ヤンデレアフター・ショートショート   作:小野間トペ

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神様と、スローライフを送る話

空が白んできました。

人間の時間で言えば大体5時くらいでしょうか。

いつもよりかは少し早いかもしれませんけれど、偶には日の出でもご覧になって、一日を長く過ごしませんか?

 

……未だ布団からは出たくない、と。

 

フフッ。

確かに、今日は少し肌寒いようですから、布団が恋しくなるのも分かります。

それも良しとしましょう。

もう少し、私の膝の上で微睡んでいると良いでしょう。

 

フフッ。

結局、時間など私が自由に捻じ曲げられるもの。

便宜上ヒトに倣って24時間にしていますが、今日は多少歪めてしまいましょうか。

 

……体内時計等あってないような物です。

気にせずとも良いのですよ。

ここで末永く生きていくのです。

少しずつ時間感覚も我々のそれと同じになるようにしていきましょうね。

 

さぁ、いい子、いい子です。

ゆっくりで良いのですからね。

時間はたっぷりあるのですから。

それこそ末永く、ね。

 

フフッ。

 

(場面転換)

 

ようやく意識がはっきりしてきましたか?

 

フフッ。

良いですよ。

ゆっくり、体を起こしなさいな。

 

良くできました。

いい子、いい子です。

 

……子供扱いしても仕方がないではありませんか。

なにせ、貴方の想像のつかないくらい、遥か昔から私は生きているのですから。

貴方なんて、赤子も同然です。

 

これからは同じ様に歳を取っていきますから、貴方が私より歳を取ることはありません。

ですが、一人前の年齢になったら、そのうち赤子扱いも終わりにしますからね。

 

フフッ。

案ずることはありませんよ。

ゆっくり、焦らずに生活しましょうね。

 

朝餉はもう用意させましたから。

好きなだけ微睡んでから、朝餉と致しましょうね。

 

……冷めたりはしませんよ。

忘れたのですか?

この世界では、あらゆるものが私の自由。

朝餉を出来たてのままにしておくことだって造作でもありません。

 

フフッ。

何も案ずることはありません。

すべてが良くなるように取り計らいますからね。

貴方は只それを享受するだけで良いのです。

貴方の幸せが、私の幸せなのですよ。

 

さぁ、こちらにお着替えになって。

朝食と致しましょう。

 

(場面転換)

 

あまり箸が進んでないように見えますが。

どうか致しましたか?

 

……紅鮭は苦手でしたか。

塩辛いのが駄目なのですか?

 

……そうですか。

宜しいです。

私が食べますのでお残しになりなさい。

残りの食べられるものだけでも食べなさいな。

 

近頃はあまり和食が食べられることがないとか。

西洋の文化が入ってきてからというもの、肉食やら麦の類を食べる文化が流入してきて、大いに驚いた記憶があります。

 

朝餉も、シリアルとやらで済ませたり、軽食程度で仕事等に向かってしまうのが多いとか。

それはいけません。

健全な生活には、健全な食事が大切なのですよ。

 

フフッ。

貴方も最初は朝餉の量に驚いていましたね。

貴方の今までの食生活がとても気になりました。

あまり身にならない物ばかり食べていたのではないかと。

 

和食には慣れましたか?

出来るだけ夕食などは豪勢にすることで飽きのこないようにはしていますが、限界はありましょう。

人間には、欲求というものがありますからね。

 

その時は相談なさい。

上手く取り計らいますので。

大丈夫ですよ。

 

……食べ終わりましたか。

先に好きに過ごしていなさい。

私もじき食べ終わりますから。

 

(場面転換)

 

朝の散歩も良いものですね。

生い茂る緑に心が洗われます。

……貴方にはあまり良さが分かってもらえませんが。

 

この森も四季に応じて変化を加えても良かったのですが、冬になると何もできなくなってしまいますから。

必要ない、と今は思っています。

そのうち変わるかもしれませんが。

 

……おや、赤い紐が括り付けられていますね。

 

……これは、あのときの紐ですか。

未だ残っていたのですか。

それとも、貴方が未だ外へ出ようと張っていたのか――

 

……ええ、私は貴方を信じていますからね。

外の世界を目指そうとするなんてこと、もうしませんよね?

一度ならず二度も試みて、どちらも失敗に終わっていたのですから、もう、お分かりですね?

 

……宜しい。

折檻の必要はありませんか。

この紐は消しておきましょう。

 

さぁ、もっと奥へ、奥へ参りましょう……

 

(場面転換)

 

久々にこの森を歩きましたね。

ただ、同じ景色を見てばかりでは飽きるでしょう?

偶には景色を変えても良いかもしれませんね。

 

今度は海沿いの家にしましょうか。

常夏にして、海に繰り出すのも良いでしょう。

 

どう思いますか?

どうするのが良いでしょう?

 

……難しい問ですね。

時間はたっぷりありますから、気が向いて、こんな景色がいいとなったら教えて下さい。

瞬きのうちに変えて差し上げますよ。

 

さて、昼餉にするのが良いと思っていたのですが。

どうにも、体を動かしたら昂ってしまいまして。

抑えようがなさそうなのです。

 

申し訳ないのですが、宜しいですか?

少々、時間を頂きたい。

 

大丈夫。

しっかり貴方にも満足して頂けるように致します。

大丈夫です。

前みたいに、事切れるまではやりませんから。

 

フフッ。

さぁ、参りましょうや。

時間はまだまだございますゆえ。

愉しみましょうね。

 

(場面転換)

 

湯浴みは終わりましたか?

言われた通り、湖のある山奥とやらに変えてはみましたが、いかがでしたか?

 

……そうですか。

私としては、山奥ゆえの鬱蒼とした緑が好みだったのですが。

確かに、アクセント、とやらは必要なのでしょうね。

 

……私が横文字を使うのがそんなに珍しいですか?

 

フフッ。

私にもしっかりと現代の知識があるのですよ。

大抵のことは、頭に入っています。

 

夕餉は何にしましょうかね?

 

……ステーキ、ですか。

私としては、箸で食べられるものが良いのですが。

ナイフとフォークはてんで駄目なのです。

 

……ローストビーフ丼。

なんですか、その、不思議な丼ものは。

 

……はあ。

ローストビーフとやらを、米に乗せる。

ソースをかけて、わさびと共に頂く。

 

……和洋折衷とはこのことなのでしょうかね。

 

宜しい。

使いの者に作り方を教えなさい。

それで作ることが出来たら、それに致しましょう。

 

そうでなければ、すき焼きにでも致しましょう。

確かに、あまりにも肉を摂っていませんね。

偶には、良いでしょう。

 

では、案内します。

どうぞ、こちらへ……

 

(場面転換)

 

ローストビーフとやら、大変に美味でした。

ああいったものばかりが跳梁跋扈するから、飽食の世になっているのですね。

西洋食とは、なんとも恐ろしい。

 

フフッ。

嘘ですよ。

 

さて、24時間換算では、大体22時位でしょうか。

明かりでぼんやりと互いがわかるだけ。

黒く、暗い闇が広がっていますね。

 

さて、明日は何をしましょうかね。

ここで出来ることには限度が確かにございますが。

貴方と私が共に暮らせる。

それで良いではありませんか。

 

……読書がしたいのですか?

最近の物はさっぱりではございますが、使いの者に用意させましょう。

どういった本なので?

 

……そういった本は、私の知識では、さっぱりでございます。

ラブコメ?

私というものがありながら、恋愛を所望するのですか?

 

それはいけません。

これはいけませんよ。

私というものがありながら、そんなものにかまけるなんて。

 

今夜やることが決まりましたね。

 

……そうは言ったって、仕方がないではありませんか。

れっきとした浮気、でございます。

これはいけません。

 

貴方の伴侶は誰なのかを、はっきりさせなければいけませんね。

どういった立ち居振る舞いが必要なのか、教え込まなければならないようだ。

 

……申し訳ありませんね。

昼からずっと昂ってばかりで、まぐわってからも抑えが利いていないのですよ。

興奮している、と申せば良いでしょうか。

何時まで続くか私にも分かりません。

 

きっと夜は長いでしょうね。

気の遠くなるほど、長くなってしまうかも……

 

フフッ。

ご安心を。

ちゃあんと後には、たらふく飴を用意していますから。

今は鞭だと思って、耐え忍べば良いのです。

 

さぁ、始めますよ……

 

長い、永い夜を、ね。

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