人に科学技術教えたところで扱えないのです。それに言葉も通じませんし」
提督「確かにな。教えようとしても伝わらないと意味ないよな」
ちなみに妖精さんとは艦娘を生み出したり、艦娘が扱う装備を作ったりしてくれる存在だ。意思疎通は妖精可視の才能があれば一応は出来る。提督をやるには必須の技術ではあるが、大抵の提督はこれをして欲しいなどの意志を伝達できる程度だ。適性が高ければより高度な会話が出来るようになる。とはいえ、お互いを完全に理解することは出来た人は未だいない。レベルが違いすぎるからだ。分かりやすく言うとIQ20くらい離れたら会話が通じないないみたいな感じだ。
提督「味方なのに謎が多いって敵より怖い気がするよ」
電「そうですね。もし敵対したら間違いなくやっかいな存在になるのです」
女の子「やりました!こんなに資材があったらいろいろ作れますよー!……あっ」
提督・電「っ!」ビクッ
突如聞こえてきた響いてきた女の子の声。俺達は驚きすぐさま声のする方向を見てみるとそこには満面の笑みで両手いっぱいに資材を抱えたピンク髪の女の子がいた。
提督「……やあ、ご機嫌よう不審者さん」
女の子は笑顔で固まっていたが、ようやく状況を完全に理解したらしく、顔を青ざめさせすぐに土下座をして謝罪をしてきた。
女の子「申し訳ありません!まだここの資材に手を付けてないのでどうかお許しください〜」
提督「だめ。取り敢えずちょっと来てもらおうか」
電「……」
電が無言で拳銃を構える。それを見た女の子はガタガタ震えだし、もはや女の子のしていい顔では無くなってきてる。
女の子「ひぃ、何でもするので許してください!」
お?こいつ今何でもするっていったな?
提督「本当か?何でも言う事聞くな?」
女の子「はい!何でも聞きます!」
提督「分かった。それじゃあ、とりあえずそこの椅子に座れ。なんでも言うこと聞くんだろ?」
女の子「うぅ、分かりました」
提督「とりあえず話を聞いてやる。何してた?」
女の子「怒りませんか?」
提督「内容によるだろ」
女の子「どうしてですか〜⁉︎」
電「うるさいのです。とりあえず話せ」
女の子「ひぃぃ!分かりました〜」
提督「とりあえず銃を下ろしてあげなよ」
電「……なのです」
女の子はしどろもどろになりながらもここにいる理由を話した。どうやら話によると数日前に前までいた職場から追い出されたらしく、あてもなく彷徨っていたらちょうど誰も居ないここを見つけて寝泊まりしてたらしい。
提督「なるほどな」
電「司令官どうします?憲兵に突き出しますか?」
女の子「ちょっと⁉︎この子本当に電⁉︎さっきからすごい怖いんだけど⁉︎」
提督「初めて見た時は俺もびっくりしたよ」
この子は電の事を知ってるみたいだ。海軍関係者?それとも艦娘か?
電「海軍関係者ですか?それなら所属と名前を言え」
電も気になったらしく俺の代わりに質問をしてくれた。
明石「は、はい!元大本営の対深海棲艦用兵器研究・開発部所属、明石です。一応艦娘でもあります」
提督「深海棲艦……なに?」
電「確か深海棲艦を倒すための武器の開発を目的とする部署だったはずです」
明石「はい。主に妖精さん達と艦娘用の装備の開発や整備などをやったり、新装備の研究をしたりするところです。昔は深海棲艦に有効な装備の研究もしていました」
提督「すげーな。そんなところで働いてたんだ」
明石「私は下っ端だったんであまり重要な事はやってませんでした。それに工作艦でありながら装備が無かったので必要最低限のことしか出来ず、みんなの足を引っ張っていました。そしてつい先日役立たずって事でクビになりました」
提督「工作艦?」
工作艦って確か艦娘の整備とかする艦だっけ?
電「工作艦とは旋盤や溶接機、クレーンなどの各種工作機械を装備し、艦船の補修・整備などを行う艦船のこと。事実上、移動工廠となっている艦船なのです」
提督「めっちゃすげーじゃん!そんなこと出来んの?」
明石「艤装があれば出来ますね」
こいつの所属していた所の奴ら馬鹿でよかったー!移動工廠とかめっちゃレアじゃん。今は無いみたいだけど艤装が出来たらかなり優秀だろう。それに元とはいえ装備なんかの研究・開発部ってことは整備や調整なんかも出来るかもな。
提督「聞きたいんだが、艦娘用の装備とか作ること出来る?」
明石「いえ、艦娘用は作れません。でも昔の戦時中に使われていた艦船の武器なら時間があればどうにか出来るかも知れませんが…」
提督「そうか、やっぱり無理か」
もしかしたらって思っていたけど妖精以外は無理だよな。かなり残念だ。まあでも艦娘じゃなければ作れるってところだけでもいいか。
電「使えねーのです」
明石「酷いです!でも既存の艦娘専用装備の整備・調整、改造なんかは出来ます!」
電「それは凄いのです」
予想通りだな。マジでいい艦娘だなこいつ。絶対引き入れてやる。
提督「なるほどな。そう言えばお前、前いたところは追い出されてたんだよな?」
明石「はい、なので今は無所属です」
提督「それならうちに所属しないか?」
突然の俺の勧誘に明石は驚いた顔をする。
明石「えっ?でも私艤装無いので役に立ちませんよ?」
電「今は無くてもいつかは建造されると思うのです。それまではさっき言ってたできる事をやればいいと思うのです」
さすが電ちゃん俺の意図をすぐに汲んでくれた。
提督「電の言うとおりだ。明石には主に工廠の管理や運営をして欲しい」
明石「いいんですか⁉︎それなら是非!」
提督「決まりだな」
やった!今後明石のの艤装が出来て本来のスペック通りの仕事が出来るようになったら全ての提督が欲しがるだろう。今のうちに引き込めてよかった。
提督「今日からよろしくな」
明石「よろしくお願いします!修理や改造などはお任せください!」
提督「いや、許可無く改造すんなよ?」
電「よろしくなのです」
しかし今でこそ明石の有用性に気づいている奴らはまだいないだろうが、艤装が出来て有用性に大本営が気づかれたら引き抜かれそうだな。さてどうするかな。まあ後で考えるか。
提督「そうそう。あともう一つやって欲しいことがあるんだ」
明石「なんでしょうか?」
提督「お前はアイテム屋として働いてほしいんだ」
明石「アイテム屋?」
提督「そうだ、資材や医薬品、日用品などを仕入れてくれ。あと家具も」
電「そういうのは大本営の需品部に請求したらよくないですか?」
提督「段ボールで執務しろって言ってくる大本営に何を求めるんだ?」
明石「え?段ボールを机にしてるんですか⁉︎」
やっぱりそういう反応になるよな。大本営の需品部がおかしいんだよな。
提督「そういうわけで頑張ってくれよ。あっ拒否権ないよ?勝手に侵入した挙句に資材まで無断使用しようとしてたんだからな」
明石「ごめんなさいもうしません。頑張らせていただきます」
提督「はいよー」
これで設備面はどうにかなるかな。次は戦力を増やさないとな。
提督「それじゃ次は戦力を増やしますか」
電「建造するのですか?」
提督「そうそう。今現時点だと戦闘できるのは電1人だからな。流石に1人だけだとキツイだろ」
電「確かに今深海棲艦が攻めてきたら間違いなく蹂躙されてしまうのです」
明石「あっ建造ドックならこっちです」
明石はパタパタと奥に向かって走り出した。俺たちも少し遅れて歩き出す。
奥に進むと少し広いスペースがあった。
提督「ここで建造するのか」
明石「はい!ここで妖精さんに資材を渡してお願いしたら建造してくれます」
電「……妖精さん達はどこですか?」
そういえばさっきから見当たらないな。工廠にいっぱいいるイメージだけどそうでもないのか?
明石「そういえば見てないですね。まあ最近稼働してなかったみたいですし、人もいなかったのでいなくなっちゃったのかもしれませんね」
提督「え、どうすんの?妖精さんいないと困るよ」
妖精さんがいないと建造どころか開発も出来ないし鎮守府の運営が出来なくなる。
電「大丈夫だと思うのです。司令官と艦娘がいればそのうち出てきてくれると思うのです」
提督「そのうちじゃ困るんだよな」
電「資材置いておけば出てくるんじゃないですか?」
提督「やってみるか。明石、さっき持ってた資材持ってきて」
明石「わかりました」
明石はさっき持ってた資材を取りにさっきの場所に向かって走っていった。そしてすぐに両手に資材を抱えて戻ってきて建造スペースのところに資材を置いた。
明石「設置完了です」
提督「これで出てきてくれることを祈るか」
明石「提督。まだ他にもやる事があるのでしたら行ってきて大丈夫てますよ。出てきたらお呼びします」
提督「そう?それじゃ少し執務室の整理でもするかな」
電「お手伝いするのです」
提督「それじゃ出てきたら内線で呼んでくれ」
明石「わかりました」
提督「それじゃ電、いくか」
電「なのです」
妖精さんがいないのは予定外だったな。でも焦っても仕方がないし、一つずつやっていくか。