黒崎凪は不純物である   作:三世

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21 黒崎凪は不安となる

 

小さい頃、お母さんと都心に行った時、迷子になったことが、未だ記憶に残っている。

何せその時はまだ…6歳位だったはずだ。自分で言うのもなんだけど、その歳にしては大分ちゃんとしていた子だったと思う。

まあだから、迷子になるなんて初めてだった…最初はお母さんを探して回っていたのが、自分が何処にいるのかも分からなくて、だんだん不安になってきて、その場で泣き出しちゃったわけだ。

実際そこはなんと言うか、路地裏みたいな、少し薄暗い場所で…人は居ないものの別の何かが出そうな、不気味な雰囲気がしていた。

 

それで泣き出して何分か立ってから…人の声が聞こえて、何度か声を掛けられて私に話しかけてるんだってやっと気づいてから顔を上げると、男の人が立っていた。

まあもう9年も前のことだ、その人の顔なんて覚えてないし、私が今わかるその人の情報なんて、茶髪で眼鏡をかけていたくらいなのだが…なんと言うか、正に好青年と言った感じの、優しい雰囲気を出している男の人だったことは覚えている。

 

で、その男の人は私が一人で泣いているのが気になったのか、優しい口調で話しかけてきて、気づいたらなんか家の前に立ってた。

…そんな目で見ないでくれ、それ以降の記憶が曖昧なんだ。

で、家の前でぼーっとしているとお母さんが凄い勢いで出てきて、その勢いのまま私は抱きしめられた。

いきなりの事だったし、抱きしめられるなんて初めてだったから、ちょっと呆然としちゃって…けどそのうちに不安だったのを思い出して、その場でまた泣いちゃった訳だ。

因みにその後知った事だけど、私が迷子になってから三週間くらい経っていたらしい。

 

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

私の居ない間に卍解の修行を始めてしまったおにぃを横目に見ながら私は石田さんと向き直る。

 

「戦線離脱!?」

 

「君達はもうまともに戦える状態じゃない、このまま戦うのは死にに行くのと同義だよ」

 

既に目に見えるほどの傷は癒え、見てくれだけは全快になった石田さんを前にして、私ははっきりと言い切る。

 

「…っまだ僕は戦える!」

 

「そのヨレヨレの霊圧で言われてもな…」

 

ヨレヨレなのは霊圧だけでなく、今でも立っているのがやっとのように見える。

 

「確かに、君達が居た方が勝率は上がるかもね」

 

「…ならなおさら!!」

 

「けど其れで君達の一人でも死んだら、ルキアさんはどう思うかな」

 

語気を少しだけ強めると、口を噤んで後退る。

 

「……分かったなら少し離れた方がいい、ここじゃあ…」

 

危ないから、そう言おうとした瞬間に私の後ろの岩が凄まじい音を立てて崩れ去る。

 

「…危ないから」

 

「……ああ、身で学んだよ」

 

そう言うと背を向け、チャドさんがいる場所まで歩いて行った………意外と話聞くんだなあの人、第一印象がアレだから少し見くびってたかも。

 

「…さて」

 

捩月を鞘から抜き、目の前で掲げる。

 

「どうしちゃったのさ、捩月」

 

返事は聞こえない、さっき東仙と戦った時からずっとだ、何かが消えてしまったかのような喪失感が、ずっと私の中で渦巻いている。

 

「……結え『捩月』」

 

みるみるうちに、捩月の形が矛へと変わって行く。だが、何時もと全く同じ形の筈なのに、何かが足りない気がするのだ。

 

「…やっぱり、あの時なにかされたのかな」

 

東仙と対峙した時、ずっと何処かから視線を感じていたのだ。霊圧は感じないのに、視線だけがそこに感じる、そうなるとあの人以外に考えられない。

 

「…胸糞悪い」

 

数年は一緒に過ごして来た半身がいきなり消えたのだ、殺意よりもドロドロとした感情が腹の底から湧き出てくる。

 

「……卍解は…できるか」

 

少し霊圧を込めてみると、卍解をした時の独特の感覚がする。

…ならば尚更分からない、如何して捩月と話せないのに卍解はできるんだ。

 

「…クソッ」

 

…悔しい

捩月に何かあったことに私が気付けなかったことが

数年来の相棒に手を出されたことが

捩月が居ないと何も出来ない自分が

理由すらも解らない自分自身が

 

「……殺してやる」

 

正直、今まであの男に対してはふんわりとしか殺意を抱けなかった。彼と敵対する理由だって“おにぃが危険だから”と言った不純な理由だし、おにぃに手を出さないのなら、私自身彼と敵対することは無かっただろう。

 

…だが、あの男は捩月に手を出した

殺す理由は、それだけで十分だろう

 

「…夜一さん、手合わせお願い」

 

捩月を鞘に納め、安全な足場に安置させる。

 

「む…構わないが、捩月は使わなくてよいのか?」

 

「少し調子が悪いみたいで」

 

ごめんね、私がちゃんとしてないから

 

「…なら、白打か」

 

「ん」

 

貴方がいなくても私は戦えるって、教えてあげる

 

「…いいのか?アレは嫌いなのでは…」

 

「この状況で好き嫌いなんてしてる暇無いでしょ」

 

…だから、早く起きてよ、捩月

 





尚例のその人自身は何もしていない模様
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