視られるほどレベルアップ? 露出少女のフルダイブMMO   作:緑茶わいん

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不定期投稿です
見切り発車なので書けなくなったらエタります


ひとりえっちのネタにされた回数だけ経験値をください

「これからはゲームも『もう一つの現実』を作る時代! 自由な冒険をしよう!

 歴史を変えるまったく新しいMMORPG『Unlimited Experience Online』遂に正式サービススタート!」

 

 綺麗なCMを眺めていたら、隣の席に座っている兄が鶏のから揚げをぽとっと落とした。

 両親と一緒に視線を向けると、彼は小さく咳ばらいをしてから揚げを拾い直した。「美味い」という呟きが実にわざとらしい。

 美奈は「まあいいか」と思い、テレビに視線を戻した。さっきのCMはもう終わってバラエティ番組の続きが始まっている。それをなんとなく眺めながらご飯とから揚げ、サラダをバランスよく咀嚼して、

 

「あんた、ああいうゲーム好きなの?」

「スルーしてくれたんじゃないかったのかよ!?」

 

 母の投下した爆弾がいい感じに被害を出した。

 三歳離れた兄が大学生になり、一人暮らしを始めて三か月。久しぶりに顔を見たと思ったら前とまるで変わっていない。ゲームとか女の子の出てくるマンガとかが大好きで、そのせいか未だに彼女ができたことがない。

 別に顔はそんなに悪くないはずなのだけれど。

 何気なくじーっと見つめていると目が合った。

 

「お前まで俺をいじめるのか」

「そんなつもりはないけど。お兄ちゃん、あのゲームって面白いの?」

「興味あるのか?」

 

 意外だという顔をする兄。美奈は「うん、まあ」と曖昧に頷いた。

 興味があるのはゲーム自体というよりもあのCMの綺麗さだったからだ。

 

「綺麗だしぐるぐる動いてたでしょ? 本当にあんなに綺麗なのかなって」

「綺麗だぞ。むしろCMより本物の方が綺麗だ」

「本当?」

 

 CMはたった十五秒。描かれていたのはリアルとフィクションを融合したような美しい世界とキャラクター達だ。

 美奈が「なんか銃で撃つやつ」と認識しているゲーム(FPS)に近い視点で、街や草原、洞窟を冒険していた。なんでもゲームの中ではモンスターを倒したり料理をしたり、恋をしたりもできるらしい。

 いわゆるファンタジーの世界が映画並みのクオリティで描かれていたので、あれ以上と言われてもちょっと信じられない。

 

「テレビだとフルダイブMMOのクオリティは表現しきれないからな。こればっかりは実際遊んでみないとわからないと思う」

「すごい。じゃあ、お兄ちゃん」

「つまりあんたはもうやってるわけね、あのゲーム」

「……ぐっ」

 

 もう少し詳しく聞こうと思ったら母の攻撃で兄がノックアウトされてしまった。仕方ないので続きは食後、兄の部屋ですることになった。

 部屋は帰ってきた時用にベッド等が残っているものの適度に片付けられている。美奈も兄の置いて行ったマンガ等を借りにちょくちょく入っているので特に抵抗はなかった。勉強机の上に置かれているノートパソコンは兄が持ってきたものだろう。

 

「ね、お兄ちゃん。あのゲームやってるんだよね? ちょっとやらせて」

 

 単刀直入に切り出すと兄は渋い顔をした。

 

「やらせてやりたいけど『ちょっと体験』ってわけにはいかないんだよ」

「どうして?」

「フルダイブMMOって言ったろ? 意識をダイブ──ゲームの世界に飛ばすためにいろいろ設定が必要なんだ。俺のキャラは俺にしか使えない」

「そうなんだ、残念」

 

 仕方ないのでプレイに何が必要か、いくらするのかを尋ねてみる。

 パソコンに専用のデバイス、それからゲームのDL購入がいるらしい。デバイスが最新ゲーム機と同じくらい。ゲームが普通のゲームソフトと同じくらい。

 最近のゲームは高いのでパソコン抜きでだいたい五万円くらいは飛ぶらしい。

 五万円あったら服が何着買えるか、どれくらい大きなぬいぐるみが買えるかしばらく考えてから美奈は頷いて、

 

「貯金を崩せばなんとかなるね」

「意外と本気なんだな。パソコンは持ってるのか?」

「うん。お兄ちゃんがくれたやつ」

 

 大学の入学祝いに親戚が新しいパソコンを買ってくれたため、今まで使っていたものを美奈に譲ってくれたのだ。兄と違い動画を見たり調べものをするくらいにしか使っていなかったが、思わぬところで役に立つものである。

 

「あれか。まあ当時としては高性能だったし要求スペックは満たしてるか。まあそういうことなら……」

 

 何やらぶつぶつ呟いた後、兄は美奈の方を見つめて尋ねてきた。

 

「どうして『UEO』をやりたいんだ?」

「ゆーいーおー?」

「あのゲームの略称」

「そうなんだ。えーっと……どうしてって言っても、面白そうだから?」

「曖昧だな」

 

 そう言われても、本当に「ピンときた」以上の理由はない。美奈は普段ゲームはあまりやらないので『フルダイブMMO』がどうすごいのかもよくわかっていない。

 強いて言うなら、

 

「だってすごく気持ちよさそうじゃない?」

「ああ、それは保証する」

 

 保証されてしまった。

 

「わたしでもできる?」

「ああ。別に戦闘しないといけないゲームじゃないからな。製作とか運搬クエストだけでレベル上げられるし……意外と美奈にも向いてるかもしれない」

「へえ。じゃあやってみようかな」

 

 こういうのは思い立ったが吉日である。

 銀行でお金を下ろして電気屋に行って、ついでに電子マネーのカードを買ってきて、というところまでを明日(日曜日)の予定に加えながら、美奈はこてんと首を傾げた。

 

「ところで、あのゲームって具体的にどんなことができるの?」

 

 すると妙にきっぱりとした回答が来た。

 

「なんでもできる」

 

 またまた冗談ばっかり……と思ったら本当になんでもできるらしい。

 戦闘はもちろん服を買って着飾ったり、馬に乗ったり植物を育てたり、歌を歌ったり踊ったりアイテムを自分で作ったり食事をしたりなどなど、楽しみ方は本当に無限大。

 製作がものすごく大変だったはずだが、兄によると最新技術の利用してAIの助けを借りたり、人の想像力を世界に反映することで幅広いゲーム性を実現しているのだという。

(美奈には説明の一割程度しかわからなかった)

 一応、自分の部屋に戻ってからも調べてみた。

 自分でも意外なほどの集中力を発揮し、wikiに乗っていた「できることリスト(暫定)」を目で追い続けた美奈は、深い息を吐いて呟いた。

 

「買おう」

 

 五万円が飛んでいくことが決定。

 翌日の午前中には必要な物が揃った。電気屋での買い物と機器のセッティングは「ポイント全部あげるから」と言って兄にやってもらった。

 昼食を挟んで午後一番、美奈はどこかヘルメットめいた形状のデバイスを被った。半透明になっているバイザーを下ろさなければまだ周りは見える。

 

「じゃ、キャリブレとキャラ作成頑張れよ。終わったら中で合流してやるから」

「うん、ありがとう」

 

 一人になった自室でベッドに寝転がり、ボイスコマンドを入力。

 

「ダイブ・スタート」

 

 すると、美奈の意識はまるで眠りに落ちるようにしてゲームの世界に落ちていった。

 

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 

 気がつくと黒っぽい異空間に立っていた。

 自分の身体を見下ろすとなんだかできの悪い人形のよう。全然綺麗じゃないと憤っていると前方に光の粒子が集まり、女神の姿を形成。

 

「ようこそ、新たな旅人よ。……どうやらまだ身体がうまく形成できていないようですね」

 

 女神は美奈に動くよう指示してきた。

 言われるがまま腕を振ったり歩く真似をしたりジャンプしたりしていると身体が徐々にリアルになって、やがて現実の同じ姿になる。

 おお、と驚く半面、自分そのままっていうのも興ざめなような。

 

「肉体の形成ができるようになりましたね。では、次にこの世界におけるあなたの肉体を定義していきましょう」

 

 ちゃんと見た目を変えられるらしい。

 性別も変更できるらしいがこれは女性のままにする。

 いくつかあるデザイン方法から「リアルの容姿をベースに自動でアレンジを加える」を選択。アレンジ比率を50%に設定して実行すると、どことなく美奈の面影を持ちながらも印象としてはだいぶ異なる、わりと平凡な少女が出来上がった。

 

「かわいい。けど、かわいくない?」

「あなたはこの世界では新参者。経験を積み魂の位階を上げていけば相応しい姿を手に入れることもできるでしょう」

 

 不細工ではないがゲームの主人公としては褒められない出来なのは、いわゆる「レベル1」の状態だから。

 兄からも「初期キャラはそこまで可愛くないから、可愛くなりたいならレベル上げろよ」と言われている。極端な不細工でなければいいと容姿を確定した。

 

「次にあなたの才能を決定します」

「魅力に全部振ってください」

 

 可愛いは正義だ。

 才能──ステータスポイントの分配傾向は迷わず全振りした。これでレベルアップボーナスはほぼ全て容姿の強化に使用される。自由に割り振れるポイントも若干もらえるので、困ったらそれで対応しよう。

 現実の美奈は髪を染めたこともないし化粧もほとんどしない、露出度低めな服を選んで着ている品行方正な女子だが、お洒落に興味は人一倍ある。

 むしろ普段のコーデは清楚系の容姿を生かすための戦略だと言っていい。

 

「最後に、あなたの『魂の在り方』を決定します」

 

 女神がどこか厳かに告げたそのワードについても前もって聞いている。

 

『一人一個だけ「経験値の獲得方法」を追加できるんだ』

 

 通常、経験値はモンスターと戦ったりスキルを使ったり依頼達成時などに獲得できる。そして決められた値に達するとレベルアップしてキャラクターが強くなる。

 美奈が重視した『魅力』もステータスの一部だし、他にもアイテム製作に関わる『器用さ』などが含まれるため、戦闘する気がないプレイヤーでも重要である。

 『魂の在り方』はこの経験値を別の方法で獲得できるようにする。

 どんな方法でも構わない。ただし決められるのは一つだけ。なかなか起こらない条件ほど一回に得られる経験値量が多くなるようになっている。

 例えば兄のキャラクターは「新しい女の子と出会う(見かける)度」に経験値が入るらしい。それを聞いた時はちょっと軽蔑したが、例としてはわかりやすい。

 

 美奈はこれを何にするかあらかじめ考えてあった。

 深く頷き、自信を持って女神に告げる。

 

「『私の身体がひとりえっちのネタにされた回数』だけ経験値をください」

「は?」

 

 人工知能(AI)をもってしても理解に苦しむ内容だったのか、女神は素としか思えない少し間抜けな反応を返してきた。

 

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 

 美奈が告げたのは別に冗談でもなんでもない。

 昔から彼女には特殊な性癖があった。

 

 ──服を脱いで裸になりたい。

 

 小さい頃は随分両親を困らせた。

 たびたび注意されるのでさすがに学習して人前では服を脱がなくなったものの、一人で寝るようになってからはパジャマも下着も脱いで裸でベッドに潜ったり、開いた窓の前に裸で立ったりといった遊びを何度もした。

 むしろ「駄目」と言われれば言われるほどエスカレートしてしまった気もする。

 昔は単に裸の解放感を求めているのだと思っていたのだが、思春期に差し掛かるにつれて恥ずかしさが快感につながることや、自分の身体に性的魅力があることを知った。

 

 それからは「えっちな姿を人に見られたい」と思うようになった。

 

 しかし、実行したら大変なことになる。世間には悪い人がたくさんいるもので、どこに危険が転がっているかわからない。一発で破滅してしまうかもしれない露出行為なんてそんな素敵な──もとい、大胆過ぎる行為に及ぶことはできなかった。

 だから『UEO』の「できることリスト」に「露出行為」や「ひとりえっち」が含まれていることを知った時、このゲームこそ自分の求めていたものだと思った。

 

『ゲームの中なら安全だし、この世界でみんなにいっぱいわたしのえっちな姿を見てもらって、いっぱいひとりえっちしてもらおう』

 

 兄や両親に告げたら「止めろ」と言われるだろうが、こればかりは止める気はなかった。

 幸い美奈の希望は女神に承認され、最後の最後にキャラクター名を設定して、

 

『あなたの道行きが幸いなものになるよう願っています』

 

 後に伝説的アイドルとして『UEO』名を馳せる少女『ミーナ』の誕生した瞬間だった。

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