ぼっち・ざ・ろっく! ひとりだけの満月ーフルムーンー   作:璃空埜

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Sing-1 I"ll be backーⅠ

「……なるほどね」

 

黄昏ていたギター少女…ここから少し離れた秀華高校一年生だという後藤ひとりの話を一通り聞いた。

要約すると、彼女はどうやらバンドを組みたいらしいのだが、色々と試行錯誤をしたもののあまり結果が振るわず、気が滅入ってしまい、引きこもる直前まで追い込まれてるのだとか。

……あの時アイツに声掛けてなかったら同じことになってたか?

だとすると、今ももちろんだけどあの時もこうして声掛けてよかったぜ……。

 

「ううぅ……こんな私の話を懇切丁寧に聞いてくださるあなたは神様ですか……?」

 

……いや、もう末期じゃねこれ?俺はたどたどしく、更にどもりながら、更に更に合間合間に、自己嫌悪かなんかから奇行に走ろうとする彼女を止めつつ、話を聞いただけだってのに。こんなんで神格化されても。

……それに俺はそんなこと言われる立場じゃないし、な。

 

「うーん、酷い現実を突きつけてもいいか?」

「すぅぅ……」

「やめとくわ、お前壊れそうだし……多少は自覚もあるみたいだからな」

 

まぁ、アクションこそはいいけど……机に露店のようにCD並べようとも、お昼の放送でお気に入りの曲を流そうとも、バンドグッズを装備しようとも、結局話しかけられなきゃね……。それが出来るんなら、こんなとこで溜め息ついてるわけがないんだし。

さて、そうなると手っ取り早いのが……

 

「実はな?うちのクラブハウスで発足したばかりの、君と同世代の子達で出来た「あーーーーっ!!ギターーーーーーっ!!」おっわ!?」

「ぴゃぁっ!?」

 

……何やら懐かしい声が小さい公園中に響き渡る。

そして、その声が聞こえてきた方を見れば、見慣れた金髪のサイドテールを揺らしてまっすぐこちらへ突っ込んでくる少女の姿が。

 

「ねぇ君……って、み、ミツキお兄ちゃん!?」

「よ、虹夏。どうしたよ、そんなに慌てて」

 

今こっちにやって来た何やら大慌てな少女、伊地知虹夏は俺の職場(仮)であるライブハウスの店長の妹さんにして、俺の愛弟子。ドラム良し家事良し愛嬌良し世話良しツッコミ良しリーダーシップ良しという良いとこづくめな子だ。ただまぁ、ちょこちょこ突っ走る所があるってのが……いや別にこれ傷とは言えないぐらいだから、関係ないか。

 

「さっきここで黄昏ててな、放っとけなくて声掛けたの。そっちは?ギター探してるようだったが……」

「そう!そうなの!えーっと……」

「……!?……!!」

「お、おーい?」

「あっちゃー……」

 

俺と話し始めた時のように、後藤は顔を真っ青にして固まっている。

こりゃダメだ。まぁ、虹夏も緊急時みたいで仕方ないとはいえ、いきなり大声出して近づいてきたってのもあるから、案の定って感じ。俺も昔やらかしたからなー。

 

「とりあえず急いでるようだし、ある程度は俺代弁するわ。彼女は後藤ひとり、秀華高校一年生。んで、後藤、彼女は……」

「突然でごめんね。私、下北沢高校二年生の伊地知 虹夏」

「あっ、ああああらためましてごごご後藤ひとりです……」

 

お、自己紹介できたやんけ、偉いじゃん。

 

「ふみ!?ふ、ふわぁ……」「んで、虹夏よ。後藤……というかギター弾ける人に用があるってのは?」

「ミツキお兄ちゃん!撫でてる撫でてる!!」

「あ、やべ」

 

シレッと後藤の頭を撫でてしまっていた。撫でられた彼女はと言えば、顔を驚愕と真っ赤に染めて石像のように固まってしまっている。

しまったー……悪い癖が。これもまた昔……と言っても虹夏にドラム教えだした頃に着いてしまった癖なんだけど、年下の女の子が頑張ったりした時とか褒める時とかに頭を撫でてしまう癖がなー……。今のご時世、これだけでもセクハラ扱いされる時もあるっつう、なんともな時代だからこそ気をつてたんだが……うっかりしてたな。

 

「すまん、後藤。気ぃ悪くしたか?」

「え、あ、そっそそ……」

「そか、ありがとな。昔からの癖なんだが……俺も今度からもっと気をつけるわ」

「あ、ははひぃ……」

「……会話が成り立ってる…」

「ん?まー……年季の差ってやつよ。慣れてきゃ虹夏でもできる」

 

とは言っても、俺も久しぶりだからガバってるところもあるからなんとも言えんけどさ。後、まさかこうしてあの経験が活きるなんて思ってなかったけど。

 

「流石ミツキお兄ちゃん!……ってそれどころじゃなくてね!?」

 

話がそれにそれまくってしまった。

……けどま、虹夏が大慌てしてる事柄には目星は着いてるけども。

 

「私バンド組んでて、ドラムしてるんだけど。今そのバンドで困ったことが起こっちゃってて、無理だったら大丈夫なんだけど、大丈夫だけど困ってて……」

 

そーだろーと思った。虹夏は“あの夢”を目指してちゃんと進んでくれてるようだ。本気のバンドだからこそ、あそこまで慌ててたんだろうし。……それにしては大丈夫じゃなさそうな感じなのが気になる。

 

「えと、それで、ひとりちゃんってどのくらいギター弾けるの?」

「え、ええっと……そ、そこそこ……」

 

……ここは口出ししないでおくか。俺の見立てでは後藤はそこそこなんて腕じゃない……彼女の性格的に、それを発揮できるのはかなり限定的な条件にはなるだろうけど。

てか、虹夏よ。いきなり名前呼びかいな。

 

「お願いっ!今日だけサポートギターしてくれないかな!ギターの子が突然やめちゃって……」

「……ふぁ?」

「……えぇ…」

 

え?なに?今日突然ドタキャンされたの?

…………そいつ探し出して始末してやろうか?

……いやいや、それは早計だ。なんかしらの事情があるはずだ、きっと。そう例えば……実は人の前に立てない性格だったとか?そうだそうに違いない。

内心で自分を不承不承納得させて、とりあえずさらに気持ちを落ち着かせるために口を開くことにした。

 

「それでギターをね……。けどよ、もうすぐ本番なんだろ?当日付け焼き刃で何とかなるんか?」

「そこら辺は大丈夫!ある程度できる人ならすぐにできる曲だからさ」

 

うーん……ほんとにそうなんだろうか?とりあえず、急いでいるようだし、それに虹夏はこういう時、結構いい引きをする傾向だし、ここは……

 

「後藤、どうかな?」

「なにとぞー!」

 

渡りに船ってやつだよなーと思いつつ、固まっている後藤に声をかけてみるも、思考停止したまま依然として固まったm「ありがとう!では早速ライブハウスへGO!」

 

「って、オイオイオイオイ、後藤まだ返事してねーだろて」

 

あ、でもこの流れになると…

 

「あ、え、や…いいいぃぃぃぃぃいきましゅぅ……」

「やったー!ありがとーー!!」

 

……ま、そーなるな。

自分がやりたいことが棚からぼたもちで向こうから来たけど、たまたまとはいえ虹夏のいきなりの詰め、そこにコミュ障ってのが合わさりゃ否定出来るわけないわな。そもそもコミュ障は基本的に否定できない傾向あるが。

……いや、でも、これは寧ろ好都合か。俺の直感が鈍ってない上に正しければ、後藤は確実に虹夏の夢の第一歩に繋がる人材なはず……てか、そうであって欲しい。そんで、それはひいては後藤自身の未来へ繋がるものであるはず……てか、これもまたそうであって欲しい。……そんなら

 

「後藤」「むぎぃ」

「ひっしっひゃぃ!?」

「色々と一気に起こって、内心混乱の極みであることはわかるし、そんな中でトントン拍子に話が進んでいて、着いて来れてないのは重々承知だ。…………だが、ひとつだけハッキリさせておこうや」

 

早速ライブハウスへ(半ば強制的に)連行しようとしていた虹夏の頭を抑えて、その動きを停めた俺は縮こまっている後藤を真っ直ぐ見つめつつ、彼女へ向けて真剣な声音で語り掛ける。

 

「虹夏が来る前に俺に話してくれたこと、あれはお前が心から本当にそう想っているからこそできる話だし、それを含めてお前の想いは充分俺に伝わった」

「あ……え、えへへありが」「だからこそ、だ」「へ?」

 

自論だが……俺は出逢いっていうのはたとえ一回だけだとしても大きな分岐点となるものであり、その時の“選択”ひとつで今後の人生が激変する、そう考えている。

それは、実際に俺がそうだったってのが大きく……あの時もし俺が声をかけていなかったら……十中八九今の俺はここにいなかった。

 

その道中が、棘…いや、切っ先や銃弾で埋め尽くされていたとしても、俺はあの時の“選択”を後悔したことは1度もない。

 

「さっきの話を踏まえて、改めて俺からもう一度聞こう」

 

だからこそ……今この瞬間、この時こそが、俺にとってのあの時とおなじ……後藤ひとりにとっての大きな“分岐点”なのだするならば。

 

「後藤ひとり。この子…虹夏のバンドでギターをやってくれないか?」

 

刻一刻とライブの時間が迫っていて、千載一遇の出会いだったこの子を急いで引っ張っていきたい虹夏の気持ちも痛い程わかる…彼女の夢を知ってるから尚更、な。

……だとしても、だ。さっきの俺の感と考えを信じるのならば、この子の意思に委ねたい……それがどんな答えだとしても。

 

「別に言葉にしなくてもいい。もし、君が来てくれるというのなら、この俺の手にその手を載せるだけでもいい」

 

言葉は無くともどんな形であれ気持ちが伝われば、それがきっと彼女の答えだから。

そして、問いかけられたら彼女は最初は「あ、え、えっと…」とか呟きながらワタワタと慌てていたが、一度俺の顔をちらりと見て、その真剣さが伝わったのか少しの間俯いて考えている様子を見せた後…俯いた顔をバッと勢い良く上げると……

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆Side Change◇◆◇◆◇◆◇◆

 

何だか、自分でも不思議でびっくりするくらい話しやすい人だ…

それが、私…後藤ひとりが公園で落ち込んでいた時に声をかけてきた年上の男の人…今も私が周りの視線や雰囲気に呑まれたり怯えたりしないように気をかけつつ前を歩いてくれている北条ミツキさんへ抱いた第一印象だった。

 

「しっかし、久しぶりに会ったってのに全然成長してなくてちっこいままなのな〜お前。姉ちゃんの方はおっきいのにさ」

「コッココココラー!女の子に向かってそれは失礼じゃないかなぁー!!」

「はは、そういうのはこうしても俺に触れるくらいにゃでかくなってから言いなー。よしよーし」「うんにゅぎぃぃぃ!!」

 

そんな彼は今、私をバンドに誘ってきた虹夏ちゃんとなんだか親しげにしている。

……虹夏ちゃん、北条さんのこと「お兄ちゃん」って呼んでたし……仲がいいみたいだけど……。

 

「てか、俺にかまけるよりも後藤に色々説明しないといけないんじゃねーの?こうして着いてきてもらったのに、まだこれから行くライブハウスの説明とかしてないじゃん」

「ぬぬぬ……はぁ、そうだね。とりあえず、ミツキお兄ちゃんは晩御飯抜き」

「は!?そ、そりゃねーだろっ!?」

「乙女の触れてほしくないとこに触れてからかったバツですー!」

 

「くっそ、参ったなぁ…」なんて言いながらも、北条さんは楽しそうにしている。

その横顔を見て思い出すのは、今いる下北沢へ到着した時に私に向かって優しそうな顔で……

 

『こーいう場所、あんまり得意じゃないだろ?人がいる方はなるべく俺と虹夏が歩くから気にせず、俺の影に隠れてな』

 

…そう話してくれたこと。

なんというか、“少し前にも私と同じような人”を相手にしてたのかな?そうじゃなきゃ、私みたいなのをこんなに丁寧に相手してくれないよ……。やっぱこの人は神様だったんだこれから崇め奉って部屋に神社を……。

 

「とりあえずライブハウスにはもうちょいだから」

「あっはい……」

 

そうだった、今はライブハウスに向かっているんだった……。

……しかし、この街、下北沢は個性溢れるオシャレな街だなぁ…。

実際、今私の前を歩いている2人もすごいオシャレ。特に虹夏ちゃんからはこれぞバンド女子!って感じが…北条さんもどっかのモデルと言われても疑いようのないオシャレさだし…。

それに比べて私は芋ジャージだしクマも凄いし猫背だしいつも押し入れにいるからカビ…あ、違う、防虫剤の匂いだ。

目の前で揺れる金のポニーテールからは華やかな香りが…あぁ、これが本物の女子高生の香り……。

 

「あ、歩くペース早い?」

「あっ、いえ…」

「いちいち他人と比べて落ち込みなさんな、それはそれ、これはこれ、虹夏は虹夏、後藤は後藤さ。個性なんてのはゆっくり出してきゃいい」

「あ…」

 

ま、また私の考え読まれた……。そ、そんなに顔に出てるのかな?

 

「それで、今回演奏するライブハウスなんだけどねー?私の…」

 

そ、そうだ、演奏するんだライブハウスで……私……。

あ、あれ?なんかバックンバックン心臓がなってきた、大丈夫か?いや大丈夫じゃない、どっどどどうしよう……。

虹夏ちゃんの話も耳から耳へ抜けてって全然頭に入ってこないよ……うぅ……。

あぁぁぁぁぁ……こっこここうしてるまにもどんどん弱気に……。だ、ダメだダメだ、よよよよよわきになったゃ……。

おおおお落ち着いて、もっもも妄想するんだ。いつもやってる文化祭ライブ……そして、ワンマン、スーパーアリーナ、私の名を呼ぶ観客達…………

 

「ふ、ふふ……私は武道館をも「そう固くなりすぎなさんな」……え」

 

妄想が途切れ、その優しい声の主の方へ顔を上げると、さっき注意すると言ってたのに声と同じ優しさを感じるドラマー特有の硬さがある手でまた頭を撫でられる。

 

「誰も初めてってのは緊張するもんだ。別に今回失敗したとて、どうともならんよ」

「え……でも……」

「ただ、その失敗をどう次に活かしていくのか、そっちの方が俺は重要だと思うぜ。ま、そもそも見ず知らずの人からいきなり頼まれたってのに、こうして答えてくれただけでも感謝なんだがね」

 

……この人が神では?

帰ったらお父さんに頼んで神棚だっけ?とにかくなにか祀るものを作ってもらおう。

そんなことを思っていると撫でる手が止まり、北条さんがなにか思い出したかのような顔をすると、こんな質問を投げ掛けてきた。

 

「そーいや聞き損ねてたが……後藤はどんな曲弾けるんだ?」

「あ!私もそれ知りたい!」

 

!?え、えとえとえとーーーっ……

 

「あっえっと……ば」

「「ば?」」

「ば、バンド結成できた時すぐに対処できるようここ最近の売れ筋バンドは全部弾けるようにしてます……」

「すごい執念……!」

「たしかにすげぇな。ただ、さっきあんなこと言ったが……今のでハードルかなりあげちまったぞ、お前さん」

「うっ!?」

 

し、しまった!さ、さっきの北条さんの言葉に浮かれてたのか安心してたのか私ぃぃ!

ど、どうしよう……頼む人間違えたとか思われてたらもう私立ち直れないかも……。

 

「カバーと言えば……1人すっごい気になっている人いるんだよねー」

「そうなん?」

「うん!ギターヒーローっていう数年前から動画投稿してる人!お兄ちゃん知ってる??」

「あー……知ってる知ってる。確かに、“上手い”よな」

 

ギターヒーロー……?

 

………………あ、私か!

 

って!北条さんがなんか意味深にこっちを見たけど一体なに!?え?え?もしかしてバレてる!?や、でも顔出しとかしてないし……

 

「ネーミングセンスはちょっと痛いけれど、一緒に演奏したいなー」

 

え……あ、あれ痛いの……かな……?

 

「痛くねーよ、俺はかっこいいと思うぜ。ギターヒーロー」

「そうー?」

「そうだよ。ヒーローってのは誰かを救うもんと相場が決まっとるわ。ついでに、俺もそいつとはセッションしてみてーなーとは思ってるよ」

 

な、なぜかは分からないけど、確実にバレてそうだし、もうあなたがヒーローでいいです……。

け、けど……

 

「わー!?なんかひとりちゃんがゆでダコみたいになってるー!?」

「くはははは」

「笑ってる場合じゃないよー!」

「ははは、ちなみに虹夏はその人の動画楽しみにしてるんか?」

「そ、それはもちろんだけどさ……」

 

あぁ、現実世界じゃ私の事誰も見てないと思っていたけれど、しっかり見てくれてる人はこんな近くにいたんだね……。

 

「うぅっ……あ、ありがとうございますぅ……」

「えっ!?何!?何が!?って、今度は泣きだしちゃったよー!泣かないでー!」

「ははははっ、ホント……………なぁ……」

「ミツキお兄ちゃん手伝ってー!慣れてるんでしょー!」

「はいはい……くくくっ」

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから、少しして……

 

「はい、とうちゃーく」

 

やってきたのはとあるマンションの地下へと続く階段前……

………魔境?

 

「ごーとーう」

「ひゃ……」

「大丈夫だってーの。さ、ほら」

 

階段の上で固まった私へ、少年のような笑顔と共に再び手をさし伸ばしてくれた北条さん(あ、あれ?そういえば北条さんが働いてるのもここだったんだ)。

あぁぁぁぁ……だめだ、私、このまま優しくされ続けたら……ぁぁぁぁぁぁ……

 

「は、はぃ……」

 

葛藤も虚しく、私はその手を恐る恐る掴む。

すると、彼はそのまま優しく私を連れて『STARRY』という看板が掲げられているライブハウスへ、虹夏ちゃんの後を追うように入り……即ち私も……

 

「おっはよーございまーす!」

「お疲れ様でーす」

 

2人とともに『STARRY』の中へ足を踏み入れる。すると、スタッフさんや、今日のライブの出演するバンド?らしき人達がそれぞれお話していたり、なにか作業をしていた。

おぉ……初ライブハウス……この暗さ、そして、圧迫感……あぁ、なんか……なんか落ち着く……

 

「ひとりちゃん、大丈夫ー?」

「あぁ、わ、私の家……」

「いや、違うよ!?」

「お前はいつから、伊地知ひとりになったのさ」

 

さっきと同じようにあっけらかんと笑う北条さん……というか、あ、あのですね……?

 

「お兄ちゃんなんかした?視線集めてるよ?」

「いやなんも。初顔だからでしょ」

「え、あれさっき……」

「自己紹介ん時、(仮)って言ったのはとどのつまりそゆことなの」

 

……そういえば言ってた…。

 

「それじゃ後でおね…店長のとこ行こっかー。その前にひとりちゃんに少しお話しておくね!まず、あそこにいるのがー……」

 

……そうだ、元々バンドってのは所詮インドアな人達の集まり。何かと怖いイメージはあったけど、よくよく考えたら私と同じような人達が集ってるってことだよね。つまり私と同じ陰キャな……

 

「それで、そこにいる人がPAさん」

「おはようございまーす…」

「ぃぃぃぃぃイキってすいません……」

「突然どうした!?」

「目付きが怖かったからだと思われ。姉ちゃんと会ったらどうなることやら……あ、俺北条ミツキ。あなたの後輩になるので、今後ともよろしく」

「はーい。あ、もしかしてー、店長が話してたホントは開店時いて欲しかったけど事情があるから遅れてくる“頼りになるけど、頼りにならない”人って……」

「……多分ー、俺」

 

“頼りになるけど、頼りにならない”……?どういうことだろう……?

 

「やっと帰ってきた」

「あ、リョウ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

内心怖いPAさんが話した北条さんについてのことに首を傾げていると、虹夏ちゃんへリョウと呼ばれた女の子が……って怖っ!?睨まれてるっ!?

 

「この子、後藤ひとりちゃん!奇跡的に公園にいたギタリストだよ」

「へぇ……」

「ひとりちゃん。この子はベースの山田リョウだよー」

「ごごっご後藤ひとりですっ!!たたた大変申し訳ございませんっ!!!」「えぇ!?ちょ!?」

「お、リョウじゃねーか」「そういうあなたはA…ミツキさん」

「おい、てめぇ。今俺の事なんて言おうとした」

 

PAさんとの会話を終えてきたのか、私の奇声でこちらに気が向いのかは分からないが……このリョウさんって人とも北条さん知り合いみたい……

 

「……また草生活してねーよな?」

「ふっふっふ、ここ最近は」「先週まで雑草食べてた」「あ」「おーっしぃ?」

 

……知り合い?

 

「とりあえずそれは後で説教するとして……。大丈夫だ、ビビらんくてもいいよ、後藤」

「そうそう!リョウはねー、表情が出にくいだけだから大丈夫!それと、変人って呼ぶと喜ぶんだー!」

「嬉しくないし」

 

ちょっと赤くなった頬に手を当ててるリョウさん。

確かにちょっと嬉しそう……。

 

「そういえば店長が……」

「え!?」

「時間まで練習しとけって。あと、虹夏が勝手にライブハウス抜け出したこと、怒りながら買い出し行った」

「ひぃぃ、うそぉ!?」

「マジか」

「も、もぅー!そういうことは早く言ってよ、ばかぁ!」

「語彙力無さすぎる。あと、ミツキのことは特に何も言ってなかった」

「そらそうだろ、日付は伝えてたけどいつここに来るかは伝えてねーし。虹夏かリョウのどっちかは確実にいただろうからな」

「と、とにかく!帰ってくる前にスタジオ行こ!」

「……俺も暇になったし、ここは虹夏らの見学でもさせてもらうとしますかね」

 

虹夏ちゃんが慌てながら無表情のリョウさんの背中を押してゆき、北条さんもそれに続いてゆく。

 

「ひとりちゃんも、ほら……」

「あっ、はい……」

 

虹夏ちゃんに呼ばれ、私もその後へと続きスタジオへ向かう。

……現実は怖い。

だけど……

 

  これからとっても楽しいことが待ってる気がする……!!

 

「……頑張れよ、後藤」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……ド下手だ」「ぷぅー」

「ヴゑ゛ーーー……?」

「うん、まー……俺のよそーどーりだったわ。いや、しかし、ここまで予想通りになるたぁー思ってなかったけどさー、ははは」

 




BTR最高!BTR最高!BTR最高!

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☆10:ジャガジャガ様

ありがとうございます!!
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