キャラの口調などが違うというご指摘を幾つかいただいております。これは私の力不足に起因するものです。もっと原作を読み込んで改善するよう尽力いたしますが、どうしても見ていられない荒だと感じるなら、ご指摘いただけますようよろしくお願い申し上げます。
これからも見守ってもらえると幸いです。
「できた」
そう独り言を零すように、男装の麗神ヘファイストスは呟いた。夜も更け、明け方に近づいたころのことだった。傍らには床に座り込んだまま気絶している斬月、椅子を並べただけの簡易ベッドに寝ているヘスティアが見える。
その手に握られているのは短刀。
これこそがヘファイストスの作成した斬魄刀【浅打】であった。
斬魄刀【浅打】の製作はヘファイストスが思うよりあっさりと終了した、不思議と槌を振るう腕が迷うことはなく、時間にして半日と少しで終了した。斬月の爪は存外硬かったが、叩いていく内に金属のような特性を見せ始めた。硬さだけで言えば超硬金属<アダマンタイト>の感触と遜色がなかったと断言できる。同時にこの特性は迷宮生物の性質を思い起こさせた。
斬月の血も焼き付いた刀身を見事に冷やし、刀身に艶めかしい輝きを与えた。これら刀身の製作に関して、ヘファイストスは自らが打ったというより素材に求められて手を貸したという不思議な感覚を覚えた。
どれも異質といっていい斬月の欠片の中で、最も奇妙な欠片は死覇装という斬月の衣だった。柄糸として使用したが本来は、刀身の材料にするつもりだった。が、余りにも素材として堅牢すぎた。どれだけの火を起こしても燃えることなく、溶けることなく、摩耗する気配もなく、傷つかない。これほどの衣であれば滅多なことでは傷をつけることは不可能だとヘファイストスをして認めてしまうほどのものであった。結果、柄糸としての適性を見出したヘファイストスは死覇装をいったん解き、糸巻柄として編み直した。
「流石は神サマ。まさか本当に斬魄刀を打てるとはな…これには俺も感服した」
いつの間にか起きていたのか、斬月はヘファイストスの手にある斬魄刀を眺めながら素直に称賛を口にする。
「あれだけ焚き付けておいてよく言うよ」
苦笑しながらヘファイストスは返す。そして、掌を見つめながら斬魄刀の製作中に感じた奇妙な感覚を口にした。
「あれは神匠と謳われた私でも初めての経験だった。斬月君。君の欠片から斬魄刀の打ち方について流れ込んでくるような感覚だった。箸から槌から金床から。君の欠片に接するあらゆるものから道具を通じて流れてきたよ。初めて扱う素材には多少は難儀するものなんだけどね。それがなく、するりと迷いなく槌を振るったこの感触。初めてだったよ」
「あー、こういうとおこがましいと思うけどよ。それはあんたが俺の欠片から【斬魄刀】という概念そのものを感じ取り、本能的に理解できる位階〈レベル〉の鍛冶師だったから起こったことだと思うぜ。俺も神サマ以外に俺の欠片を扱えるとはそれこそ欠片も思ってなかったわけで。どうしても打ってもらうしかなかった。焚き付けて悪かったよ」
「なるほどね。そう言われると悪くないね」
斬月の言葉に満更でもなさそうな笑みを浮かべて、その手にあった短刀即ち斬魄刀【浅打】を斬月に手渡す。
「それをヘスティアの子に渡してあげなさい。あと、その子にはもう少しヘスティアを借りるって言っておいてくれる?これからヘスティアの依頼の分のナイフに取り掛かるし、これにはヘスティアの力も借りなきゃいけないからね。時間はそうね…明日には返すわ」
「おう、わかった」
「その子にはヘスティアを独り占めしてごめんね。って伝えておいて」
「そうだな。ちゃんと伝えておくよ」
斬月はそういって懐に【浅打】をしまう。そして、工房を出るときヘファイストスへ振り返って
「神サマ、無理を聞いてくれて感謝する」
そういってヘファイストスに礼をして出ていった。
「ふふ、ヘスティア。いい子ばかりじゃない。あなたの【ファミリア】も」
その様子をヘファイストスは目を丸くして見送った後、簡易ベッドで寝ている神友の寝顔を見ながらそう呟いた。
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ヘスティアと斬月が【ヘファイストス・ファミリア】へ赴いた日の翌日
教会の地下室
「帰ってこないなぁ…神様と斬月さん」
けれど、赴いたのはあの【ヘファイストス・ファミリア】。ベルが心配するようなレベルの事故など万が一でも起こらないだろう。
「にしても、どうしたんだろう?」
ここしばらくは一人になることが少なかっただけに寂しさが声ににじみ出る。いつも賑やかな部屋が竈の火を落としたかのような静けさで占めていることに耐えられないかのように独り言は続く。
「斬月さんはともかく神様はちょっと変だったしなぁ」
神会から帰ってきたばかりのちょっと不貞腐れたヘスティアを思い出す。
「といっても僕も人のこと言えないか」
ベルは久しく独りになったのを機に最近の出来事を思い返す。突然、伸び始めた【ステイタス】、シルや『豊穣の女主人』の面々との出会い。危機一髪のところでの斬月との出会い。
そして、心に焼き付いた憧憬。思い返すだけで心拍数を上がる出来事。
冒険者になって初めて感じた死と隣り合わせの危機、怪物ミノタウロス
その前に立つ金髪金眼の少女にして【ロキ・ファミリア】Lv.5 【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン
自覚する。彼女を思い出しただけで恥ずかしさと同時に湧き上がる渇望のような想い。ベルはその正体に気づきながらも目を背けている。
なぜか。助けられたことに対し礼も言わずに逃げ出したことか。
そうだ。それもある。
彼女と自身の彼我の差に絶望しているのか。
否。絶望はしていない。ベルはまだ絶望を知らない。
しかし、彼我の差に壁を感じていることは事実。
絶望ではなく、願望。
思うことは一つ。
「強くなりたい」
そう口にした瞬間、ベルの心の底から込み上げてくるものがあった。
抑えきれない。
涙が頬を伝う。
嗚咽がこぼれる。
思索に耽っていた自分が現実を直視してしまう。
「なんて、僕は弱いんだ…」
チリチリとベルの心を焦がし続ける事実。ネガティブな悪感情のループに入ろうとしたとき、地下室へと続く階段を下る音が聞こえる。
―帰ってきた。
急いでベルは頬をぬぐう。心が弱っている自分を見せたくなかった。
「おう、帰ったぞ」
「お帰りなさい!!」
悟られないように声を張って出迎える。教会の薄暗さが今はありがたかった。
「ベル。ダンジョンに行くぞ」
そんなベルを知って知らずか斬月が珍しくそんなことをいう。
「あぁ、神サマ達からは特に問題なしとのことだ」
「そうなんですね!急いで準備します」
「おう」
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準備したベルと斬月はバベルの第0層『はじまりの道』にある大螺旋階段に臨んでいた。
「上から見ると大した階段だな」
「そういえば、斬月さんはここを僕を背負って上ったきりでしたもんね。改めてありがとうございました」
「気にすんな。そうそうお前には渡すものがあるんだ」
ひらひらと手を振ってこともなげにいう斬月が自身の懐に手を入れる。
そこから出てきたのは一振りの短刀だった。
「え!?」
訳も分からないといった風に目を丸くするベル。そんなベルを見て予想通りといった風に口角を上げる斬月。
「ええええええええええええ!!」
「落ち着けよ、ベル」
「ど、どうしたんですかこれ!!」
そして鞘に刻まれた「Hφαιστοs」の文字が目に入る。ベルは瞬間理解する。
先ほどとは異なる胸の熱さが込み上げてくる。そして、それを抑えきれず涙が零れる。
「あ、ありがとうございます!!」
「これからもダンジョンに潜り続けるんだろ?ローン組んで神サマに造ってもらった。これからもダンジョンに挑むお前に武器が必要だと思ってな」
そういって斬月は短刀を手渡す。
「今日はそいつの試し斬りだ。俺は手を出さねぇ」
「抜いてみな」
手渡された短刀を鞘から抜く。
柄は握る手に吸い付くようで、鞘から抜ける刃は滑らかで、ベルの意志に応じて短刀自身が鞘から出てきたと錯覚するほどだ。
漆黒の刀身に白鉄の刃。白と黒の糸で編みこまれた柄。斬月が贈るベルだけの武器。ベルの斬魄刀にして【浅打】
「お前には過ぎた品と言えばそうだが、俺がお前に与えてやれる刀でこれ以上お前にふさわしいものもねぇ」
「これを手に戦いに赴くというのなら、これだけは守れ」
「は、はい!」
「練磨の時も寝食の時も肌身離さず身に着けろ」
「へ?」
それだけ?という顔をするベルに対して斬月は微笑みながらいう。
「これだけだ」
相も変わらずわからないという顔をするベルの頭をくしゃりと撫でると、ダンジョンに赴くように急かす。
「いくぞ、ベル。強くなるんだろ」
「はい!!」
そうやって、ベルと斬月はダンジョンへ続く一歩。
『はじまりの道』の大螺旋階段を踏み出したのだった。
第3~5話を一つにまとめたほうがいいですかねぇ?