暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの感想と高評価をありがとうございます!

誤字修正もありがとうございます!
なんだか、見ていて恥ずかしくなる様な誤植や誤字が多く、小学生の頃、作文で直しを食らっていた頃を思い出しました(笑)

それに、磯貝を悠馬呼びするのに今だに慣れず、もしかすると所々に圭一視点での磯貝呼びが出ているかもしれません……。
もしも見つけたら優しく叩きつけてもらえると嬉しいです……!




91話 捕食者(プレデター)の時間

 

 生徒は泥棒、警官は怪物先生2人。

 か弱き泥棒は1人の警官に蹂躙され、そして、もう1人の警官のガバガバセキュリティによってあっという間に脱獄。

 ケイドロと言う名を借りたある種のマッチポンプ演習鬼ごっこは、無限ループに入りつつあった。

 

「まさか、本当に買収出来るとは……」

 

「あはは……。私のプリン情報を聞いたら職務放棄してすっ飛んで行ったもんね。お陰様で無事に逃げられたけど」

 

「でも、折角逃げても烏間先生にすぐに捕まっちゃう」

 

「うん……。烏間先生、やっぱり乃咲くんが予想してたみたいに追跡技術も持ってるんだろうね」

 

「追跡技術か……。例えばどんなのだろう?」

 

「私、ゲームが好きで、実際に教室で使えそうな知識とかないかなって、色んなものをプレイしてみたんだけど……。追跡と言ったら、やっぱり一番多かったのは痕跡を辿るヤツだったかな」

 

「痕跡……。あぁ、なるほどネ。足跡だけでも色んな情報が得られるか。跡の数で人数、形と大きさで誰が、向きで何処に。足跡一つで結構明け透けになるね。ナイス情報だよ、神崎さん。これからはそう言う痕跡にも注意していこう」

 

「みんなにも展開しておくね」

 

「ヨロシク〜」

 

 木の上で見張るカルマくんから返事が来る。

 

 カルマくんは僕らを率いてテキパキと情報を集めて、みんなに共有していく。やっぱり、こう言う時の彼は頼りになる。

 でも、それとは別に少しだけ驚いた点がある。驚いたというか、違和感というほどだとないけど、ちょっとした気付き。

 

「なんかさ、少し意外だよな。乃咲とカルマ。もともと仲が良いのは知ってるけどよ?カルマは割と乃咲の意見を取り入れるし、逆に乃咲からの指示には割と素直に従うよな」

 

「そうだね」

 

「あ、それ私も思った。普久間島の時とか」

 

 杉野の呟きに頷くと茅野もノッて来た。

 あの日はホテルに残っていた杉野、神崎さんと奥田さんは少し首を傾げているけど、でも、何処か同じことは感じてるようで、3人とも思った以上に顔に出ていた。

 

「ん?俺が乃咲クンに合わせる理由?」

 

 カルマくんも僕らの話題を聞いていたのか、木の上からスルスルと滑る様に降りて来た。

 

「そ。お前って協調性が無いわけじゃないけどさ、周りの言うことを聞くよりも、言うこと聞かせて従わせる側じゃね?」

 

「確かに人を手のひらで転がす方が好きだけど、乃咲クンは別。面白いじゃん?」

 

「お、面白い?」

 

「そーそ。俺が思うにさ、警戒出来ないってすげ〜怖いことなんだけどね。逆にシンプルに警戒しても足らない怖さってのもあるんだ。彼は後者。なんて言うのかな、底が見えないんだよ」

 

「……うーん。まぁ、確かに底知れない感じはするけど……そんなにかな?視野の広さとか、暗殺の技術とか。いつの間にかみんなの中心にいて、割と自分が持ってる手札はオープンにしてる様に見えるから言うほど怖くないと思うけど」

 

「アイツの怖さは見せてる、あるいはみんなが見てる手札で最大限で、一番効果的な役を作れるところだよ」

 

「と言うと?」

 

「多分、乃咲クンは頭がキレるとかそう言うタイプじゃない。1を見て10に思い当たるんじゃなくて、1から10までを考え倒す実は要領が悪いタイプなんだと思う」

 

「え?あの乃咲が?」

 

「杉野さ、アイツのノート見たことある?」

 

「いや……ない」

 

「俺さ、殺せんせーが来て初めてのテストの時、その直前に彼のノート見たんだけどね。なんつーかスゲー壮絶だった」

 

 そう言えば、乃咲が勉強してるのは見たことあるけど、どんな風にノートを取ってるとかは見た事がない。

 

「勉強は反復練習だって言うけど、実際に理解出来るまで淡々と同じことを繰り返すって奴は初めて見た。やり方を1から10まで図解もしてたし、その結果、ずっと学年ドンケツだった奴が理事長の妨害アリで俺を除けばクラスで一番成績が高かった。間違いなく、妨害がなかったら、宣言通りにあのテストもクラスで一番良い点数だったはずだよ」

 

 覚えてる。殺せんせーが来た後、初めて受けたテスト。僕らは惨敗し、悔しい思いをした。

 クラスのみんなの前で宣戦布告、挑発に近い発破を乃咲がかけ、約束を守れなかったら土下座まですると宣言した事件。

 

「別にアイツの言うこと全部正しいとか思っちゃいないよ?だから、俺としてはあくまで彼の意見を聞くだけ。聞いた結果、取り入れるべきだと思うから乃咲クンの言うことを聞いてる。だってあのノートを見る限り、アイツは俺らが考えている以上に頭の中で試行錯誤して、一番良い選択肢を取ってるんだろうから」

 

「…………まぁ、確かに。俺らもいつの間にかアイツを頼る様になってたよな。最初は落ち込んでる時に話し聞こうとしてくれて、意外と良い奴だって絡む様になっただけだけど」

 

「それに何だかんだで一番実績があるのも乃咲クンじゃん?殺せんせーの触手壊したのも、作戦指揮も、その他でも。ホテルの事件だって、犯人が鷹岡だって俺らの中で一番早く辿り着いたのはアイツだし、結果的に必要なかったけど、解毒薬を確保したも、俺たちを指揮して鷹岡を完封したのも彼だ」

 

 確かに。僕らはいつの間にか彼に頼っていた。

 理由を聞かれたら、『実績があるから』と答えるだろう。でも、その実績をこうして見てみると、確かにそこにはシンプルに頭がキレるってだけじゃ説明できないものがある様に思った。

 

「だから俺は乃咲クンが怖い。喧嘩したらどうこうとか、そう言うんじゃなくて、どんなに警戒して策を張れたとしても、一個一個、淡々と考え抜いて潰してくる様な気がするから。警戒してもし足りないところがね」

 

「なるほどな。でもよ、それがどうして面白いってなるよ?」

 

「自分の知らないことって理解できたら面白いじゃん?アイツはこっちで指示出すより、転がしておいた方が結果を出すタイプだと思うし、なにより………」

 

 カルマくんは怖いと言いながら獰猛に笑った。

 

「アイツ、なんか隠し球持ってるじゃん?」

 

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「うへぇ〜。追われながらのフリーランニングってめちゃくちゃ緊張感あるな。前後左右上下に気を配るとか初めてだわ」

 

【それにしては動きがスムーズですね。皆さんにお願いして、フリーランニング中の視点を撮らせて貰いましたが、一番身軽な岡野さん、木村くんですら枝移動やロングジャンプの際は一瞬の躊躇いがあるのに貴方にはそれがありません】

 

「まぁ、考えてはいるんだけどね」

 

 言葉を交わしながら枝を蹴り、数メートル先の木へと飛び移り、勢いを殺すことなく幹を蹴り、岩を駆け上がる。

 フリーランニングと俺の"ゾーン"は相性が良かった。一瞬で目標までの距離、危険度、周囲の状況を判断しなきゃ行けない所を、止まったようにスローモーションで流れる世界に入ることでしっかり分析して様々な選択肢を取る事ができる。

 

 しかし、それを側から認識する術はなく、故に律には俺の行動が迷いや躊躇いがない思い切ったものに見えるのだろう。

 

「よっと……」

 

 俺はこの山でおよそ一番見晴らしの良い位置に陣取った。ケイドロがスタートする前に決めていた危険なので立ち入りを禁止されたエリアには含まれない絶好の偵察スポット。

 今は1人行動をしているが、さっきまでは悠馬たちと一緒に行動していた。みんなに着いていけたあたり、ひとまず身体能力は問題なさそうだ。加えてこんだけ動き回っても息が切れてない。体力ももう大丈夫だな。

 

「あとは勘を取り戻すだけだ」

 

 身体の性能自体は問題ない事が把握できた。あとは、烏間先生や殺せんせーに喰らい付いていく感覚を取り戻さないと。

 身体能力は取り戻せても、暗殺を仕掛ける感覚や戦闘する緊張感は実際にやってみないと戻らないもんだしな。

 

「………なら、手伝ってやろうか」

 

 律に向かって投げた言葉。しかし、それは俺の予想とは違う方向、違う声音として返ってくることになった。

 

 振り返ると、そこには笑顔の烏間先生がいた。

 笑顔、と言ってもそれは、側から見るに、とてもでは無いが友好的なものではなかった。

 ふと、思い出す。笑うとは、本来攻撃的な行為だ。獣が牙をむく行為が原点である。つまり、笑顔とは、攻撃姿勢なのだ。

 そう思うと、"獰猛な笑み"とはぱっと見では矛盾している言葉に聞こえるが、笑うと言う行為の本来の意味を考えるとこれ以上ないくらいに正しい表現なのかもしれない。

 

【……乃咲さん、逃げなくて良いんですか?】

 

「……はっ!?」

 

 現実逃避していた。

 烏間先生の笑顔は違う意味で破壊力がある。なんか、こう、物理的な破壊力がありそうと言うか。

 夏休み前、軽い雑談をしてる時にそういえば聞いた事がある。烏間先生は犬が大好きで、見かけると思わず笑顔になってしまうが、近づこうとすると、死に物狂いで吠えられるのだとか。

 

「……そら吠えられるわな」

 

 俺は今、その犬達の気持ちを理解した。 

 目の前にいるのは、ホモサピエンスではなく、プレデターという種族なのでは無いのか、と思ってしまう程に。

 

「あの超生物と同じ側なのは癪だが、それでも生徒たちのやる気を出させる手腕においては認めざるを得ない。鬼ごっこは、ある程度の緊張感を持ちつつ、学んだスキルを活かし、そして追われる側の心理を学べる良い訓練だ」

 

「そ、そうっすね」

 

「そう言う緊張感は、鈍った感覚を取り戻すのにうってつけだと言える。さぁ、追いかけっこといこうじゃないか」

 

 猛獣も泣いて逃げ出すような笑顔から背を向けて俺は一心不乱に駆け出した。

 

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 獲物を追いかけ回す捕食者としての本能。顔に獰猛な笑みを貼り付けた烏間はそれを本能レベルで思い出していた。

 目の前の銀髪の少年。自分よりも一回り歳下の彼を追い回すことにある種の楽しさを覚えていないと言えば嘘になる。

 

「(………流石に速い)」

 

 乃咲圭一の背中を各種テクニックを駆使して追いかける中、浮かんだ感想はそれだった。

 そう、速い。圭一は速かった。まだ自分が教えた初心者用のテクニックしか使えてないにも関わらず、その身体はその辺の木々を利用しながら着実に加速して行く。

 前方の枝を掴んで身体を引き寄せ、勢いをつけ、それを殺す事なく身体を投げる様に手を離し、次の枝を掴んで、同じ様に加速する。その動きは獣じみていた。

 

 追いかけ始めて間も無く悟る。そして確信した。おそらく、直線では追い付けない。現に、こうしている間にも彼との差はジワリジワリと広がりつつあった。

 

 次に烏間がとったのは、移動に高さを加えた立体機動だった。山の中の地面は柔らかく、フリーランニングの訓練には確かに向いていたが、同時に木の根などの微妙な隆起があって真っ直ぐ走るには適していなかった。

 

 烏間は飛び上がり、枝を掴み、人外じみた動きで木の上に登ると、枝と枝の間を地上とは比較にならない速度で跳躍する。

 その動きに効果音を付けるのなら、ぴょんぴょんなどと言う可愛げのあるものではなく、バヒュン!バヒュン!とゲームやアニメの中の人型機動兵器がスラスターでも吹かせてんの?と突っ込みたくなる様なものになるだろう。

 

 その超人そのものと言える跳躍は一気に圭一との距離を詰める。背後から凄まじい勢いで一気に距離を詰めてくる音と気配に少年は壮絶な恐怖で顔を歪めたが、負けじと更にテクニックを行使しして、後ろから迫る捕食者から逃げる。

 

「(まだ速くなるか)」

 

 烏間は内心驚いていた。

 地上では分が悪いと踏んだのか、圭一も並外れた動きで木に昇る。地面を蹴り、木の幹を踏み、勢いと速度を殺す事なく進行方向を90度変えると、飛んだ先の太い枝を鉄棒の様に利用して身体を半回転。更に前方へと飛んで、枝の上に飛び乗った。

 

 その動きは、烏間をもってしても人外のそれに見えた。

 

 負けじと逃げる圭一に更に負けじと自身もスピードを殺すことのない90度の急旋回を披露すると、教師と生徒のケイドロという微笑ましい絵面を投げ捨てた人外同士の追いかけっこは、あまりにも壮絶な空中戦に移行する。

 

 鬼ごっこ、ケイドロ。子供ならやったことはあるようなありふれた遊びの名を冠した食物連鎖を彷彿とさせる、被食者と捕食者の生死を賭けた追いかけっこ。

 訓練という名の遊び、遊びという名の訓練。どちらであっても、もはや関係ない。命懸けで逃げ惑う圭一の本気で怯えた表情と、それを必死に追いかける獰猛な野獣の様な烏間という絵面は、中学校の体育の授業と言うにはあまりにも壮絶過ぎた。

 

「誰かぁぁぁぁぁぁあ!!助けてぇぇぇぇぇぇえ!!!」

 

「ほう……。大声で自身が追われてることを伝えながら、周囲に注意を促すか。やはりやるな……!」

 

 違う、そうじゃない。

 

「喰われるッ!喰い殺されるぅぅぅぅッ!!」

 

「その上、このスピード、この機動の中で噛まず、ブレず、良く喋る。皆に指示を出す上で必要なスキルを身につけ、磨くとはな……。やはり、キミは頭2つくらい飛び抜けている」

 

 烏間の中で圭一の評価が上がっていく。

 それは、一言で言えば勘違いなのだが、事実として圭一は野生の猛獣ですらしない様な超スピードでの立体機動の中を一度も噛まず、声をブレさせることもなく、情けない悲鳴をあげていた。

 

 情けない悲鳴ではあるが、その実力は評価されて然るべきものである。現に、烏間の不意打ちの様な軌道の変更により詰められていた距離もまた離されつつあった。

 圭一の持つゾーンという常軌を逸した集中力と超スピードによるほぼ止まった世界の視点。それによって繰り出される側から見ると迷いのない動きと、想定していなかった進行ルートの選択。それにより、烏間との間に生まれる僅かな判断速度の差が距離として如実に現れていた。

 

 もっとも、圭一が現在ゾーンに入っているのは、自身の意思によるものではなく、現在進行形で自身に猛スピードで迫りくる捕食者からの逃走による緊張感が要因なのだが。

 

 しかし、そんな鬼ごっこも終わりが近づいていた。

 いくら山の中といっても、その中に所狭しと木々が並んでいるわけではない。自然に開けたスペースが生まれることだってある。そして、烏間と圭一の視界にはそんな終点が見えていた。

 

「ブランクを感じさせない良い逃げっぷりだったが、ここまでだな。乃咲くん。鬼ごっこは終わりだ!」

 

 見える景色に足場になりそうな物はない。直線距離にある木は20mは先。いくらなんでもロングジャンプで届く距離ではないし、高所をとって無理やり距離を稼ごうにも、現在彼らが足場にしている木に高さはない。

 加えて、横に移動しようにも、烏間が教えた技術では木の枝の上での急旋回はほぼ不可能だ。実際、できる可能性が無いわけではないが、真横に移動する圭一に対して、烏間は斜め前への移動で済む分、圭一には分が悪い。

 

 左には岩壁、正面には空白地帯、右から後ろに進めば烏間。彼の言う通り、今の圭一は端的に見た時、詰みだった。

 

「食われてたまるかぁぁぁぁ!!」

 

 時に、追い詰められた者の突飛な行動を完全に予期できる者はいるだろうか?猫を噛む鼠、スカンクの屁、隅っこに追い詰められたゴキブリが飛ぶ、トカゲが尻尾を自切など、追い込まれた者の取る予想外の行動は様々だ。

 

 もはや人と人の鬼ごっことは思えない絶叫と雄叫びを上げた圭一が取った行動は、その類に漏れることなく突飛だった。

 圭一は、広場に出る一歩手前の最後の木から全力で左の岩壁に向かって跳躍した。躊躇いなく、減速なく、むしろ加速しながら跳んだ圭一は、悲鳴を上げながらほぼ壁と言っても差し支えのない足場を20mほど駆け抜け、対岸にある木々に飛び移った。

 

「壁を走った……!?」

 

 アンタが言うな!と生徒たちから総ツッコミが来そうな反応を見せた烏間は思わず停止した。木の幹をがっしりと掴んで最後の木の枝に止まり、追跡が止んだとも気付いてないのか、未だに跳躍を繰り返して逃げる圭一の後ろ姿を眺めた。

 

「ひえぇぇぇぇぇぇっっっ!!!?」

 

 遠くなっていく圭一の悲鳴。

 思わず止まってしまったことで彼との距離はもう巻き返せないほどに空いてしまった。追いつくことは出来ないだろう。

 2人の人外の逃走劇は圭一に白星が上がった。とうの本人はそれにいまだに気付いてはいないけれども。

 

 追おうかとも考えたが止めた。確信した。追いかけたとしても千日手になる。既に何人か牢屋送りにしているが、それも悉く脱獄している。ラスト1分になれば、殺せんせーも動き出し、瞬く間に全員を捕らえるのだろうが、それは今全力を尽くさない理由にはならない。そう思えば、今はここで彼を諦めて他の面子の捕獲に回った方がいいだろう。

 

「今回は、キミの勝ちだ」

 

 圭一には聞こえもしないのに、烏間は呟くと踵を返して来た道を戻る。教え子と激戦を繰り広げた道は長かった。

 

「(……初速は凡そ時速600〜700kmを出す超生物に当てられる蹴りを放つ脚力。そう思えば、壁を走る程度は驚くことでもないのか……?しかし、そう考えると、彼のあの逃げ足は些か遅い様にも感じる。加えて、今回の鬼ごっこでは、過去に数回見せた瞬間移動じみた動きはなかった)」

 

 道を辿る烏間の脳裏に過るのは、彼の父、乃咲新一の研究である、人体の強化についてだ。

 ふと思う。圭一は現在、殺せんせーという超生物を狙う暗殺者という意味では烏間を始めとしたE組の仲間だ。そして、その圭一に乃咲新一の研究の成果が現れているのは間違いない。

 だが、もしも、新一の研究成果を悪用する者が現れたとしたら?その成果を悪用した者が金に目を眩ませてE組の生徒たちに危険を及ぼすような事態があったとしたら?

 

 ないとは言えない。現に、烏間と同じ立場にいながら道を踏み外した鷹岡という前例がある以上、E組が狙われないという保証はないし、なにより、殺せんせー……もとい、触手細胞を生み出した科学者は今、好き放題やってると聞く。

 新一が現在、政府に協力しているのは、その科学者の理論と新一の理論の根本が似通っているからだ。

 

 つまり、その科学者は、その気になれば圭一の様な力を持つ者を用意することができるということ。

 

「(俺はその時、あの子たちを守ることができるのか?)」

 

 頭にふって沸いた疑問。

 苦々しくさっき逆方向へと駆け抜けた道を見ながら考える。圭一に追いつかなかったことが答えなのではないのか?と。

 

 烏間の心配を他所に、圭一の悲鳴はまだ続いていた。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

「ねぇ、カルマくん。さっきから乃咲の情けない悲鳴が滅茶苦茶聞こえてくるんだけど……。本当に隠し球とかあるのかな」

 

「………俺もアイツがわかんなくなって来た………」

 

 カルマは頭を抱えた。

 

 




あとがき

はい、あとがきです。

今回と次回は今の圭一の全力がどんなものなのか書いてみる回となっていますが……。なんか、どんどん超人になっていってる気がします、うちの子……。

設定を盛りまくり、本人も頑張っているけど……それなら暗殺教室じゃなくてドラゴンボールでよくね?になりそうで複雑ですね……。
オリ主ものだからこんなものと割り切ることも大事なんでしょうが、いつか肉体のスペックは普通の人間ってキャラで作品を作ってみたいもんですねぇ……。

っと、執筆時に感じた不安でした。
完結した時に、第一話のこれが最終回でこうなるのか、と見返すのを楽しみに今は頑張る所存であります。

それでは今回もご愛読ありがとうございます!

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