暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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そして、誤字修正も……。
なぜ、こうも、減らぬのだ!?
修正してくれる方々、毎度ありがとうございます。

今回も投下しますのでお付き合いください……。


84話 漏洩の時間 2時間目

 

 浅野学秀。椚ヶ丘学園の理事長を務める、浅野學峯の1人息子にして椚ヶ丘中学校の生徒会長。校内のテストでは不動の一位、全国模試も常に主席。完璧主義な父の教育と努力、生まれ持った才能も手伝ってか、運動も乃咲くんに並んで校内トップ。

 

 見かけた事がある程度だったが、自信に溢れた顔つきと歩き方が印象的で、他人を惹きつけ、扇動するカリスマ性を持つ。

 数値で人を判断するのなら、運動能力や学力という意味では乃咲くんや赤羽くんと並んでいる優秀な人材と言える。

 

 あの理事長の息子、そして今のこの状況を鑑みるに、先手を打ち、外堀を埋め、相手を自分の土俵に引きずり込もうとする策謀家。

 乃咲くんを現場で動きながら柔軟に指示を出す部隊長タイプとするのなら、彼は後方で先の先や後の先を見越して目標やゴールに向けた指示を出す本部長タイプ。

 

 赤羽くんと同じタイプであると言えるが、恐らくは目の付け所などで細かい違いが現れてくるタイプだろう。

 

 戦力という意味では、頼もしいだろう。

 現に、たった今、彼の能力の比較対象として挙げた乃咲くんは彼に嵌められ、超生物という国家機密を暴かれてしまった。

 

「すみません、烏間先生………」

 

「いや、聞いた話だと結果的に君のところで発覚しただけで要因は複数箇所にありそうだ。気にするなとは言わないが、気に病む必要はない。むしろこう言った事態を想定していなかった我々の危機管理能力にも問題がある」

 

 申し訳なさそうに頭を下げる乃咲くんに声をかけて、浅野くんに視線を向け、改めて向き合う。

 

「こうして挨拶をするのは初めてだったな。はじめまして。表向きはE組の担任と言うことになっている、烏間惟臣だ」

 

「えぇ。はじめまして、烏間先生。浅野学秀と申します。椚ヶ丘中学校では生徒会長をやらせてもらってます」

 

 表向きなフレンドリーな笑顔。しかし、その下にはこちらを喰い殺さんとする牙を隠しているのだろう。

 

「改めてキミの口から我々について探っていた経緯を聞きたいんだが良いだろうか?」

 

「えぇ。もちろんです。僕としても家族のいつもとはどこか違った様子が心配で始めたことなので答えを頂けるのであれば」

 

 家族とは理事長のことだろう。本音と建前の使い分けが上手い。彼以外の普通の生徒だったのなら、この言葉で納得するわけにはいかないが、浅野くんは理事長の息子。家族の様子が何かおかしいのが心配だから調べていたと言うのは否定できない。

 

「父の様子が変でして。特にE組への干渉がね。例年、ここまでE組に執着することはなかったのですが、今年は短いスパンでのE組視察に始まり、この前の竹林くんや圭一のA組への勧誘に至るまで、彼らとの接触の機会が多い。たまたまである可能性もあるでしょうが、家族として心配だったもので、僕にも何か出来ることはないかと調査を始めたのがきっかけでした」

 

 文面だけ聞いているとあまり違和感はない。

 息子として親が心配と言うのも、これまではなかった急なE組の視察などは生徒会長として気になる分には納得できない。

 

 だが、それだけでないことは流石に分かる。

 結果的にそうなったとは言え、乃咲くんからコイツに辿り着くあたり、やはり普通の中学生と考えて油断は出来ない。

 

「そしたら結構E組周りで妙な事が頻発してることに気が付きまして。E組用に準備されていなかったプリントが全校集会で突然E組生徒の手元に出現し、その直後には見覚えのない関節が曖昧な巨漢の姿が教師の列に並んでたり、E組の裏山で突如として巨大竜巻が発生したり、泳ぐことに抵抗のあった生徒が夜中、E組の裏山で見覚えのある女生徒と『ヌルフフフフ』とか笑う巨漢に特訓される夢を見て、翌日には泳げるようになっていたり」

 

 最後の話は初耳なんだが?と乃咲くんのベットの横で正座させているタコを睨み付けると肩身が狭そうに俯いた。

 

「E組の生徒にも変化がありました。3月まで自信なさそうに、肩身が狭そうにしていた奴らが4月の半ばから下旬の間に何処か明るい顔をするようになった。事実、その自信が本物であることを証明するように、野球部とのエキシビジョンに勝利し、前回のテストでは僕らA組としのぎを削り、果てには勝利までした」

 

 なるほど。確かに言われてみるとそうなのかも知れない。俺はこの学校にくるのは初めてで、実際に目の当たりにするまでE組と言う制度と、その待遇もほぼ知らなかった。

 そんな俺からしたら、コイツの暗殺という目標に向けて生徒たちがやる気を出し、努力し、成長する一部始終を見ていたので、彼らの変化もある意味で当然のものだと思っていた。

 

 しかし、この学校に3年間通い、そして父の経営する学校の特徴をよく知っているであろう浅野くんからしたら、4月から今日までのE組は異質に映ったらしい。なるほど、そこまでは予測していなかった。やはり落ち度は俺たちにもある。

 

「ただですね、前期期末でA組とE組で賭けをしたのはご存知だと思いますが、その戦利品として要求されたモノに違和感がありまして。圭一がいるのに要求が軽すぎると言うか」

 

「…………なるほど、確かにそうかも知れないな」

 

 彼の言葉に頷く。確かに乃咲くんならば、たった一度だけでも相手になんでも言うことを聞かせるという契約さえあれば割となんでも出来るだろう。彼を悪辣だと思っている訳ではないが、浅野くんの言ってることは理解できる。

 

「A組が行く筈だった普久間島での合宿。賭けで勝ったんだからその権利を寄越せと言うのは理に適っている。でも、圭一ならもっと僕らから搾り取れた筈だ。それこそ『ここにA組の権利をE組に譲渡するという内容の契約書がある。これにサインしろ。俺からの要求はこの書面に対するサイン一つだけだ。契約の範囲内だろ?』とかやれるはずだ。それを実行すればあの環境が劣悪なE組校舎から抜け出せる」

 

 乃咲くんは彼から向けられた視線から逃れるように目を逸らした。なるほど、考えなかったわけではないらしい。

 

「でも、それをしなかった。実行していればE組の連中と一緒に本校舎に戻ることも、僕らが使っている権利はもちろん、件の合宿だって契約に含む事ができた。でも、それをしなかったのはなぜだろう?僕はそれが引っかかっていました」

 

 生徒たちが話しているのを聞いた事がある。乃咲くんと学年主席の浅野くんはもともと成績トップ同士で仲が良いと言うか、ライバルの様な関係性であったと。

 

 乃咲くんの思考力や考察力は我々ですら舌を巻く程にレベルが高い。普久間島での事件で黒幕が鷹岡だと暴いたり、それ以前にも彼らが殺せんせーと呼んでいるこの超生物の正体にも半ば辿り着いていたらしい素振りも何度か見せてくれていた。

 

 そんな彼と対等にぶつかっていた目の前の少年。なぜ考えなかったのか。乃咲くんの能力を間近で見ておきながら、彼に匹敵する能力の持ち主が本校舎にいると聞いておきながら、こんな展開になることを。なぜ、予測出来なかったのか。

 

 自分の考えの足らなさが不甲斐ない。

 

「極め付けは、この前の竹林くんです。さっきの契約が成立しなかった以上はE組の待遇は最低レベルのまま。それなのに彼は自ら再びE組に落ちることを選んだ。親に認められることを第一に考えていた筈の彼がそんな遠回りを選んだ」

 

 そのまま流れる様に超生物に視線を向けた。

 

「急に上がったE組の学力、圭一にしては甘すぎる要求、まるでE組の環境を望んでいるかの様な言動をした竹林くんの出戻り。何より、僕らがどれだけ手を尽くしてもやる気を出さなかった圭一の復活。そしてE組で突然発生した竜巻。E組、あるいは裏山に何かあるって考えるには充分すぎると思いませんか?」

 

 こうしてE組の現状を外から見たらどう思うのかを列挙されると確かに不可解な点が多いだろう。

 俺はもちろんのこと、生徒たちもそこを考えてはいなかった。努力をしたから、頑張ったから報われた。我々の知る事実はその一言に尽きるが、何も知らない外部の人間が彼らの急成長を見て納得するか、出来るのかと言われればNOだろう。

 

 浅野くんの疑問点はどこもおかしくない。側から見たとき、不思議に思う部分を的確に射抜いていた。

 中にはライバル関係の乃咲くんに対するある種の信頼も混ざっていたが、それでも彼の指摘通り、E組になにかがあると考えるには充分すぎると改めて思った。

 

「そして圭一たちや父が何かを隠していると確信したのは先日、圭一が転院する前の病院に見舞いに行こうとしたときです」

 

「……?お前、来てないだろ?」

 

「いや、病院までは行ったんだよ。でも、引き返した。潮田や赤羽、倉橋たちが妙な会話をしてるのを聞いて、今までの疑念が確信に変わったから、色々と整理したくてな」

 

「……………病室の前まで来てたのか?」

 

「行ってない。ただ、お前の病室に向かう時にたまたまアイツらの会話を聞いたんだ。こればかりは本当に偶然だけどな。暗殺とか、国家機密だとか、そんなワードが聞こえてきたんだ」

 

「……………………そうか」

 

 乃咲くんの長い嘆息の後の言葉。思わず頭を抱えるという表現が似合いそうな仕草からはどことなく哀愁というか、どうしてこうなった?と自問しているのが見て取れる。

 

「うん。思えば暗殺がどうこうとか、普通に話してるもんな。そりゃあ怪しんでる奴に聞かれたらバレるか」

 

「そうだな。これまで中学生がそう言う会話をしていても、そう言う年頃か、歴史の話だと思うだろうと言うことで今までE組の外、誰かいる場所での会話は禁止してなかったが、見直さねばならないな。今後、彼の様に勘づくものが現れないとは限らない」

 

「ですね……。それで、どうします?コイツには知られてしまった訳ですけど……。消しますか?」

 

「……………僕、選択を間違えたのか」

 

「主語を付けろ。勘違いされる物言いをするな」

 

 顎に手を当てながら、当たり前の様にとんでもない提案をしてくる乃咲くん。顔にはその方が早くね?的な色が見える様な気がする。加えて、暗殺だとか国家機密なんて単語が出ているせいで、言葉に真実味が出てしまい、浅野くんが一瞬、本気の思案顔になったのを見て訂正する。

 

「まずはこの場合、消す必要があるのはキミの命の灯火ではなく、記憶であることをまずは訂正させて欲しい」

 

「おぉう……。中々に怖い表現しますね、烏間先生」

 

「記憶操作……。流石に国家レベルになるとそう言うことも可能なんですね。と言うか、お前らとんでもないことに巻き込まれたんだな。半信半疑だったが、マジだったとは」

 

 浅野くんを見る。肩を竦めて見せているが、その目付きに一切の油断はなく、ただ笑顔を見せながら戯けて見せる好意的な姿に反して身体は常に俺へと向いている。それは警戒心の現れだろう。あの父にしてこの息子あり。笑顔は本来攻撃姿勢を示すものであるという言葉が似合う親子だと思った。

 

「だが、記憶を消す前に聞いて欲しい話がある」

 

「聞きましょう。なんですか?」

 

「我々の暗殺に参加するつもりはないか?」

 

 話が冷めないうちに本題を切り出す。

 意外なことに俺の提案を聞いて驚く者はこの場にはいなかった。ターゲットも、乃咲くんも、浅野くんも冷静だった。

 

「それは僕もE組に、と言うことですか?」

 

「いや、生徒のクラス替えについて我々は権限を持っていない。キミがE組での暗殺を希望するなら、キミのお父さん……理事長に掛け合うことにはなるが、今回の提案はあくまで暗殺に協力して貰えないか?という内容になる」

 

「E組の外からの協力者……。烏間先生、この前の俺の提案が通ったってことですか?」

 

 乃咲くんの言葉に頷く。

 

「そうだ。無闇に増やす訳にはいかないし、中学生……子供がどこまで出来るのか、と問われたが、現状、その子供が一番この超生物を追い詰めている事実と、中でも最も単独でダメージを与えた生徒からの提案と言うことでゴリ押した」

 

「……そこの人……えっと、殺せんせーでしたか?彼を圭一が何度も追い詰めてるってことですか?あなたの説明だとマッハ20で飛び回るモンスターと言うことでしたが」

 

「その通りだ。今のところ、そいつが明確にダメージを受けた暗殺のほぼ全てに彼が関わっている。計画立案、実際の指揮、そして実働。乃咲くんは様々な面で高い評価を受けている。そんな彼をハメたキミなら、外部協力者としての起用も容易に認めさせる事が出来るだろう」

 

 俺の言葉に浅野くんは何処か勝ち誇った顔で乃咲くんに笑顔を向け、向けられた側は拳をプルプルさせながら全力で顔と目と体を反対方向に向けて逸らしている。

 この前、彼が倒れた時の本音や、こうして仲のいい友人?と張り合っている姿を見ていると、如何に能力が高くてもやっぱり彼らもまだ子供なんだとついつい考えさせられる。

 

 そんな子供を利用している俺たちはきっと悪い大人と言う部類に括られて然るべきなんだろうな。

 せめて、彼らを必要以上に利用しない、させない。そして、彼らの意思を尊重する方法で暗殺を進めること。それが俺に出来る、彼らへの誠実な対応だと考える。

 

「暗殺の協力と言っても、作戦を立てるとか、そう言う現場ありきのことに拘る必要はない。今回、キミがE組の異変や国家機密に気付いたように、今後も我々に気付く生徒がいても不思議ではない。もし、兆候がある者がいたとなら、それとなく誤魔化してお茶を濁して貰えるだけでも大変助かる」

 

「まあ、そうですね。E組には何かあるって裏山まで様子を見に来る様な物好きが居たりしたら暗殺どころじゃないですもん」

 

「そう居ないと思うがな。僕ら以外は大体の奴が授業に置いてかれないために必死だ。E組にまで意識を向けられる奴は中々居ないと思うぞ?少なくとも僕はね」

 

「鏡見たことあるか?平日の学校帰りに片道2時間、往復4時間の長距離を移動し、県外の病院まで見舞いに来てまで秘密を暴きに来た奴がどの口で言うのか」

 

 彼らの言葉の応酬を眺める。E組の校舎ではよく、磯貝くん達とつるんでいるところをみるが、どことなく教室で見ていた雰囲気とは違う部分を感じる。一見すると煽り合い、くだらない事を言い合っている様にも見えるが、その容赦の無さから親しさの様なものを見ることができる。

 

「とまあ、圭一との言い合いはともかく、そうですね。暗殺に協力すること自体はやぶさかではありません」

 

「……やぶさかではないが、それはそれとして、と言いたそうな言葉選びだな」

 

「その通りです、烏間先生。理解が早い人は好きですよ。僕は曲がりなりにも生徒会長をしている身です。やれることには限度があるし、例えばE組の事情を知ったからと言って、彼らのうち誰かが問題を起こしたら、味方をしてあげられません。会長として公正に振る舞う事しかできません」

 

 彼の目は笑っていなかった。真剣にこちらを見て、そう宣言した。その瞳に宿す怪しい光は父親によく似ていた。

 

「暗殺なんてやってるんです。相応の実力や技術も身につくでしょう。凄みも現れるかもしれない。それが彼らの意思に反してトラブルに発展する可能性はゼロじゃない。以前、E組の生徒から『殺すぞ』と凄い目付きで脅された、と報告を受けたことがあります。今後、似た様な報告が上がったとしても、僕は公正にしか対応しません。それでもいいですか?」

 

 以前、俺が見た光景のことを言っているのだろう。

 本校舎の生徒に渚くんが絡まれていた時の光景。

 

「あぁ、それで構わない。今後も誰かしらに国家機密が漏洩する可能性を少しでも減らせるのであれば願ったり叶ったりだ」

 

「ははは、それは良かった。こうして口に出した以上、暗殺のことに関しては協力しますよ。それ以外は保証しませんが、とりあえずは契約成立ということで」

 

 差し出された彼の右手を握り返す。

 これが合意の証ということで良いのだろう。

 

「ヌルフフフフ、乃咲くん。心強い仲間ができましたね」

 

 ここに来て超生物が口を開く。話がややこしくなる可能性があったので、許可するまで口は開くなと言っていたのだが、まあ、このタイミングなら別に良いだろう。これ以上、話が拗れる事もないだろうし。

 

「心強いのは否定しませんが、あとはE組の連中が受け入れるかどうかも重要だと思いますけどね。浅野……というか、五英傑にはみんなあんまり良い感情はないでしょうし」

 

 絶えず苦笑を浮かべる乃咲くんの苦労は今後も続きそうだ。

 

「では、後日、理事長に話をしに行く時に誓約書を持っていく。その場で改めて仕事について説明しよう。先に口頭で伝えさせてもらうが、基本的にキミは外部協力者という形になる。主な仕事は本校舎での暗殺関係に関する話の隠蔽になるが、実際に殺しに来てくれても構わない。単独での暗殺成功の報酬は100億円。他者との協力で暗殺した場合は300億円になり、そこから山分けになる。諜報活動の見返りとして、キミにはどの場合で成功したとしても、報酬の数%を出そう」

 

「数%とは?」

 

「キミの仕事ぶりと成功者との交渉次第といったところか」

 

「なるほど、構いませんよ、それで」

 

 浅野くんは驚くほどあっさりと頷いた。

 

「実のところ、成功報酬は棚ぼた。僕としては、E組や圭一が急に伸びた理由を知ることができれば満足でしたので」

 

「……お前が?ほんとに?」

 

「ほんとだとも。あわよくば、キミらが伸びた教育も受けてみたいし、秘訣があれば教えてほしいところだけどな」

 

「ヌルフフフフ。お望みであればいつでも教鞭を取りますよ。存在がバレてしまった以上は遠慮する必要もなさそうですからねぇ。我々のクラスのトップ陣をほぼ1人で抑えるキミに教えられる日を楽しみにしてます」

 

「………楽しみにしているのはお前の勝手だが、何度も言うが目立つなよ。世間では都市伝説的な噂が流れるようなこともしでかすな。お前も教育者なら今回の件を教訓にしろ」

 

「にゅぅぅぅ……。そこはおっしゃる通りです」

 

 やる気あり気に触手をうねらす超生物に釘を刺す。

 こうでも言わないとまた似た様なことが発生しかねない。

 

「ところで圭一、理事長からA組に残るか、E組に戻るかを迫られてるそうじゃないか」

 

「ギクっ……」

 

「僕としてはお前がいた方が楽しいし、A組に残留して欲しいが……まあ、これで例えお前がE組に戻っても気兼ねなくお前にダル絡み……もとい、遊びに行けるな」

 

「ダルい自覚あるのか……」

 

 会話が始まったのでそろそろ俺はお暇するとしよう。

 

「俺はこれで失礼する。上層部や理事長にも話を通さねばならないからな。乃咲くんは早く休み、浅野くんはあまり遅くならない様に。というか、もうコイツのことも知ってるのだから家まで送って貰え。その方が金銭的にも楽だろう」

 

「ちょっ、烏間先生!理事長と話すならコイツ本人もいた方がいいと思うんスよ!あの人も一応は人の親ですから!だから、お願いですから!コイツを持って帰ってください……!」

 

「圭一、無茶振りは良くない。だいたい、僕と父さんが揃っている空間の空気をほぼ初対面の相手に味わえと言うのか?流石にそれは酷というか、鬼畜が過ぎるぞ」

 

「その魔王同士が"いてつくはどう"を放ち合ってる空間に出会って7日くらいで叩き込まれたんだが、俺!?」

 

「懐かしいな、あの時は楽しかった」

 

「俺は怖かったけどな……!父さんの知り合いだって理事長と同級生から『うちに遊びにおいで、ついでにご飯も食べていきなさい』とか言われたから行ったのに、待ってたのは淀んだ空気と笑い声という名の魔王達の合唱……!和やかな雰囲気なのに目が笑ってないお前らに挟まれて生きた心地がしなかったぞ……!」

 

「………………………それでは、失礼する」

 

「あっ、待って下さい!お願いです、烏間先生ぇ!」

 

 手を伸ばす乃咲くんに振り返ることなく部屋を出る。

 

 強く生きてくれ、乃咲くん。

 俺はそんなことを考えながら病院を後にした。

 

 




あとがき

はい、あとがきです。
なんと言うか、浅野親子の揃ってる食事会とか絶対に食事を楽しめる様な余裕を持って臨めるヤツ居ないと思うんです、この世界。

魔王同士がいてくつはどうを放ちあってる空間で食事をしたことがあるという圭一、その時の恐怖は彼のみぞ知る……!

ってことで次回。ようやく原作10巻の1話目に突入です。
信じられるか、もう100話目が間近に迫ってるんだぜ?(原作全21巻)
テンポをもうちょいどうにかしたいところですね……。

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