明けた夜に(大人悪魔ほむら×大人さやかシリーズ)   作:さんかく@

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さやか本人は困っているが、ちょっとしたユーモア回です(なんと…)




さやかとことん困る

「うう、どうしよう…」

 

一人呟きながら美樹さやかは帰路についていた。

すでに日が暮れた街の下、行き交う人々もまた皆一様に疲れ切った顔に見えるのは、さやか自身が疲れ切っているからか。いや、彼女は仕事の疲れよりも、今から待ちうけているであろう家主の怒りを予見して、憂鬱になっていた。

 

「絶対ほむら怒るに決まってるわ…」

 

はあ、とため息をついて、また一人呟く。傍にいた通行人の若い女性が不審げにさやかを見つめたが、本人は気付いていない。

 

『貴方、私の決めた門限に逆らうっていうの?』

『勝手に飲み会に行くなんて、何いい気になってるの?』

『出張なんて、私聞いてないのだけど?』

『悪いけど、時間切れよ』

『あら、朝までドアの前にいるなんて、結構殊勝なのね』

 

フフフ、と悪魔のように(実際そうだが)笑う相方を思い出し、さやかはぶるぶると体を震わせた。過去にしでかした門限破りや報告漏れの悲惨な結末が走馬灯のように浮かび、彼女をどこまでも憂鬱な気分にさせる。

 

「もうどうしろってゆうのよ…」

 

そもそも、勝手に出張行きを決めた上が悪いのだ。いや、公僕だから本来命じられれば本人の意思なんて関係ない。ただ美樹さやかの相方が恐ろしすぎるだけだ。

 

――皆、こうなのだろうか?

 

ふと、さやかは同じ課の妻帯者の刑事を思い出す。さやかのような女性のマル暴刑事というモデルケースがなかなか無いため、どうしても同僚や仲間の家庭事情から類推するしかない。よく聞くのはへそくりがばれてやばかっただの、浮気がばれて殺されそうだったのだのとくだらないことばかりだが、果たして怒りに狂った妻というのはどういうものだろう?

 

「でもなあ…」

 

怒るっていってもせいぜい頬を叩かれたり、数時間口を利かないといったレベルなのではないか?とさやかは勝手に想像する。こちとら、腹を思い切り蹴られたり、顔に一撃をくらって壁まで吹っ飛んだり、寒い冬に朝まで締め出しをくらったりなど、生命の危機にまで及ぶのだ。比べようがない。

 

「ああ、怖いっ!」

 

ひときわ大きい声でさやかは叫ぶ、これには周囲の人々も無視できず、ぎょっ、とした表情で思わずさやかを見返した。それすら気付かず、相方の恐怖に怯えながら美樹さやかはとぼとぼと我が家に向かうのであった。

 

それから数分後、さやかの予感は思い切り的中することになるのだ。

 

*********

 

「また出張?」

 

恐ろしいほどの美貌を怒りで歪めて暁美ほむらは叫んだ。その迫力に気押されて、蒼い髪の同居人は、まるで主人に叱られた犬のように首を縮め、目を瞑る。

 

――予感的中っ…!

 

さやかは心で叫んだ。

 




さやかの回想に出てくるほむらの鬼嫁っぷりときたら…いや、この場合悪魔嫁…(何)
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