ぼっち・ざ・ろっく! ひとりだけの満月ーフルムーンー 作:璃空埜
おめでとうございました
ことしも
よろしくお願いします
略して、あおこよ
【天に昇りし双つの満たされた月と共に現れる断罪者】
【その者は、涙を零す弱者を救い、驕り高ぶる強者を裁き】
【法の正義で裁けぬ悪を、闇の刃で消し去る者】
【【【その者の名は…】】】
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……まさか同じ方の出身だとはね。
今の俺は勤務先の都合から、かつては伊地知家で世話になってたからこっちへはあまり来ることはなくなったけれど、これからこうして送迎するってなら、またいくらかこっちの方でもすごすとしますかね。
そんなことを考えながら愛車であるS30ゼット(もちろん某アニメと同じようにしてある)を運転していると……
「あ、こ、ここです」
「おう」
そこには豪華な御屋敷が!……あるわけがなく
そこにはくたびれたボロ家屋が!……あるわけなく
ふっつーの二階建ての一軒家……だだ、グレードはちょっと良さげな家があった。
「それじゃ、ここまでだな。今日はお疲れさん、また明日から……っといけねぇ」
「?」
いかんいかん、割と大事なこと忘れるところだったわ。
「ひとり、俺個人のとバンドマネージャーのロイン教えておくわ」
「あ……」
「てか、そーいや、虹夏らのロインは……?」
「あ、お、教えてもらってないです……」
「……仕方ない、この際一緒に教えるよ。ただ、先にアイツらに一報してっと……よし、おk」
爆速で虹夏たちからの『OK』という返事を(虹夏からは何やら泣き言とも恨み言とも取れるちょい長めの長文がオマケに……おおこっわ)貰った俺は、ひとりへロインのアカウントを順番に教える。
……予想通りっつうか、友達少ないのね。一気に4つ……しかもひとつは業務用のフレンドが増えただけでほくほくしてるってーか、ふわふわと幻影の花が浮いているのが見えるわ。
「とりあえず、マネージャー用の方はバンド関係の相談事とかで使ってくれ。それ以外の相談事やらさっき車で話したことやらなら、俺個人の方に連絡をよこしてくれれば相談乗るから気兼ねなく連絡してこい」
「あ、はいっ!ありがとうっございます!」
「いい返事だ」
そこまで話して車から降りると、助手席側のドアを開けてあげたところで……
「あ、あのっ!」
「なんだ?」
「そっその……ほ、みーっミツキさんは……どっどどどどうして私なんかにそんな……」
そら、今日初対面の人間にこうも色々と手厚くされちゃそうなるわな。
「初めに話しかけた時に言った通り、1ドラマーとしても“個人的”にも君のことを放っておけなかったから……それだけじゃ足らないか?」
「あ、や……」
……ふむ、俺はちょっとこの子を侮ってたみたいだ。言葉にこそしてないが、ひとりは俺がひとり自身へこうして接してる理由でいちばん強いのが“個人的”って辺りに目星をつけてる。一歩…それ以上かもしれないが、下がっている位置から普段見てるからこそできる着眼点だ。
「どうやらちょっと察しているようだが、俺が君に接してるのは確かに“個人的”なことの割合が高い」
「!え、えと……」
「だが、あくまでもそれはそれで、君は君だ。そこはしっかり切り分けてるし、俺がこうしているのはどちらにせよ俺がしたかったからこうしてるってだけ」
「……」
まだ、この子に【あの子の事】を話すのは早すぎる。なら、ここはこうしてラインを作り、あまりそのことへは踏み込んで欲しくないと遠回しに諭すしかない。
……ただ、正直言うと俺自身、こうしてひとりに入れ込み気味になってることは驚いてるし、少し危機感も持っている……杞憂だといいんだが、ね。
「とりあえず、今日はそろそろいい時間だし慣れないライブで疲れたろ?ちゃんと休んでおけ」
「……はい、ありがとう……ございました……」
「……ひとり」
「?……あぅっ」
ひとりがなにやら考え込んでいるのに加え、マイナス思考へ急転直下しかけていることを悟った俺は、軽く肩を竦めた後に彼女に一声掛けた後彼女の眉間を、人差し指だけで少し強めにつつく。
「焦りなさんな。まだ出会って初日でそこまで気にしてたら、付き合い悪くなるし気疲れしちまうぞ。そういうことは頭の片隅に置いておいて、必要になった時やもっと仲良くなってから踏み込むもんだ」
「あ……」
「それに、誰にしろ過去ってもんは、ある。お前もそうだろうが、俺だってもちろんそうさ。んで、そういうもんは話す時まで待ってやるってのが定石だ、無理に聞くもんじゃない。ま、こうして(間接的に)聞いてきたからとはいえ、俺がお前のことを適当に扱うなんてねーから安心しな」
むしろ、こうして超肩入れしてるとこを見ると、俺かなりひとりのこと気に入ってるんだがね。……十中八九それは【あの子】の面影を重ねてしまっているからってのが、大きいんだろうけど。
そんな俺の考えとは裏腹に、小突かれたことに鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたひとりは、ボン!という音が聞こえそうな程に顔を真っ赤に染めると……
「あぁぁぁぁあそそそそそうですねぇぇぇぇえ!!!おおおつおつおつかれさまでしたぁぉぉぁぁぁ!!」
車の中に置いてあったギターをひっつかむと、ワタワタと家の方に向かっていく。
……ははっ、一体何を考えたんだか。
「改めて今日はありがとなー!おやすみー!」
その背中に一声かけると「ひょぇぇえ!!おやすみなぁぁあさぁぁあゐぃゐぃ!?」というまたおかしな奇声をあげつつ後藤家の中に滑り込む彼女を苦笑いを浮かべつつ見送った俺は、愛車に再び乗り車を発進させ……ようとしたところで、懐に入れてあった俺の“もうひとつ”のケータイが着信を告げる振動を始めた。
「……」
……まさか、帰ってきた初日早々にこのケータイが鳴る事になるとはね。
そう思いつつ、俺は懐のケータイ……今では絶滅危惧種ともされている夜空のシールが貼り付けられた“ガラケー”を取り出し、宛名を見ることなく、通話に出る。
『“
通話口から耳朶をうったのは、俺の予想に反して厄介事かなにかに追われ疲れきったような、俺のよく知る若い男の声。
「……まさか、お前直々に連絡してくるとは。して、依頼か?」
『ああ。……だが「どこで落ち合う?」……ポイント24-3-064』
「OK、これからすぐに向かう。丁度近くまで来てるしな」
「それじゃ後で」と電話口の相手はまだ何かを言いたげな様子ではあったが、それを言わすよりも早く、手短に返事だけをして俺は通話を切り、「ふぅ……」と一息吐く。
別に電話の相手と仲が悪いってわけじゃない……寧ろ仲はいいんだが、車を停めている場所が悪いってのもあるけど、それ以上に【あの事】からもう何年も経ったというのに、まーーーだズルズル引き摺っている“
ったく……お前がそんな責負うことじゃないって言ってんのに……。
「……ま、不出来な“兄”の勝手に決めたことに巻き込まれて、あーなっちまったんだから、俺はなんにも言えなんですがね」
誠になさけない限りである。
……と、そんなことを呟き、新たに灯りが灯った後藤家二階の……おそらくはひとりの部屋の窓を一瞥してから、俺は今度こそ車を発進させる。
……実はな、ひとり。
オレも、“ヒーロー”ってやつなんだ。
でも、だれかに“
この手を汚してだれかの“
「……所謂、“
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「……兄ちゃん…」
受話器から聞こえてくる『ツー…ツー…』という、通話が終了したことを知らせる音をぼんやりと聞きながら、僕は今しがたまで話していた相手……僕が背負っているものなんかとは比べ物にならない程、重く辛い責と【罰と罪】を背負っているというのに、“
「……なぁ、兄ちゃん………」
僕は、いつまで、兄ちゃんを“地獄の世界”へ縛り付けておかないといけないのかな……?
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電話の相手から指定された場所……郊外にある廃ビルの前で、俺は夜空に浮かぶ満月を見上げながらタバコを吹かしてその電話の相手を待っていた。
ちなみに、タバコは嗜む程度で時たまこうして一服するぐらいだ。まー、吸い始めたのはあることを調べるためなんだが。
「……きたか」
そうしている内に、俺の前に一台のどこにでもあるような普通の車がやってくる。そして…
「よ、久しぶりだな」
「…久しぶり、兄ち…兄貴」
「そんな堅苦しくなくていいっつの。俺とお前の仲だろが」
その車から、まずそんな車には似つかわしくないスーツを着込んだいかつい男たちが出てくると、そのうちの一人が後部座席のドアを丁寧に開く。そこから姿を見せた男たちよりも豪華な服を着た線の細い男……俺の“実弟”、北条 フウトがその顔に悲壮さを滲ませつつ降りてきた。
「部下の手前そんなことは……」
「だぁほ」
「っ」
「んな肩肘張ってると疲弊しきるぞー」
相変わらず真面目なんだから……。あ、や、兄貴がこんなちゃらんぽらんだとこうもなってしまうのか……?
……悩ましい。
「して……タゲは?」
「コイツらだ」
一息ついてから本題へと切り込む。
フウトが差し出してきたチェロケース……ま、これは仮初のケース
なんだが……と、二枚の写真…意地悪そうな年老いた男といかにも悪ですよーって顔した若い女が写ったもの…を受け取る。
「金持ち男爵と愛人ってか?」
「違う、そいつらは親子だ。女の方が詐欺や賭博の罪に問われているが、父の方が……」
「政治家どもにも金を渡していて、警察が動けない奴」
「そういうことだ」
おーおー、絵に書いたような悪人だこって。
「今回、ターゲット二人がここから数百m離れたところにある西の倉庫跡で…「そこまで聞けりゃ十分。あと個人的お願いなんだが……」うん?」
フウトと話しながら、いかつい男の一人がトランクから出てきたアタッシュケースと細長い包みも受け取った俺は、悪い笑みを浮かべながら彼にこう提案した。
「そうだな……20、いや、30人ぐらいかな?この場所に誘導してくれねーか」
「……何を言っている?」
当然、そんな反応にもなるわな。こういう仕事ってのは見つかったら終わりなのがほぼほぼだってのに、わざわざ見つかるような……さらに言ってしまえば取り囲まれるような危険な真似をしようってんだからね。
「そんな顔する気持ちもわかるが……ココ最近のこの辺りの情勢のこと、俺が調べてないとでも?」
「っ……!」
「俺は自分についてる【二つ名】は小っ恥ずかしいもんであり、しょーーじきこの世から抹消したい名だ。けど、こっちの世界での有名度を利用できる時なら、利用しない手はないだろ」
まーーーーーーーーっじで、適当に付けられたと思われる【二つ名】は黒歴史とも言えるはっずかしいもんなんだよなぁ……。いや、まーーーーーーーーーーーーーーーーーーっじで。
「だけど、それは……」
「もちろん危険なのは重々承知さ」
下手すれば命を落とすからな。昔と違って、俺もそうそう簡単に死ぬわけにゃいかんけど……時には危ない橋も渡らんと。
「…闇ってのはある意味光を守る為にも存在してるもんだ。俺はそう考えてるよ」
「……兄ちゃんが闇で僕が光だと?」
俺の言葉に終始不安げなフウト。
そこまで俺のことを考えてくれていることは、兄名利に尽きるんだが……心配性すぎるっての。だからこそ……
「そ。お前は俺に罪悪感を抱いているようだが……それは間違いだ。なにせ……
俺は進んでこの道を選んだんだ。
その道で大切なものをこの手で護れるというのなら、
俺は喜んでこの身を削ってでもこの道を歩んでゆくさ」
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それから簡単な打ち合わせをしてからフウトと別れた俺は、廃ビルの屋上で一通りのセッテングを終えて、インカムからの応答を待っていた。
これから、この仕事とSTARRYの仕事を両立していけないのか……。うーん、辛くはないとはいえないが……それよりも、この仕事関係のことに皆を巻き込まないかって当たりが気がかりだ。少し前も下見と称した巡回の時、危うく女子高生巻き込みかけたからその辺上手く立ち回らないと……。
『…こちら、
そんなことを考えているうちに、
さてさて、俺の出番がやってまいりましたと。
『
俺の経験則から言って……この手の輩は用意周到でかつ狡猾だ。それなら、こうして目に付くところを堂々とくるものか?
……否、それは無い。
ま、おそらく今皆の目が向いている方のヤツはダミーだろう。そうとするのなら……。
「……詠めた」
これなら奴が会合場所をそこにした理由にも合致する。
そうして、時計を見てみれば……俺の予測と考えが正しければそろそろ姿を現す時間にさしかかろうとしていた。
「…ボス、こちら“
『……真の敵のルートがわかったか』
「そっちは囮、本命は海上」
『やなりそうか。この手のヤツにしてはあからさますぎたからな……』
「わかる」
『して?』
一応フウトに連絡を入れていると、予想通り建物の影から一隻のキャビンクルーザーが姿を現す。
あーあー……あんな小さなところにいるとか……
「ん、あー……あと処理班送ってくれ」
……狙いやすくて助かるわ。
フウトにそう話したあと、隣の箱に挿して置いてあるタバコから昇る煙を使い、風の強さと方向を確かめた俺は……
……狙いを定め、フウトたちが用意してくれたワルサーWA2000のトリガーを引いた。
狙い済ました弾丸は、スコープ越しに見えていた重なっていた2つの
「……firstshot,hit.next……」
そして、俺は……
◇◆◇◆◇◆◇◆ Side Change To Another ◇◆◇◆◇◆◇◆
ボスと、お嬢が撃ち抜かれた。
それも遠距離……推定900mも離れているであろう廃ビルの屋上辺りから初弾で2人を撃ち抜き、更にその直後に打ち込まれた次弾にて“動いていたクルーザー”のエンジン部へと叩き込んでクルーザーを爆沈させるというとんでもないことまでされてしまった。
だが……
「ここか!」
それも、月光にスコープを反射させてしまうという初歩的なミスを。
……ボスという護らなければならなかった者を護れなかった俺たちは、攻めてこの凄腕なのか下手なのか分からない奴だけでも。
にっくき下手人を追い詰めるがために、ある廃ビルの前に集まっていた。
「ちっ……かなり削られたな……」
「ここらを仕切ってる組のヤツらにほぼほぼ捕まっちまったからな……。だが!俺らもこのまますごすごと捕まってたまるかよ!」
「そうだ!ボスを殺った奴に一矢報いないと!」
だいぶ数を減らされ、ここにたどりつけたものだけでも約30人……だけど、たった一人を相手にするのなら十分すぎる人数だ。
そう、思っていた。
否、普通ならそうなんだ。
ならば……
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「ラストだぜ、あんた」
……この現状はなんだ?
みなで揃って廃ビルの敷地に足を踏み入れた直後、空から舞い降りた…“たったひとつの影”が、その手に持った“厳つく大きな
初めに、先頭にいた5人とその後ろにいた5人の計10人をワンマガジンで仕留めたソイツは、俺たちを一瞥すると……
『肩慣らしにもならない雑魚ばっかかよ……。今日は銃だけで足りるな』
……つまらなさそうな顔と共にそんなことを言い放った。
もちろんただでさえ大失態を犯した俺たちは、その言葉で怒りに染まり一斉にソイツ飛びかかった。
だが……
銃声がひとつ鳴る度、何人かまとめて倒れ
鈍い打撃音がひとつなる度、確実に誰かが倒れ
銃声がまたひとつ……
打撃音がまたひとつ……
その音が鳴る度々に、俺たちの怒号は、情けない悲鳴は
ひとつひとつ、ひとつひとつ消え去ってゆき……
結果……
数分も経たないうちに、残されたのは歯をガチガチとならし恐怖に染った哀れな
そして、そんな俺の前には……たったひとりで、たったひとつの銃で、俺らを壊滅した……悪魔がひとり。
「どうする?逃げる?それとも、俺を倒す?」
悪魔は、空の満月の灯りを一身に受け、俺に囁く。
だが、俺は……俺はもう、どうすることも出来ない。
なにせ、そいつは、フードの下に隠されていた、その若き顔を俺へと晒しながら、刀のようにその手の銃を天高く掲げ……
「ま、どちらにせよ……お前はチェックだ。そして、喜べ、お前は、記念すべき俺の帰還を掲示する大役を殺らせてやる」
そう話しながら、そいつは、
その銃口を、俺の額へと、直付けする。
「
そして、その時、初めて……
その銃身に、“月”と“虹”と“星”をモチーフにしたエンブレムがあることに気づき、
今まさにトリガーを引き、俺の命を食おうとしている悪魔を……その名を……
この辺りで、かつて関わってはならない悪を食らう悪の断罪者のことを……思い出す。
【【【『
「……
そして、月夜の下で、赤い鮮華が、またひとつ、花開いた……。
残酷な表現タグはこのためだったり。
こんな感じの作品になった経緯としてはぼざろの前に組長娘みてたから。
ぼざろは続くよ永遠に
遅くなりましたが高評価者様方⬇
☆10:ライズ様
☆9:ヨピ様、グアテマラ派様、ユキト❄様
☆8:ルドルフ主任様
☆7:しやぶ様
ありがとうございます!
引き続き、高評価、感想等よろしくお願いします
亀更新なのはお許し下さい