FE風化雪月 秩序の守護者と名も無き英雄 作:ストームライダー
「団長!やはりジェラルト団長ではありませんか!私の事を覚えていらっしゃいますか?自称貴方の右腕アロイスですぞ!」
アロイスの豹変ぶりにアレンは戸惑いを隠せず、ジェラルトは面倒といった感情を隠す気もなく対応を開始する。
「相変わらず、うるせぇな、アロイス。俺は今は傭兵だ。次の任務がるからまたな。」
「ええ、また何処かで・・・・てそうなるわけないでしょう。大修道院まで来てもらいますよ団長。」
ジェラルトとアロイスの会話を聞き流し、アレンは自身の攻撃で傷ついた兵士の治療に付き添った。傭兵団に所属している白魔導士に盗賊団との戦闘で負傷した団員と共に、セイロス騎士団3人を治療してもらう。その後簡単な治療はアレンの方で引き継ぎ、手際よく治療を終わらせていく。
「セイロス騎士団3人相手に無傷で勝利するなんて、貴方やるわね。」
アレンが後ろを振り返ると、いつの間にか治療用天幕へと入ってきている赤色の装束を纏った少女が立っている。こちらを値踏みするように眺める少女にアレンは警戒心を抱かずにはいられなかった。だがそれを悟らせぬように平常心を保ちながら、立ち上がる。
「貴方もけがをしたのですが?」
「いいえ、あの程度に私は遅れを取らないわ。・・・この団には優秀な人材が沢山いるわね。セイロス騎士団歴代最強の騎士、ジェラルトは勿論、あの女性の剣士に、・・・それに貴方。」
「買いかぶりでしょう。私の腕はジェラルト団長にも、ベレスにも及びません。」
少女はこちらを値踏みする視線をこちらに向けたまま、再度口を開き出す。
「貴方、帝国で働く気はない?何を隠そう、私はアドラステア帝国、第一位の皇位継承者、エーデルガルト=フォン=フレスベルクよ。」
その名前を聞いた瞬間、アレンは固まった。その名前はこのフォドラに住む人間であれば、一度は聞いたことがある名前であり、そして途轍もない権力の持ち主の名前だからである。
このフォドラにある最古の国の次期皇帝。エーデルガルトはそう名乗ったのだ。
そんな人間が何故自分に興味を持ったのか、更に疑問が生まれ、アレンは更に警戒心を持たざるを得ない状況となってしまった。自身の持ち合わせる出来る限りのポーカーフェイスを作り、冷静を装ってから口を開く。
「ありがたき申し出ですが申し訳ありません。私はこの傭兵団を離れる気はありません。」
「そう・・・残念だわ。」
そう言ってエーデルガルトは天幕を後にする。思いも寄らない心労にアレンはその場で倒れこむ。その瞬間にまた天幕が勢いよく空いた。
思わず声が出そうになりながらも、必死に押し殺して上を見上げると、無表情のままだが、どこか不思議そうな顔をしたベレスが立っている。
「どうかした?」
「ジェラルトが探していた。目的地を変更してガルグ=マク大修道院に向かう。」
「・・・・わかった。」
それからすぐに移動を開始し、昼前までには修道院に到着する。道中、目を覚ましたセイロス騎士団とアレンは無事和解で来き、予定は大いに狂っているが、順調な1日を送れているとアレンは考えていた。
だがその後、ジェラルトはセイロス騎士団に引き抜かれ、ベレスは士官学校の教師となることがジェラルトの口から団員へ向けて伝えられる。教団はジェラルト傭兵団をセイロス騎士として迎える用意があると同時にジェラルトは伝えた。だがそれが表すことは事実上のジェラルト傭兵団の解散だった。
殆どの団員が教団の提案に従い、セイロス騎士団で働くことになった。だが数人は傭兵の気楽さが無くなるという理由で修道院を去っていった。
「お前に頼みと言うか、ほぼ命令があるんだ。」
ジェラルトが事実上傭兵団の解散を宣言した場所に最後まで残ったアレンに話しかける。座り込んだまま、暫く動かなかったアレンだったが、ジェラルトの言葉には直ぐに反応すると立ち上がった。
「何でしょうか?」
「お前はセイロス騎士団じゃなくて、ベレスと一緒に教師をやってほしいんだ。アロイスがお前の腕に惚れ込んでな、今籍が空いている格闘術の師範にお前を推薦したらしい。ベレスもちょうど新任とあって、お前ら2人で担任を受け持つ形になった。ベレスが担任、お前が副担任だ。」
笑いながらそう話すジェラルトにつられ、アレンも笑い出す。
「それはお願いではなく決定事項を伝える命令ですよ、団長。」
「だから言ったろう。お願いではなく命令だってな。それじゃ後はベレスと話し合ってくれ。」
そう言い残すとジェラルトはその場を後にする。最後まで残ったアレンは直ぐに場所を移動しベレスを探した。
結果直ぐにベレスと合流することが出来、共に修道院に併設された士官学校を見て回った。生徒に一通り挨拶を済ませた後、夕方になった修道院の食堂でその日最初の食事を取っている。
相変わらずの無表情であったが、ベレスなりに緊張していることがアレンには感じ取れていた。何も会話をすることなく、食事だけ進んでいく。アレンもおしゃべりな方ではなかったが、流石に会話の全くない2人での食事は耐えられなかった。
「ベレスはどのクラスを受け持つつもりでいるんだ?」
沈黙を破った突然の問にベレスは口元まで運んでいたスプーンを一度食器まで戻し、視線も食器からアレンに移す。
アレンとしては食べながら適当に話せばいいと考えていて、ベレスも食べながら話すだろうと考えていた。しかしこのベレスの行動に予想外され、真剣な話をより真剣な面持ちでしなければいけなくなった。
「今日の君は驚いてばかりだね。」
「今は驚くまではいっていないよ。それで、どのクラスにするつもりなの?」
「自分は青獅子の学級が一番、教えられることが多いと感じた。剣や槍を使う生徒が多いみたいだからね。君も自分も接近戦で戦うスタイルだから、そこがいいと考えた。」
ベレスの考えにアレンは納得する。自身もベレスも弓や魔法の対応法は知っていてもそれ自体を使用する技術は乏しい。そこを考慮すれば、魔導士の多い黒鷲の学級、弓兵の多い金鹿の学級では伝えられることは少ないだろう。
的確なベレスの発言にアレンも食事を中断し考え込む。
暫く無言の時間が続き、アレンは目を瞑って考え込み、ベレスは何もせずにただ考えるアレンの様子を眺め続ける。熟考を終え、目を開けたアレンに今度はベレスが質問をする。
「君はどのクラスを受け持つべきだと思う?」
「僕も・・・青獅子の学級を受け持つべきだと思う。」
「理由を聞いても?」
「武術を伝えるという点だけで言えば、殆どベレスと一緒だよ。そこに加えることがあるとすれば、青獅子の学級の生徒は級長のディミトリを含めて、明るさの中に陰りを感じた。無理して明るく振舞って心には深い傷を負っている・・・そんな気がするんだ。」
ここで一度話区切って、深呼吸をしてからもう一度口を開く。
「ベレスは知っていると思うけど、僕はジェラルト団長に救われたから、今度は僕が誰かを救ってあげたいんだ。傭兵という活動を通して、人を救って来たとは思うけど、1人1人をきちんと「見て」あげたいんだ。僕の理由は私情が多く含まれているけど・・・ね。」
それを聞き終えると、ベレスは食器に戻していたスプーンをまた口へ運び始める。今度は視線を食器に落としたまま、口を開いた。
「2人とも同じ意見なら、青獅子の学級を担当しよう。明日謁見の間でレア様に伝える。」
「うん、頼むよ。」
その後、2人は一言も話すことなく食事を続け、割り当てられた部屋へと戻っていった。