加えて、たくさんの高評価、感想ありがとうございます!
今回も投下しますのでお付き合いください……!
はやい、もう12月………。
嫌だなぁ、怖いなぁ……。
⬜︎追加
申し訳ありません。
投稿する場所を間違えましたので再投稿しました。
ご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします……!
雪村さんは無事、殺せんせーから真相を聞いたらしい。
特に波乱もなく、話し合いは進んだそうだ。雪村さんのことも信じてるし、その場には圭一も同席したというので絶対に問題はないと思っていたが、それと心配しないことは意味が違う。
僕に他に何ができるのかは引き続き考える。
圭一の能力はほぼ限界レベルまで引き上げられているだろう。でも、それは今の状態では、という話し。まだ、あの子には何段階か上がありそうだ。以前、彼には才能はないと言った。その時は正直、それをなんて表現すれば良いのか分からなかったけど、今なら分かる。才能とポテンシャルは別だ。圭一は才能ではなく、ポテンシャルに恵まれたんだろう。
雪村さんは中学卒業したら、芸能界に復帰しようとしてるらしい。普通の学校に行くか、芸能学校を選ぶかは決められてないらしいけど。まぁ、もともと学力自体は高い方だし、どんな学校に行っても大学を選べるくらいに能力を底上げ、あとは僕のスキルをいくつか教えて演技力を更に向上させる方向かな。
「と、言うわけなんですけど。方向性に異論は?」
「ありませんね。概ね、私と同じ結論です…………なんですが、どういう風の吹き回しです?以前、あの子を通して私を見る。我々はライバルなのだと言っていませんでしたか?」
僕は、黄色いタコになってしまった、かつての師と教育論を擦り合わせていた。もちろん、本当はこちらとしてもそのつもりだったけど。ちょっとだけ考えを改めた。
「その部分は否定しません。でも、高校進学に関して直接関わるのは親というか保護者と中学校ですからね。教え子の将来を考えるのなら、中学の先生と意見のすり合わせは必要でしょう?」
「なるほど、その通りです」
僕の言葉に頷くと、彼も口を開き出す。
「雪村さん……いえ、茅野さんの今後ですが……彼女には持ち前の演技力があります。その部分の才能に関しては世界でも最高峰に食い込めるレベルで高い。現に、私は彼女の正体など気付きもしませんでした。正体が気付かれていたことにもね」
「えぇ。それは僕も思っていました。雪村あぐり先生が亡くなった直後、落ち着かせる為とは言え、早い段階から、あなたの正体は仄めかしていた。それを気取られないのは凄まじい才能だと。本当に気付いてなかったんですね」
「恥ずかしながら。同じ教室にはイリーナ先生という世界屈指のハニートラップ使いがいます。演技力という一点の才能でなら決して引けを取らない。彼女に学んでいる生徒がうちの教室にもいますが……同じくイリーナ先生に学べば……女優として、並び立てる存在がいない程の存在感を出すことができるでしょう」
「ハニートラップ。それは確かに彼女が身につければ強力な武器になるでしょう。男を落とす技術と持ち前の演技力の合わせ技。なにより、誰かを落とす、つまり籠絡するには、相手の内心を見抜く観察力と距離を詰める為の技術、それらをどう使うか判断する思考力が必要……。やはり、優れた暗殺者はよろずに通ず。ということですか」
「案外、暗殺という一つのカテゴリーに限った話ではないのかもしれませんね。何かを極めると言うのは、山の頂点に立つという意味ではなく、あくまで道を極めるということ。道とは技能や技術の数だけあり、それら道の到達点の集まる地点が山の頂点。よろずに通ずとはそういうことなのかも知れませんね」
「到達点、という意味ではその通りでしょうね」
極める為の道は、知識や技能の数だけあり、それら全てが集まる先が頂点。道は一つじゃないが、頂点は一つということか。
「何かを極めた者が辿り着く場所は同じ、か」
「そういうことなのでしょう。そして、そう言った強者に通じる思考とは、自分の強みだけでは乗り越えられない場合も想定しているという点。一つを極めたら別の道、それも極めたら次の道。そうやって死角をなくしていくうちに引き出しが増え、視点が広くなり、比類なき猛者になる」
「………哲学ですね」
「えぇ。ある意味で、私が辿り着いた、我々という"死神"を作り上げた究極の教育論というべき考え方。しかし、その道中で他者を顧みる事を覚えなければ、何処かに決定的な致命点が生まれる。取り返しの付かない過ちを伴って」
「……僕や"先生"がそうだった様に」
「それでは、雪村さんは演技力を向上させつつ、ハニートラップを学ばせて女優としての死角を無くす方向へ。同時に学力も強化すると。名前が売れればクイズ番組などに呼ばれることもあるでしょう。その時、鋭い知性を見せることができれば、その後も起用される可能性が出てくる」
「その線で行きましょう。容姿も学力、教養も良し、そんな人材は何処もかしこも求めている。コメンテイターをやるにせよ、知性から繰り出される鋭い指摘というのは良いアクセントになる。天然おバカキャラも悪いとは言いませんが、アレは顰蹙を買いかねない」
「そうですね。この路線であれば、仕事に困ることはないでしょうし、万が一があっても"次"に繋がる選択肢を取ることができる。もっとも、今あげた要素に加えて、うちの教室で培った暗殺技能や身体能力でアクションもこなせるでしょうし、スタントマン要らずの女優なんて存在をそう簡単に手放す事務所はないでしょうがね」
それを、僕らは知ってる。お互いに間違え、そして見てくれる人と出会ったから。過ちに気付かせて貰えたから。
考えてみれば、すごい因果だ。"先生"は雪村あぐりと。僕は乃咲圭一と。それぞれ出会った。そして、雪村あぐりと乃咲圭一は当時こそ関わりは薄いものの、同じ学校の教師と生徒だ。
僕ら師弟は、彼ら師弟にそれぞれ別のタイミングで違う事を教わり、過ちに気付くことになったのだから。
「生徒たちなら我々のような過ちは犯さないでしょう」
「……えぇ。きっと。もっとも、僕は圭一と雪村さんしか知らないですけど……」
僕の言葉に彼は苦笑した。
頬を掻き、仕方ないと言いたげな表情で。
「他の子達も彼らに決して引けを取りませんよ。過つことはあるかも知れません。それでも、必ず導くのです」
「凄まじい熱意ですね」
「………彼女に託された生徒と、そして他でもない、一番弟子の育てた生徒が見ているのです。孫弟子の前でカッコ悪いことろは見せられませんからね。何より、君に証明したいのです。師としての私の成長をね」
「先生として成長の証明ですか」
先生としての成長と証明。
僕は出来ているだろうか。正直、僕は先生として成長できていないだろ。そこには、僕が先生として過ごした時間の短さもあるだろう。まだ、成り立てという部分もある。僕を教えていた時期から考えれば先生の方が歴が長い。
それでも、悔しいと思うな。
先生の教え方はある意味で完成されている。
多分、生徒の一人一人の能力はそれぞれの得意分野に突出した育て方をしているのだろう。だからと言って得意分野一辺倒の偏った育て方もしていないはずだ。
僕の時のように死神を作る為の教育はしていない。しかし、死角や欠点らしい欠点は残さない。弱点があれば、磨き上げて武器にする。じっくり一人一人と対話をしながら。
正直、教育手腕としては恐ろしいの一言に尽きる。
"先生"に加えて烏間からも戦闘技能やサバイバル技術を学んでいる上、イリーナからは異性の落とし方と称して他者の機微を見抜き、自分の得意分野に持ち込む話術なども学んでいる。なにせ、それだけでなく"先生"からのメンタルケアもあると来た。
「えぇ。キミに負けてはいられませんから」
「僕に負ける?」
「その様子からは実感がないでしょうが、キミの
「……あんたって手本があったから」
「手本は手本でも悪い手本でしょう?私を反面教師に、それでいて私から得た部分を自分のやり方に落とし込んでいる。当時のやり方に足らなかったことをキミの考え方で補填した素晴らしい手腕です。死神の名に恥じないものだ」
「……そうでしょうか?」
「少なくとも、当時の私を越えている。乃咲くんと雪村さんを見て見なさい。彼らの成長がその最たる証拠です」
あの2人が僕の成長した最たる証拠。
本当にそうなんだろうか?確かに2人、特に圭一には僕の知識や技術は出来る範囲で継承してきた。
でも、当時の先生を本当に超えられているのかな?気持ちとしては、そのつもりだ。けど、それを認めたら……それこそ、成長は止まってしまう気がする。
「納得出来ていないという顔ですね」
「………出てましたか?」
「分かりやすくなりましたね」
くっそ。ポーカーフェイスが苦手になったか?
これじゃあ、雪村さんに演技指導がどうとか言えないな。
「そうですね……。では、乃咲くんを思い浮かべなさい」
「圭一を?」
言われた通りに考えてみる。
「彼は才能というより、ポテンシャルの塊。言ってしまえば、基礎値は低いけれど成長の限界値は誰よりも高い人物というのが私の印象です。異論は?」
「いえ。その通りです。あの子は最初から出来るタイプでも、やれば出来るタイプでもない。続ければ人並み以上にできる様になるタイプだ。……もっとも、そんな印象に反してこの1年でかなり伸びましたが」
「そこです。なんというか、恐らくは乃咲くんにとってキミとの出会いやこの一年は特異点なのでしょうけれど、それでも、元々は基礎値が高くはない彼をあそこまで伸ばした。それは、並大抵のことではない」
確かに簡単にできることではないと思う。
圭一は尊敬する相手には従順なタイプだ。リスペクトした相手のことはずっと覚えていて、尊敬を忘れないだろう。
だが、それと同時に一度見下した、あるいは見限った相手にはとことん冷たいというか、容赦がないタイプだ。
師匠の贔屓目抜きでも、優しい子だとは思う。
それでも、人を選ぶというか、優しさが向けられる相手が限定的というか。うん、出会った頃の圭一をただの人が育てるのは無理だろう。ある程度の能力がなければ、従うことはなかったはずだ。それこそ、たらればに意味はないと思うが、なにかの間違いで、先生と出会わなかった僕が彼と出会ったても、圭一は今ほど僕は懐いてはくれなかったと思う。
「基礎値は高くなく、それでいて自分よりも遥かに格上でもなければ従順にはならず、それでいて、彼の興味を引くことができる人材というのはそう多くないでしょう。恐らく、烏間先生や……理事長先生くらいです。ここに出てきた名前だけで、キミはその要求レベルの高さを理解できるでしょう?」
「はい……」
「その要求値を満たした上で、私が学校で彼を受け持った頃には既に、裏社会の人材たちを込みで考えても……戦闘力という部分では世界で指折り、思考力や発想なども中学生のレベルではありませんでした。それに要した時間が1年足らずというのですから、私は戦慄したものです」
それは圭一が僕に従順だったから。あの子が頑張ったからだ。
「キミは以前、言いました。生徒の成長を自分のおかげだと言ってはいけないと。先生のおかげだと言ってくれて、初めて誇れるのだと。あの時点で、キミは私以上の教師でした」
「………でも……最近は圭一を伸ばせていない気がするんです」
先生の言葉に思わず弱音が出た。
「と言いますと?確かに乃咲くんはそろそろ頭打ち感がありますが、それでも、あの子にはまだ……いくつか限界を越えられるスペックがあると思うのですが」
「それなんです。そこは僕も感じていました。あの子にはまだ限界を越えられるだけのポテンシャルがある。でも、それを引き出す方法が思い付かないと言いますか……。恥ずかしながら」
「ふむ……」
先生は……殺せんせーは腕を組んで考え始めた。
ニヤニヤしていた三日月の口を歪めて難しそうに。
「最近、あの子の周りには強者が集まっています。アンタや僕や烏間にホウジョウ。死神2人と神兵、日本最強が1人ずつと言えばメンツのおかしさが伝わるでしょう?」
「にゅぅぅ………。確かに。そこに加えて理事長先生や、彼の父親……乃咲博士も間違いなく強者の側でしょう」
「はい。一言で言えば、感覚が狂ってるんです。ゲームで例えるなら、レベル1の村人がラストダンジョンにいるラスボス、そこに挑んでる勇者パーティーを相手にレベリングさせられてる様なもの。パワーレベリングが過ぎた所為か、近いレベルの相手と戦って限界を超えるという経験がないのです」
「……流石に、キミも初めから叩き潰していたわけではないのでしょ?」
「流石にです。できるだけ、彼のレベルより少し高いくらいを想定して訓練してましたが、なんていうか………………そういう訓練を始めるのと並行して、何があっても正確に受け身を取って怪我を減らす為の練習をさせてたんですけど。具体的には、受け身が取れるまで延々と投げ続けるって訓練だったんですが」
「あ〜……私も似た様なことしましたね。受け身は全ての基本ですから」
「えぇ。僕もそれは間違いないと思っていたんですが…………はい、圭一はその訓練で妙な覚醒をしてしまったというか。徐々に楽しそうに笑う様になったというな、戦闘狂の入り口に立ったというか。しばらくするとナイフの素振りをしたり、カウンターのイメトレ中に笑う様になりまして……」
「えぇ……?」
「それ以降、妙に戦闘技能の修得と習熟が加速したんです。この前なんてホウジョウを模擬戦とは言え、倒してましたし」
「それは限界を越えたと言えるのでは?」
「いえ、むしろそれで成長限界を迎えたと言いますか……。ホウジョウ以上に強い人間なんて地球上にいないというか、少なくとも僕には心当たりがなく……」
「……もしや、乃咲くんより強い相手に心当たりがなくなってしまい、必然的に彼の限界を測れる相手がいなくなってしまったから、ある種の成長限界を迎えたと?」
「そうなります………」
「それは…………確かに深刻ですね。いえ、私的にはそれ以上に強くなってどーすんの?という案件だと思いますが」
「ですが、まだまだ成長できる生徒がいて、本人もそれを望んでいるんです。伸ばしてあげたいと思うのが教師でしょう?」
先生の言葉に返答すると、黒い点の様な目を大きくして、驚いた様に息を飲み、そして彼は笑った。
「ほら、キミは自分が思っている以上に教師になっている。自分が教えたことを吸収し、成長してくれることが嬉しくて、楽しくて、だからこそ、生徒がどこまで行けるのか知りたくなり、応援したくなる。そういう生き物を人は教師と言うのです」
「……そうですか?」
「えぇ。どうです?乃咲くんや雪村さんを満足いくまで育てることが出来たのなら、次は本当に教職に就くというのは。彼らもいつかは大人になる。既に3/4は大人だ。教師に取って生徒はいつまでも可愛い教え子ですが、いつまでも子供であるわけではない。キミは"次"を考えていいレベルで既に彼と彼女を育てている」
「…………次、か」
圭一と雪村さん。2人が巣立ったあと、僕はどうするんだろう?
先生の、殺せんせーの言う通りだ。あの子たちはあと5年……雪村さんは中学卒業後に芸能界に戻るなら、それは社会に出るのと同じだし、圭一も高校を出て大学に行かず、就職するとしたら、社会に出るまであと3年だ。
地球が来年も続くなら、僕は変わらず彼らの相談相手でありたいし、先生でありたい。行く末を見守りたいし、守ってあげたい。でも、きっと、僕が彼らを大人として守ってあげられる時間は思った以上に長くない。
現在の死神であることを烏間以外に自白して自首するか、このまま死神としての過去を背負って身を潜めて生きるのか。少なくとも、もう、殺し屋に戻るつもりはないけれど。
どうしよう?僕は、どうしたいんだろう?
「でも、一旦は乃咲くんの限界についてですね。私としても、彼のポテンシャルの高さは興味があります。何処までやれるのか、何処まで行けるのか、あの底知れない潜在能力は我々に何を見せてくれるのか」
「………はい。まずはそれを彼に示してあげたいです。"次"を考えるなら、その後ですかね」
そうだ。まずはそこに集中しよう。
彼に何を教えてあげられるのか。
「………ヌルフフフフ」
「………急になんです?」
再び教育プランを考え始める僕の横で黄色いタコが笑う。
相変わらずわざとらしい可笑しな笑い方で。
「いえ、ね。まさかキミと教育論を語り合い、教育方針を相談し、進路相談のようなことをできる日が来るとは思ってませんでした」
「……そうですね」
「それがね、すごく嬉しいのです。あぐりに出会い、生徒たちに出会い、キミと私しかいなかった教室で何が足らないのかを見せつけられ、考えさせられていました。何かが足らないどころか、足らないものだらけだったと。反省し、後悔しても時間は戻らず、キミにも会えない。そう割り切っていたはずなのに、こうして言葉を交わせることが嬉しい。同じ、教師という立場でね」
「…………」
「あぐりと乃咲くんに感謝ですね」
「………あって見たかったです、その雪村先生という方と」
「………そうですね。きっと、彼女も喜ぶでしょう」
彼と再会した時。僕は彼に言った。
圭一を通してあなたを見ている、と。圭一は僕の初めての教え子であり、"先生"は彼を育てる上でのライバルであると。
その言葉を撤回するつもりはないし、今でもそう思っている。だけど……そうだね、僕少し驚いている。
まさか、彼と生徒の進路というか、どんな風に伸ばして行くべきかって話題で話し合う日が来ると思っていなかったから。