斬月迷宮狂騒譚   作:やぎ座

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斬月(白一護)って性格のベースはチャン一で、そこに虚の凶暴性があるって感じだと思ってます。斬月のおっさんと話すときは凶暴ではないですし。


第二話 最初の夜

「ふぅん、斬月君。君はどういう存在なんだい?我らが子かい?怪物かい?それともそれ以外の何かかい」

 

 【ヘスティア・ファミリア】の本拠たる教会の地下室で主神たるヘスティアはベッドに横たわるベルの足元に腰掛ける斬月に改めてその存在を問いただすも

 

「質問するのは俺だ。俺の認識では相棒から急に切り離され、ダンジョンとやらに跳ばされた。一護もおっさんもいねぇし、その存在も感じられねぇ。なぁ、ここはどこなんだ?オラリオとか言ってたが、現世でもねぇ、尸魂界や虚圏とは関係ねぇはずだ。気配がまるきり異質だ」

 

 と、逆に問いただされる始末。

 

「ダンジョンはダンジョンだし、オラリオは現在、世界最大の迷宮都市で…」

 

 とはいっても下界歴の浅いヘスティアも天界の常識や他の神からの受け売り程度しか提供できる情報しかない。ただわかるのは、目の前の白い男がこの世界に存在するどの人種でも怪物でもないということだけだ。

 

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 小一時間にもわたるベルの治療の傍ら、ヘスティアと斬月の問答は

 

「…なるほどな。よくわからねぇがよくわからねぇ世界に来ちまったようだな」

 

「君はよくわからないけど、まぁ他の神に言っておけば大丈夫そうだね」と答えが出ないまま、「わからない」ことがわかったという結論に落ち着いた。

 

「ベル。聞いた通り行く宛てがねぇんだ。しばらくここに居させてもらうぜ。いいだろ?」

 

「斬月さんも災難ですね。今日はここで休んでもらうとして…明日からどうしましょうか。僕は今日の分の換金と怪我の様子をみるため明日はダンジョンに潜りませんが…そう余裕があるわけではないですが、オラリオの案内をしましょうか?」

 

「な!?ベル君と僕の愛の巣に住み着くだとぉ!!ダメダメ。今日はともかく明日以降はゆるさないよ。ベル君の【ステイタス】更新もあるんだ!!部外者には…」

 

 斬月が教会に泊まり込むことに関してベルは抵抗なく受け入れたが、ヘスティアは多大な抵抗を示していた…が。

 

「斬月君。【ステイタス】って知ってるかい?」

 

 ふと、思い出したかのように斬月に質問する。

 

「あぁ?さっきの問答でどうして知ってるって思ってんだ」

 

「まぁまぁ、斬月さん。少なくともこの世界では冒険者と【ステイタス】は切っても切れない関係にあって、基本的に秘匿しなければいけない事項なんですよ。まぁ僕もあまり詳しくはないんですが。神様のほうがそこらへんはずっと詳しいです」

 

「そうそう。本当に何も知らないんだね。斬月君。一応、この世界というかこの都市では常識だからみだりに人に聞いたりしないよう教えてあげようじゃないか」

 

 ヘスティアは豊かな双丘を揺らしながら胸を張って滔々と【ステイタス】をはじめとした『神の恩恵』。冒険者と神の関係、【ファミリア】等の世界の常識を斬月に教授し始めた。

 

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 ヘスティア先生によるオラリオと冒険者講座を聞いて斬月はこう零した。

 

「ほー、この世界ってのはアレだな。一護たちがたまにやってるゲームの理屈に近いんだな」

 

「ゲーム…うん、確かにTRPGみたいな遊戯のルールと酷似しているところはあるね。天界でも神同士で遊んだりしてるしダンジョン周りの常識なんてまさにそれさ。違う世界でもやっぱりみんな同じことを考えるんだねぇ。むしろこの世界の子たちのほうが無垢なのかもしれないね」

 

「そういえば、斬月さんは【ステイタス】はないんですよね?Lv.もあるんですか?」

 

「この世界の概念とはまったく縁がねぇよ」

 

「じゃあ…」

 

 ベルは意を決したように斬月に告げる。

 

「斬月さんが帰る日まで、ここをあなたの家にしませんか?」

 

「ベル?何言ってんだ。しばらく厄介になるっていったところじゃねぇか」

 

「そうではなくて…僕たち【ヘスティア・ファミリア】に入りませんか?」

 

「聞いた限り、零細貧乏のこのファミリアにか?」

 

「お願いです。斬月さんは一層であれだけのモンスターの群れを倒し、僕を救ってくれました!僕はあなたのように強くなりたい!追いつきたい人ができたんです!だから、できることなら僕に戦い方を教えてほしいんです!今の僕じゃ神様に楽をさせることはできません。けど、あなたがいれば…」

 

「それも面白そうだが…そもそも俺はその『神の恩恵』に賜れるかわからねぇからな。【ファミリア】の仕組みを聞くに『神の恩恵』を受けられなければ【ファミリア】の冒険者になれねぇだろ。それを抜きにしても俺は俺の力だけで十分だ。暇があったら相手ぐらいはしてやるよ。すぐに戻らなきゃならねぇ訳でもないしな」

 

 ベルは必死になって頭を下げる。が、斬月はその要請を断った。斬月の言った急いでいないというのも事実だ。この世界へ来る直前、明確な危機はなく、尸魂界も復興し体制も整っている。滅却師の尸魂界侵攻も広義の意味で片が付いた状態だった。一護が呼ばれるのはきっと最後の最後だ。だから、斬月は焦ってはいなかった。ただ、必ず一護の下へ帰る意志は固い。

 

「そうだね…斬月君。ちょっと掌を貸してくれないかい?【ファミリア】の契約はともかく君に神たちの力の影響はあるのかは確かめておきたい」

 

「おう」

 

 ヘスティアは斬月の掌を預かるとチクリと自分の指先を針で刺す。じんわりと小さな血の玉ができたのを確認すると指先を下に向け神血を斬月の掌に滴らせた。

 

 パァンッ!!

 

 斬月の掌に神血が触れた瞬間、拒絶するように神血が大きく弾けた。

 

「やっぱりな」

 

 半ばわかっていたかのように、斬月は言う。

 

「そうだな。俺は外の事象には興味がなかったんでな。世界についてあんまり詳しく説明はできねぇ」

 

「しかし、俺のことならある程度話せる。端的に言うと俺は一護って死神の力そのものだ。きっと、その神の血も受け付けないのもそのせいだ」

 

「「?」」

 

「そこの壁にかけてある刀が見えるか?」

 

 斬月は親指で壁にある虚のある白い大刀を指す。

 

「あれが俺だ」

 

「「え!?」」

 

 神と眷属が同時に声を上げる。訳が分からないというように。

 

「俺は死神の力で、あの斬魄刀【斬月】そのものだ」

 

「俺は人間じゃねぇ、死神でもねぇ。一護の中に存在する死神の力であり、斬魄刀【斬月】だ。この姿も担い手である一護を写し取ったもんだ」

 

「というと、君は生き物ですらなくて一護って子の中にいる力の擬人化というか具象化したものなのかい?で、本来の姿はあの大刀だと」

 

「そうだな。俺は斬魄刀【斬月】だ」

 

 ヘスティアはハァ~と額に手をついてため息をつく。ベルはそもそも言っている意味が分からないといったところだ。

 

「いろいろと複雑だねぇ…ベル君予定変更だ。斬月君。やっぱりしばらくはダンジョンに近づかないことだ。一度、明日、訪ねてみるけど大所帯で多忙な神だから多分無理だ。けど、『神の宴』でなんとかアポをとるからそれまでは待機。アポが取れ次第、僕についてきてもらうよ。神友とかギルドに話を通しておかないと、あとあと厄介なことになりそうだ」

 

―特にヘファイストスには話を通しておかないと多分、ばれたとき罰則をくらいそうで怖いしなぁ…これ以上、見捨てられるのは怖いぜ。

 

「そこはまかせるぜ。神様。いろいろと厄介になる」

 

「いいってことよ。ベル君の命の恩人だからね、君は。まぁ、安心しな。このヘスティアが直々に動くんだ。大船に乗った気持ちでいなよ」

 

「では、明日は僕は換金所に行くのと神様のバイトの代わりに入っておきますね」

 

「す、すまない。ベル君。いつもひもじい思いをさせるばかりか、シフトも変わってもらうことになるなんて」

 

「大丈夫ですよ、神様。今が一番苦しいときですから、これから楽になれるよう僕も頑張っていきます」

 

「べ、ベル君!!」「神様!!」

 

 斬月に見せた頼りがいのある勇姿から一転、ヒシッとヘスティアは感動とともにベルと抱きしめあう。

 

「んじゃ。今日から世話になる。ベル、ヘスティア」

 

「これからよろしくお願いします。斬月さん!!」

 

「よろしくたのむよ、斬月君」

 

 いろいろな意味で胸襟を打ち明けた最初の夜はこうして互いに名を交わし終わった。

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