ムーンライター 辺境の鍛冶屋   作:紅河

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間違えて、先に21話を更新してしまいました! すみません!


第20話 ゴブリンジェネラル戦

 各位配置に到着。俺はゴブリンスレイヤーと蜥蜴僧侶さん3人で、下の中央入り口で待機。いよいよ、作戦開始!

 まず、ドワーフさんと女神官さんの術でゴブリンどもを黙らせる。酩酊と静寂だ。

 

 女神官さん、妖精弓手さん、ドワーフさんが2階へ駆け登り、術をかます。

 ゴブリン共が寝静まったところに俺と蜥蜴僧侶さん、ゴブリンスレイヤーで処理していく。ゴブリンスレイヤーらしい戦法だ。

 

「上手く行きますかね」

「これでダメなら他の手を使うまでだ」

 

 ゴブリンスレイヤーには別の手も用意済みということか。

 

《呑めや歌えや酒の精。歌って踊って眠りこけ、酒呑む夢を見せとくれ》

 

 呪文が聞こえてくる。2人が術に取り掛かったようだ。俺ら3人は入り口の影からゴブリンどもを注視。ゴブリンジェネラルを囲うようにゴブリンどもが陣取っている。面倒な……。

 こちらにアイツらが気付かれれば一環の終わりだ。こっちに雪崩れ込んでくるだろう。そうなれば3人まとめてやられかねない。警戒せねば。

 

「酩酊《ドランク》」

 

 酒を媒体に奇跡を発動させているんだっけ。あれがドワーフさんの戦い方なんだな。続けざまに女神官さんが拙くも正確に唱えていく。

 

《いと慈悲深き地母神よ、我らに遍くを受け入れられる、静謐をお与えください》

 

「静寂《サイレンス》」

 

 この方法を用いると2つの相乗効果によって、ゴブリンが目覚めることなく始末できるらしい。よー考えるな。

 

 程なくして準備完了。ゴブリンどもは夢の中へとご招待。次は俺たちの仕事だ。

 

 先に肉の盾を回収。邪魔にならない場所に避難させておく。右壁あたりが良さそうだ。そこには何もないみたいだからな。……触ってみたがやはり冷たい。妖精弓手さんの言うとおり、既に亡くなっているのだろう。あとで弔ってあげなければ。

 俺たち3人は各々の武器でゴブリンどもを1匹1匹、確実に処理していく。1匹1匹確実に。

 ザクッ! ブシュッ! という3人の攻撃音だけが広場に広がる。こんなに楽な作業でいいのか? 何も問題は起きないのではないかと俺は高を括ってしまう。いや、ダメだダメだ。油断大敵。油断した冒険者が真っ先に死んでいくんだから。しっかりしろ!

 心の中で俺は気合いを入れた。

 

 (これで最後!)

 

 俺がクナイでゴブリンの首をかっ切ったところで、残すはゴブリンジェネラルのみとなった。その周りにはゴブリンたちの血の池が出来上がっていた。近づきたくはないが……致し方あるまい……。

 こいつにも酩酊と静寂が掛かっているはず。近くに近づこうとした、その瞬間。

 

「逃げて!!」

 

 妖精弓手さんの大声が俺の耳を貫いた。

 ハッとした俺は咄嗟に後ろへ跳ぶ。

 

 ゴブリンジェネラルが抱きつこうと俺に襲いかかってきたのだ。あの大きな腕と大鎧の抱擁をされたら人たまりも無かったはず。あっぶね! 危うく、締め殺されるところだった……。妖精弓手さんに感謝しなければ。

 

「助かりました!」

「良いのよ! 1つ貸しね!」

 

 ゴブリンたちの死体を踏みつけながら、ゴブリンジェネラルはフラフラしながらもこちらを見据え身構えている。

 にしても、何故こいつには睡眠が効かなかったんだ? 確かに眠っていたはずだが……。

 

「小鬼殺し殿、ムーンライター殿、あやつの首をご覧なされよ」

 

 蜥蜴僧侶さんが指差しで俺たちに知らせてくる。指示に従い、ゴブリンジェネラルの首を凝視してみると、何やら光る装飾品が目に止まった。

 

「恐らく、睡眠耐性のネックレスかと」

「それでアイツだけ起きるのが早かったのか」

 

 面倒なもんぶら下げやがってからに……。作戦会議のところでもゴブリンは待ち伏せをするって、ゴブリンスレイヤーも言ってたっけ。

 

「どうします? 小鬼殺し殿」

 

 俺たちは警戒しながら指示を待つ。この一党パーティーの頭目はこいつだからな。

 ゴブリンジェネラルは……こいつも盾を構えて警戒中か。

 

「おい! 術はまだ残っているな!」

 

 ゴブリンスレイヤーが大声で2階へ報せる。

 

「たんまりと!」

「泥沼の術を頼む!」

 

 幸い、地面は石造りじゃないから効くとは思うが……。

 

「媒体は小鬼どもの血か……。あまりやりたくはないがのぅ……」

 

 まあそうなるよな……。

 水撒けるわけにもいかなかったし……。

 早速、ドワーフさんが嫌々ながらも準備に取り掛かる。

 

「お前が要だ。しくじるなよ」

「……了解っ!」

 

 ゴブリンスレイヤーの期待の声に俺は少しばかりの笑みを溢した。

 ここまで読み通りだとこいつの実力が恐ろしい。ゴブリンスレイヤーの言ったとおりになったな。

 

 作戦開始の数分前こと。ゴブリンスレイヤーがこんなことを口にしていたのを思い出す。 

 

「ゴブリンジェネラル、アイツが上位種ならば状態異常は効きにくいかもしれん」

 

 ゴブリンスレイヤーが俺に指定箇所につく前に告げてきた。

 

「というと?」

 

 俺が質問すると続けざまにこう答えた。

 

「ゴブリンどもを狩り続けて分かったことだが、上位種はどうも耐久性があるようだ」

「こちらの攻撃に耐えてくると?」

「ああ」

 

 ゴブリンスレイヤーが頷きで肯定する。奇跡とかも効きにくいってことか? もしそうなら…厄介だな。

 

「念のため、お前は術を惜しみなくぶつけろ」

「了解だ」

 

 とてつもない緊張感が俺を包み込む。包装紙に品を包むようにがっしりと。

 ここでドワーフさんの泥沼が飛んでくる。

 

《土精、水精、素敵な褥をこさえてくんろ》

 

「泥沼《スネア》」

 

 ゴブリンジェネラルの地面だけみるみると

 

「ダメ! 弓矢じゃ鎧の隙間を縫うだけで精一杯!」

「ちっ! 致命傷にはならんか」

「ムーンライターさん!」

 

 女神官さんの焦りの声が広場に響く。

 しかし、焦っちゃだめだ。今は集中して呪文を唱えなければ。俺は腕輪を擦りながら一つ一つ丁寧に唱えていく。

 

《我らを照らす、偉大なる神よ。どうか我に、火の子の力を授けたまえ》

 

「火の玉《ひのたま》!」

 

 俺の肩の周囲にボッ! ボッ! とカボチャほどの火の玉が出現していく。じょじょに増えていき、最終的には5つ程形成される。

 

「これでもくらえっ!」

 

 そのままゴブリンジェネラル目掛けて、火の玉をぶっぱなす。

 身動きは取られてはいないものの、盾で易々と防がれてしまう。

 

「効いとらんぞ! 月の字!」

「続けてやっちゃって!」

 

 周りからの指摘が跳んでくる。そんなこと分かってますって!

 

「もう一発!」

 

 もう一度、呪文を口にしする。

 

「火の玉《ひのたま》!」

 

 同じように火の玉が形成され、ゴブリンジェネラルの盾目掛けて放たれる。

 

「石弾《ストーンブラスト》!」

 

 ドワーフさんも負けじと援護射撃。

 

「GBROOOO!!!」

 

 たまらずゴブリンジェネラルは怒り心頭。近くにあったゴブリンの死体をこちらへ放り込んできた。無慈悲なことをしやがるな。

 

《いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らを、どうか大地の御力でお守りください》

 

「聖盾《プロテクション》!」

 

 女神官さんの援護が光る。グッドタイミングだ。

死体は聖盾で防がれ、無惨にも地面へとずり落ちていく。

 火の玉で盾は熱くなってるとは思うが…未だ手離さないか。なら、これでどうだ!

 

「焼き尽くしてやる!!」

 

《カリブンクルス…クレスクント…ヤクタ》!!

 

 俺の手から火球が形成されていく。しだいに大きく大きく、まるで雪だるまを形成するように巨大な火球へと変貌を遂げていく。

 その様子にゴブリンジェネラルは焦りからか、遠距離攻撃の頻度を上げた。しかし、俺たちに攻撃が届くわけもなく聖盾に防がれるだけ。

 

「火球《ファイアーボール》!」

 

 俺の掛け声とともに火球がゴブリンジェネラル目掛けて放たれる。

 未だスネアから抜け出せないゴブリンジェネラル。兜を被ってて顔が見えなくてもアイツの恐怖した表情が伝わってくる。耐えられないからと本能で分かっているからなのだろう。

 

 バシュンッ! 

 俺から放たれた火球は見事、標的へ着弾。悲痛な叫びが耳へ届く。しかし、まだだ。もしかしたら耐えてくるかもしれない。"念のため"だ!

 

《カリブンクルス…クレスクント…ヤクタ》!!

 

 先ほどと同じように呪文を唱え、火球を形成。

 ゴブリンジェネラル目掛けて、再度火球が放たれる。

 

「はぁっ!」

 

 真っ直ぐな軌道で吸い込まれるようにゴブリンジェネラルへ着弾。

 

「GBO...GB...GBOOO...!!!」

 

 口に溶けた鉄でも入ったのか、声にならない悲鳴が轟く。

 さぞ、熱かろう。

 さぞ、苦しかろう。

 だが、お前がしてきた非道よりはマシのはずだ。お前がゴブリンとして生きて、捕虜の人たちにしてきたことに比べれば、これでも生ぬるい。

 

 地獄で彼女たちへ詫びるんだな。魔物に地獄なんてあるかは知らないけど。

 

「......」

 

 もはや、声すらあげられずゴブリンジェネラルは鉄の溶岩とともに焼け死んでいった。 

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