瑞鶴の特別任務 ~怪獣撃滅プロジェクトG~   作:雷電Ⅱ

7 / 26
艦これアニメ2期で全8話は短すぎる



第7話 時空の裂け目

 ゴジラ出現から数時間後・明石港

 

「で、何が起こったんじゃ?」

 

「それは僕が聞きたい」

 

 提督の父親である博士は、元帥からの緊急連絡を受け、現場へ向かった。緊急連絡を受け現場に行かされたことは何度もある。だが、内容が突拍子も無かった

 

 内容も断片的なものだが、その中には「明石海峡から海坊主が現れ艦娘の艦隊を襲った」「嵐から黒い竜神が現れた」「深海棲艦が怪獣を従えてきた」「映画よりも逞しくなったゴジラが現れた」など耳を疑うものばかりだ

 

 こんな与太話を真に受けるよりも現場に行ってみれば何が起こるか分かるはずだ。博士も軍に所属はしているとはいえ、立派な科学者だ。なので、集団幻覚か新種の深海棲艦の姫級を見間違えたとかだろうと思っていた

 

 しかし、現場についた光景は目を疑うものばかりだ

 

 明石海峡と淡路島上空に不気味な雲が立ち込めていた。雲の内部に稲妻が発生しているのか、雲から光が漏れていた。そして、海上には奇妙な白い光が光っている。その光は発光体みたいで火の玉のように漂っている

 

 捕虜である新型の深海棲艦を乗せた輸送艦は煙をあげながら傾いていた。港にいるが、辛うじて浮いている状態だ。沖合いに艦娘の支援艦である『おおすみ』がいたが、みた限りは無傷だ。但し、損傷はしているらしく、明石と妖精たちが修復作業を行っていた

 

 付近の海岸には野次馬やマスコミなどが集まっており、警察が対応していた

 

 車を降りると柳田博士は既にいた。彼はたった今着いたようである。艦娘である宗谷もついている

 

 博士は柳田教授と一緒に港へ続く道へ行き、立ち入り禁止区域へ向かった。道路は遮断して軍と警察が警備していた

 

「現場へようこそ。調べて欲しいのが山ほどある」

 

 502部隊の曹長が迎えに来てくれた。502部隊は元々は特殊部隊だが、ある事件によって艦娘の鎮守府所属の憲兵隊になった。だが、彼らは不満はなく誰一人も離隊者はいなかった。曹長に案内されカッターに乗り込んだ

 

「どういう状況じゃ? 元帥から聞かされた話ではゴジラが現れたと」

 

「どうもそうみたいです。私は見ていませんが」

 

 曹長は博士の質問には応えた。博士の地位は中将なので敬語である

 

「すると何だ? 放射熱線でも吐いたのか?」

 

「みたいです」

 

 柳田博士も笑いながら聞いた。彼は艦娘の見間違いだろうと思っているらしい

 

 だが、それも嘲笑いから驚愕することになる

 

 

 

「ゴジラじゃな……」

 

 博士は『おおすみ』に乗り込み部屋に案内された

 

 さっそく記録用の映像を見せて貰ったが、映像を見て数分は呆然としていた。 それもそのはず。身長百メートルものゴジラが突然現れ、泳いで艦娘に向かう映像を見せられて冷静になれる訳がない

 

 ゴジラが海面から顔をだし放射熱線を吐いたところで映像は途切れた。画面はノイズが走っているだけだ

 

「続きは?」

 

「熱線は輸送艦の左舷に直撃。沈没は免れましたが、捕虜である深海棲艦が行方不明です。艦娘による牽引で明石港へ避難しました。艦娘も3人は諸に受けましたが、1人は行方不明で2人は重症です」

 

 柳田博士は訝しげに聞いたが、提督が答えた。カメラの方は熱線の影響なのか壊れたらしい

 

「ゴジラは?」

 

「熱線を吐き終えたら白い光に包まれて消えました。例の雲は全く動く気配も無いし、海域は奇妙な現象が起こっています」

 

 提督は3人についてくるように言った。部屋から出て廊下を歩き艦尾へ向かった。艦尾には広い区画があり、後部からデッキが開き艦娘を吐き出すシステムになっている。そこには艦娘達が沢山いた。野戦病院みたいになっており、手当てを受けている者もいる

 

 怪我をしなかった艦娘でも、怪獣と出会った事は初めてであるのか毛布を被り震えている者がいた

 

「親父と教授、不可解な現象が何故起こったのか解析してくれ、今すぐに」

 

 提督は今や命令形になっていた。階級立場よりもプライベートでのやり取りになっている

 

 

 

「私は見たんだ。海面から現れた怪獣の前に足がすくんだ」

 

「無理もない事じゃ。未知との遭遇だから仕方ない。じゃが、よく頑張った」

 

 長門は毛布を肩に被さったまま震えながら話していた。それだけショックを受けたのだろう。いや、長門だけではない。ゴジラと遭遇し交戦した艦娘も同類だった

 

 暁や朝雲は暖かいココアを受け取っても飲もうともしなかった。目が充血していたことから泣いていた事が明白だ

 

 時雨や満潮が付き添っているが大丈夫だろう

 

 ショックを受けている艦娘がいる一方、すぐに立ち直る者もいたが、それでも気が動揺しているのは明白だった

 

 しかし、翔鶴は違っていた。完全に塞ぎ込んでいた

 

「瑞鶴……」

 

「心配しないで下さい。ゴーヤ達が見つけてくれます」

 

 そう。瑞鶴が行方不明なのだ。ゴジラが青い光を発する直前、瑞鶴が翔鶴や大和さんを突き飛ばして間一髪直撃を免れた。しかし、瑞鶴が……

 

「私達が逃げていれば……」

 

「自分を責めないで下さい。まだ死亡と判断した訳ではないです」

 

 大和は格納庫の片隅に目をやった。そこには柳田教授とAIロボットであるターズが映像分析をしていた。時折、海上調査をしに宗谷が機器類を持って行ったり来たりしていた

 

 今回の出来事は深海棲艦でも浦田重工業の仕業でも無いだろう

 

 しかし、この世とは思えない存在に勝てるのだろうか? 

 

 

一時間後……

 

「では、僕が今回の事を説明する。時間が圧倒的に足りないのと未だに不明なところがあるけど、現在分かっている事だけなら聞いてくれ」

 

 格納庫に室内には大型スクリーンと、そして映写機が用意され、写真が写し出されていた。例の雲と雷から突然現れた怪獣も出ている

 

 柳田教授と博士が説明をし、周りには艦娘達と提督がいた。皆は真相を知りたがっているのは当然だろう。ターズもいたが、今回は機器類の操作をしている

 

 不思議とゴジラの写真を見ても誰も悲鳴を上げなかった。現実味が全く無かったのだろう

 

「正直にいって僕も戸惑っている。まさかゴジラが実在するとは」

 

「ちょっと待て。本当にゴジラなのか? というか、知ってるのか?」

 

 柳田教授はいきなり爆弾発言をしたため、皆はざわめき、提督も驚愕した

 

 彼は知っているか? 

 

「幼少期に見た事がある。作品名は忘れたけど、平成時代に上映されたものかな?」

 

「じゃあ、なんだ? 想像の産物ではなかったのか?」

 

「違う違う。そうじゃない」

 

 提督の質問に柳田教授は首を振った

 

「恐らく創作に似た世界線からの来訪だろ。マルチバース……並行世界からの訪問者だ。この世界に来て、こちらを襲った理由は分からない」

 

「へ、並行世界から?」

 

 矢矧は唖然とし、朝霜と涼月は目配せをした。彼女達はある事情から並行世界に行った事がある

 

「も、もしかして私達のせいで──」

 

「それは分からない。だが、呼び寄せているという線は限りなく低い。しかし、自然現象にしては不自然だ」

 

 大和は恐る恐る言ったが、柳田教授は否定した。大和は安堵したが、ここで問題が発生した

 

 自然現象ではない? 

 

「自然現象ではないなら、向こう側の……ゴジラが実在したら世界で発生した出来事なのですか?」

 

「不明じゃ。前例が無いから何とも言えんが……あの雲を形成する存在自体、あり得ない事じゃ。熱線を吐き終えた直後にゴジラが消えるなんて物理学に反しておる」

 

 鳥海は質問したが、博士は解説はしたものの、彼も困惑していた

 

「宗谷やターズき器材を積んで電磁系と光学系、例えば観測レーザーを使って調べたところ、レーザー光の屈折と消滅が観測された。重力異常も感知されたから時空の歪みが発生している可能性がある。だが、人為的だとしても明らかに暴走はしている」

 

「つまり、制御できていない?」

 

「そこは分からない。当事者に話が聞ければ分かるだろうが、相手はゴジラだからなぁ」

 

 柳田教授の説明に提督は肩を落とした。こちらから雲を制御するのはほぼ不可能に近い

 

「原因や原理が分からぬ現状では、雲から5メートル以内に近づけないようにするしかないようじゃ」

 

 博士は地図を映し出し、棒で雲の周りに円を描くように指した

 

「学術的な見解は置いといて、本題に入る。行方不明の艦娘、瑞鶴についてだ」

 

 柳田教授の言葉に皆は一斉に食いついた。艦娘や提督にとっては不可解な雲よりも瑞鶴の安否だ。放射熱線を浴びた後、消えたのだから

 

「瑞鶴さんは無事なの?」

 

「どこにいるの!?」

 

「ゴーヤは居なかったって言ってたぜ!」

 

「まさか生きているのか?」

 

 時雨や満潮や天龍や長門を初め次々と柳田教授と博士に質問責めをした。捜索しても見つからなかったのだ。彼らは見つけたのか? 瑞鶴を? 

 

 余りにも騒がしかったため、提督は落ち着くよう怒鳴った

 

「おい、静かにしろ! 気持ちは分かるが、落ち着け。で、何処にいる?」

 

 提督が一喝したために場は静まった。静まったのを見計らって質問したが、柳田教授の返事は意外なものだった

 

「憶測にはなるけど、それでいいか?」

 

「構わない」

 

「2つ考えられる。1つはゴジラの放射熱線によって瑞鶴の体は蒸発した」

 

 柳田教授の返答に皆はどういう意味か困惑したが、提督は違った

 

「蒸発って消滅?」

 

「そうだ。しかし、その理由はほとんど無いと考えられる」

 

「どういう事だ?」

 

 提督は訝しげに聞いたが、答えたのは提督の父親である博士だった

 

「宗谷が瑞鶴の艦載機の破片を見つけたのじゃ」

 

 博士は写真を見せたが、その写真には異様なものが映っていた

 

 写真に写っていたものは零式艦上戦闘機52型だ。垂直尾翼には機体番号があり、あの番号は瑞鶴の艦載機だ

 

 しかし、その零戦は異様だった。機体の半分……機首側であるエンジンが無くなっていた。代わりに黒い靄のようなもので覆われている

 

 まるで見えない怪物が食べたかのように……

 

「妖精さんは居なかったじゃが、こんな事象は初めているのぉ。しかも、手に触れる事さえ出来ないどころか、靄をはずすことが出来ぬ」

 

「というと?」

 

 提督は嫌な予感がした。いや、他の艦娘も気がつく者がいた

 

「瑞鶴は別次元に飛ばされた可能性がある」

 

「そんな!」

 

 大和は悲鳴を上げ、矢矧は両手で口を覆った

 

「何処へ行ったんですか?」

 

「不明だ」

 

「放射能を浴びたら、幾ら艦娘でもタダでは済まないはずよね?」

 

「核物理学の用語の間違いは見逃してやるけど*1、放射線量計測器で異常な数値は検知しなかった」

 

「ゴジラは僕と同じように時空を行き来出来たの?」

 

「多分な。違いは時空を越える力を認識しているかどうかだが」

 

 鳥海や酒匂や時雨など口々に質問したが、柳田教授がテキパキと答えた

 

 一部の答えは嫌味のようには聞こえたが

 

「別次元に飛ばされたのなら、連れて帰ってこられるんですよね?」

 

 翔鶴は周りよりも悲痛な声で質問をした。翔鶴の質問に周りは静まり返った。それもそうだ。妹の安否が第一だから

 

「……楽観的な見方をしても手がかりである雲が消滅したら連れて帰る事はほぼ不可能だ」

 

「そんな!」

 

 柳田教授はキッパリと言ったため、翔鶴は真っ青になった。死亡宣告に近い

 

「並行世界に行き来するだけでも異常事態なのに、連れて帰るとなると……パラレルワールドが幾つあるのかさえもわからない」

 

 柳田教授は残念そうに言った

 

「でも、大和達は帰ってこれたぜ」

 

「あれは別次元で漂流していた柳田教授と遭遇していたから帰ってこれただけじゃ。しかも、今回の場合は柳田教授や大和達よりも状況が悪いワイ」

 

 天龍は藁でも縋る思いで言ったが、博士は済まなさそうに言った

 

 どうやら、瑞鶴はとんでもない事象にあっているらしい

 

「待てよ。ゴジラが来たというなら、他の怪獣も来る可能性もあるのか?」

 

 提督は思い出したかのように聞いた

 

「……あり得るだろうな。さっきも言っていたがゴジラ作品は、見た事はある。映画通りならキングギドラやラドンやガイガンが現れる可能性があるな。そうなるとヤバイだろう。映画の話にしか存在しない怪獣なら、軍隊を集める必要が、本当に現れたとなると……」

 

「深海棲艦なら対処できるが、怪獣は想定していない。クソ!」

 

 提督は焦った。何を言っているのか分からないが、もし瑞鶴が戻って来ず、他の怪獣がこの世界にやって来たら政府や軍の上層部は雲を消滅させるよう命令するかもしれない。いや、独断で雲を消滅させようと強行手段を取るかもしれない。現に艦隊司令部の連絡によると、空軍が大型爆撃機に爆装準備をしていることだ。海軍と空軍の繋がりはあるものの、指揮命令系統は別だ。陸海軍も出動しており、例の雲の調査を行うらしい。そうなると、こちらは動きにくくなる。瑞鶴の生存確認が出来なくなり、最終的に「作戦行動中行方不明」扱いになるだろう

 

 提督は考えていたが、ある事を思い付いた。彼は早速教授に質問した

 

「今も穴は空いているんだな?」

 

「そうだ。不安定だが」

 

「消すことはできるか?」

 

「機材と材料と時間があらば」

 

「時間の猶予は?」

 

「順調にいけば10日だ。設計はともかく、機器の製造はターズが四六時中稼働すれば不可能ではない」

 

「5日でやってくれ。それで、電波を送信できるか?」

 

「善処するよ。送信自体は可能だけど、向こう側の世界にに届くかどうかは分からない」

 

「分かった。早速かかってくれ」

 

「請求は大本営でいいか?」

 

 柳田教授はやれやれといった感じだが、提督は何も答えなかった

 

 提督の反応に艦娘達は集まった。艦娘が質問するや否や提督は素早く命令した

 

「聞きたいことはあるかもしれないが、早速やってくれ。大淀、鎮守府に留守番している艦娘の中からなんにんか来るよう増援を送ってくれ」

 

「わ、分かりました」

 

 大淀は慌てて無線室へ向かった。呉鎮守府に連絡するためだ

 

「明石、親父と一緒に強力な無線機を作るんだ」

 

「い、いいんですか?」

 

 明石は素っ頓狂な声をあげた。今の無線機ではダメなのか? 仮に強力な無線機を作ったとしても電波法などに抵触しないか? 提督は明石の不安を見抜いたらしくテキパキと答えた

 

「手続きはこちらでやる。だから心配するな」

 

「どうする気ですか?」

 

 明石は不安そうになった。提督が考えていることは何となく分かったが、それでも不安だ

 

「瑞鶴と無線連絡を取る。向こうの世界に飛ばされたとしても時空の穴はある。艤装が無事なら、無線を飛ばして交信出来るかもしれない」

 

「でも、またゴジラかそれに近い怪獣が現れたら」

 

「警戒するしかないな。そうなると、軍上層部はここら辺を爆撃してくる。場所さえわかればいいのだが」

 

 明石の指摘に提督は肩を落とした

 

「並行世界で漂流か……しかし、なんでゴジラは消えたんだ?」

 

 提督はテレビをつけながら呟いた。テレビ放送の電波は届くので見ることは出来たが、どれも今回の事件で持ち上がりだ

 

『明石海峡でゴジラ出現!? 』

 

『○○株式会社の関係者も驚愕! 監督が現場急行!』

 

『総理大臣は軍に出動命令!』

 

『軍関係者も困惑! 元帥が緊急記者会見!』

 

 テレビ画面では元帥がしどろもどろになりながらも記者からの質問に答えていた。元帥もこの奇妙な出来事に正確な回答を持っていないのだから当然だろう

 

「瑞鶴……」

 

 翔鶴は項垂れた。世間にとっては妹の瑞鶴の安否よりもゴジラの存在に興味があるのだろう。上陸したら被害が出るのは分かりきっているのに

 

「今は希望をもって瑞鶴が無事に帰還することを願おう」

 

 提督は翔鶴に欠けた零式艦戦52 型を渡しながら言った。それは瑞鶴の艦載機だったものだ。妖精も乗っておらず、左主翼が欠けた零式艦戦52 型。瑞鶴が死んでいない事を祈るばかりだ

 

 

 

 提督や翔鶴を初めとする艦娘達が瑞鶴の無事を祈っている最中、瑞鶴は別次元にいた。いや、正確には吹っ飛ばされていた

 

「ああああぁぁぁぁ!」

 

 ゴジラの放射熱線の威力は強大だったらしく、まるで巨人が投げたボールのように瑞鶴は高速で飛ばされていた

 

 提督の父親や柳田博士の予想は当たっていた。瑞鶴は生存していた。但し、別次元から別次元へと飛ばされななら……

 

 

*1
放射能は「放射線を出す能力」なので、間違った使い方である。正しくは「放射性物質による汚染」「放射線にさらされる」である




次の次の話で次の章に
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。