ムーンライター 辺境の鍛冶屋   作:紅河

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第2話 ゴブリン退治 その1

 ゴブリンスレイヤーにシンプルな言葉を返され、いつもの反応だなと少しばかり頭を巡らせていると、沈黙が嫌だったのか、彼が先に口を開いた。

 

「なにか用か?」

「いや、特に用はないが」

「ないのか」

「暇そうだから話しかけただけだよ」

「そうか」

 

 って、反応それだけかよ!相変わらず、無愛想なこって…。コイツとは五年ほど前に知り合い、たびたび仕事を手伝っている。といっても、仕事をするようになったのは、知り合ってすぐと言うわけではなかったんだ。知り合って、半年ほど経ったくらいからだったかな。ゴブリンスレイヤーがギルドの綺麗なお偉いさんと一緒に冒険してから、だったか?いや、進級試験か。

 まぁ、なんにせよ、その時からこの始末。俺の方はもう慣れたけど。

 俺はゴブリンスレイヤーの向かいに立ち、同じように肘をかけて、話し始めた。

 

「で、お前さんは? ゴブリン退治じゃないのか?」

「ああ。人を待っている」

「お前が? 珍しいな」

「そうか?」

「そうだろうよ。いつも一人で仕事をしてるじゃないか」

「ああ」

 

 いつもの問答を繰り返していると、もしやと思いこう言った。

 

「まさか、誰かと一党でも組んだのか?」

「………ああ」

 

 マジかよ。明日は槍の雨でも降るんじゃないか?ってくらいの衝撃なんだが…。まさかゴブリンスレイヤーが一党を組むとはねぇ…。ゴブリンばっか倒してる変なやつなのに、ついていく冒険者がいるのか。物好きも居たものだ。

 

 俺がゴブリンスレイヤーとの会話を楽しんでいると、カランコロンとギルドの扉を開ける音が部屋中に響き渡る。

 

 誰かが入ってきたようだ。

 その先に目を向けると、どうやら神官の子だった。清涼感のある白の神官服に、新調したであろう真新しい杖、新人の冒険者だろうか?

 なにかの依頼を受けに来たのか?と推察していると彼女はこちらに気付くやいなや、トコトコと駆けてくるではないか。えっ?まさかこの子がゴブリンスレイヤーの一党メンバーなのか?

 

「こんにちは、ゴブリンスレイヤーさん」

「ああ」

 

 マジだ。この子がゴブリンスレイヤーが待っていた相手のようだった。

 首に下げている等級も白磁等級。見るからに冒険者に成り立ての、ピチピチ新米冒険者だ。

 

「もしかして、この子?」

「そうだが」

「あの~ゴブリンスレイヤーさん、この人は?」

 

 ゴブリンスレイヤーに体をくいっと向けて彼女が聞いてくる。

 

「こいつは…。おい」

「ああ、はいはい。俺はムーンライター。よろしくね」

 

 と、俺は軽い自己紹介を済ませる。

 

「えっと、私は女神官、です。街の神官を勤めさせていただいてます」

 

 ペコリと彼女がお辞儀をする。礼儀正しい、良い子みたいだ。

 

「おう、よろしく。女神官さん」

「ムーンライターということは、冒険者とは別の職業を兼任されているんですか?」

「そう、鍛冶屋を営んでる」

 

 彼女が「ええー! 凄い」という声を上げる。二重労働に相当驚いたの様子だった。

 

「なにか壊れたらうちの工房に持ってきてよ。直してあげるからさ」

 

 俺がにかっと笑うと、すかさず、彼女のほうも口を開いてこう告げた。

 

「その時は宜しくお願いします」

 

 彼女は続けざまに言った。

 

「ゴブリンスレイヤーさんと一党を組ませていただいているんです」

 

 こんな子がゴブリンスレイヤーの一党ね。なんでまた?どうして?と俺の頭の中は疑問でいっぱいになる。

 すると、彼女からこう言った。

 

「初めての冒険で、ゴブリン退治に赴いたんですけど……」

 

 その一言で俺は察した。

 

「それをゴブリンスレイヤーに助けられたってところか」

「はい。それで今に至ります」

 

 そうか、そういう経緯だったか。それなら合点がいく。一緒に行動しても不思議じゃない。女神官さんはゴブリンスレイヤーに恩を感じているのだろう。

 

「ゴブリンスレイヤーにはよくして貰ってるのかい?」

「はい。凄く優しいんですよ、ゴブリンスレイヤーさん」

「そっかそっか」

 

 なら、大丈夫そうだな。

 

「それじゃ、俺は仕事があるからこれで」

「じゃあな」

「さようなら」

 

 二人に手を振って、その場を離れた。

 彼らはこのあと、ゴブリン退治に赴くのだろう。ゴブリンスレイヤーがいるとは言え、彼女の、いや、二人の無事を祈ろう。

 

 俺はギルドを後にした。

 帰路につくと、なにやら家の前で一人の男性がドアの前で、立ち尽くしている。どうやら、客のようだ。開店時間ではないのだが……。

 彼は新米冒険者のようで、剣が刃こぼれしてしまったから、修繕を頼みたいとのこと。ショートソードのようで、なにやら思い出深い品らしい。俺は彼に少しだけ待って欲しいと伝え、工房へ向かった。

 

 数時間後。

 彼に修繕されたショートソードを手渡すと、目を輝かせながら、受け取ってくれた。喜ぶ彼の姿に、鍛冶はいいものだ、とやりがいを肌で感じた。こういう仕事を沢山やりたいなと、思う1日だった。

 

◇◇◇◇◇

 

 

 あれから、何日か経ったある日のこと。天気は晴れ。いつものようにギルドへ仕事探しに向かう。黒銀を基調とした甲冑に、両手には籠手、両足には佩楯と脛当、頭に軽い兜と、腰に刀を携え、ここではあまり見ないであろう格好だろう。しかし、これが俺の冒険装備。あと雑嚢を装備したら準備完了。

 俺は早速、家を出た。

 

 俺は人混みはあまり好きじゃない。人のいない時間を狙って、昼間くらいにギルドへ。

 中へ入ると、しめしめと言わんばかりに人は少なく空いていた。クエスト掲示板の所に行くと、見覚えのある二人組がそこに立っていた。

 

「よう、お二人さん」

「あ、ムーンライターさん。こんにちは」

 

 俺達は軽い会釈を済ませ、世間話へ。

 

「良い依頼はあったかい?」

「ちょうどな」

「そうか。なら良かった」

 

 俺も探さないと…。おっ、地下の遺跡調査か。こいつの痕跡が見つかるかもしれないな。

 と、俺は右腕の二の腕付近をスリスリと擦る。そこには前の冒険で見つけた丸く窪んでいる腕輪がある。

 俺にはこの窪みがどんなものか検討もつかない。なにかをはめ込むのか?それしか分からなかった。

 この腕輪は魔法の腕輪巻物食い(マジックブレスレットスクロールイーター) と呼ばれるものらしい。発見時に見つけた紙にそう記載されていた。しかし、文字が掠れて、それ以上は解読不能だった。

 戦利品として持ち帰ったはいいものの、どうやって使用するのか、どうやって巻物を食わせればいいか分からない。

 俺は好奇心で腕輪の秘密を知りたくて、遺跡調査や魔法使いの塔などを好んで選んでいるが、しかし、結果は芳しくない。もしかすると、このクエストでなにか分かるかもしれない。

 今俺の目の前に美味しいそうなお肉があるのだ。俺はそれを選ばずにはいられなかった。

 

「これにするか」

「お目当ては見つかりましたか?」

 

 と、女神官さんが訊ねてくる。

 

「ああ、良いのを見つけたよ」

 

 けど、地下遺跡が広かったら一人じゃ無理だよなぁ…。さて、どうしたものか…。とりあえず、受付さんに相談してみるか。

 

「あのーすみませーん」

「あ、はーい。ただいまー」

 

 すると、明るい声で金髪で三つ編みが特徴的な美人女性が姿を現した。豊満そうな胸に釘付けになりそうなところを必死に抑え込み、スッと依頼書を提示した。

 

「これをお願いしたいんですが…」

「えっと、遺跡調査ですね。あー、ムーンライターさん、一人で向かわれる予定ですか?」

「いやー、それを相談したくて…」

「でしたら、良いパーティーを知っていますよ」

「本当ですか!?」

「はい、こちらの方々です」

 

 彼女が手のひらで刺すをほうを見ると、そこにはゴブリンスレイヤー達がいた。えっ?まさか…この二人?

 

「えっ? ゴブリンスレイヤー達ですか?」

「はい。今ご説明いたします」

 

 彼女はそういうと、紙を取り出しクエストの内容を話し始めた。

 

「どうやらですね、ムーンライターさんの依頼書の遺跡場所とゴブリンスレイヤーさん達が向かわれる場所なんですが、ちょっと問題がありまして」

「と、言いますと?」

 

 受付嬢さんはこう続けた。

 

「実は農村と遺跡が目と鼻の先にでして、もしかしたら地下で繋がっている可能性があるんです」

 

 と、受付嬢が真剣な表情で告げた。

 

「遺跡内が既にゴブリンの手に落ちていると……?」

 

 受付嬢さんは黙って頷く。

 

「ゴブリンスレイヤーの依頼は、農村近くに住み着いたゴブリンを討伐して欲しいってところですか」

「そんな感じです。詳しくはこちらをご覧ください」

 

 受付嬢さんはそういうと、クエスト用紙を手渡してくる。そこには、森の中にある古びた廃墟の家にゴブリンを見掛けたから、討伐して欲しい。怖くて森に入れない、と。

 

「ただ、繋がっていない可能性もあります。ですが、念のためにムーンライターさんさえ良ければ、ゴブリンスレイヤーさん達とパーティーを組んで、挑まれてはいかがですか?安全性は保証されますし、その代わり報酬は少し下がっちゃいますけど……」

「ゴブリンスレイヤー達はなんて言っているんです?」

「許可は頂いてます。依頼を受けるものがいたら話を通してくれと」

 

 顎に手を当て、一幕置いてからこう言った。

 

「構いませんよ、それでお願いします」

 

 そういうと、より一層彼女の表情が太陽のような輝きを見せる。営業スマイルというのは分かってはいるが、美人な彼女に笑顔を向けられると、一瞬恋に落ちそうになってしまう。

 

「ゴブリンスレイヤーさん!」

「なんだ?」

「さっきの話、聴いてましたよね?」

「ああ」

「それじゃ、依頼のほう宜しくお願いいたします。手続きは私のほうでやっておきますので」

「分かった。準備が整い次第、行くぞ」

 

 そういうと、ゴブリンスレイヤーはギルドを早々に出ていった。あとを追うように俺と女神官もそれに付いていく。二人に俺は一度家に戻りたいと告げる。

 久し振りのゴブリン退治ということもあって、最低限の装備へと変更したいと告げた。本来は刀とか持っていく予定だったからなぁ。今回は小太刀だけにしよう。これなら、ゴブリンに奪われても問題にならないだろう。ホブやチャンピオンが持つには小さすぎるし、ゴブリンが持ったとしてもまともに扱えないだろう。

 二度手間になっちゃったけど、仕方ない。二人には悪いことしたな…。あとで謝っておこう。

 なる早に準備を済ませ、二人を待たせている街の入口へ向かった。俺の自宅とは直線距離で行けるということもあって、そこまで時間が取られなかったのが幸いだった。

 二人に謝りつつ、馬車へ乗り込み冒険へいざ出発だ。

 

◇◇◇◇◇

 

 のどかな農村。

 家々が並び立ち、少し他の農村とは広いように感じる。村の中央で和気藹々と、子ども達が鬼ごっこをしながら遊んでいた。

 村の多くは農家のようで、幾つもの畑が耕され、開拓されている。料理屋で食べる野菜達はここで作られているんだろうか?

 

 村の入口で村長とおぼしき人物が佇んでいる。年配のご老人だ。顎にたっぷり髭を蓄えているな。

 

 老人と話すと、どうやら彼が村の村長のようだ。

 村長に挨拶を済ませ、導かれるままに村長宅へ。そこで居間に通され、クエスト場所への地図を受け取ると早速、仕事となった。

 村長の話を聞くと、ゴブリンが住み着いているとおぼしき家は、その昔、魔法使いが在京していたようで、現在は魔法使いもなくなり、廃墟になっているそう。そこをゴブリンが拠点にしたと。

 

「村の被害は?」

 

 と、ゴブリンスレイヤーが聞くと…。

 

「幸い、村の住民から被害は出てはおりません」

「そうか」

 

 とだけ言い、こう続けた。

 

「となると、ここに来たての群れかもしれん」

「んじゃ、今は品定め中ってことか」

「そうなる」

「このまま放置すれば…」

 

 ゴブリンスレイヤーが淡々と、女神官さんに続いて言った。

 

「孕み袋を用意し、50匹ほどばかりに増えて襲って来ただろう。この村は運が良い」

 

 ゴブリンスレイヤーは淡々と話し、村長は彼のそんな言葉に反射的に体を震わせる。ゴブリンがどういう生き物か理解したのだろう。ゴブリンどもを生かしておく理由など、俺達にはないのだ。

 

「一刻も早く、ゴブリンどもの討伐を宜しくお願いします!」

 

 と、村長が頭を下げる。

 

「もちろん、そのつもりだ。ゴブリンどもは皆殺しだ」

 

 村長の家を後にし、早速、件の場所へと向かう俺達一行。俺は魔法使いと聞いて、自分の目当ての物が見つかるかもしれないと、淡い期待を抱いてしまう。

 俺たちが村へ到着する頃には、夕陽が顔を覗かせる時間帯であった。

 

「行くぞ、ゴブリン退治だ」

「はい!」

「おう」

 

 気合をいれ、件の森へと入っていく。

 村から百数ほど離れた場所にあるという。木々が生い茂、俺達の行く手を阻んでいる。

 地図の通りに歩みを進めていると、ゴブリンスレイヤーがなにか見つけたようだ。

 

「見えてきたぞ」

 

 森の中、木の実が実る茂みに隠れている俺たちに向かって、ゴブリンスレイヤーが言った。彼の視線の先には緑が生い茂る2階建ての家が顔を出している。きっとあれが目的地だろう。

 家の玄関だった場所を見やると、ゴブリン達が見張り番をしているのが見えた。ゴブリン達は寝起きなのか、目を擦ったり、欠伸を噛み殺して呑気に過ごしている。

 

「あれが、魔法使いの家か」

「そのようですね」

「どうする? 俺が左をやろうか?」

「ああ、頼む」

「えっと、私はどうすれば…」

「神官さんはここで待ってな」

 

 俺は雑嚢から、棒手裏剣を取り出す。狙いをつけ、ゴブリンスレイヤーの合図を待った。

 

「1、2の、3!」

 

 ゴブリンスレイヤーの小声と共に、俺はゴブリンの額をめがけて、右手の棒手裏剣を投擲した。ヒューという風切り音とともに、勢いよく投擲された棒手裏剣は見事、ゴブリンの額へ命中。当たりどころが悪かったのだろう、脳みそにまで棒手裏剣は食い込んでいるのが見えた。

 血渋きとともに、ゴブリンが醜い悲鳴をあげる。

 

「GROOO!?」

 

 片割れが殺されたことに呆気に取られているゴブリン。その油断が命取りだ。

 

「GROROOO!?」

 

 俺の投擲と同時にゴブリンスレイヤーも小剣を投擲。もう片方のゴブリンの喉を突き破り、絶命した。

 

「これで、二つ」

「お二人とも凄い…」

「ざっと、こんなもんだな」

 

 玄関付近へ赴き、死体を確認。見事に絶命していた。すると、ゴブリンスレイヤーが投げナイフを持ち、ゴブリンの腹を切り始めた。

 

「おい。なにしてんだよ……」

「見れば分かるだろう」

「腹をかっさばいてるのは分かる、だが、その意味を教えろって言ってんの、俺は」

「あー、そういうことですか……」

 

 と、女神官さんが覚悟が決まったような口振りでそう言った。

 ゴブリンスレイヤーが雑嚢から布を取り出して、血を馴染ませていく。十分に馴染んだと思ったら、すかさず彼女へ血を塗り始めた。

 

「おいおい。ゴブリンスレイヤー? え? なにしてんのこれ……」

「ゴブリンは鼻が利く。特に女の匂いには敏感だ」

 

 ゴブリンスレイヤーはこうも続ける。

 

「さっきは森が隠してくれたが、ゴブリンの巣ではそうはいかん」

「だから、血を塗っていると?」

「そうだ」

 

 ゴブリンスレイヤーの物怖じしない言い分に、呆れつつ、女神官さんのほうに話しかけると…。

 

「もう、慣れましたから」

「君も慣れるなよ……こんなの方法に……」

 

 相当、ゴブリンスレイヤーに仕込まれたんだろうか?女神官さんの目に光がない。もう諦めているようだ。

 

 血塗りを済ませると、俺たちは家の家宅捜査を開始した。至るところにキノコが生え、もはや家が森の一部と化そうとしている。中は一人で住まうには十分すぎるほどの広さの家だ。二階建てだったのか、階段があるが腐って上のほうにはいけそうにない。

 リビング、キッチン、トイレ、寝室、どの場所も苔がこびりつき、どんな家だったのかも想像がつかない。緑も生い茂、俺たちの邪魔をする。しかし、ゴブリンが住み着いたのなら、ここにゴブリン達が生活をしていたはず。それなのに、ここはただの家の廃墟でしかないようだ。

 ゴブリンの巣というには思った以上になにもないのだ。というか、巣なのか?とさえ思ってしまうほど、生活感がない。

 

「見たところ何もないように見えるが……地下への入口なんて本当にあるのか?」

 

 俺がゴブリンスレイヤーの調べている書斎に行くと、こう言うのだ。

 

「これを見ろ」

「えっ!? これって!」

 

 ゴブリンスレイヤーの指を刺すほうに目を向けると、骨で出来た旗のようなものが床にさしてある。

 

「この群れはゴブリンシャーマンに率いられているようだ」

「これがあるということは、やはり、ここがゴブリンの巣」

「でもよ、巣って言っても何もない……」

 

 俺がそういうとゴブリンスレイヤーは旗のすぐ近くにある、床に手を掛ける。すると、床が腐っていたのか、ベコッという音ともに、ゴブリンスレイヤーの手によって抉じ開けられた。そこには地下へと広がる階段が顔を覗かせている。

 

「これって地下への入口…? ゴブリン達はここからやって来たのですか?」

「そうみたいだな」

「しかし、妙だ」

「ん? なにがですか?」

 

 と、女神官さんがゴブリンスレイヤーに質問を投げ掛ける。ゴブリンスレイヤーは何か引っ掛かっている様子だ。

 

「ゴブリンは略奪民族だ。自分達でここまで整備された地下坑道を作れるとは思えん」

 

 壁を見ると、石造りの壁が綺麗に嵌め込まれ、人手によって作られているような気がしてくる。雑に作られたのではなく、計算し緻密に作られたのだと。

 

「ってことは受付さんが言ってたのはこれか」

 

 女神官さんがハッとする表情を浮かべる。

 

「この家が魔法使いの家だとすると、何らかの理由で遺跡に用があって……」

「行くのが手間だったから、遺跡の入口の上にこの家を建てたとかか?どう思う?ゴブリンスレイヤー」

 

 二人で考えをまとめ、俺が問うと、ゴブリンスレイヤーはこう言った。

 

「興味がない」

 

 と、一蹴。

 そりゃそうか。ゴブリンスレイヤーだもんなぁ。

 

「んじゃ、地下探索と参りますか!」

 

 俺は気合いを込めて、拳と手のひらをパーンッと合わせたのだった。

 

 

 

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