黒崎凪は不純物である   作:三世

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20 黒崎凪はまた逃げる

 

「……我儘を言うわけでは御座いませんが、何故彼女を?」

 

「……このままじゃ勝てないからだね」

 

 少し大きめのテーブルを挟み、私と捩月は鏡合わせのように座っていた。

 

「私だけでは、役不足ですか」

 

「捩月とは少し相性が悪いから」

 

 捩月は目を伏せ、口を一の字に噤んでしまう。

 

「……率直に、申し上げます」

 

「……どうぞ」

 

 テーブルにバンと手をつき、椅子を倒しながら立ち上がると、此方をキッと睨む。

 ……少し転び掛けたのは見逃してあげよう

 

「私はいやです!! あのような……不埒な者と凪が一緒に戦うなど……考えただけでも……!」

 

「……」

 

 一気に私に捲し立てた後に、後ろの椅子が倒れているのに気づかなかったのか、また転び掛けていたが、結局倒れなかったのは流石と言ったところか。

 

「……私はあの子の性格は嫌いじゃないけど」

 

「……っ私よりもあんな者の方がいいと言うのですか!?」

 

「そゆこと言ってんじゃないんだよなあ……」

 

 というか

 

「こうボロクソに言うけどさ、結局あの子も捩月の一部なんじゃ……」

 

「主よ、言っていいことと悪いことがあるのは分かりますね?」

 

「……そんな嫌い? あの子のこと」

 

「……嫌いと言うか、少し苦手です」

 

 こうやってはっきりと嫌い切らない辺り、やっぱりこの子は優しい子だ。

 

「大丈夫だよ、逃げる為に使うだけだから」

 

「……そう、ですか」

 

 なんというか、昔から過保護だな、この子は

 

「……ならば、彼女に伝言をお願いします」

 

「出来る範囲なら」

 

「凪に傷をつけたら殺す」

 

 ……過保護が過ぎないか? 

 

 

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「どうしたのさ、また此処に凪を呼ぶなんて」

 

「…………」

 

 テーブルの右側の扉から、黒髪の少女が現れる。

 

「本当の事教える気なんて無い癖に」

 

「……」

 

「ねー、だんまりは酷くなーい?」

 

 唇を尖らせ、巫山戯た口調で捩月へと話しかけるが、それに対して捩月の表情は固まっている。

 

「……一つ、いいか?」

 

「なーに?」

 

「“黒”は、何処に行った」

 

「…………勘がいいなあ、青ちゃんは」

 

 否定は無し、ならば答えは一つだろう

 

「貴様……っ!!!」

 

「女の子がそんな顔しちゃダメ、可愛い顔が台無しだよ?」

 

「その巫山戯た口調を止めろ!!!」

 

 斬魄刀を引き抜き斬り掛かる……が

 

 「……残念、少しだけ気に入ってたのに」

 

「……ッ!!!」

 

 首元に当たった筈の刃は、肌に入り込む事は無く……虚しくも黒髪の手に捕えられる。

 

 「正直、あなたも少し、じゃま……眠ってて」

 

「……っ……黒を……どうした……!!」

 

 「……思ってたよりも丈夫、だね」

 

 捩月の首元に凄まじい音と共に手刀が当たり、苦悶の表情となるが、意識は保ったままだ。

 

 「黒は、こうなる運命だった。けど少し不思議、あなたは()()()の彼女が、嫌い、じゃなかった? 」

 

「……っ!!!」

 

 口を開き叫ぼうとするが、声は空を響かなかった。

 

 「丈夫だね……やっぱり、あなたはじゃま」

 

 再度首を……今度は先程よりも強く鋭い速度で手刀を当て、確実に意識を持っていかれる。

 

 「心配、しなくて大丈夫、()()()と戦う時には、起こしてあげるから」

 

 そう零す彼女の髪は、既に白色に染まっていた。

 

 

 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

「……なんだ、その形は」

 

「知りませんか? 盾って言うんですよ」

 

 涙玥を左手で構えながら右手の掌を東仙に向ける。

 チャンスは一度だけ、失敗は死だ。

 

「……何にせよ、気絶をしないのならば斬るだけだ」

 

 だよな、そりゃそうなるだろう

 

「盾持ちに近接戦を挑むなんて、尸魂界の名が泣きますよ?」

 

「ほざけ」

 

 横薙ぎの剣撃が私を襲うが、涙玥に防がれ斬魄刀が止まる。

 

「鳴け、鈴虫」

 

 涙玥を伝って細かい振動が腕に伝わり、涙玥の装甲が少しずつ削れていく。

 そう、削れてしまったのだ

 

「……っ!?」

 

 涙玥が()()()()振動し、斬魄刀をはじき返す。瞬間的に私と距離を取ったのは戦闘慣れしている証拠だろう。

 

「矛盾って言葉、知ってます?」

 

「……現世で使われる故事か」

 

「そうです、絶対に突き通す矛と絶対に防ぐ盾の話」

 

 博識だな、現世と言語は共通しててもこちらに無い言葉もあるし、ただで隊長になった訳では無いのだろう。

 

「……その盾は絶対に防げるとでも?」

 

「まさか、そんなインチキな能力じゃありませんよ」

 

 そんな能力、存在が許されないだろう。

 

「……少なくとも、剣が効かないならば」

 

「鬼道しかない、ですよね?」

 

 死神の戦闘方法は基本的に斬魄刀による剣撃の斬、白打による拳撃の拳、鬼道による攻撃による鬼、瞬歩などの歩法の走、など四つに分けられて、斬拳走鬼と呼ばれている。

 東仙が白打が苦手と聞いた訳では無いが、少なくとも彼は鬼道の方が得意だろう。

 

「……」

 

「やってみてくださいよ、当たるかもしれませんよ?」

 

 見え見えの挑発だ、彼以外なら乗るはずが無いだろう。

 

「……破道の五十四『廃炎』」

 

 ほらね、乗ってくれた

 

「それを待ってました」

 

 廃炎が涙玥に当たると同時に掻き消え、それのすぐ後に私の目の前で大爆発が起こる。

 

「勝負する気なんてハナからありませんよ」

 

 既に曲光を自分に掛けてあるため、後は霊圧の遮断を……

 

 ……バキンッ

 

 …………いま、身体から鳴っちゃいけない音が聞こえたような気がする。

 まあいい、遊び場に戻って温泉に入れば回復するだろう、その時に霊圧の出力も最大にすれば一石二鳥だ。

 

「それじゃあさよなら東仙要さん、もう二度と会わない事を祈っときます」

 

 

 △▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

「……申し訳ありません、取り逃しました」

 

 盲目の隊長、東仙要は何も無い空間に対し話しかける。いや、護廷十三隊からすれば彼自信すらも見えていないのだが。

 

「構わないよ、彼女の進行度も把握出来たしね」

 

 これまた何も無い空間から声が聞こえ、其れが瀞霊廷に響くことは無かった。

 

「それに、実力が想定以上なのもいい事だ」

 

「はい……やはり、彼女は」

 

「ああ、やはり欲しいね」

 

 何も無かった空間から茶髪の髪に眼鏡を掛けた、如何にも好青年といった所の死神が現れる。

 

「それでは、予定通りに」

 

「宜しく頼むよ、要」

 

「了解致しました」

 

 そのやんわりとした雰囲気とは裏腹に、彼の口元は、実に蠱惑的な、恐ろしいとすら感じさせる程の笑みを浮かべていた。

 

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