月に寄りそう乙女達 ~Irish Fairy~   作:トライアヌス円柱

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「夢」と「現」
彼が選ぶのはどちら?
彼女が選ぶのはどちら?

25話 裏タイトル 【ゲームならここで絶対にセーブ】


25話 夢と現の分岐点

 

 「あ、白い子、いた」

 

 「これは、ジャスティーヌお嬢様、お久しぶりです」

 

 「うん、久しぶり。相変わらず綺麗だね。私、貴女みたいな綺麗な人が好き。デザインのインスピレーションが湧いてくるから。白い子もやっぱり自分の顔を見てデザイン浮かんだりするの?」

 

 「では、ご自身のお顔を鏡でご覧になってみてください」

 

 「私の顔? あ、うん、そうだね、私ももちろん美人だよ。でもそっか、たしかに私も自分の顔を見てのデザインって考えたことなかったなぁ。カトリーヌ! 今鏡ある?」

 

 「はい、どうぞ」

 

 「やっぱり私も美人なんだけど…… うーん、見慣れすぎて今更インスピレーション湧いてこない」

 

 「私もそうです。皆様から可愛い、綺麗だとありがたいお言葉を頂いて言いますが、生まれた時から見ている自分の顔は、周囲の評価はどうあれ、そこにあるのが当然ですので、これといった刺激にはなりませんね」

 

 

 「私もそうです。ジャスティーヌさんこんにちわ。アーノッツの子もいるのを忘れないで上げてくださいね」

 

 「あ、そうだね。ごめん、正直アーノッツの子は私の中で白い子のおまけだったから」

 

 「従者のおまけ扱い……」

 

 「いやだって、アーノッツの子もたしかに綺麗だよ、でも同じくらい綺麗な人、欧州行けば探すといるもん。私の叔母さまも綺麗だし、パリのモデルの人たちもみんなそうだし。でも白い子みたいな綺麗さは、世界中探してもほとんどいないよ」

 

 「それは認めます。私の従者の可愛さは世界一だということは」

 

 「別に世界一って言った覚えはないんだけど」

 

 「ジャスティーヌお嬢さまは、ここしばらくどう過ごされていたのですか?」

 

 「部屋でデザイン描いていたよ。貴女たちと出会ってから、どんどんデザインが湧いてくるからね。誰に着せたいかも考えながら、簡単なデザインのものは実際にカトリーヌに作らせたりしながらね」

 

 

 4月も終わりに差し掛かった頃、いつものサロンで今日はエストさんと一緒に食事を摂り終えたところに、パリのお嬢さまがやってきた。

 

 この人はこの1ヶ月、最初のデザインの授業以外はほとんど出ていない。でも正直仕方がないと思う。パリでいくつも賞を取り、その実力は本物である彼女にとって、あの教室の授業はあまりに退屈だ。スポーツで言うならば、世界大会のチームに選ばれる選手が、Jrチームの練習に参加するようなものだろう。

 

 なにしろ僕自身が『退屈』だと感じているのだから、出席の自由を自分で決められる彼女が欠席するのは無理ないこと。

 

 そして彼女は、教室で無為な時間を過ごすよりは、自分に適した環境でその腕を伸ばすことをしていたようだ。

 

 

 「それにしても、どうして今日は学院に?」

 

 なので、どうしてその退屈な教室に出向いたのかを尋ねてみた。

 

 「いや、白い子がなにか衣装を作っているって聞いたから。それに、あのちっちゃい先生に、授業の提出物を出さないとパリの実家に連絡するって言われちゃったしね」

 

 そうしたところは素直に従うのか。いや、きっとジャスティーヌさんは紅葉の実力を見て、彼女の言うことならば聞こうと判断したのだろう。まだ短い付き合いだが、彼女の人間関係の判断基準は、服飾能力の有無であり、大小だ。実力がある人間の意見ならば、耳を傾ける。そしてそれを自分を磨く糧にする、実にパリの人間らしい。

 

 「朝陽の衣装のことですか? それをどこで?」

 

 「さっきの話のちっちゃい先生がお説教の中で、『小倉さんのように賞に向けての衣装を製作するなどの成果とまでは言いませんが、授業の提出物だけは出してもらいませんと』って言ってたの。貴女たちが普段いる場所については、クラスメイトの子から聞いたよ」

 

 なるほど、紅葉経由か。受賞した場合は学校の記録にも残るので、たしかに紅葉にも話していた。まぁ別に隠していたわけでもないし、紅葉としてもジャスティーヌさんを登校させるための発奮剤として話題に出したということなのだろう。

 

 事実、彼女はそれに興味を惹かれて登校してきたわけなので、紅葉の思惑は成功している。強かだね樅山紅葉。

 

 

 「ね、どんな衣装作っているの? デザイン今ある?」

 

 「いえ、流石に製作スケジュールに詰まっているわけではありませんから、今この場にはありません。製作中の衣装はお嬢様の部屋にあります。モデルもお嬢様ですので」

 

 「へぇ、じゃあアーノッツの子をイメージして描いたデザインなんだ。それは興味あるね」

 

 「写真に撮っていますので、よかったら見ますか?」

 

 え? いつの間に撮っていたのエストさん。でもよほど気に入ってくれたのかな。

 

 

 「準備いいねアーノッツの子。……へぇ、ふぅん、うん! いいデザインだねこれ! 綺麗だし、全体的にケルト調で統一感もある。グリーンがベースで、アソートがホワイトかぁ、でも刺繍レースが大変そうだね」

 

 流石はジャスティーヌさん、コンセプトもしっかりと把握し、衣装の大変な部分もひと目で把握している。

 

 「衣装を実際に作ってるってことは、これ、型紙も白い子が引いたの?」

 

 「はい。まぁモデルのお嬢様はすぐそばにいらっしゃいますので、そのまま生地を裁断しても良かったのですが、やはり念には念をいれて」

 

 「え? 白い子立体裁断できるの?」

 

 「普段着ならばできますが、流石にコンクール用の衣装となると、やはり万全を期して型紙を引きます」

 

 「型紙の写真はこちらになります」

 

 だからエストさん、いつの間に?

 

 

 「ふぅん…… 貴女、デザインも型紙もそうとうに高いレベルで出来るんだね… もしかして縫製も?」

 

 「自分で衣装を製作するくらいには」

 

 「…………」

 

 なにやらジャスティーヌさんは考え込んでしまった。それもいつにない真剣な表情で。

 

 「作りかけの衣装の写真みせて、アーノッツの子」

 

 「はい、これです」

 

 もうあることが前提なんですね、ジャスティーヌさん。

 

 

 『………カトリーヌ、貴女から見てこの縫製どう』

 

 『……少なくても、私がこの年齢の時は、これほどに綺麗に縫えていません。引き攣りもなく、力加減も絶妙な仕上がりです』

 

 服飾に関わる真剣な話のためか、従者が細かい表現が出来る母国語で彼女は話しかけた。僕はフランス語はあまり分からないが、悪い評価ではないことは理解できる。

 

 「なるほど。ねえ白い子、貴女ここでやることないよ」

 

 パリのお嬢さまは直球だった。まあ、その意見はわからないでもない。

 

 少なくとも、あの教室で学ぶことは、デザインや技術に関することに限りないだろう。

 

 

 「貴女は天才。デザインも型紙も、縫製ですら、もうプロで通用するよ。私もデザインは自信あるけど、型紙と縫製はそんな域にはないし、なくていいと思ってる。でも、貴女はすごい、全部出来てる」

 

 お母様からデザイン、お父様から型紙と縫製、その双方の素養と才能をすべて僕は受け継いでいる。だからそれは僕にとって当然の事実であるのだけど、それでもデザインで言えば僕と同じく天才である彼女に認められることは、悪い気はしない。

 

 「デザインは才能の世界だし、型紙だって才能がないと一流にはなれない。でも縫製は時間かければ才能なくても一流になれる分野だけど、やっぱりセンスの差は出るよね。才能ある人は、一度で覚えてその先もスイスイやってしまうから」

 

 一を聞いて十を知る、ということだろう。たしかに、僕はお父様からも衣遠伯父様からも、また紅葉からも同じように言われている。

 

 型紙や縫製は、培った時間が応えるもの、という認識が強いし、実際僕に教えてくれた人たちは皆そう言っていた。

 

 けれど、僕にとってはお父様や紅葉、伯父様の言うことの要点を押さえてさえいれば、それほど難しくはなかった。だから、今の型紙を引けるようになった時間も、縫製の腕前になった時間も、きっと彼らの数分の一以下。

 

 桜小路才華は、衣遠伯父様の授けてくださったその名の通りに、華やかなりし才能の塊だ、と。

 

 もっとも、まともに動ける時間も、彼らの数分の一なのだけれど。

 

 

 「そんな貴女が、あの教室にいる意味なんてないよ。プロのアトリエに行ったほうが絶対いい」

 

 だけど、それは無理なのです。パリのお嬢様。

 

 見れば隣のエストさんも表情に影が差している。そう、知っている人には分かるのだ。僕がプロの世界に、厳しいスケジュールの世界に行けない理由を。

 

 「私の才を褒めていただき、とてもありがたいです。貴女は服飾にとても真摯な方ですので、特に。ですが、私が今のままプロの世界に行くことは出来ません」

 

 「どうして? 貴女も私みたいに『なにか足りない』と言われていたの? でもそれもおかしいよね。だって貴女は私の『足りないもの』を気づかせたくれた人だもの」

 

 彼女は、デザインは優れていたが、『服を作る』『服を着る』という意味を深く考えていなかった。でも、先日の件で彼女はその意味を理解し、この数週間自身の腕を磨くために邁進している。そのきっかけは僕たちなので、その点で言えばたしかに僕は彼女の前を行っていたと言えるだろう。

 

 だから、今の僕がプロに行けない理由は、もっと単純。

 

 

 「私は体が弱いのです。プロの仕事になると、そのスケジュールは私の体調に合わせたものにはならないでしょう。ブランドの規模が大きくなれば、なるほど」

 

 お父様とお母様の今のお話、それに伯父様の昔話を聞くだけで分かる。飛び入りの仕事や、何かのトラブルに遭った時の製作現場は、まさに鉄火場。

 

 とても僕の身体が持つはずがない。

 

 「そんなに悪いの?」

 

 「先立って1週間入院するほどには」

 

 「そっかぁ」

 

 彼女のこういうあっさりした気質はありがたい。今まで出会うことがなかったタイプの人だけど、かなり好感が持てる。僕は気遣われることは、ありがたいけど嬉しくないから。

 

 「うん、なるほどね。その場合は常に万全のスタッフ体制を組んで、白い子が不調になった場合の代わりの人が必要だし…… うわ、そうなると白い子がなんでも出来ちゃうのが仇になるね」

 

 頭の回転も早い人だ。僕がデザインし、型紙を引き、製作の陣頭に立つことになれば、その僕が倒れた瞬間その体制は崩壊する。それでも製作を進めるためには、デザイン、型紙、縫製のそれぞれのサブの人が必要になる上、どうやっても僕一人の場合の出来より細部の齟齬が出てしまう。つまりは、安定したクオリティが望めない、不安定さが常に付きまとうということ。

 

 それは、プロという面で見れば、信用に大きく関わる。街のテーラーや、ネットショップレベルならば出来るだろう(実際に『S&D』のデザイナーをしているし)けど、本格的なプロとなると、僕の体では無理だ。

 

 それでもこの身体でプロのデザイナーとなるのであれば、死を賭して臨まないといけないだろう。

 

 

 「私もプロの現場を見てきたわけではありませんが、常に自分にとって最高の環境で製作できるとも限りませんから」

 

 エストさんの言うとおり、現にお父様たちは世界中を飛び回り、製作環境も国によって変わることもある。

 

 この前聞いた話では、2人とも飛行機の中でデザインを描き、パターンを引いたとか。僕にはとてもできない。

 

 「なるほどね…… 製作環境か……」

 

 今の言葉に、ジャスティーヌさんが思うところがあったようで、また考え込んだ表情になる。

 

 「うん、いいこと聞いたかも。そうだよね、プロになったら今の私みたいに、いつも自分の部屋でデザインできる訳でもないだろうから」

 

 おお、今の話からそういう観点へとたどり着いたのか。彼女はやはり服飾に関して貪欲だ。一度火がつけば行動も早い。

 

 「あの退屈な教室でも最高のデザインが描ければ、私もプロとして遜色ないって胸張れるね。よし、カトリーヌ、明日から授業出るよ」

 

 なにより決断が早い。即断即決とはこのことかと言わんばかりの電光石火。優柔不断という言葉は彼女の辞書にはないのだろう。

 

 「は、はい。わかりましたお嬢様」

 

 「ありがとね白い子、あとアーノッツの子も。私、日本に来て早々に目標達成しちゃったから、パリに帰ろうかなって思ってたけど、まだこの国でやること出来たよ。あの教室、ほんとモチベーション上がらないから、次の目標にはピッタリだよね」

 

 彼女にとってデザイン環境が最悪の場所という点で、あの場所は意義を持ったというのはなんとも皮肉といえばいいのか。

 

 

 「そこについてはノーコメントで。ですが、彼女たちを『基準』にすることもまた勉強になりますし」

 

 「ん? どゆこと」

 

 「服飾にまったく無頓着な人に『着たい』と思わせる服はどんなものか。それを理解するという意味でも、あの教室は学べる場所だと思っています」

 

 「なるほどたしかに。面白いね、見方次第で色々勉強になる。退屈なあの教室も、別の角度から見れば教材になるもんなんだね」

 

 「ええ」

 

 例えば『S&D』や『ぱるぱるしるばー』の服を求める人たちは、それぞれのファッションやスタイルにこだわりがある人たちだ。当然、ある程度の知識があり、流行に対して敏感な人たちばかりだ。

 

 けれど、特別クラスの生徒たちは、そういったことにまったくの無頓着の人が大半を占める。だが、服に敏感な人たちばかりとは限らない。

 

 服とは、デザイン優先の人もいれば、機能優先で買う人もいる、地域によっては通気性や防寒性を重視する場所もあるだろうし、なんといっても値段というものはその中でも買い手の決める要因として大きい。

 

 それらを加味した上で、多くの人間に『着たい』と思わせるデザインとは何か。デザイナーという職種は、そこを目指して『着るだけで至福と思える服』に至るために研鑽を積むものだと、お母様は考えているし、僕も同感だ。

 

 お母様のデザインの根底には、お父様との『愛』がある。ブランドにはそれぞれ骨子となるテーマがあるが、お母様のそれは『愛と信頼』であり、メリルさんのそれは『あなたのための一着』にあたるだろう。では、僕はどうだろうか。

 

 今のところ、僕の、いや『Diana』の骨子になっているのは『憤怒』『赫怒』そして『憎悪』という激しいが持続しない感情だ。この脆弱な肉体に対する怒りと、才能を発揮できない理不尽に対する憎しみ、それがDianaのデザインの根底になっている。

 

 そうした感情は伝播するし、僕自身もいつしか初志を忘れ、怒りと憎しみに呑まれてしまう。それを打破するために、僕はこうしてここに来た。

 

 

 その成果は今、出来ようとしている。

 

 今手がけている衣装は今までの感情から生まれたものじゃない。彼女――エストという女性の側にこれからも居たい、彼女から感じられるエメラルドの風を感じたいという想い、郷愁の念から作られた衣装。

 

 この衣装の出来は、きっと僕の人生の分岐路になる。

 

 もうこの先『Diana』を続けることは出来ない。ならばこの先僕は『Eithne』と共にあるべきか、それともまた別の姿の可能性もあるのか。

 

 

 「やっぱり白い子と話すとモチベーションが湧いてくるね。私日本に来て、というより貴女に会えてよかったと思うよ。またちょくちょく遊びにくるね」

 

 「アーノッツの子のことも忘れないでください」

 

 「あ、そろそろ時間だ。先行ってるよ、じゃあねー」

 

 「そ、それでは失礼します」

 

 パリの主従は去っていった。そういえば、そろそろ休憩時間も終わる頃だ、僕たちも戻らないと。

 

 「ジャスティーヌさんと朝陽は、気が合うんだね」

 

 エストさんがソファから立ち上がりながらそう言ってきた。たしかに、僕と彼女は服飾という、自分たちが属し目指す分野に対する認識に、共通点が多い。

 

 また、僕も彼女も、恵まれた身体に生まれていないという共通項もある、ある種の親近感だ。普通ならばコンプレックスを感じるだろう己の体格に、彼女は全く頓着していない。それは自分にとって大事なものは、デザインの才能だという誇りからだろう。

 

 僕も同じだ。この弱い体を恨めしく思うのは、この才能を発揮させられないが故の慟哭。ジャスティーヌさんのそれは僕と違い、服飾に携わることへのハンデにはならないからこそ、彼女はあそこまで堂々としている。

 

 「そう、ですね。私は彼女に近しいものを感じると同時に、羨んでもいるのでしょう」

 

 「そっか。でも、才能ある人は視点が違うな、と2人の会話を聞いていて思ったよ」

 

 「お嬢様も、十分高いレベルのデザインをされていますよ。学院での評価もAですし」

 

 「そうだね。でもきっと多くの人が認めるのは彼女のデザイン。でも気持ちで負けるのは良くないね、頑張らないと」

 

 「はい、その意気ですお嬢様」

 

 僕とエストさんは教室へと向かう。

 

 尚、昼の授業でジャスティーヌさんの姿を見た紅葉はほっとした表情になっていた。よかったね紅葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼の授業で、他学科の見学に赴いた際に山県先輩と偶然出会った。そして、その際、近くに迫る連休中、音楽科のスタジオで山県先輩含む数人でリサイタルを開くとのこと。

 

 音楽のリサイタル……か。僕はとくに音楽に造形が深いわけではないけれど、あれ以来祖母の国の音楽にとても心惹かれている。

 

 夢の中で聞いたあの人の唄は今でも耳に残っている。だから、最近はよくあの国の、ケルティックな音楽をよく聞く。

 

 でもリサイタルか…… ちょっと頭に浮かぶアイデアがある。

 

 でも、僕は音楽科に知り合いはいないし、山県先輩はまだ顔見知りというレベルの付き合いだから、突然のお願いをする間柄でもない。

 

 体調の方は……まあ、多分大丈夫かな、というレベル。不安要素もある。

 

 あ、でもそうか、ルミねえから頼んでもらうことは出来るのかな。山県先輩とかなり仲良さそうだったし。

 

 親戚にお願いされたといえば、山県先輩のお友達の人も納得してくれるかな? どうかな?

 

 とはいえ、今突発的に思いついたアイデアだし、ルミねえにも山県先輩にも迷惑になるかもしれないから、どうしよう。

 

 

 

 

――この先は、あるべき未来の姿

 

 

 熟考の末、僕はルミねえに相談してみることにした。

 

 「いいんじゃない? 彼も面白そうなこと好きだから、好んでやってくれるだろうし、何より君のこと気に入ってるから2つ返事だと思う。早速連絡してみるね」

 

 ルミねえの返答はごくあっさりしたもので、僕の迷いなど取るに足らんとばかりに即決して、そして行動に移してくれたのだった。頼もしい。

 

 一度相談すればあとは早いもので、彼女はとんとん拍子で段取りを勧めていった。僕のやりたいことを詳しく聞き、彼女なりにその実現性を考えまとめた上で、山県先輩に相談を持ちかけている。やることにそつがない。これが次代の大蔵家を継ぐ者の器量か、頼もしい。

 

 「うん、そう、その天使がね、ご所望なの。で、出来れば管楽器の人も欲しいかな。声かけれる? あ、それなら良かった」

 

 どうやら、僕の思いつきは実現しそうだ。でも、そこはやはりルミねえ、僕の構想の足りない部分をどんどん埋めてくれている。

 

 

 「あ、久しぶりだね。え? この番号? 普通にお養母様(かあさま)から聞いたんだけど? というか私が住んでるの、君のお弟子さんの桜小路アトレさんが住んでるマンションだよ、そっちの情報は筒抜け。で、電話した要件なんだけど…」

 

 今は誰に電話してるんだろう。アトレの名前が出ていたけれど…… 彼女の関係者となると、美容科の誰か? 僕が知ってるのはJrさんくらいだけど、まさか彼に電話してるのだろうか。

 

 「うん、そう、あの白い妖精がね、健気でしょ。うんリハーサルはしたいね、最低でも1回は絶対に必要だし、いつなら予定つく? こっちの予定はね…」

 

 ここに至っては僕にできることは何もなさそうだ、すべて彼女に任せよう。

 

 本当に、頼りになる姉を持ったものだ。

 

 ただ1点、彼女は僕の健康状態の診断の徹底だけは心がけるようにと念を押された。

 

 おっしゃる通りですね、一番のネックはそこだと自分でも思いますので、万全を期すために体調管理を心がけます。

 

 

 

 

 

 

~ Hypnos ヒュプノス ~

 

 

 その晩、いつものように65階の、もはや2人の住居になりつつある居間で、エスト・ギャラッハ・アーノッツと小倉朝陽こと桜小路才華は、同じソファに座り、隣合わせの状態でそれぞれ思い思いの時間を過ごしている。

 

 才華は、ここしばらくの習慣である衣装の製作作業をし、エストは、今日のジャスティーヌ・アメリ・ラグランジェとの会話を思い出していた。

 

 エストは思う、2人は天才だ。ジャスティーヌはデザイン面で、そして朝陽に至っては服飾に関わる全方位の天才である。だが、天は2物を与えないのか、はたまたその並外れた才覚の代償とでも言わんばかりに、儚すぎる身体がその才能の発揮を妨げている。

 

 それは惜しい。エストもまたデザイナーを志す者であり、いつかはプロの世界へという志を抱いている。そして、あの2人の実力ならば今からでもプロに行けるが、自分にはまだその実力はない。

 

 クラスメイトのやる気のなさ…… というよりは所詮はお嬢様のお遊びの延長線上故にやむないことだが、彼女らには服飾の世界で生きていくことの気概などは見られない。

 

 自分はそれも仕方がないと思えても、天才であり、服飾という世界に誇りを抱くあの2人は、明確にあのクラスの人間を、無自覚というか、ごく自然として視界にすら入れていない。見下してすらいないのだ。路傍の石程度の認識でしかない。

 

 そう考えていた時、エストの肩に何かが触れた。

 

 「え?」

 

 隣に視線を移せば、とても穏やな表情で針糸を動かしていたはずの、彼女の白い従者が、自分の肩に寄りかかっている姿がある。

 

 一瞬不吉な予感がしたものの、聞こえてくる可愛らしい寝息を聴いて、エストは安堵した。

 

 「朝陽? 眠っちゃったの?」

 

 珍しいこともあるものだ、と思いながらも、とても嬉しい気持ちになれた。そう、いつもどこか、ルミネやアトレの前であっても固い印象がある朝陽が、こうして自分の隣では、2人きりの時は無防備な姿を晒してくれたことが、とても嬉しい。

 

 その妖精のような綺麗な寝顔を眺め、微笑みながらも、エストは改めて思う。

 

 この華奢で今にも折れそうな小さな身体に、恐ろしい程の才能が詰まっている。

 

 その差を理解するからこそ、エストは自分の目標を改めて考える。2つのデザイン、2つの顔のデザイナー。それができるのは、朝陽やジャスティーヌのような天才だけだ、と。

 

 自分には、出来ない。幼い頃の夢……いや、むしろこれは拘りなのだろう。あの時自分が大事にしていたものを、無価値にされたことが許せなかったからこそ、自分はそれに拘り続けたのだ。

 

 自分は双子の姉のことを確かに愛してはいるが…… 同時に憎んでもいる。嫌ってもいる。どうして、自分の気持ちを少しも理解してくれていないのか、と。

 

 あの桜小路アトレのように、血を分けた姉妹の心を慮ってはくれないのか、と。

 

 その上で、彼女は考える。今の自分は、どちらと一緒に生きたいのか、この先の人生を共にしたいのは、誰なのか。

 

 今まで自分は双子の姉と共に生きる道を探っていたと、そう思ってきた。けれど、その実ただ姉を見返してやりたかっただけではないだろうか。自分のデザインに感化させ、同じ道を歩ませようとしたかっただけではないだろうか。

 

 だが、天才たちを見て現実を見た。それは、彼女たちのような天才にしか出来ないこと。自分に、そこまでの才覚も、熱量もない。

 

 自分はどうしても周囲の目が気になってしまう小心者だ。だから、あのクラスの人たちとも歩調を合わせて受け流している。しかし、この可憐な白い従者は突き放す。貴女たちと話すことなどないとばかりに冷淡に振舞う。あのパリのお嬢様も、興味のない者たちには徹底して没交渉。自分にそんな勇気はない。

 

 そんな自分だが、こうして己の心を見つめていく中で、これだけは、という強い想いが生まれていることに気づく。

 

 

 「あなたと、離れたくない」

 

 体勢を変え、朝陽の頭を自分の膝に乗せて、より楽な姿勢にしてやると、やはり直に触れて伝わるのは、その身体の細さ、小ささ。

 

 ジャスティーヌとの話題であったプロに関わる話になるが、きっとこの子の身体では耐えられない。もし本当にプロになれば、この子の才能ならば一世を風靡することはできるだろう。でもそれは燃え尽きる前のロウソクのようなもので、同時にこの子の命を奪ってしまう。

 

 この子を、こんな自分を主人と慕う、健気で愛らしい控えめな笑顔を、失いたくない。

 

 その思いが、彼女の中で強くなる。共に過ごす1日1日の間に、日増しに強くなっていく。最近は同じ部屋に泊まることも増えているので、一層思いは深まっていく。

 

 ロンドン初の双子のデザイナーという目標と、この子の主人という姿、そのどちらかを選べと言われたら、今の自分は、この数ヶ月をこの子と過ごした今のエスト・ギャラッハ・アーノッツならば。

 

 

 「あなたにとっての、貴き人でありたい」

 

 姉と過ごした実家の年月よりも、隣の白い従者と過ごした数ヶ月の方が、エストの中で大きなものとなっていた。

 

 それも当然だ。双子の姉はついぞエストの心情など考えようとせず、自分の都合ばかりを押し付けていたが、白いこの子は、常にエストの心に寄りそってくれた。この頼りない主人を、「貴女と会えて良かった」「私の貴きエメラルドの主」と、そう静かに、染み入るように、尊んでくれた。

 

 そして今、この子は自分にために描いた衣装を、毎日大事そうに形にしようとしてくれている。

 

 穏やかな微笑みを浮かべ、生地に糸を通すその姿。

 

 服飾に関わることになると苛烈な面を覗かせるあの子が、どこまでも静かな表情で笑ってくれていた。

 

 そんな姿を見せられて、心を動かされない人間など、いるはずないじゃない、とエストは思う。

 

 

 「エステルの妹であることよりも、あなたの主人でいることの方が、大切」

 

 優先順位は、とうに変わっていた。エストの中でまだ認められなかっただけで、実際はとっくに変わっていた。

 

 この儚い少女は、己の身体の事情を分かってなお、溺れた自分を助けてくれたのだ。この子の、この美しい人の、側にいたいとエストは思う。そうした未来を望みたい、と。

 

 

 「あなたと一緒に生きられる未来、考えてみるね」

 

 自惚れではないのならば、きっとこの子は自分の側にいてくれる限り、アイルランドの風を感じている限り、その胸の奥にある激しさを抑えることが出来ているのだ。

 

 自分にしか出来ない。あの大蔵ルミネにも、八日堂朔莉にも出来ない、自分という存在にしか出来ないことがあるのなら、その道を、行こう。

 

 この子が、穏やかな顔で生きられる道を、探して行こう。

 

 そのために、幼いエストの拘りを捨てるのだ。それはとても厳しいことで、簡単なことではないかもしれないけれど、やろうと、そう確かに思えた。

 

 

 「いっしょにいて欲しいの。ね、朝陽」

 

 エスト・ギャラッハ・アーノッツにとって最も大事な人は、もうこの白い従者に変わっているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が眠ってしまったのは、ほんの一瞬のことだった。

 

 だから、彼女の声は聞こえていたし、膝枕されていることも分かっていた。

 

 けれど、今更起きてましたとは言えずに、そのまま眠った振りをしていたんだ。

 

 ――あなたと、離れたくない――

 

 ――あなたにとっての、貴き人でありたい――

 

 ――いっしょにいて欲しいの。ね、朝陽――

 

 そして聞いてしまった、彼女の心を。心地よい鈴の音のような声で綴られた、その想いを。

 

 僕を、必要としてくれている人の、声を、心を。

 

 お父様や伯父様、ルミねえのような、僕を守りたいという意志じゃなく。

 

 朔莉さんや九千代のような、僕への敬慕の念でもなく。

 

 そして、あの子のような、例えようのない想いでもない。

 

 ただひたすらに、僕という存在を欲してくれている、その呼びかけ。病人だからでもなく、才能や容姿でもなく、僕という、この心を持った一個の人間を、純粋に欲してくれている、その心の吐露。

 

 初めてだ、こんな気持ちになれたのは。

 

 こんなに、心が満ち足りた気持ちになれたのは。

 

 人間は、以外と単純に出来ているのかもしれない。自分という存在を必要としてくれている、そんな人がいてくれる、と思えるだけで、こうも満足できるのだから。

 

 (ありがとう、エストさん。こんな僕を、必要としてくれて)

 

 本当は声に出してお礼を言いたいけど、寝たふりをしていたことがバレるのはなんだか恥ずかしいので、心の中で言うことで許してください。

 

 気づけば、耳朶に響く音色がある、それは、僕が慣れ親しんだ唄。

 

 幼い日にこうして膝枕されて、何度も歌われた唄。

 

 かつてはお父様が歌っていたその唄を、今はエストさんが、僕を必要としてくれて、僕が必要としている人が歌っている。

 

 アイルランドの子守唄を。

 

 その歌声を聞いているうちに、僕は再びヒュプノスの誘いにのって、眠りの世界へと旅立っていった。

 

 ごめんなさいエストさん、明日は主人の膝で眠る様な失態はしませんので、今日はどうかこのままで、眠らせてください。

 

 そして、楽しみにしていてください。今度のお休みに、貴女を驚かせ、そして喜んでくれるだろうイベントを、準備していますので。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これより先は、故郷の風を感じたならば選んではいけない道

白い従者には、大切な人を二人抱え、“朝陽”と“才華”を使い分けられるほどの地力がない

二兎を追う者は一兎をも得ず

それが、辛くも悲しい現実

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ Thanatos タナトス ~

 

 

 

 ……あまり無理をいうのは止そう。急な思いつきで、多くの人の予定を崩すのも悪いだろうし。

 

 僕はルミねえに相談することを止め、2階の部屋に戻っていた。いつもは65階にすぐ向かうのだけど、今日はちょっと一休みしてからいこうという気分になっている。エストさんもそれくらいは許してくれるだろう。

 

 でも実際どうだろうか。今の僕の体調で、さっきの思いつきは出来ることなのかどうか、九千代やアトレの意見も聞いてみようかな。

 

 そう未練がましく思いながら、秘密通路を通って隣室に入る。もう下校時間を過ぎて大分経っている頃だから、2人ともいると思うのだけど。

 

 僕が二人の姿を探して、フロアの中を歩いていた時に、それは起こった。起こってしまった。

 

 「あ、九千代、帰っていたのですか。ごめんなさい、どうやらボディソープが……」

 

 シャワールームから出てきていた、妹のアトレと鉢合わせてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 ああ、この瞬間がくることを、ずっと恐れていた。

 

 目の前にはほぼ一糸纏わぬ姿の妹が居る。僕は、この姿を見ることを、ずっとずっと恐れていた。意識して見るまいと避けていた。

 

 そこにあるのは、瑞々しい少女の肌。玉の肌ともいうべきそれは、水滴を滴らせながらも張りがある。シャワーを浴びても、その水圧を弾くほどのものだろう。

 

 濡れそぼる髪も、輝いて見えるほどに艶やかだ。濡れ羽色とはこのことか、と言わんばかりに、少女らしく薫る色を運んでいる。

 

 肩から腰にかけて、しっかりと曲線を描いた女性らしい体つき。それは、彼女が確かにもう子供ではなく、大人の身体になっていることの証。

 

 彼女は命を宿せるのだろう。そういう身体になっている。

 

 「お、お兄様」

 

 だというのに、表情だけが蒼白になっている。けれど、今まで湯を使ってたばかりの体は、やはり健康的な火照りを示したまま。

 

 蒼白、とは言うものの、それはあくまで彼女の精神状態を表しているだけで、その身体は彼女の意とは裏腹に、健康的な色気を全面に顕している。

 

 何らおかしいところはない、健全で、健康で、異性が見れば見惚れ、見蕩れる少女の上気した裸体。

 

 まさに今が花盛り、生命にあふれたその姿。

 

 なにもかもが、僕とは違う、その体。

 

 彼女の精神状態は蒼白でも、その顔の色は決して僕より白くなることなどない。

 

 妹はもう女性の体をしていて、僕の身体はまだ子供のまま。

 

 

 ―――僕と君は、同じじゃない―――

 

 

 全てが違う。髪も、肌も、瞳の色も、そして生命力そのものも。

 

 「……あとれ、ふくを」

 

 自分で何を言っているのかも、よく分からない。

 

 僕はこの姿を見たくなかった。それが事実ということを察していても、現実の光景として目の当たりにすることを恐れていた。

 

 僕と彼女は、正真正銘の兄と妹。同じ両親から生まれた、血を分けた2人。

 

 だというのに、なぜこうも違うんだ。

 

 どうして、君だけがそれを持っている。

 

 どうして、僕はなにも持っていない。

 

 その肌は、僕を灼く日の光をものともしない。その体は、走ることも泳ぐことも苦にしない。

 

 その肺は、苦労せずとも呼吸が出来る。君は、薬を飲まずとも、生きていける。

 

 子供の頃は、それでもまだ差は顕著じゃなかった。幼い、男も女もない時であれば、まだ。

 

 でも、もう違うんだ。僕の体は変わることはなかったけど、君は立派な女性の体になっている。

 

 おめでとうアトレ、君は魅力的な女性になったよ。 

 

 君だけが、大人になれた。

 

 僕とは、違う。

 

 

 「お兄さま!」

 

 アトレが叫んでいるが、僕はそれに応えられる余裕はなかった。

 

 それまでに考えていたあらゆることは頭から消し飛んだ。彼女の成長した姿は、僕の芯を、心の淀みを、怒りの中核を掴んで離さない。

 

 他の誰かならば、問題はなかった。

 

 エストさんでもルミねえでも九千代でも、その女性らしい体を見ても、それでも彼女たちは、主従であろうと、血縁であろうと、妹同然だろうと、やはり他人だから耐えられる。

 

 山県先輩でもJrさんでも、衣遠伯父様であっても、その男性らしい体を見ても、やはり耐えられる。

 

 でもアトレ、君はダメなんだ。君だけは。

 

 だって、僕と君は条件が全く同じなのだから。

 

 なのに、君だけがどこまでも健康で、健常で、普通なんだ。

 

 じゃあ僕は、自分の部屋から出られずに、走ることも泳ぐこともできない、息を吸うのにも薬が必要で、常に誰かに支えられないと生きられない、僕はいったい、なんなんだ。

 

 そんな思いに囚われるんだ。どうしようもない現実に。とても脆弱で自分だけで立つことすらできない生命だという事実に。

 

 劣等感。僕は、君の体が、羨ましい。

 

 そんな恥ずべき思いを秘めていた。ずっと秘めたままでいたかった。でも眼前に迫った現実は、そんな強がりを吹き飛ばしてしまった。

 

 「ごほ… ぁ… がぁ…」

 

 その結果がこれ。まだ始まって1ヶ月なのに、僕の試みは終わってしまった。

 

 2度目の喀血。それは僕に許された最後の猶予。

 

 これが知られたら僕は入院し、きっとアメリカに戻される。

 

 

 「ぁ……」

 

 いや、この発作はそれで済むか分からないレベルだ。感覚で分かる、ここで意識を失ったら、果たして目覚めることは出来るだろうか。

 

 聞こえる、タナトスの足音が。乗ってしまえば、二度と戻ってくれない誘いが。

 

 これが桜小路才華の現実。この弱い身体の限界値。

 

 

 ………ふと考える。僕がこうなった理由は、きっと迷いがあったから。エストさんと共にある未来を、この身体を引きずっても生きる可能性を、夢見たからではないだろうか。

 

 死に近い身体を抱えながら、生きる未来を望んだ矢先の出来事だったゆえ、僕は無様にもこうなってしまった。

 

 だけどもし、もしも、あのアイルランドの乙女と出会うことがなかったら、僕はどうアトレと向き合っていただろう。

 

 今のような状況になった時も、やはり血を吐いて倒れるのか、それとも。

 

 血を吐きながらも、死を受け入れながらも、妹と『彼女(さいのう)』の願う姿に、なろうとするのだろうか。

 

 そう、死に行くまでの期間を、閃光のように輝かせ、母をも凌駕し、世界を圧倒するデザイナーに。

 

 死を受け入れ、死と向き合い、死を抱いた、白夜のような輝きを放つ、男性へと。

 




次の話は、同じ日に投稿します。

一つは、これまで通り朝陽が昇る日の出の時刻に。
もう一つは、夕陽が沈むはずの日の入りの時刻に。

極圏における白夜においてのみ、朝陽と夕陽の境界線がなくなる


いずれの道が、徒花の絢爛なりや
いずれの道が、銀糸の繭なりや

どれほど願おうとも、選べるのは唯一つ

さあ、貴方は、貴女は
誰を選び、何を願うか、その答えをここに
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