ムーンライター 辺境の鍛冶屋   作:紅河

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遅れてしまいすみません!完成しましたー!


第7話 新たなメンバー

 ギルド内。時間は夕刻。ガヤガヤと冒険者達の喧騒が木霊する。俺はギルドのテーブルでいつも通り、物思いに耽っていた。早めに冒険者としての仕事を切り上げ、今日は休もうとしていた矢先、後ろから声をかけられる。

 

「アンタがムーンライター?」

 

 鈴を転がすような声。声の主のほうへ振り返ると、フードを被った野伏が腕を組みながら俺の言葉を待っている。緑を基調とした軽装で身を包み、声からして女性だと推察できた。

 

「そうだけど、あなたは?」

「私はこういうものよ!」

 

 バッとフード脱ぐと、長い耳と翠色の頭髪に整った顔立ち、瞬時にエルフだと察する。

 エルフなんて、長いこと冒険者やってきて、初めてみたな。

 

「エルフさんが俺になにか用ですか?」

「オルクボルグ達からアンタのことを聞いてね! 1つ挨拶しとこうと思って」

 

 これはこれはご丁寧に。

 

「ゴブリンスレイヤー達の知り合いですか」

「知り合いじゃないわ! 仲間よ!」

 

 仲間? もしかして、新たなパーティーメンバーなのか? 俺がそう聞くと、そうよ! と彼女は強く断言するのだった。

 

「アンタも一党メンバーなんでしょ? なら、挨拶をと思ってね!」

「これこれ、耳長娘。初対面でそんなに強くいうものじゃないわい」

「まぁまぁ、野伏殿らしいではありませぬか」

 

 次から次へとなんだ?

 白を基調とした服装に身を包み、髭をたんまりと蓄えた恰幅の老人。かたや、肌色の僧侶服に身にまとう鱗の男性。2人とも首には銀等級の証がかけられてある。エルフさんもだな。

 エルフさんにドワーフさんにリザードマンさん。

 なんとまぁ、珍しい組み合わせ。この人達がゴブリンスレイヤー達の一党なのか?俺の疑問は尽きなかったが、成り行きに身を任せることにした。

 

「一党メンバーってわけじゃないですよ」

「嘘ね! だって1度組んでたんでしょ?」

「それは、まぁ」

「なら、それは仲間っていうの! 宜しくね!」

 

 なんか、強引なエルフさんだな……。

 バッと右手を差し出す。握手を求めてるみたいだ。否定する必要はないな。

 

「よ、よろしく」

 

 ブンブン! と握手を交わし、俺の隣へドカッと座り込んでくる。どこまでも強引な人のようだ。

 

「相席よろしいですかな?」

 

 リザードマンさんが同意を求めてくる。

 

「それは構わないですけど……」

「それじゃ、失礼」

 

 俺の真ん前にドワーフさん、エルフさんの前にリザードマンさん。なんともはや、端から見たら異様な光景だろう。こういう種族が居るとは聞いていたけど、あまりここでは見かけないから、どうしても緊張してしまうな。

 軽く食事をと、リザードマンさんが料理を頼む。あれやこれやとあっという間に、俺の息抜きが飲み会へと様変わり。続々と料理が運び込まれ、肉料理、チーズやら酒やら、酒池肉林とまではいかないものの、豪華な食卓となった。

 そこでお互いの自己紹介を軽く済ませた。どうやら、ドワーフさんは珍しく呪文遣いらしい。大抵は近接タイプの戦士が多いんだとか。リザードマンさんは見た目通りの僧侶で、将来は龍?になりたいそうだ。エルフさんはエルフはエルフでも上森人という種族らしい。なんでも、老衰で死ぬことがないとのこと。

 羨ましいと同時に退屈しそうだなとも、葡萄ジュースを口にしながら、話を聞いていた。

 

「それで? ムーンライターっていうからには別の職業と兼任してるんでしょ?」

「そうですけど」

「何の職業してるの?」

 

 ドワーフさんの前であんま言いたくはないけど、これも仕方ないと割り切るか。俺は包み隠さず、職業を明かすことにした。

 

「鍛冶屋です」

「なんと!」

「ドワーフの前で堂々明かすとは……。お主、なかなか肝が据わっとるのぉ」

「ええ……。鍛冶屋なのぉ?」

 

 リアクションも三者三様。ここまで反応変わるもんかね。

 

「それじゃなにか? その兜や甲冑もお前さんの手作りちゅーことか?」

 

 そうですと返す。

 

「ふーん、器用なものね」

「いやはや、見事なお手前で」

 

 素直に感心された。なかなか嬉しいものだな。

 鉱人道士さんがちょっと見せてくれというので、手甲を貸してあげることに。

 本物の鉱人道士さんに見てもらうのは初めてだ。なんか緊張するなぁ。どんな評価が下されるのか……。自分の心の奥底で、心配ゲージがドンドン上がって行く。

 

「ほい、ありがとうな」

「で、どうだったのよ? アンタも気になるんでしょ?」

「それは、まあ……」

「若造にしては良く出来てるわい」

「ほ、本当ですか?」

 

 鉱人道士さんの一言に、ホッと胸を撫で下ろした。

 

「嘘言ってるんじゃないわよね?」

「バカもん。嘘で誤魔化してもしゃーないわい」

「然り、然り」

 

 鉱人道士さんに見せてくれと言われた時は何事かと思ったよ。無事に済んで何より。

 

「荒削りではあるが、問題はなかろうて」

「ドワーフさんからそう言って頂けるなんて、光栄です」

 

 俺の鍛冶の腕も上がったってことで良いのかな。いや、慢心はダメか。このまま続けよう。

 

「給仕殿! チーズを1つ!」

「はーい! ただいまー」

 

 蜥蜴僧侶さんはチーズを口にしては「甘露!」と震えている。そんなに美味しいのだろうか? 俺も嫌いではないが、あそこまで露骨に反応はしない。相当、チーズがお気に入りのようだ。

 

「そういや、お前さん。好物はなにかあるのか?」

「俺は……肉料理が好きですね」

「肉ぅ!? 野菜とか食べなさいよ!」 

「野菜も好きですけど、それよりかは肉です」

「ガッハッハ! 細っこい見た目で肉が好きとはのぉ!」

 

 あの柔らかな食感と、噛みしめた瞬間に溢れ出る旨味、それが堪らなく好きなんだ。

 

「チーズと一緒に食べるといいですぞ」

 

 ほほう。それはまだ試していなかったな。

 

「なら、今度試しますね」

「お試しあれですぞ」

 

 一頻り、食事を楽しんだ後、俺は3人と惜しみそうに別れるのだった。あそこまで楽しい食事は久し振り。また食卓を囲めるといいな。

 

◇◇◇◇◇

 

 あれから、数日が経ったある日。

 今日はあいにくの曇り空。

 太陽が恋しい日に、俺はクエストへ赴いていた。

 巻物探しと魔法の腕輪のため、それらしきクエストを受けていたのだが……。

 

「今日も空振りかぁ……」

 

 ガクッと肩を落とす。

 あれから何度かクエストに出てはいるものの、成果はなし。やはり、巻物のは貴重品らしく滅多なことでは見つからないらしい。

 

「成果はこれだけか」

 

 握られている手のひらには銀貨数十枚と鉄鉱石数個。しょっぱい……。

 俺が受けたのは未探索の塔の調査クエストであった。しかし、行ってみたらとんだ拍子抜け。見事にもぬけの殻。しかも、荒らされてた痕跡ありと来たもんだ。

 既に荒らされてたってことは推察するに、十中八九、山賊かゴブリンの仕業だろう。

 ちくしょう! お宝を奪っていきやがって! ギルド側が無報酬の調査をさせるとも思えないし……。

 はぁ……。落ち込んでても仕方ない。さくっとギルドへ報告に行こう。俺は近くの農村へ歩みを進めた。畑が並ぶ田舎の村。そこが中継地点であった。

 目的地には馬車で向かっていたからか、近くの農村に迎えが到着している。時間ぴったりだな。しかし、迎えの馬車なら一台のはず。なのに、村にはもう一台の馬車が……。

 ん?なにやら、荷物も運び込まれている。

 

「あれは人か?」

 

 その荷台には女性ばかりが乗っている。フードを被り、体育座りで外のことなど我関せずという状態だ。

 なるほど。そういうことか。あれは……ゴブリンの被害者か。この村の出身者なのだろう。こうして被害者を間近で見ると、キツいもんがあるな。異様に生々しい……。しかし、俺にはどうすることも出来ない。強いて言えば、彼女らの今後の多幸を祈るばかりだった……。

 俺は重い足取りで馬車へ乗り込んだ。

 

 数時間馬車に揺られ、我が拠点へ帰還する。

 報告がてら、ギルドへ。

 冒険者の喧騒の絶えないギルドだなぁ。いや、賑やかなのは良いことなんだけどさ。

 さてと、報告報告っと。受付へ向かい、今日のクエストを報告することに。いつもの受付嬢さんとのやり取り。代わり映えしないやり取りに、落ち着きを感じてしまう。「ご苦労様~」と労いの言葉を賜り、クエストの道中で暗い気持ちが嘘のように晴れやかになる。

 これが受付嬢さんの力なのだろう。これがあるから冒険者は頑張れるというもの。報告を終らせ、窓際の丸テーブルへ向かうと、一人の男性が立ち尽くしている。

 俺はその男に話しかけた。

 

「よっ!」

 

 その男は油で汚したであろう甲冑に身を包み、最低限の装備だけで整えた銀等級の冒険者。誰が見ても新人と言うだろう。そんな風貌だ。

 

「ああ、お前か」

 

 男はぶっきらぼうにそう呟いてみせた。

 

「それだけかよ。久し振りに会ったってのに」

 

 男はゴブリンスレイヤー。雑魚狩り専門と他の冒険者からはレッテルを張られ、嘲笑されている銀等級の冒険者。

 ゴブリンスレイヤーと会うのは遺跡調査クエスト以来。ともかく無事で何よりだ。

 

「仕方あるまい。他にどう言えばいい」

「久し振りとか、元気だったか、とか」

「ふむ……」

 

 今日は女神官さんとは一緒じゃないのだろうか?

 

「あー! オルクボルグ! 来てるなら挨拶ぐらいしなさいってば!」 

 

 なにやら、騒がしい声が耳に届く。この前会ったエルフさんの声だ。

 彼女が颯爽と現れ、トコトコとこちらへ歩み寄る。

 

「ムーンライターも一緒じゃない! 珍しいわねぇ」

「なんだ、知っているのか」

「そうよ! 私たち一党の仲間なんだもの。当たり前でしょ?」

「そうなのか?」

 

 と、俺にゴブリンスレイヤーが顔を向ける。

 

「俺に聞かないでくれ」

「だって、ムーンライターとパーティー組んだことあるのよね?」

「ああ」

「なら、この子もパーティーの一員よ」

 

 野伏さんが俺の腕を自分に寄せてアピールする。

 

「ふむ……」

 

 珍しく、ゴブリンスレイヤーが押されている。意外に女性に弱いんだろうか?

 

「ムーンライターもいいわね!」

「構わないですけど、鍛冶もあるんで常にとは難しいかもしれせんよ?」

「私は別にいいわ」

「野伏さんはいいかもしれないですけど……」

 

 こういうのは一人で決めていい問題じゃないと思うんだが……。

 

「ゴブリンスレイヤーはどう思ってるんだ?」

 

 俺の質問にゴブリンスレイヤーは沈黙してしまった。彼はきっと考え込んでいるのだろう。どうすればいいかを、彼なりに。

 

「こういうのは、他の連中にも聞かんとダメだろう」

「なら、明日ね! 朝にここに集合よ! 他のメンバーには私から伝えておくから」

「ああ」

「そういうことだから。明日、遅れずに来るのよ!」

 

 そういうと、エルフさんはそそくさと何処かへ行ってしまった。

 まるで猫みたいなエルフさんだな。

 

「まあ、なんだ……よろしく頼む」

「こちらこそ、宜しく。ゴブリンスレイヤー」

 

 

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