明けた夜に(大人悪魔ほむら×大人さやかシリーズ)   作:さんかく@

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岡山と佐藤、そして妙子の三人は幼馴染だった。不思議な出来事に驚くほむらとさやか。(拙作「THE LOVERS」(R18)の内容が会話の中に出てきますので、18歳以上の方で興味ある方は是非読んで頂ければと)


幸せなひととき

それはもう遠い過去のこと。どこにでもあるようで、そしてどこにもない男女の話。

幼い頃から一緒だった一人の男と二人の女は、他の誰もが入りこむことのできない絆で結ばれていて。そうしてある日、思春期の頃、男は病弱な黒髪の幼馴染に恋をした。

 

白い病室、白いカーテン、そして白い肌の幼馴染。

 

『俺はお前の事が好きだ』

 

男はただ真っ直ぐに告白した。それを聞いて、儚げに微笑む幼馴染。

 

『ごめんね、銀ちゃん…私、好きな人がいるの』

『誰だ?』

『清ちゃんよ』

 

それはもう一人の幼馴染の名前。女同士じゃないか、と喉から出かけた言葉を男は飲み込んだ。黒髪の幼馴染の横顔は悲壮な決意の表情を浮かべていたから。男はもう一度聞いた。

 

『「好き」…なのか?』

 

黒髪の女性は今度は首を振った、そうして静かにだが力強く囁いた。

 

『愛しているの』

 

*     *      *

 

「じゃあ、教授と主任と、そしてあの「絵」の方は幼馴染なんですか?」

 

さやかが清子に尋ねた。「絵」とは昨年の大晦日、清子の家で見た肖像画の事だ。そこには彼女の幼馴染が描かれていたが、嫉妬に狂った彼女の夫はその絵を裂こうとして自らをナイフで刺して死に至っている。そしてその後、超常現象(ほむらによるものだが)によりその絵は炎に包まれ消えた。その時消え去る瞬間の肖像画の彼女の顔をさやかは見ている。

 

――笑っていた

 

そう、消え去る瞬間、彼女は笑っていた、解放される喜びで。それは決して清子への愛を手離すからということではなく、己に課した業の解放からくる喜びなのだろう。

 

「そうよ、私と銀ちゃんと妙子は幼馴染なの」

「へえ…なんか不思議」

 

さやかは二人を見つめた。ほむらが口を開く。

 

「船でもお会いしましたよね…妙子さんに」

 

ほむらの言葉に嬉しそうに頷く清子。そう、大学のゼミ生とOBを乗せた客船旅行で清子は亡くなったはずの幼馴染に再会していた。

 

「そう、だから私は妙子がいなくなった気がしないの」

 

そうして胸元に手をやり目を瞑る。

「いつも傍にいるみたい」

「いますよ、きっと」

 

さやかが目を細めて囁いた。

 

「あれだけ愛されてたんだ、いるだろそりゃあ」

 

腕を組んだまま岡山がぶっきらぼうに清子に言った。初老の女性は、あら、といたずらっ子のような笑みを浮かべ男を見つめると、今度は対面の二人に微笑んだ。

 

「銀ちゃんなんて、妙子を想うあまりにずっと独り身なのよ」

「え、それでなんですか?」

「清子!」

 

あらあらと笑う女性と困ったような男はまるで子供のようで。さやかは何故かお似合いだと思った。横を見ると、ほむらも口元を緩め二人の様子を見つめていた。

 

「…でも不思議ねぇ、私の教え子が銀ちゃんと知り合いなんて」

「俺もまさか部下がおめえと知り合いとは思っていなかったよ」

「私達も、まさかお二人が幼馴染とは思いませんでした」

 

ほむらが首をかしげながら囁いた。さやか傍で頷く。

 

二人は目の前の初老の男女と以前から面識もあり交流もあるのに、当の岡山と清子はそれぞれの部下と教え子が相手とも交流があることを知らなかったのだ。そしてほむらとさやかも二人に接点があるとは今の今まで知らなかった。

 

不思議で、でも小気味よい驚き。

 

清子がコーヒーカップを手にした。

 

「この不思議な縁とサプライズに」

 

そう言って、ゆっくりとカップを上にあげる。乾杯の合図。三人はそれぞれの飲み物を手にし、そして四人は静かに乾杯した。

 

それから改めて清子と岡山、そしてほむらとさやかの簡単な自己紹介が始まり、たわいもない会話が始まった頃、ほむらが清子に質問する。

 

「教授、どうして私を岡山さんに紹介しようと思ったんですか?」

「ああ、それね」

 

初老の女性は両手を合わせ数回こするような仕草をする。彼女の癖だ。

 

「あなたが妙子と似ていることは前から話してるわよね?」

「ええ」

「容貌というよりも雰囲気かしら、だから一度銀ちゃんにも紹介しようと思ったのよ」

「それだけですか?ならなぜこの時期に?」

「あらあら、やっぱりあなたにはごまかせないわねえ」

 

嬉しそうに教え子を見つめる清子。ほむらの辞書には「言葉を濁す」「ごまかす」などという単語は無いのだろう、じい、と相手が答えを発するまで凝視している。猫みたいだ、とさやかは思った。清子は隣の男をちらりと見つめまるで少女のように囁いた。

 

「ごめんね、銀ちゃん」

「何をだ?」

「実は銀ちゃんを元気づけようと思ったのよ」

 

へえ、とさやかが声を出す。大学教授であり、深い知性の持ち主である清子をさやかはどこかで神格化していたのだろう。常に客観的に物事を推し量る彼女が、このように「誰かを元気づける」という思いやりを素直に見せたことが意外であり、だが、とても可愛らしいと思ってしまった。ほむらの方はまだ理解しかねるのか小首をかしげたままだ。

 

「いつもはあまり仕事の事は喋らないのに、最近はねえ、私によく泣きごとを言ってたの」

「清子」

「へえ、珍しい」

「それで、妙子さんに似ている私を紹介しようと?」

「ええ、驚かせて元気づけようと思って、それにね、前から私彼に自慢していたのよ「すごい教え子」がいるって…自慢もしたかった。自己満足かもしれないけど、気を悪くしたらごめんなさいね」

「いいえ」

 

ほむらは首を振った。

 

「むしろ光栄です」

 

そうしてほむらは対面の二人に微笑んだ。そんな相方の対応を見てさやかは口元を緩める。

清子は視線をさやかに移し、目を細めた。

 

「ふふふ、でも…貴方を見ていると銀ちゃんが落ち込むのがわかるわ」

「え?」

「貴方だったのね、彼の自慢の「部下」は」

「おい」

 

今度こそ喋るなという様に岡山は中腰になって、清子を睨む。それをどこ吹く風かという様に涼しい顔で微笑み返すと、さやかに言った。

 

「「大事な部下が異動になる」そう言ってこの人落ち込んでたのよ」

「え……」

 

さやかの視線が岡山に向けられる。そこにはいつもの見慣れた強面の白髪の男で。

 

「まったくよう……って、おめえ、なんて顔してやがる!」

 

岡山がさやかに向かって叫んだ。そこには部下が満面の笑みを浮かべていて。

 

「えへへ…」

「おい、気持悪いからその顔やめろ!」

「だって、えへへ、なんか嬉しいというか」

 

隣の黒髪の美女がそっと額を抑えて目を瞑る。

でれでれとだらしない笑みを浮かべながら頭を掻くさやか。彼女に尻尾があるならば、今まさに凄まじい勢いで振っているのだろう。

 

「おまえ、懐いたら承知しねえぞ!」

 

そのやりとりにころころと笑う清子と、はあ、とため息をつき首を振るほむら。

そうして、

 

「すみません、躾がなってなくて…」

 

と、珍しく黒髪の飼い主が殊勝な態度で謝った。

 

それからだいぶ打ちとけた雰囲気の中、四人は談笑を続けた。内容は仕事のことでもなく、私生活のことでもない、ごくたわいもないもので。だが、内容よりも会話を交わすということが目的なのだろう、四人の表情は満足気で。そうして充実した時間は過ぎていったー

 

 




オリキャラ3人(一人は他界)が幼馴染であり、互いに想い合っている関係性は、実はうちの成長したほむらとさやか、まどかの3人と重なるようにしています。清子を想う妙子がほむら(奇しくも二人は多少似ている)、清子がまどか、そして岡山がさやかというように。特に岡山は、妙子を想っていたが肝心の妙子は清子が好きで、それを遠くから見守っていたという過去を持っています。ちょうどさやかがまどかを誰よりも愛しているほむらを見守っているように。だからなのか、岡山と清子はほむらとさやかにシンパシーを覚えているのかもしれません。どこか通じ合うというか…。


そしてうちのさやかは人懐っこい(まさにワンコ…)設定ですが、岡山に対してもすごく懐いていて。それは恋愛感情ではなくて、父親を敬愛する息子(何)の様なそんな親子の様なものですが、岡山の方も部下というよりも手のかかる子を持った親の様な気持ちになっています。(「懐いたら承知しねえぞ!」はもちろん照れ隠しです(笑))親子の様な、あるいは年の離れた友人の様な、そんな不思議で優しい関係はほむらとさやかにとって、とても貴重なものになっていきます。

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