黒崎凪は不純物である 作:三世
雨が降っている。
あの日と同じ、煩い雨だ。
あの死神にやられてから、意識が嫌に朦朧とする。
俺は、ここで死ぬのだろうか
「ダメだなあ、少年……」
雨の音が、消えた気がした
「……キミは未だ弱いってのに」
知ってる声が、聞こえた気がした
「それじゃあ私のことなんて一生護れないよ?」
うるせえ、と叫びたい
声は出なかった
「……
温かく、包まれた心地がして
「眠っちゃいな、後は私が何とかするからさ」
雨が、止んだ気がした
「……ごめんね」
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「……眠ったかな」
「お疲れ様ッス」
後ろから、下駄の音がする。
「喜助さん」
傘を渡し、おにぃのことを担ぐ。
「……本当にいいんスか? 彼に正体を教えないで」
「……おにぃが知るにはまだ早いから」
帽子で隠れた目が、見開かれたような、そんな感じがした。
「……そうッスか、じゃあ一護クンを死ぬほど扱いても文句は言わないでくださいね」
「うん、ボロ雑巾になるまで扱きまくっちゃって」
そのまま、彼と同じ方向へ歩き出す。
「それなら、コレを渡しときますね」
「……? 何これ」
渡されたのは、義魂丸に似た、飴のような球だ。
「ボイスチェンジャーみたいな物ッス、仮面だけじゃ絶対気づかれますから」
「……わかった」
直ぐに口の中にほおり込むと、喉が変な感覚になる。
「……なんか変な感じ」
声が低く、男性のような声へと変わる。
「あ、それ10日間ずっとそのままなんで」
「は?」
それを最初に言えよ
「……やっぱりアンタは胡散臭い」
「そんな睨まないでくださいよ、別に10日間は家に帰んないんスから」
だとしても……はあ……
「鉄裁さんに頼んで夕飯抜きにしてもらお」
「凪さんがスか?」
「ぶっ飛ばすよ?」
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……痛くねえ……?
やべえ、俺もいよいよ死ぬのか
多分これ死にかけて痛みも何もわかんなくなってんだ俺
そういえばさっきまであんなに冷たかった体も、なんか温かい気がする……
……あったけえ……
「ムッ」
……!?!?!?
「ウぎゃあああああ!!! 」
「おお! 素早い反応! いいですな!」
なんだ!? なんだコイツ!? 何でこんなに顔近づけてんだこいつ!!!
「店長! 黒崎殿が目を覚ましましたぞ店長!」
「テメー見たことあんぞ!! ゲタ帽子の仲間だろ! なんで俺のフトンに入ってんだよ!? 出てけっ!!」
布団の上で格闘すること数秒、目の端に死覇装が写る。
「……鉄裁さん、とりあえず離れてあげて」
男の声、何故か死覇装に羊の仮面を着けた、小柄な人が見える。
「ムッ、分かりました」
……やっと離れた……
「ホラダメですよ黒崎さん、傷なんてまだまだ塞がっちゃいないんだ」
「……ゲタ帽子……!」
そういえば……ここ、オレの家じゃねえ……?
「あんまり動くと死にますよン♡」
襖に畳、少なくとも俺の家でないことは確かだ、つまり
「……そうか、ここあんたの家か」
「ご名答♡」
扇子をパチンと鳴らし、こちらへ指を向ける。
「……私は出てますね」
男の声が襖から出ていくのが見える。
「……あんたが俺を助けたのか」
「おや? 心外っスねえその言い方、まるで助けて欲しくなかったように聞こえる」
─────…………
目の奥に、あの後ろ姿が見える
「……石田は、どうしたんだ」
「彼は帰りましたよ、元々彼は血さえ沢山出ていましたが傷自体は大したものじゃなかった、あのまま放っておいても丸2日くらいは死ななかったでしょう」
脳裏には、血を流して倒れている石田の姿が映る。
「だから傷自体はあの場で殆ど治せました」
「……そうか」
「で、どうするんスか?」
どうする……ハッ、俺にどうしろってんだ
「……俺にどうしろってんだよ……ルキアは尸魂界に帰っちまったんだぞ!! どうやって尸魂界に行けってんだ!? どうやって助ければいいんだよ!!」
叫んでも、何も意味をなさないのは分かっている
怒りの矛先を間違っているのも分かっている
だけど、もうどうしようも出来ないんだ
「……本当にないと思いますか? 尸魂界に行く方法」
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「……さて、と」
あの後直ぐに義魂と入れ替わって、勉強部屋にいる訳だけれども
「私は何すればいいのさ」
明日にはおにぃの勉強会が始まるため、今はその下準備……と言うかほぼ打ち合わせをしている
「凪さんには、黒崎さんと一度手合わせをして頂きます」
「……手合わせ?」
「ハイ、彼が死神へと戻ることが出来たのなら、一度アナタと戦わせます」
手合わせ、まあ確かに実践練習が一番いいのだが……
「……私、おにぃのこと殺しちゃうよ?」
多分、私は手加減が出来ない
「まあ、その時はその時っス」
「無責任だなあ……」