視られるほどレベルアップ? 露出少女のフルダイブMMO   作:緑茶わいん

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ちょっと残念ですけど、急いで進んじゃったらつまらないですもんね

『食欲、芸術、運動! 秋のイベントキャンペーン!』

 

 夏休み終わりに公式アイドルの話をして、正式決定に約一か月──それから準備、発表にしばらくかかって、季節はあっという間に秋。

 秋といえば「〇〇の秋」というベタだけれどわかりやすいイベントが開催されることになった。

 タイトルが示す通り、このイベントは『食欲』『芸術』『運動』の三つがテーマだ。

 

「みなさんこんにちはっ。『UEO』公式アイドルのミーナです」

「同じくエリーゼだよっ。今日はみんなに今度始まるイベントについて説明するねっ」

 

 まずは『食欲の秋』。

 イベント期間中はフィールド上のモンスターが確率で「サツマイモ」や「栗」をドロップするようになる。これらのアイテムはもちろん料理することができ、できあがった料理は回復アイテムとして利用できる。

 フルダイブMMOなので料理アイテムは実際に食べないと効果がない。かつてのMMOのように無限に食べながら狩り、というのは難しいものの、食材がタダで手に入るのは魅力的だ。

 

「お姉さまは秋の味覚といえばなんですか?」

「うーんと、秋刀魚かなあ? 焼いた秋刀魚に大根おろしとしょうゆがあればご飯何杯でもいけちゃうよねっ」

「お姉さまの好み、意外とシブい!? あたしはやっぱり甘いのがいいです。モンブランとか、スイートポテトとか」

「こっちだとカロリー気にせずに食べられるもんね。栗なら甘栗も好きかなあ。映画とかドラマ見ながらついついいっぱい剥いちゃう」

 

 せっかく手に入った食材は美味しく料理しないと勿体ない、ということで「秋の味覚コンテスト」も開催される。 

 これはプレイヤーが自慢の料理を持ち寄り、ミーナたちを含む審査員が実際に試食して一位を決めるというものだ。

 上位入賞者には料理道具や高級食材などが贈られる他、おまけとしてミーナとエリーゼが作ったお菓子がついてくる。

 

「お姉さまの作ったお菓子、あたしも食べたいですっ♡」

「うん、一緒にお菓子作りながら味見しようねっ」

 

 コンテスト会場には神聖王都の中央広場が選ばれた。

 当日、普段とは違う装いとなった広場には続々と人が集まってくる。

 

「え、こんなに……!?」

「みんなヒマすぎ……じゃなかった。ノリノリで嬉しいっ♪」

 

 参加受付は広場に多数設置されたNPCが行うので、ミーナたちは特設ステージ上からファンの人に手を振ったりトークで盛り上げたりする。

 一次審査は受付時に自動で行われ、数値化された料理のスペックが一定以下だと不合格となる。

 残った品を審査員が試食する予定なのだが──。

 

「あれー? ちょっと数が多すぎるみたい?」

「試食が大変になっちゃうので数を絞るみたいです」

 

 一次審査を通過した品の中からスペック上位ニ十品を選り分け、それを試食することになった。

 減らしてもまだけっこうな数である。ゲームの中じゃなかったら途中でお腹いっぱいになりそうだ。

 

「さ、どんな料理があるかなー♪」

「わ、どれも美味しそう……♡」

 

 今回のテーマはサツマイモと栗。なのでどちらかは必ず使われているのだけれど、それ以外は自由。

 定番の焼き芋や焼き栗、スイートポテトにモンブランなどの他、栗ご飯に栗きんとん、牛肉と栗の煮物、マロンパイ、サツマイモの天ぷらやフライドポテトなどなど。

 

「あ、このポテト甘じょっぱくて美味しい♪」

「甘い物ばかりじゃなくてしょっぱいのもあるのは嬉しいね。この煮物と栗ご飯一緒に食べたいなあ……♪」

 

 どれも美味しくて点数をつけるのが勿体ないくらい。少なくともおまけの商品であるミーナたちのお菓子が霞んでいたことは間違いない。美味しくできるまで作り直したので食べられなくはないはずだけれど、付け焼刃のスキルでは太刀打ちできない品々だった。

 ただ、後からラファエラに聞いたところ、

 

「あのお菓子、入賞者に『いらないなら売ってくれ』って申し出るファンがいっぱいいたらしいわよ」

「ええ……!? 本当に普通のお菓子なのに……!?」

「普通のお菓子だからいいんでしょ。アイドルの手作りなんてなかなか食べられないもの」

 

 もう、他の人が作ったのを「アイドルの手作りです♡」って売っても売れるのではないだろうか。さすがにそんなことはしないけれど。

 

「春さん。普通に物販で売ってもいいでしょうか……?」

「そうですね……。普通のクッキー程度、それも常時販売ではなく練習した残りを売るような形であれば良いかと。大量に販売するとプレミア感がなくなりますので」

 

 じゃあ、ということでクッキーを売ったら、回復アイテムとしてはかなりお高い値段だったにもかかわらず飛ぶように売れた。

 

 

 

 

 続いて『芸術の秋』。

 こちらはスクリーンショットや絵、服など芸術にちなんだアイテムで応募してもらい、審査のうえで後日入賞者を発表するという企画だ。

 会場を作ってその場で審査、ということではないので参加しやすく、その分倍率も高い。賞品も「一位になった作品は公式グッズ化を確約」という目玉のほかなかなか良い物が揃っている。

 そのせいだろうか。

 イベントが告知された後、街を歩いていると妙に人の視線を感じるようになった。人一倍視られることに敏感なミーナなのでよくわかる。

 

「なんだろう。嬉しいけど……?」

 

 視られているのに声をかけてくる人が少ない。

 最近は声援を送られたり「握手してください!」と声をかけられることが多く、変装しないとゆっくり歩けないくらいだったのに。

 なんだか遠巻きに見られている。腫れものに触る感じ? ううん、むしろシャッターチャンスを狙われているような……?

 

「あ、もしかしてそういうこと、なのかな?」

 

 ミーナは「スクショ・動画撮影OK」を公言している。

 つまり、ミーナの街角写真での応募ももちろんOKだ。話しかけたら撮影者の邪魔になるし、自然な姿を撮るチャンスも減ってしまうのでこうなっているのだ。

 そういうことなら──。

 意図的に絵になる光景を狙う……ということはせず、自然体で振る舞うことにした。美味しいものを食べたり気になるものを観察したり。視線に「ぞくぞく」しているのはなるべく悟られないようにしながら久しぶりにゆっくりとした散歩を楽しむ。

 神聖王都もさすがに慣れてきて、だいたいの場所にはもう行ったことがあるのだが、プレイヤーが新しいことを始めた影響で見慣れないものが増えていたりしてなかなか侮れない。食欲の秋イベントの影響かサツマイモや栗を使ったお菓子の露店なんかも多い。

 

「♪」

 

 散歩は大満足だった。

 ちなみに応募されたスクリーンショットの方はというと、風に吹かれてスカートが捲れそうになった時のとか、アイスが服に垂れそうになって慌てた時のなど、ちょっとえっちだったり恥ずかしかったりする作品がそこそこの割合で紛れていた。

 せっかくなので番外として何枚か取り上げてもらい、コメントを入れた。

 

「撮ってくれるのは嬉しいですけど、恥ずかしいからできるだけ個人で楽しんでくださいねっ?」

 

 別の機会に行われた第二回のスクショコンテストでは何故かミーナを狙った作品が増えた。

 

 

 

 

 最後は『運動の秋』。

 秋の運動といえば運動会、ということで、各所に設置された運動会風アトラクションを攻略し、イベント期間終了時点で合計得点の高かったプレイヤー、および各アトラクションでトップを取ったプレイヤーが表彰される。

 種目は障害物競走(街の様子をコピーした専用フィールド(インスタンスダンジョン)で通行人を障害物にタイムを競う)、玉入れ(そのまま)、騎馬戦(特設フィールドで()()()()()他のプレイヤーを落とす)などなど。

 ミーナとエリーゼは応援合戦と称してチアリーディングの動画を取った。

 ダンスは慣れているのでなんとかなるかと思えば結構勝手が違って苦戦した。流動的な動きと言うよりは決めポーズの連続であり、一つ一つのポーズをびしっ! と決めつつ激しい動きに対応しなければならない。これはまたいい勉強になった。

 動画公開後、有志が胸の部分を拡大した動画を作っていたのもためになった。

 

「こういうの作ってくれる人もいるんだね」

「……作って『くれる』って言えるミーナさんが凄いです」

「お姉さま、通報しましょう通報」

「そうね。拡散したり元の動画であれこれ言うならともかく、勝手に加工したら著作権違反になりかねないわ」

「でも、せっかく作ってくれたのに……」

 

 最初は渋ったミーナも「あんただけじゃなくてエリーゼも巻き込まれるのよ?」という説得により納得。春に確認してみたところ「もちろん把握しております」と言われた。

 

「影響が大きそうなものは管理者に削除依頼を出しますし、悪質であれば法的措置も検討しますが、企業的には『一つ一つ取り合っていてもきりがない』というのも事実。あまり締め付けすぎても人気の低下に繋がりますので、ある程度であれば容認、といいますか『気づいていないフリ』をさせていただきます」

 

 Atuberの時代にもえっちなイラストを描いて公開したり、えっちな妄想を文章にする輩は結構いたらしい。

 もちろん本人的には嫌な場合もあっただろうし、訴訟まで行ったケースもあるようだが。

 

「アイドルってやっぱりそういうのあるんだね……♡」

「あんた、こういう話に関しては本当に無敵よね」

「わたしについて話してる掲示板とかたまーに覗くと楽しいんだよっ?」

「エリーちゃんもお姉さまとの百合妄想の書き込みなんかはたまに見ますよっ♡」

 

 百合というのはエリーゼいわく「女の子が仲良くしている様」を指すらしい。それならミーナたちは間違いなく百合である。

 

「そうだ。せっかくだからわたしたちもアトラクション挑戦しようよ」

「あんたとエリーゼで行ってきなさい」

「私達、フィジカル系はちょっと……」

「そっか、残念」

 

 しょうがないのでエリーゼと二人で挑戦した。

 障害物競走はなかなか良い記録が出たものの、玉入れは飛べるプレイヤーが100点を目指そうとしては他のプレイヤーが投げる玉に妨害される……という絵図が繰り返されており「あ、これトップは無理だ」とすぐにわかってしまった。

 騎馬戦も難しい。リアルではもちろん馬になんて乗ったことないし、ゲーム内でも乗馬スキルなんて上げていない。ダンスで培った運動神経でなんとか乗りこなすも、同時に他プレイヤーへ攻撃するのはなかなか難しく、三人くらい倒したところで落とされてしまった。

 

「本気で得点狙うならスキルも上げないとだね……!」

「簡単にトップが取れないようにいろいろ工夫されてるんですね。昔のエリーちゃんなら必死になっただろうなあ」

 

 今のエリーゼはミーナと共にアイドルをしている。

 みんなを楽しませられればいいのであって、無理にトップを取る必要はない。むしろ挑戦している最中もみんなから声をかけられたりして楽しかったので十分に満足といえる。

 

「けっこう忙しいけど、楽しいね」

「そうですね、お姉さまっ♡ たまーに学校もお休みできますし」

 

 基本的にイベントは休日に行われるため学業に支障はないのだが、どうしても必要な場合は休む許可も学校から得ている。

 平日なのに学校に行かずゲームをするのが「お仕事」なのだから一部の人からは羨ましがられそうだ。

 

「次はどんなイベントなのかなあ」

「はい。次のイベントはハロウィンを予定しております」

「ハロウィンと言えばコスプレ……♡ 私の腕の見せ所ですね……♡」

「うんっ。またお願いね、リリちゃん」

 

 コスプレ姿で街を歩き、プレイヤーに「トリックオアトリート!」と言うところを想像する。

 もし、お菓子をもらえずにいたずらされてしまったらどうなるのだろうか。……想像しただけでちょっと興奮する。

 

「こほん。……公式アイドルに対して不埒な行為を働く輩は運営から厳重に処罰できますので、必要であれば通報してくださいね」

「はぁい。ちょっと残念ですけど、急いで進んじゃったらつまらないですもんね」

 

 ミーナのアイドル活動はまだまだ始まったばかり。

 『UEO』自体、今年にサービス開始したばかりの若いゲームだ。公式はこれからも新しい要素のアップデートをいくつも予定しているらしい。売り上げも好調なのできっとそれらも実装されるだろう。

 露出も楽しいけれど、ファンのみんなを楽しませるのも楽しい。

 こっちでできた仲間たちとももっと遊びたい。

 

「じゃあ、ハロウィンではちょっとえっちなコスプレしたいなあ。パンクファッション風とかどうかな? ラバー風のショートパンツで太腿見せるのとか」

 

 ミーナは「これから」に胸を馳せながら心からの笑顔を浮かべた。




ミーナたちの暴走はこれからも続く……!
ご愛読ありがとうございました。

一発ネタ感の強い作品ということもあり、これ以上やっても同じことを繰り返しながら話だけ大きくなっていくと思うのでここで区切りとさせていただきます
なにかネタを思いついたらふらっと更新するかもしれません
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