黒崎凪は不純物である   作:三世

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−1 黒崎凪は弟子入りする

 

 母の葬式から1週間、あれから兄とは余り話していない。

 私も兄も学校に行かず、兄はあの河川敷で母を、私は夢で見た駄菓子屋をずっと探していたからだ。

 夢が本当ならこの町の何処かにあるはずだが、未だに見つかっていなかった。

 

「……無いな」

 

 ムシムシとした熱気の中、地図を片手に持ち町を闊歩する。路地裏も大通りもくまなく探したが、未だ件の駄菓子屋は見つからずにいる。

 

「暑い……」

 

 泣き言を言っている暇など無いのだが、どうしてもこのジメジメとした暑さには応えるものがある。

 

「……いッ!!」

 

 片手の地図を見ながら歩いていると、頭を揺れるような痛みが襲ってきた。

 痛みに耐えかねていると怪しげな服を着た、知らない大人の声が聞こえた気がした。

 

「あの〜……大丈夫ッスか?」

 

 暑くて幻影か幻聴に襲われたのだろうか、どちらにせよ知らない大人ならば気をつけなければと考え、更にこの大人からどう逃げようか考えていたその時

 

 私は地面に倒れていた。

 

 大人の焦った様な声が頭の奥に響く。ザマアミロ不審者めが、この状況を見た大人の人が通報してくれればこの大人は捕まるだろう。

 何故ここまで自分がこの大人を嫌うのかは分からないが、もう既に、私の意識は消えかけていた。

 

 

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「……知らない天井だ」

 

 木造の、私には余り馴染みの無い和室で私は起き上がる。

 すると布団の足側にいた、厳つく、筋骨隆々としたおさげの男性と目が合う。

 何故だろうか、私はこの人のことを知っている気がする。

 

「起きましたか、私は店長を呼んでくるので少し待っていてください」

 

「あ、はい」

 

 厳つい見た目の割に少し理知的な感じがするのは掛けた眼鏡のおかげだろうか、だがそれも首から提げたエプロンが崩し、何処かチグハグな雰囲気を醸し出している。

 

 目の前にいた男性の見た目について考えていると、カラカラと襖が開く音がして、薄い金髪の白と緑の縞模様をした帽子で目を隠した男が入ってくる。

 

「おはようございますお嬢サン、体調はどうです?」

 

「あ、不審者の人」

 

 まずい、思っていることをそのまま口に出してしまった。

 

「ふ、不審者? アタシってそんなに怪しげに見えますかね?」

 

「怪しいって言うか、胡散臭い」

 

「うぐっ……これまたヒドイこと言う子ですね……」

 

 思ったことを率直に言っただけだ、私は悪くない……ハズだ。

 

「で、どうです? 治りましたかね」

 

「……多分、治りました」

 

「そうっスか、よかった……それならお家まで送り届けましょう、どこら辺ですか?」

 

 それにしても、何故だろうか……私はこの顔を1度何処かで見た事があるような気がしてならない。

 

「……? あの〜、大丈夫ですか?」

 

 もっと小さな頃に会ったことがあるのか? ……いや、私がこんな胡散臭い人間に会ったら絶対に忘れないだろう。

 ならば夢か……? もしかすると最近の夢の中で見た事があるのかもしれない

 

「ありゃ、もしかしてまだ完治して無い感じですかね……やっぱ黒崎サンとこに連れてった方がいいですかね? ……」

 

 待てよ……? 目まで隠した白と緑の帽子に薄い金髪……? もしやこの人

 

「……浦原……喜助?」

 

「……!?」

 

 飄々とした態度が崩れ、驚愕したような表情が此方へとむく。なるほど、目を見ると確かに分かる……私は確かにこの人が、大きな女の人を背に戦っているところを夢で見た。

 

「……鉄裁さん、この子にボクの名前教えました?」

 

「まさか、私の名前すらも教えておりませんよ」

 

「……ですよね」

 

 おさげの人はテッサイと言ったか……てっさい……鉄裁! 

 やはり、この人も夢で見た人だ、確か名前は

 

「握菱……鉄裁」

 

「……アタシは名前しか読んでないハズですけど」

 

 男の持つ空気が少し変わる。

 

「お家まで送ろうかと思いましたけど、このまま返す訳には行きませんよね……お嬢サン、アナタ何者ですか?」

 

 成程、胡散臭い訳だ……鉄裁さんの名前を言葉にしても、そこまで焦った様子もない。

 少し癪だし、カマをかけてみるか

 

「……黒崎凪、私は貴方の過去を知っている」

 

「……!」

 

 やっぱり、私が夢で見たこの人の過去は本物の様だ。

 

「……へぇ……気になりますね、それなら他に一つ教えてくれませんか? ボクの過去について」

 

 まあ、それは聞かれると分かっていた。何しろ私は元々この人に会いに来たのだから

 

「平子真子等隊長格八人の虚化の疑惑をかけられ現世への追放、その後浦原商店を開店」

 

「……成程、因みにその事件の犯人は誰か分かります?」

 

 この質問、確実に私の事を疑っている

 

「……藍染惣右介、及びに市丸ギンと東仙要の三人の隊士」

 

「……少なくとも尸魂界の人間ではありませんね」

 

「私を疑ってるの?」

 

 まあ無理もないだろう、浦原喜助からすれば私はいきなり現れて自身の過去を淡々と話す、怪しさしかない様な少女である訳だし

 

「まァ、そうッス貴方が藍染隊長の回し者の可能性だって十二分にあり得るんですから」

 

「私の名前、聞いてなかったの?」

 

「……黒崎サンの娘さんですか」

 

 本当にあの夢が現実ならば、私の両親はこの胡散臭い人と少なからず関わりがあるはずだ。

 

「分かりました、アタシの負けです」

 

「……勝負なんてしてないよ?」

 

「子供なのか大人なのか分かりませんねぇ……」

 

「あなたよりは子供……です」

 

「そりゃあそうでしょうよ」

 

 浦原喜助は帽子を外し、私の目の前へと腰を落とす。

 

「で、何かアタシに用ですか?」

 

 そう、本題である

 

「……私を、死神にして」

 

「そりゃ随分と笑えるお願いッスね」

 

 言葉とは相反して目は笑っていない、無理を言っているであろうか、少なくとも()()()()は大丈夫だったはずだが

 

「一応、理由を聞かせて貰えますかね」

 

 決まっている

 

「家族を護るため」

 

「……それだけですか」

 

「足りなかった?」

 

「……いえ、十分です」

 

 何故だろうか、此方を見る目が少し変わった様な気がする。

 

「分かりました、そのお願い……アタシに出来る範囲であれば叶えて差し上げます」

 

「本当!?」

 

「ウソなんて吐きませんよ……ただし、一つ条件があります」

 

「……なに?」

 

「一心サン……貴方の親御さんには黙っていて貰えますかね」

 

 ここで父だけしか名前が出なかったという事に、少し胸が締め付けられる。

 泣くのはダメだ、全部私のせいなのだから

 

「……分かった」

 

「お願いしますね、じゃあ……早速ですが始めますか」

 

 畳をずらし、地下へと通じる梯子が顕になる。

 

 待ってて、一護(おにぃ)

 

 私が護るから

 

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