最後のイタズラ   作:曽良紫堂

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第4話

 翌朝、俺は哲学に目覚めていた。

 

 何故人は学ばないのか。間違いを犯すのか。真の自由とは。薄っぺらい決意の価値とは。そんなどうでもいいような崇高な哲学に思考を割こうとすると頭に激痛が走る。

 

 こ、これは天啓なのでは? ついに俺も目覚めてしまったのか? いいね! じゃあこの勢いで会社もぶっ飛ばそうか!

 

 そうして勢いよく立ち上がった俺はそのままトイレへと駆け込み、自分の胃の中身をぶっ飛ばした。

 なにもかもぶっ飛ばして気分爽快になった俺は、またもや奴へと挑戦を開始する。

 昨日は誤魔化されたが今日はそうは行かんぞ。徹底的に調べてやる。

 そうして俺はこの文字列達をバラして順番を入れ換えて入力していく。何をしてるかって? 総当たりだ! やってりゃいつかは当たるだろ!

 

 そうして今だ哲学の宇宙から帰還していなかったらしい俺の無謀な挑戦が始まった。

 

 

 やり始めて数時間。俺は心を無にしながらひたすら文字を打っていた。

 もう何を見ても文字しか思い浮かばない。段々体も文字になって、モニターも文字になって……。

 

 ああ! そこらじゅうから文字が溢れてくる! そうか俺も文字だったのか! 最高だこの全能感は! ああぁぁぁぁ!

 

 俺が何かヤバイものを受信し始めていると、昨日連絡した友人Bから連絡が来て、そこでようやく正気に戻った。

 

 何? どうした? 昨日の数式もどきがどうなったか? ああ、あれね。あれなら俺のとなりで寝てるよ。あ? おい待て。待って待って! 冗談だよ冗談! 無事解けたってだけだよ! そう。解けたの。ありがとな。じゃ、今忙しいから!

 

 ヤバかった。あんなに素直に信じるとは。というかアイツは数式と寝てるってことに疑問を持たんのか? さすが数学科。イカれてるぜ!

 

 友人Bとの会話で完全に正気に戻った俺は、気が狂うほどの今の苦労は無駄だなと悟った。

 そもそもこんなん無理に決まってんだろ。どんだけパターンあると思ってんだ。

 俺は闇へと消えた数時間を思い身震いした。あのままだったら俺はミイラになるまでやってたね。

 そうして再び当てを失くした俺はとりあえず食事を取ることにした。メニューは冷蔵庫にあった竹輪。以上終わり。

 栄養バランスもクソもないけど仕方ないね。それしか無いんだから。

 俺は竹輪をモゴモゴと咥えながら散乱している奴の箱を片付けていく。

 この箱になんか書いてないもんかね。ヒントとか、ヒントとか。そう愚痴りながら集めていると一つの箱の外装の紙が剥がれかけて、その下に文字のような物が見えた。

 

 ……マジで? 

 

 半信半疑で紙を剥がすと、そこには謎の文字列に書かれていたアルファベットと数字が書かれていた。

 もうため息しか出ない。これであのファイルの中身がしょーもない内容なら、絶対あの世でぶん殴ってやる。

 

 決めた、決意した。二回目の決意である。

 

 萎え萎えになりながら箱をバラし、そこに書かれた数字を打ち込めばファイルは正常に解凍され、一つの動画ファイルが出てきた。その動画のファイル名を見て俺の体は凍りついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのファイル名は遺書とだけ書いてあった。

 

 

 

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