明けた夜に(大人悪魔ほむら×大人さやかシリーズ)   作:さんかく@

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二人(ほむらとさやか)とも真剣なのですが、それ故についくすりとしてしまう、ちょっとしたギャグ時空が発生します(なんと)




彼氏からの電話

相方から電話がこない。

紫色の携帯をほむらは無言で見つめている。ベッドの端に姿勢良く腰かけて微動だにせず一心に己の手に収まった携帯を凝視している姿は、どこか得物を狙う野生のネコ科の動物のようで。はあ、とため息をつくとほむらは腰をあげ――また座った。先ほどと同じ定位置につく。まるで健康体操のようだ。

 

――こないと言っても、実際はメールが三件受信されていた。朝に一件、昼休みに一件、そして一時間前に一件だ。どれも短文ではあるが、近況と早く帰りたい旨の内容が打たれていた。時折絵文字が入っているが、ほむらはあまり顔文字や記号の意味を読み取るのは好きではなかった。以前、文字の後ろに矢印があるものだから、その示す箇所の文字を再び読んで意味不明になったことがある。それを相方に伝えると、妙な表情を浮かべてそれから矢印は一切メールに使われなくなった。

 

「おかしいわね…」

 

ほむらは一人呟いた。そう、おかしいのだ。普段なら出張で研修が終わった後は必ず電話をかけてくる、それがメールだけというのは限りなくおかしい。出張というのは岡山から確認して、真実だということがわかった。だとしたら…美しいほむらの整った顔にほんの少し奇妙な表情が生まれる。疑惑の表情。彼女は今、過去に見たテレビ番組の「その手」の話しを脳内で総動員して思い出していた。その結果ひとつの結論に達したのか、ぼそりと呟く。

 

「怪しいわ」

 

と。そうしてほむらは携帯を操作して耳にあてた。

 

*      *      *

 

店内は豪奢できらびやかだった。高い天井に吊るされたまばゆいばかりのシャンデリア、薄い紫色を基調とした室内の壁には金色のロココ調の飾りが施され、曲線を多用する繊細な飾りが美樹さやかの関心を奪っていた。

 

「あら、美樹さんそんなに店に興味があるの?」

 

艶めいた声に過剰に反応して、さやかは「は、はい」と首をこくこくと振った。傍にいた同僚が吹き出す。

 

通常、キャバクラにはママは存在しないが、この警察御用達のキャバクラには存在する。今、美樹さやかの目の前にいる和服の女性がそれだった。30代半ば頃だろうか、着物の似合う和風美人だが、身に纏う空気は独特のものだ。極道の妻とでもいうのだろうか、相手を圧倒する威圧感が、柔らかい物腰の下に隠されておりそれが見え隠れするのだ。そして女性には溢れるほどの色香があった。

 

――うひゃあ…

 

圧倒的だ、とさやかは思った。同性である自分でもどうにかなりそうなのに、傍にいる同僚は大したものだと初めて感心する。

 

「それでさあ、ミキちゃん…」

「今日の株価は…」

 

よく見ると、刑事達はそれぞれ傍に座ったキャバクラ嬢と思い思いの会話をはじめていた。

コの字形のオレンジ色のソファーには端から、同僚、さやか、その他の刑事というように座っており、その間にそれぞれキャバクラ嬢が配置されている。よりによってさやかはママと同年代くらいの可愛らしいキャバクラ嬢に挟まれることになっていた。

 

「ねえねえ、美樹さんも緒方君と同じマル暴なんでしょ?」

「へ、あ、うん、そうよ…」

 

隣の若い女性が明るい調子でさやかに話しかける、そうして自然にコップに酒を注いでいた。緒方というのは、さやかの傍の軽薄な男のことだ。琥珀色の液体がさやかを誘惑する。もうすでに三杯目だが、さも美味しそうにさやかはコップを口にした。

 

「すごいねぇ…」

 

三杯目なのがすごいのか、マル暴なのがすごいのかわからないが、さやかは垂れ気味の目を困ったように細めて、「そう?」と笑った。彼女のこんな笑顔が誰にでも有効だとは知らず。それから自然と会話が弾んだ、元々美樹さやかは社交的で、何故だか老若男女問わず好かれる質であった。笑顔を見せる女性を見て、さやかはふと、大学時代のやけに親しげに接近してきた茶髪の女の子を思い出した。この子はどこか彼女に似ているのだ。あの子はどうしているのだろう?

 

「お、盛り上がってるな、美樹」

 

軽薄な男、緒方がさやかと女性の間に入ってくる。

 

「もう、緒方ちゃん、邪魔しないでよ美樹ちゃんと喋ってるのに…」

 

「美樹ちゃん?」

「緒方ちゃん?」

 

緒方とさやか同時に口を開く。酒がまわっているからか、笑いのツボが広くなったのだろう、互いの「ちゃん」づけがおかしすぎて吹き出した。しばらく肩をふるわせる、と、

さやかのスーツの内ポケットが振動し、軽快な音楽が鳴った。緒方が目を輝かせ、声をあげる。

 

「お、きたきた、彼氏じゃねえの?」

「え、美樹ちゃん彼氏いるの?」

 

緒方と女性の注目を一身に受ける中、さやかの顔は面白いほど青ざめて。

 

「おいおい、どうした美樹、そんなに彼氏が怖いのかよ?どれ、俺が代わりに…」

「な、なにすんですか、大丈夫ですよ、それに怖くなんて…」

 

そう、怖いわけない、そう何故か言い聞かせてさやかは携帯を耳にあてた――

 

 




悪魔からの電話を「彼氏」からの電話と思い込んでいる緒方達だが、はてさて――
そしてさやかはもちろん怖がっています笑


ではでは何かコメントあればお気軽にどうぞ(妄想の糧になるので嬉しいです)
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