両者が実際に戦ったらどうなるのか、と聞かれると答えは一択
海上では大混乱していた。まさか、淡路島にゴジラが登場するとは思わなかった。正確には映画に出ていた姿形や鳴き声は微妙に違うが、どう見てもゴジラだ
「ど、どうしよう」
瑞鶴も混乱していたが、瞬時に立ち直り、この場をどう切り抜けるか頭を駆け巡っていた。ゴジラがこちらを見ている。本当に映画通りなら放射熱線を吐くはずだ
アウトレイジで攻撃? 噴式攻撃? 艦攻艦爆による航空攻撃?
そう言えば、ゴジラは通常兵器には効果が無かったような。映画通りに効果なかったら、どうやって倒せるんだ? 確か、映画ではある科学者が超兵器を使って骨ごと消滅させたが。しかし、それは映画の話だ。目の前にいるゴジラは、通常兵器に効果あるかもしれない
瑞鶴は矢を取り、弓を引こうとしたが、誰かが矢を持っている手を掴まれた
「待って!」
見ると翔鶴が瑞鶴の艦載機の発艦を止めていた
「下手に刺激したら艦は全滅します!」
「本当に映画通りのゴジラな訳ないじゃない。ただ雷によって突然変異しただけの巨大なイグアナとか」
「瑞鶴、そんな訳ない……でしょ……?」
ちょっとしたいざこざはあったが、翔鶴が言い終える前にゴジラが動き出した
なんと海岸まで歩くと海に飛び込み、そのまま潜っていった
遠くで巨大な水飛沫が上がったが、その直後海面にギザギザした形をした小さな山が現れた。それが、ゴジラの背鰭だと分かるのに時間は要しなかったが、問題が起こった
背鰭が水飛沫を上げながらこちらに向かっている。まるで腹を空かせたサメが来るかのようにこちらに向かって猛スピードでこちらにやってきている
ゴジラが泳いできている!
「ああっ! ゴジラ、ゴジラ、ゴジラがやっている!!」
白露が絶叫しパニックを起こしていた。時雨が宥めようとしたが、無理もない。身長100メートルものの怪獣がこちらに向かって泳いでいるのだ! これでパニックを起こすな、は無理がある
『攻撃開始! 兵器使用自由!』
提督の命令により、艦娘の艤装に取り付けられているあらゆる砲が火を吹いた
大和や長門タチノ戦艦も『おおすみ』の甲板から飛び降りると即座に火を吹いた。甲板から海面までそうとう高さにもかかるにもかかわらず、負傷もせずに見事に着水した身体能力には驚くのだから、皆は驚きの声も上がらない。怪獣が泳いでくるという前代未聞の出来事に比べたら大した事もないからである
様々な砲弾や魚雷が背鰭と付近に着弾し、巨大な水柱が上がったが、背鰭の動きは全く止まらない
「攻撃機、全機発艦!」
瑞鶴は全ての艦載機を上げた。噴式から艦攻艦爆全て。付近に戦闘機はいないため、優先的に攻撃機を上げた。翔鶴姉だけでなく、加賀もサラトガも艦載機を上げてきた
彗星から投下する爆弾と天山や流星改から放たれる魚雷に対して怪獣は回避行動すらしない
全弾命中! 命中した個所から爆発が起こった
無数の爆撃で怪獣も怯むと思ったが……ゴジラはスピードを緩めず進路も変えない。しかも、爆弾や砲弾が命中した個所は何事も無かったかのように健全だ。傷一つ付かないなんてことがあるのか?
それどころか怪獣は長い尻尾を振り回し上空を飛んでいる艦載機を叩き落とした。まるでハエ叩きで虫を殺すかのように艦載機はあっという間に海の藻屑と消えてしまった
駆逐艦も軽巡も回り込み砲撃したが、尻尾攻撃には逃げるしかなかった。全員無事だが、尻尾が海面にたたきつけられた衝撃の波に数人の艦娘は飲み込まれてしまった
「ヒッ!」
海の中を航行していたゴーヤである伊58は泳いでいる怪獣を見ていた
大きい……これが第一印象だ
深海棲艦の中で巨大な艤装を持っていた太平洋深海棲姫や南太平洋空母棲姫と比較にならない
そもそも、二つの深海棲艦は生き物をベースにしているのだから巨大になるのは仕方ない
だが、目の前の生物はなんだ? 巨大すぎる
唯一の救いはこちらに興味を持たないのか、それともエサとして認識していないのか付近を通っただけでこちらに攻撃されていない
だが、怪獣の狙いは明らかに輸送艦『おおすみ』と深海棲艦を輸送している輸送船だ。これでは提督も『おおすみ』に乗って待機している艦娘も他の人も犠牲になる
いや、この怪獣が本土に上陸したら被害はさらに増える
海面から背びれを出しながら泳いでいたゴジラが突然、消えた。いや、正確には背びれが海に沈んだのだ
「潜航した……」
「爆雷を投下しよう!」
白露は顔を真っ青にしていたが、時雨は爆雷投下を提案した。その直後、沢山の発射音が辺りを鳴り響いた。ジャーヴィスと松がヘッジホッグを発射したのだ。恐怖にかられて即座に発射したのか、それとも無意識に発射したのか
ただの潜水艦……深海棲艦の潜水ヲ級などなら大抵は仕留められるはずだ。深海棲艦なら……
爆雷が着水して数秒後海面からあちこち爆発したが、何も起こらない
『各員、海面がクリアしたらソナーをフル稼働させろ! 奴が何処へ行ったかまだ──』
提督から無線で命令していたが、突然大和たちがいる場所の近くに海面が盛り上がった。そして、みるみるうちに高さが上がり見上げる程の高さへとなっていく。それにつれて周辺の海水の動きが激しくなっていく。
やがて海水は限界まで上り詰める。そのとき盛り上った海水を突き破りあるものが現れる。巨大な目と口、黒い皮膚を持った巨体、立派な背びれ……
海面から上半身だけ姿を出した奴の姿が現れた
「た、立ち泳ぎしている?」
「そんなのどうでもいいって!」
冷静になって分析している時雨と未だにパニックになっている白露が言っていたが、今はそれどころじゃない。艦娘を含めた艦隊のど真ん中に姿を現したのだ
パニックになっても仕方ないかもしれない。だが、応戦するものもおり、ゴジラの頭部と首辺りに爆発音がした。
ゴジラが浮上したことにより押し流された大和が、体制を立て直すと即座に砲撃をした。至近距離であるため、46cm主砲弾は全弾命中。しかし、表皮が爆発しただけでかすり傷すら負わせていない
天龍が突進し剣を突き刺したが、刃は皮膚を通らず逆に刃が折れてしまった
「俺の剣が壊れた」
天龍は青ざめた。剣の心配をしているわけではない。深海棲艦で使った武器が怪獣に効果がない事を意味する
「攻撃が全然効いていない!」
瑞鶴は一連の流れを見ていた。自分たちが相手にしているものは本当に怪獣王のようだ。そっくりさんとかではなく、映画の設定をそのまま出したかのような存在だ
となると、真っ先に脳裏に思い浮かべたのは最悪の状況である
(もしかして……放射火炎を吐くの?)
瑞鶴は酒匂が先日、ゴジラの映画を話していたのを思い出していた。確か放射能を含んだ息を吐いて、あらゆるものを発火させたり、溶解させたりして東京を火の海にしたような物語だったような……
もしかして、あの怪獣もやるの?
いや、アイツは生物だ。そっくりさんのはずだ!
瑞鶴はそう願ったが、残念ながら事態は瑞鶴が思っていた最悪の方向へ転んだ。
背びれが青白く光ったと思うと怪獣は口を開き始めたのだ
「あ……あ……」
「長門さん、逃げて!」
長門は腰を抜かしたらしく、海面に蹲っていた。何時もは武人のようにしっかりとしていた長門が怪獣の姿を見て怖気づいてしまったのだ。そんな長門を大和は庇うようにして立ちふさがり、アイオワは長門を引きずろうとしていたが、間に合わない。ゴジラは狙いを定めて攻撃しようとしている!
瑞鶴は即座に動いた。手持ちの艦載機を上げる時間はない
「瑞鶴、ダメ!」
翔鶴姉の悲痛な叫びが聞こえたが、今は立ち止まるわけにはいかない。本当に吐くのか?
「大和さん、早く逃げて!」
「くっ!」
瑞鶴が叫んだが、ゴジラの方が早かった。瑞鶴が覚えているのは眩い青い光が視界一杯に広がった事と身体が突進する車に激突したかのような衝撃を受けた
瑞鶴は再び宙を舞った
提督「明石、オキシジェンデストロイヤーって作れる?」
明石「話が速攻で終わるから開発しません!」
余談ですが、全作品を通じて人類がゴジラを確実に殺したのは2回(ヤシオリ作戦によるシンゴジラ凍結など不透明は除く)。オキシジェンデストロイヤーによって骨ごと溶かされる(初代ゴジラ)のと電磁波を暴発させてゴジラフィリウスを爆死させる事に成功したハルオの作戦(アニメゴジラ)だったりする。まあ、1998年のエメゴジを含んだら三回ですが
ん?この作品ではどうなのか?
さあ?