主人公への憑依は並行世界の破滅となるか?   作:髪色

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前半が並行世界転移前で後半が前回の続きです


有沢たつきの指摘/黒崎一護の崇拝

 まだユーハバッハがソウル・ソサエティに侵攻していない頃、藍染が敗北していない頃、黒崎一護は友人である有沢たつきと談笑していた。

 

「たつきちゃんには話しておいた方がいいかな、今まで通りだったら内緒にしておくつもりだったんだけど」

 

 黒崎一護の部屋にて二人の学生は寛いでいた。

 黒崎はコーラを飲んで、有沢たつきはポテトチップスを食べていた。

 

「何を?それよりこのクッション何処のやつ?気持ち良すぎて抜け出せないんだけどさ」

 

「ああそれね、雪緒の会社で開発中の商品、名前は『人をダメにするクッション』だよ」

 

 『ワイハンス・エンタープライズ』それは雪緒・ハンス・フォラルルベルナが運営する会社の名前だ。

 本来父親の会社をハッキングして潰してしまうはずだった彼だが、独善的な救世主(黒崎一護)によって人生の分岐点を異なる方向へと歩んでいった。

 元あった物語(筋書き)よりも早いタイミングで社長に就任し(父親から会社を乗っ取り)、黒崎一護の想定より早く事業拡大に取り掛かった。

 今では多方面に事業を展開している。

 とはいっても黒崎の行動により何もかもが上手くいったわけではない、より悪くなった点もある。

 だが、間違ななくこれだけは言える。

 広くなんでもある退屈な部屋にていた雪緒にとって、独善的で未熟ながらも対等に接してくれる黒崎一護は心の救いとなったことだろう。

 

「ネーミングセンスが壊滅的」

 

「何言ってるんだいたつきちゃん、商品名ってのはわかりやすさが大事なんだ・・・・・・まぁ少し安直すぎるのは否定しないよ。多分発売時には雪緒の広報部門がなんかいい感じのそれっぽい名前をつけてくれるはずだ」

 

「あやふやじゃん」

 

 そして『人をダメにするクッション(仮題)』はワンハイスが開発中のクッションで、微粒子ビーズとニット地が生み出す独特のやわらかふにゃふにゃ感が心地いいらしい。

 

「まぁそれはさておき本題に入ろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()には知らなきゃ行けないことが幾つかある」

 

 はっきりいってこの事態は黒崎にとって予想外だった。

 まさか自らが虚圏に訪れている間に、現世に朽木ルキアが来ていたとは思いもよらなかった。

 更にその力がたつきちゃんに譲渡されるなんて、予想もしていなかったのだ。

 本来あるべきだった物語とは違い、長年霊力を覚醒させた黒崎のそばにいたせいで中途半端に霊圧知覚が育ってしまったのが、今回朽木ルキアを視認してしまった原因かもしれない。

 

「・・・・・・まだイマイチ実感が湧かないんだけどね。一護と同じ力を手に入れた実感がさ」

 

 有沢たつきは薄々気づいていた、黒崎が何か超常的な力を隠し持っていることに。

 幼馴染の自分にすら教えてくれなかったことに。

 このような形で秘密が明らかになるとは思っていなかったが。

 

「段々慣れてくるよ、霊力を狙ってやってきた虚を撃退しなきゃいけないし。それとも僕がずっと守ろうか?」

 

「大丈夫だって、自分の身くらい自分で守れるっての」

 

「ま、たつきちゃんならそう言うか」

 

 護られるのなんて馬鹿馬鹿しいとばかりにかぶりを振るたつきに対して薄く微笑む黒崎、なんてことのない日常の一幕だ。

 

「それで、結局知らなきゃ行けないことって何?」

 

「んー色々あるけど・・・・・・まずはこれから行こうか。死神についての大まかな説明は朽木さんから受けてるだろうし、僕が死神の力を持ってるってのもこの前言ったし。それでは僕の正体と完現術の固有能力について」

 

 死神の詳しい部分までは聞いていないだろうが、それはおいおいでいいだろうと彼は考えた。

 いきなり四大貴族がどうたら言われてもわかるわけがない。

 

「能力ってあれでしょ?瞬間移動みたいなの」

 

「ななななんでそれを知ってるのかなぁたつきちゃん⁉︎」

 

 当然のようにサラッと言う有沢たつき、対して黒崎はいつにないくらいの驚きよう、余程知られていたのが衝撃的だったらしい。

 

「『今起きたところ』って電話の数分後に待ち合わせ場所に現れたり教室に現れたり、明らかに時間のない休日に『東京行ってきた、ラーメン美味しかった』とか言ってる人間を誰も疑わないとでも?バレバレよ」

 

「うグッ、返す言葉もございません・・・・・・てことはチャドとかにもバレてたり?」

 

「当たり。本人は『一護の隠し事を暴こうとはしたくない、話してくれるまで待つ』とか言ってるけど」

 

「え?これ隠せてると思ってた僕が一番恥ずかしいパターンでは?」

 

 はっきりいって黒崎は鈍感と言える、何もそれは他者から向けられる恋愛感情云々に限らない。

 彼は他者から自分がどう見えているかについてとても鈍いのだ。

 その原因は多々あるが、一番には自分が黒崎一護の偽物であると言う自己評価の低さが該当すると思われる。

 

「え、マジで隠し通せてるとか思ってたの?」

 

「はい!この話終わり!能力の説明に参ります!」

 

 あれでよく隠せてると思ってたな、と少し引くたつき。

 てことはあいつも?と誰にどこまで知られているかわからずに恐怖しながら黒崎は話を続ける。

 

「まぁ言ってしまえば僕の能力は瞬間移動だよ。正確にはちょっと違う。能力名は座標転移(チェンジ・ザ・コーディネート)

 

「コーディネートって言うと・・・・・・衣装?」

 

「いいや座標の方、僕は一度行った場所の座標を記録してるんだよね。別にメモ取ってるとかじゃなくて能力が勝手に覚えてくれる。それで能力を使おうってなった時に、勝手にパッと頭の中に目的地周辺の座標が浮かんで来るんだ」

 

「へー便利じゃん、それを利用してワープすると」

 

「そゆこと、細かな座標を指定して僕一人まるまる入るくらいの直方体を作る。そして僕の方でも全く同じ直方体を指定する、その二つを入れ換えてワープするってこと。ちなみに直方体を想像してから転移までに数瞬のタメがいる」

 

「・・・・・・それ転移先に人いたら相当グロいことになんない?」

 

 たつきが危惧しているのは人体の分断、直方体の面の部分に人がいたら入れ替え時に切断されてしまうのではないのかということ。

 だがその心配は今のところない。

 

「あーそれね、僕も最初の頃それを危惧してたんだけどどうやらその心配はないっぽい。木とか人とかそういう一定以上の大きさのものが面に触れてると発動できないんだ。安全装置的なやつ?まぁともかくだからいつも空中で転移してるってわけ」

 

 座標転移は一度行ったところに行く能力ではなく座標を入れ替える能力である。

 幾つか条件はあるが、それでも便利なことには変わりない。

 雪緒と月島以外のXCUTIONのメンバーは彼の能力を単にワープと認識している。

 これはもしもの時に備えて切り札を隠し持っていくなどという大そうな目的ではなく、黒崎の『みんな奥の手隠してるんだから僕もなんか隠したい、けど僕のやつは応用性ないしなぁ・・・・・・そうだ!座標転移をワープと誤認させよう!別にそこまで違いはないんだしいいよね!』というなんともくだらない戯れだ。

 はっきり言って馬鹿のすることである、その能天気さに救われた者もいるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・★

 

 

 

 

 

 

 世界を跨いだことにより彼の能力はバグを起こした。

 本来であれば容易く元の世界に戻れる能力、だがそれは不可能となった。

 例えば尸魂界に跳ぼうと思ったのなら、見えざる帝国の侵攻により瓦礫だらけになってしまった都市に跳ぶはずだ。

 座標を入れ替えればそこに着くはずだ。

 だが実際着くのは平和な尸魂界、この世界の尸魂界だ。

 つまりは元の世界で訪れた場所の座標がそっくりそのままこの世界に置き換えられていることを意味する。

 それを黒崎一護は直感と経験により理解していた。

 具体的には行ったことのないこの部屋の外に、何故か跳べてしまえると脳内で理解したからだ。

 前の世界で訪れていた『部屋の外』に。

 そして彼の能力は斬魄刀を用いたもの、折れた卍解では使用不可能だと悟り始解へと戻す。

 

「─────井上さん!捕まって!」

 

 打算があった。

 このまま元の世界に戻ってもユーハバッハに勝てる望みは薄い、ならば僕のような偽物とはほど遠い本物の英雄(黒崎一護)を一時的に僕らの世界に連れて来ればいいのではないか?

 彼はそう考えた、それが可能かはさておき案としては悪くないだろう。

 そしてそれならば恩を売っておくに越したことはない、織姫を救出しておくに越したことはない。

 今井上織姫を現世に連れて帰ったことにより、定められた物語が崩壊してしまう恐れがあるが、偽物にはそんなこと全く関係がない。

 

 更に今の言葉はブラフだ。何か手を触れることで発動可能な能力を保持していると藍染に思わせるための。

 実際にはある程度の距離なら離れていても、丸ごと直方体で囲って転移できるというのに。

 そのブラフにそこまで意味はない、せいぜい鬼道によって触れるのを妨害されても鬼道ごと転移できるということだけだ。

 それも質量を持ち大きい鬼道ならば、安全装置が働き転移できなくなってしまう。

 そして黒崎は織姫の手を掴もうと床を完現術して走る、その裏で直方体を想像しながら。

 

「マジ⁉︎」

 

 しかしそれは叶わなかった、鬼道による妨害ならなんとかなっただろう。

 だがそれは完現術に似た力、虚の力だった。

 光が織姫を包み込んでいた。

 

「君も黒崎一護だというのに、随分と違うじゃないか。口調、行動、鬼道、何もかも。並行世界というのは瓜二つな物だと思っていたのだが、どうやら私の先入観の表れだったようだ」

 

「僕が特殊なだけだよ、多分他は似たり寄ったりさ。それより・・・・・・反膜(ネガシオン)だっけ?これまた虚らしいね、死神としてのプライドとかないの?」

 

 なんて微塵も思ってない言葉を挑発として口から吐き出しながらも、彼は目の前の現象に頭を悩ませていた。

 反膜とは大虚が同族を守ために使用する技、黒崎はこれを一度しか見たことがない。

 双極の丘、ルキアが処刑されそうになったあの時だ。

 虚の力であり技術そのものである反膜が完現術と反発し、転移が不可能となってしまったのだ。

 他の者の完現術ならこうはならなかったであろう、あくまで黒崎一護の特殊な完現術に対してのみ発動した、藍染すら予想し得なかった事象。

 

「可笑しなことを言うね、私は虚の力を活用しているだけなのだというのに。それに死神のプライドなどといったものは四十六室のような愚物にのみ持たせておけばいい」

 

「あっそ。で、なんで僕が並行世界からきたって知ってんの?」

 

 雑な挑発。

 先程まで全てを諦め敗北したというのに、随分と気が大きいものだ。

 言ってしまえば彼は小物。

 本来戦う筈だったオレンジ髪の死神代行(真の英雄)に比べて精神が幼い。

 だがそれもまた彼の良さであり欠点なのだろう。 

 

「・・・・・・先程自ら語っていただろう?」

 

「あ!」

 

 こいつマジで言ってんの?といった顔をしながら指摘する藍染、黒崎はそういえばそうだったと思い少しだけ恥ずかしくなった。

 不意打ち織姫奪取に失敗した以上逃げるしかない。

 卍解をユーハバッハにへし折られたため全力での戦闘は不可能、その状態で藍染含む十刃全員との戦闘は流石に無理だ。

 藍染も椅子から立ち上がった、本格的な戦闘になる前に逃げなくてはといった思考が黒崎を支配する。

 

 ふと井上織姫の方を見ると此方を警戒していた、無言で。

 何故だろうかと少し考えて、当たり前かと自嘲する。

 親友と瓜二つの男がいきなり猛スピードで向かってきたんだ、警戒して当然だ。

 こっちの井上織姫からしてみれば黒崎の事情なんて知ったこっちゃないんだから。

 

「ああクソッ!助けられなくて悪いね井上さん。囚われの崩姫を助ける役目はオレンジ髪の彼に頼むよ」

 

「先程の言動からして転移系の能力・・・・・・完現術の使い手か?」

 

「勘が良すぎんだよあんた!」

 

 

 相手は藍染惣右介、既に幾千もの策を弄していてもおかしくない。

 長居は危険、さっさと去るのが正解だ。

 既に自らを囲った直方体は思い描いた。

 さぁ、転移を。

 

「ありがとね、井上さん─────」

 

 目が覚めたとき傷が治っていた。

 恐らく井上さんの完現術だ。

 ならば礼を言っておいた方がいいだろう。

 これから一人の少女を味方が誰一人いない虚の世界に置いていくというのに、彼の心には罪悪感など微塵もない。

 何故なら確信してるから。

 本物の黒崎一護が助けに来るだろうと信じているから。

 それは盲目的なまでの信頼。

 絶対的な崇拝。

 会ったこともないのに、喋ったこともないのに、その活躍など紙面の上でしか知らないのに。

 本物ならたつきちゃんを死なせなかった。

 本物ならあれだけ時間を掛ければもっと強くなれた。

 本物ならユーハバッハに負けなかった。

 哀れに偶像に縋っている。

 もしも藍染が彼の事情を知ったとしたらこう言い放つだろう。

 

 

 

 

  ─────憧れは理解から最も遠い感情だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリ主は色々と歪んでます
よければ評価お願いします
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