なんか最近重い話ばっかり書いてたので、時には楽しい話を書きたいー!という事で気づいたら筆が走っていた。反省はしているが後悔はしていない。本編の続きは待っててくれ!
地獄のような場所から平和な世界へと帰ってきてから、既に数週間がたった。僕、ホスティモ・ムーイは今、【ロドス・アイランド】という製薬会社にいる。
チェルノボーグ事変。
ウルサス帝国の大都市であるチェルノボーグ市で突如として起こった【レユニオン・ムーブメント】という感染者武装集団によるテロと天災の襲来によって、チェルノボーグ市に住む僕を含む全ての人間は地獄を見た。
今でもその時のことは夢に見る。
だけど、僕は何とか、通っていたペテルヘイム高校から脱出して、ウルサス学生自治団の皆とロドスに救助されるまでの間、生き残ることができた。僕は助かったんだ。だから、いい加減前を向かなければと思う。
「ティモくーん! 朝だよー起きてー!」
ラーダ。今はグムというコードネームを名乗っている僕らウルサス学生自治団のムードメーカーが起こしにやってきた。
早く外に出ないと笑顔で僕の部屋に乗り込んでくるのが容易く想像できる。僕は足早に着替えを済ませて部屋を出た。
「おはよう、ティモ君! 今日もいい朝だね」
「グムは朝から元気だな。大変だろうし、毎日起こしに来なくてもいいんだよ?」
「ううん、全然大変じゃないよ、グムはこの時間が好きだから。それとも迷惑だった…?」
グムがうるうると瞳に涙を浮かべる。困っている僕の後ろから声と共に衝撃が襲ってきた。
「おいおい、ウチの可愛い仲間を泣かせたのはどいつだ〜?」
「これはいけませんね。ふむ、ホスティモには罰としてグムを食堂までエスコートしてもらいましょう」
振り返るとそこにはロザリンとアンナがいた。今はリェータとイースチナ、そう名乗っていたはずだ。どうやら、僕はリェータに後ろから尻を蹴られたらしい。僕はまいったように両手を上げた。
「わかったよ。グム、僕と一緒に食堂へ行ってくれるかい?」
「! うん! イースチナお姉ちゃんとリェータお姉ちゃんもおはよう! 皆で一緒に食堂へいこうね」
グムの差し出した右手を掴んで一緒に歩く。隣で見てくるイースチナとリェータが揶揄うように笑いかけてくるが無視して僕は歩いた。
食堂へ着くと既にロドスのオペレーターの皆が食事をしていた。
僕が辺りを見渡すと、グムが「あっ」と食堂の端を指差した。僕もそっちの方へ目を向けると、笑顔でこちらへ手を振るロサとむすっと座っているズィマーがいた。
僕達がそちらへ歩いていくと、ロサが僕達の分の椅子を引いてくれた。相変わらず、気配りが凄まじい。僕は空いているズィマーの隣に座った。
「たくっ、何でアタシが朝早くから場所取りなんてしないといけねぇんだ」
「あら、でも久しぶりに任務がなくてゆっくり6人一緒に食べられるからと提案したのは貴方ではなくって?」
「ちょっ、それは黙っとけよナターリア!?」
「あはは、ズィマーが赤くなってるぜ」
「本当だー!ズィマーお姉ちゃんまっかっかぁ〜!」
「ふふふ、ごめんなさいちょっとイジワルだったかしら?」
「皆、他のオペレーターの方々もいらっしゃるのだから少し静かに食べましょう」
ズィマーが悪態をついて、ロサがそれを揶揄って、それに便乗するリェータ、それらを見て笑うグムに騒がしさから皆を注意するイースチナ。
そんな光景を見て、僕は自然と笑みをこぼした。
「あっ、何笑ってやがんだホスティモ!」
怒ったズィマーを尻目に僕は朝食をいただく。あぁ、なんて美味しいご飯なんだろう。
皆との食事が終わって、久しぶりの全員がいる休日ということで、僕達はロドス内を歩き回る事にした。
僕達の暮らす新しい居場所、ロドスは【ロドス・アイランド号】という移動型の大型基地を本拠点としている組織だ。
最初はただの製薬会社が持つ拠点ではないだろうと、その怪しさに警戒もしたが、ロドスにいるオペレーターの皆はとても良い人ばかりだし、僕達オペレーターを指揮するドクターは見た目が怪しさの塊だけれど、下手にあの時の事を詮索もしてこない。作戦の指揮も抜群、何かと頼りになる人だ。
ロドスは【鉱石病】の治療を目的として研究を続けている組織で、このロドス本艦内では、感染者や非感染者なんかは関係なく、様々な人種がその目的のために集まっている。恐らく、感染者にとってここ以上の場所は存在しないだろう。そう思うほどにロドス内は感染者に対して優しい。
僕達がチェルノボーグ事変で救助されてからは、ロドス内で戦闘作戦に参加するオペレーターとして僕やズィマー、リェータが働いている。グムは主に食堂の料理補助として、ロサやイースチナは難民に対する事務作業なんかをして、それぞれロドスに貢献している。
働く理由としては、ロドスは基本的に働かざる者食うべからずといった感じで、難民はある程度たって回復が見込めたら各々が希望する地域へと送られるからだ。ロドス本艦に留まるためにはある程度働く必要があった。だから僕達は僕達にできることにしている。
「あっ、ホスティモさん。それにズィマーさん達も。ウルサス学生自治団の方々が皆さん一緒でどうされたのですか?」
僕達の歩く通路の向こう側から来たアーミヤさんがにこやかに近づいてきた。
ロドス内でも重度の鉱石病患者であり、14歳ほどの若さでロドスのCEO、つまりはロドスの最高責任者を務める少女。彼女には、あのケルシー先生やドクターさえも敵わないらしい。この場所で一番怒らせてはいけない存在だ。
「アーミヤさん。いや、休日が全員同じだったので、せっかくだからロドス本艦の中でもゆっくり見て回ろうと思いまして」
「そうだったんですね。それでは邪魔になるといけないので私は去りますが、どうか楽しい休日を過ごしてください」
「はい、ありがとうございます」
アーミヤさんは最高責任者でありながら、時に自身も術師オペレーターとして戦場に出る。
このような小さい子を戦わせるロドスの現状に思わないところが無いとはいえない。だけど、それは全てレユニオン・ムーブメント。あの組織が大々的にロドスへ敵対して、襲いかかってくるからだ。
彼らは自身達が世界で一番不幸であると謳い、世界が悪いと善良な人達にさえ牙を向く。
だからこそ、僕はレユニオンの感染者達が嫌いだ。もっとも、チェルノボーグでの出来事を体験した者の中でレユニオン達を許せる者は1人としていないだろう。
「何暗い顔してんだよ。せっかくの休日なんだ、楽しもうぜ。グム、行きたいところないか?」
「えっ!? う、うーん、ならグム娯楽室行ってみたいな。食堂に来る子達が楽しそうに話してるの聞いたんだ!」
「あら、いいんじゃない」
「ふむ、なら、そこへ行きましょうか。ズィマーも文句はないでしょう?」
「別にアタシはどこでも良い」
心配させたのだろうか。僕は皆に身体を引っ張られていく。
昔とはまるで逆だ。
そうか。もう僕が引っ張り上げなくても彼女達は前に進めるんだ。そう思うと僕の心は少しだけ軽くなった気がした。
娯楽室には色々なものがあった。テレビゲームやトランプみたいな物もあれば、身体を動かすサッカーボールなんかのスポーツ道具もある。ズィマーとリェータは我先にとラケットとテニスボールを手に取ると、部屋の横にある運動場に行って試合を始めた。ロサはそれを見て、やれやれと言いながら審判役としてついていく。
僕はグムとイースチナと一緒にトランプで遊んだ。因みに結果は全敗だ。どうやら僕は表情が人より顔に出やすいらしくて、こういう遊びは苦手だった。
そのあとは皆でテレビゲームをした。イースチナとロサが強くて、僕とズィマーは熾烈な最下位争いをした。負けたら罰ゲームがあるらしい。リェータが言い出した。だから僕は負けるわけには行かなかった。
「おー、いい気分だぜ。元貴族様を枕にするのはよー」
………僕はため息をついた。その姿を楽しそうに僕の右足を枕にするリェータが笑う。
ズィマーとの勝負に負けて最下位になった僕は、今皆の枕になっていた。寝転んだ僕の両手両足、そしてお腹は彼女達に占拠されている。どうしてこうなった。
「…こうしているとあの時のことを思い出すね。寒くてグム達で固まって、よく一緒に寝てたよね?」
僕のお腹の上で抱きつきながら寝ているグムが懐かしむように呟く。
そうだ、ペテルヘイム高校から脱出した僕達は満足に暖も取れなかった時、いつもこうして皆で温めあっていた。
「そういえば、前の事で思い出したのだけれど、グムの金庫の盾って何処から拾ってきたの?」
左腕を枕にしているロサが聞いてくる。
「あれは確かホスティモが拾ってきたんだ。グムにこれを盾に使えとか言って渡してな」
右腕を枕にしているズィマーが言う。
懐かしい話だ。あの時は、身を守るすべを持っていなかったグムを安心させるために何かないかと色々探していた。
「ふむ、それにしてはあの金庫の扉、やけに持ちやすい大きさへと壊れていたのですが、あんな代物がそんな都合よく落ちてる物なんですかね」
左足を枕にしているイースチナが疑問を漏らす。
「アレなら僕が丁度よく剣で切り取って持ってきたんだ」
僕は当時を懐かしみながら答えた。途端、腕や足から重みが消えた。
「えっ、アレってお前が作ったのか!?」
「切り取るって、剣で!?」
「ふむ、ヤバいですね」
「貴方、どんな剣の修行をしてきたのよ…」
「え〜!あの盾ってティモ君のオーダーメイドだったんだ〜、グム知らなかったよ〜。でもティモ君がグムのために作ってくれてたなんて嬉しいなぁ」
何故かグム以外の全員が驚いた顔で僕を見る。一体どうしたのだろうか。
「あの程度の金属の扉を剣で加工するなんて、ウルサス貴族なら誰でも出来るよ」
「「「………」」」
ズィマー、イースチナ、リェータが振り返ってロサを見る。それに対して、ロサは首が取れるかというほど頭を横に振って叫んだ。
「ウルサス貴族を何だと思っているの!?む、無理無理無理、無理に決まってるでしょーーー!?」
珍しく狼狽えるロサをズィマー達が揶揄う。
ロドスは今日も平和だ。だからどうか、この平穏がいつまでも続きますように。僕は天に祈ってそのまま心地よく眠りについた。
危機契約初めてやるけど、難しい、難しくない?