最後のイタズラ   作:曽良紫堂

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第2話

 気付けば朝になっていた、昨日はあのまま寝落ちしたらしい。そのままになっていたテーブルの上を片付けテレビをつければ、やれ誰が不倫しただの、やれ誰が汚職をしただのと世間はいつも通り騒がしいようだ。

 あまりそれらに興味がない俺はボーッとそれを眺めて、極力昨日の思いを思い出さないように努力した。

 起きてから気付いていたが、あんな呑み方をした割には幸い二日酔いはないらしい。テレビに映る時刻に出勤の時間が近いことを思いだし慌ててシャワーを浴びる。

 熱いシャワーを浴びながら、どんな時でも出勤時刻通りに目覚めるようになった自分は社会に染まったなと実感した。学生の時分ならば普通にサボっていた。

 

 

 どんな時でもハードな仕事は悪友ヅラしてやって来るし、同僚はサボる。その皺寄せは俺へとやって来るのに給料は据え置き。そろそろ転職するかな。やってられない。

 思えばこの悪友のせいで俺の時間は拘束され奴との連絡も疎かになったのだ。

 そう思うと沸々と怒りも沸いて来ようものなのだが、悲しいかな俺はしがない雇われ者。大層な資産家でもない俺は、次の当てがなければおまんまも食い上げなのだ。

 したがって、日々襲ってくるこの悪友達と仲良くしなければならない。縁を切りたくても切れないところがそっくりだと思う。

 そうやって忙しく働き、帰れば泥のように眠る。そんな日々を繰り返す。何かから逃げるように。

 

 そうして幾日が過ぎ、忙しさにかまけて奴の事を忘れ始めていた頃、死んだはずの奴から一通のメールが届いた。

 

 内容は一言だけ。

 

「謎は解けたかい?」

 

 それだけだった。

 

 クソが。何でもお見通しってか? 俺が逃げてるのも何もかも。こんな俺を見てあの世でにやにやしてやがるのか。クソが。いいよ。やってやるよ! あの世で吠え面かかせてやるぞ、あの野郎!

 

 今思えば仕事のし過ぎで若干おかしくなっていたのだろう。俺はキレたテンションのまま会社を脱走し偽りの自由を勝ち取った。

 そうして大量の酒とツマミを買い込み、会社へは電話でしばらく有給を取るとだけ一方的に告げスマホの電源を落とした。

 俺は酒を呷ると、あの日から全く触ることもなくテーブルの上に放置されていた奴のスマホを手に取り再び電源を入れる。前回は途中で断念した写真データの続きを見ていく。色々なものを撮ってはいるがやはり奴の自室外の写真は出てこない。酒で奮い立たせた気が滅入ってくるが、そうして進めていくとやっと外と思われる写真が出てくる。

 

 それは病院の写真だった。

 

 続けて見ていくと診断書やら治療法のパンフレットやら点滴を刺した腕などと、奴がどんな道を歩んだのかをまざまざと見せつけられる。

自室と病院の写真が行き来して、まるで俺自身が闘病しているのではないかと錯覚してしまう。

 少し先に行くと自撮りの写真も再び出てきた。

 

 随分と楽しそうじゃあないか。俺はこんなにダウナーに入っているというのに、憎たらしい。まあ、何がそんなに楽しいのかは知らんが、楽しいなら何よりだ。辛気臭い顔を見るよりかはずっといい。今の俺のような顔よりな。

 

 酒を飲みすぎたようだ。気持ちが悪い。俺はヨロヨロと立ち上がりよたよたとトイレに向かって行き、盛大な噴水になった。

 

 翌日、俺は決意したね。もう酒は飲まんと。

 

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