暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!
誤字報告してくださる方々、誠にありがとうございます!

今回も投下しますのでお付き合いください。


102話 リーダーの時間

 

「ふむ。生徒の不安を晴らすべく夜のE組の山に乗り込み、真相を掴んだと。確かにその働きは見事だと言える。だけどね、浅野くん。それは本当にキミがやるべきことなのかな」

 

「お言葉ですが理事長。ご存知の通り、僕もE組の秘密を知る者として暗殺に協力している身です。一度頼まれ、引き受けたからには全力を尽くすのは当然のことでは?まして、国から口止め料を貰っているそちらとしても是非、怪しまれるような噂は消して欲しいはずだ。そうでなくては一流とは言えないでしょう」

 

「なるほど、キミが彼らに加担するのを選んだのはそういうことか。E組は何を言い繕うと椚ヶ丘の生徒であり、椚ヶ丘の生徒の責任は私の責任。彼らの不祥事をキミが自ら拭うことで私の尻拭いをしてやってるというスタンスを取りたいわけだ」

 

「さぁ?どうでしょうね」

 

「しかし、どうだろう。確かに最終責任は私だが、それ以前にキミは常日頃から学校を支配すると豪語している生徒会長。言い換えればこの学校の生徒全体のリーダーだ。大層なビックマウスの割にE組を御し切れていないとも言えるのではないかな」

 

 

「まだ関わり出してそんなに経ってませんからね。なに、確実に支配して見せますよ」

 

「ほう?時間さえあれば支配できると?妙なことを言うね、時間ならあったじゃないか2年間もね。これだけあってたかが同じ学年の子供を支配できない者がよくもまぁ私ごとこの学校を支配すると常々語れるものだ。仮にキミの威光が全生徒に広がっているのならE組に落ちる前から彼らを支配できていただろう」

 

「……………」

 

「前回のテストはなんだい?キミは確かにトップだった。しかし、それ以外は?キミの率いるクラスはどうだったかな?各分野ではE組に勝てた?総合でなら?そんなことはない。なぜなら各分野の大半はE組がトップに上がり、総合ではキミに並ぶ乃咲くんという強者に全員が惨敗だ。現段階において、E組の方がキミたちA組に勝っていると過言ではない状況だ。さて、ここまでの会話を踏まえて、なにか反論はあるかい?」

 

「くっ……!」

 

「強者が弱者を率いる。確かにそれは支配の構図としては正しい。だがね、弱者が弱者のままでいる集団であるなら、それを率いる者はリーダーに相応しくない。君たちには自分だけでも生き残る、上に上がろうとする危機感が圧倒的に足りていない。私はね、疑っているんだよ。浅野くん。キミは私が一番長く教えた生徒だ。そんなキミのリーダーの適性を今、疑っている」

 

「僕に、リーダーとしての適正を見せろと?」

 

「その通りだ。まず、何処で勝ちたいかを考える。その次に手段だ。いかにルールの隙をつき、どのように持ち駒を使いこなすのか。それこそがリーダーの資質だ。これが無い者が私の上に立つだなんて出来やしないよ」

 

「………いいでしょう。見せてやります。僕の資質を」

 

「そうかい。なら次の棒倒しを楽しみにしてるよ。キミの持ってる手札、持ち駒でルールの隙を突きながら正面切ってE組を倒してごらん。できたのなら、キミに資質があることを認めよう。無論、キミと彼らの関係は知ってるからね。険悪になれとは言わないさ。ただ、支配者を名乗るなら、相応の実力は見せて貰わないとね。まぁ、頑張りなさい」

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

 俺、前原、岡島、渚、茅野、片岡でテーブルを囲んで紅茶をちびちびと啜る。

 

 俺たちは、我らの委員長のバイト先に来ていた。

 ぶっちゃけ目立つし止めておいた方がいいんじゃないかとか思わないでもないけれど、まぁ、バレたらバレたでフォロー出来る奴がいないとまた面倒なことになりそうなのでもしもの時の為に一応みんなに同行………。

 

 なんて体で来ているが、まぁ、実際に友人の働きぶりが見てみたいと言うのが純粋な本音である。

 

「うーん。イケメンだっ……!」

 

 茅野の感心したような声に、この場にいる全員が頷いた。

 

「だな……。悲しいがあんなイケメンは滅多にいないだろう。俺が女子なら惚れ………はしないけど、危ないだろうな」

 

「乃咲が磯貝くんのこと褒めてる……!?」

 

「褒めるさ。つか、アイツみてムカつくのイケメン過ぎることくらいだしな。何を食って育てばあんなイケメンになるのかね。磯貝悠馬と片岡メグはE組の2大イケメンだし」

 

「はっ!?なんで私も!?」

 

「片岡さんは自分の胸に手を当てて聞いた方が良いんじゃないかな。私も乃咲に同意」

 

「僕も」

 

「俺も」

 

「なんなのアンタら……!」

 

 イケメグを揶揄っていると、悠馬がやってくる。

 

「お前らねばるなー。紅茶1杯で」

 

「いーだろ。バイトしてんの秘密にしてやってるんだからさ」

 

「はいはい、強請られてやりますよ。ほら、出涸らしだけど紅茶おまけな」

 

 人差し指を立てて紅茶を注ぐ。

 うーん。イケメンだ。悔しいがイケメンレベルでは圧倒的に悠馬が格上だ。月とスッポンレベルで差がある。

 

 正直、悠馬はうちのクラスでもトップ張れるくらいに人格者だ。日常の細かな動きはもちろん、俺みたいな浮いてた奴にも気を使うし、寺坂組みたいな扱いづらい奴らも邪険にしない。

 

 今のE組が結束できてるのは、コイツが潤滑剤になってくれていたからというのも大きいだろう。

 本当に頭が下がる。この前も柄にもない鉄拳制裁をしてまで俺のことを止めてくれたし、悠馬には足向けて寝れないのでは?

 

「ほんと、なんであんなイケメンなんだろ」

 

「っていうかさ、なんで磯貝くんってE組なの?」

 

「ん?茅野は知らないのか……。アイツんち母子家庭でさ、家計の足しにならばってバイトしてんだよ。しかも無許可。うちの学校は原則バイト禁止だからな。それがバレて厳罰くらってここにいる」

 

「罰則受けた理由までイケメンだ……!!」

 

 茅野が本気で感心してる。感心というか感動か。ジーンと目を潤ませて悠馬を眺めていた。

 まあ、気持ちは分かる。うちは母子家庭ではなく、父子家庭。母親と過ごした記憶なんてない。だからこそ、母親の為に校則破ってまでバイトしてる悠馬を見過ごしたのだから。

 

「アイツの欠点なんて貧乏くらいだけどさ、その貧乏ですらイケメンに変えちまうのよ。私服は激安店のを安く見せずに清潔に着こなすしさ。この前の祭りで釣った金魚食わしてもらったんだけど、めちゃくちゃ美味かった。それに、アイツがトイレに入ったあとよ、紙が三角に畳まれてたんだ」

 

「「イケメンだ……!!」」

 

「あ、紙なら俺も畳んでるぜ?三角に」

 

「「汚らわしい……!!」」

 

「ちなみに、大腸菌は紙を貫通するからトイレットペーパー使った後に三角折りするのは手についた菌が付着して不衛生だから止めような。そんな感じの話をこの前テレビで見た」

 

「へぇ〜。気をつけよ」

 

「あ、おい。ほら、見ろよ。磯貝の奴、マダムにめちゃくちゃチヤホヤされてるぞ。天性のマダムキラーめ!」

 

「「イケメンだ……!!」」

 

「あ……。僕もよく近所のおばちゃんたちにおもちゃにされてるよ………」

 

「「しゃんとせい……!!」」

 

「そう言えばこの前、アイツ、ラブレター貰ってたわ。E組なのに未だに本校舎の女子から貰ってんの」

 

「「イケメンだ………!!」」

 

「あ……。ラブレターなら私もよく貰う。女の子に……」

 

「「「「イケない恋だ……!!」」」」

 

「そんでさ?アイツめちゃくちゃ物持ち良いんだよ。昔から使ってる愛用品を大事にしてるっていうかさ」

 

「「イケメンだ……!!」」

 

「あ……。俺も未だに小学生の頃の財布使ってるぜ?」

 

 マジックテープの財布を出してバリバリ!してみる。

 

「「「「歳を考えろ……!!」」」」

 

 みんなイケメン以外には辛辣である。

 

「乃咲。今度さ、おしゃれで安いお店教えるから財布買い換えなよ。流石に驚かれちゃうからさ」

 

「え、でも倉橋さんとカルマは何も言わなかったぞ?」

 

「その2人は例外だよ………」

 

 茅野に呆れたような顔をされた。

 しかし、そうは言うが愛着あるしな。小学生の頃、街を歩き回る系の授業があった時、トメさんから『旦那様が選んでくれましたよ』と渡された想い出の品である。

 

 仕方ない。家で大事に保管しておくか。

 

「イケメンにしか似合わないことがあるんですよ。磯貝くんや先生にしか……ね」

 

 ふと、そんな声が鼓膜を叩く。

 聞き覚えのある声だ。同時に、記憶にあるものに比べてずいぶんとスカした声で話してやがる。

 

「「「「イケメ………なんだ貴様!!?」」」」

 

 まぁ、こんな反応になるだろう。

 ちゃっかり俺たちの後ろの席でハニートーストを食べている殺せんせーに皆のツッコミが刺さった。

 

「ここのハニートーストが絶品でしてねぇ……。この味に免じて磯貝くんのバイトには目を瞑っています」

 

「悠馬の無断バイトを報告して欲しいわけじゃねぇけど、それで良いのか、教育者……!」

 

「まぁまぁ。抑えて乃咲」

 

 茅野に嗜められつつ、紅茶を啜る。

 うん、俺は緑茶の方が好き。原材料は変わらないはずなのに、一体この味の差はなんなのだろうか。

 

「でも皆さん。磯貝くんがイケメンでも対して腹が立たないでしょ?」

 

「それは……うん」

 

「それはなぜ?」

 

「何故って……。あいつ、シンプルに良い奴だもん。理由なんてそれで充分じゃね?嫌う理由もねぇしよ」

 

「だな。俺イケメンなんで、私可愛いんで、何をやっても許されます!みたいな奴じゃないし。ただハイスペックなだけのイケメンならこんな人望集まらないだろうしな」

 

「…………乃咲って、あんまり口に出さないだけで結構色んな人を評価してるよね。ちょっとびっくり」

 

「評価して欲しかったから評価していた。それだけの話だよ。もちろん、茅野の事もしっかり評価してるぞい?」

 

「………貧乳って?」

 

「ナイショ」

 

 うむ。特に悪気はなかったとは言え、貧乳弄りをし過ぎた様だ。茅野の中で俺から茅野に向ける矢印のタイトルは貧乳弄りになってしまったらしい。反省しないと。

 

 ちなみに、俺が彼女への評価を口にしないのはとある理由がある。まぁ、そんなに重い理由ではなく、単純に俺の中で言語化出来ていないってだけだ。

 

 夏休みの最終日に俺は思った。茅野カエデは磨瀬榛名という俺たちと同い年くらいの子役に似ている、と。しかし、同時に何が引っかかった。喉に小骨がつっかえたように、脳裏を別の誰かの影が横切った。それが誰なのかはまだ分かっていない。

 

 加えて、表情や言葉とは連動してる様に思えない意識の波長。時々、無理矢理笑っている様に見える。

 

 俺の頭の中で茅野を別の誰かに結びつけようと何が動いている。直感なのか、あるいはただの感性の問題か。

 答えが出そうで出ない気持ちが悪いモヤモヤが蠢いている。だから、これを今言語化するのは止めておきたい。

 

「…………ん?」

 

 物思いに耽りながらぼーっと紅茶の入ったカップを眺めていると、何やらよくない気配を感じた。

 店の外。何か企んでいるのか、少し息が荒い。それも複数人。なんだろう、普久間島で殺気を向けられたからか、少しこう言うのに敏感になった。店の外からなんとなく感じるのは殺気に近いものだ。無論、あそこまで強くないが。

 

「?乃咲……?どうし————」

 

 俺の異変を感じ取ったらしい岡島が言葉を投げるとほぼ同時。カランコロン〜と店の扉が開く。

 

「おやおやおや。よくない噂を聞いて来てみれば」

 

「情報通り、バイトしてる生徒がいるぞ〜?」

 

「い〜けないんだぁ〜。磯貝くん」

 

 どうやら気配の正体が自ら現れてくれたらしい。

 姿を見せたのは学秀を除いた五英傑。飛び出した単語から察するに悠馬のバイトについてタレコミがあったのだろう。

 余計なことをしてくれた、とは言うまい。彼の事情を知らない者からしたら、悠馬は校則を破った不良児なのだから。

 

「お、お前ら………」

 

「2回目の重大校則違反、流石に失望したよ、磯貝くん。小山、今すぐ浅野くんを呼んでくれたまえ」

 

「ギシシ、もうコール中だ………もしもしもしもし!浅野くん?実は磯貝くんが校則違反してる瞬間に遭遇してねぇ。今から2丁目の喫茶店に…………えっ?やだ?棒倒しの戦略決め中?そ、そんなこと言わずに………あっ………切れた」

 

 小山が唖然と自分のスマホを眺める。

 その姿は心なしかしょんぼりしてて少し可哀想だ。

 

「………え〜っと……………?」

 

 みんなどうしたら良いのか分からない雰囲気だ。

 

「榊原……。もしかして五英傑ってあんまり仲良くない?」

 

「そんなことはないと思うのだが……。どうやら最近、キミに彼を任せ過ぎたらしい。夏祭りの後とかしばらく『呼んでも来なかった蓮じゃないか』と拗ねられた。申し訳ないけれど、キミから呼んでくれないかい」

 

「えぇ〜……」

 

 五英傑の中で学秀の次に話が通じる榊原に話題を振ったが、帰ってきたのはそんな感じの返答だった。

 うん、なんとなくだが、これまでの五英傑招集未遂事件で見ていた、呼んでも五英傑が現れないとか、断られた場面の学秀を見てると容易に想像ができる。間違いなくヘソを曲げてる。

 

 五英傑の縋るような視線と、仲間たちのこの空気をどうにかしてくれという視線を向けられ、いたたまれずに学秀に電話。

 

『もしもしもしもし!』

 

「流行ってるのか、モウロ将軍」

 

『お前がやりだしたことだろう。それで、どうした?圭一から電話とは珍しいじゃないか』

 

「無断バイト、五英傑、電話、喫茶店」

 

『………はぁ。お前もいたのか。仕方ない。すぐに行くから待ってろ。というか、磯貝の事情を慮れば仕方のないことだが、アイツにももっとバレないところで働くように注意しておいてくれ。僕だけなら見て見ぬふりも出来たが、流石に今回は庇えないぞ。僕はあくまでも協力者なだけで、本職は生徒会長なんだからな』

 

「分かってる……。そこに関しては誰も文句言ったりしねぇよ。会長として公正に判断を下してくれ」

 

『覚悟ができてるのなら良い。10分くらい待ってろ』

 

 電話を切る。

 うん、今回ばかりは言い訳のしょうがない。

 

「10分くらいで来るそうだ。お前らもとりあえずは適当に座れよ。店に入って文句だけ言って何も頼まずに10分居座るのは迷惑だ。お客だっているんだからな。悠馬が働かなきゃ店に損失が出る。そんな大事にしたいわけじゃないだろ、お前達も」

 

「ま、その通りだね。コーヒーを4つ頼むよ」

 

「……かしこまりました」

 

「悠馬は店長さんに10分後、少し抜けられないか交渉してこい。お前が居ないと会話が始まらないからな」

 

「分かってる。ごめん、圭一」

 

「謝られることじゃねぇよ。まぁ、流石にお友達料金で切り抜けられそうにないから腹は決めておけ」

 

 とりあえず言いくるめて五英傑を座らせる。

 コイツらを放置しておくわけにも行かないのでみんなに一言告げ、俺が頼んだ分の料金を置いて席を移動し、五英傑たちの席に座る。しかし、話題らしい話題もないというか、仲が良いわけでもないので、普通に無言。

 

 すっごい気まずい沈黙の中。LINEが通知を知らせる。

 

 送り主を確認すると茅野だった。席の方を確認すると彼女と目が合う。仲間たちはみんな茅野の画面に注視している辺り、みんなの総意として彼女が話しているのだろう。

 

『磯貝くん、退学になったりしないよね?』

 

『わからん。1回目ならまだしも、厳重注意を受けてE組に落ちた上での違反だ。罰は厳しいものになるだろう』

 

『どうしよう……?なんとかできない?』

 

『何とも言えない。でも、たぶん初手退学はないだろ。悠馬を退学にするだけなら、無断バイトしてる証拠写真を理事長に提出するだけで良い。なのにわざわざ声を掛けてきたあたり、何か企んでるだろうな』

 

『何かって?』

 

『期末試験と似たような展開になるんじゃないか?A組というか、主に五英傑は俺たちにドロを塗られたようなもんだ。アイツらの性格的に考えて、何かしら仕返しをしたがると思う』

 

『またテストになるのかな?だとすると結構先になるよね?』

 

『テストの前にうちは体育祭があるんだよ。もしかするとそこでどっちが多く1位を取れるかとか、A組と対戦することになる競技で白星が多いほうが勝ちとかそんなんだろ。多分ね』

 

 みんな納得してくれたのか、向こうでは難しそうな顔しているけど、危機感を感じさせる顔をしている。

 そう。E組は全校からハブられている為、そもそも参加できる競技は全体に比べて少ない傾向にある。加えて、参加できる競技は大体が高難易度。そもそも達成が難しいモノに割り当てられる。出場できたとしても、それら全てで1位を取るくらいでなければ厳しい。そうなると勝ち目はない。

 

 いくら俺たちが暗殺で鍛えられていると言っても、前回の球技大会のエキシビジョンのように、一つの競技に特化して鍛えた連中とは振っているスキルツリーが違い過ぎる。そもそも立っている土俵が違うとでも言うべきか。

 

 たぶん、さっきの電話から察するに、今回のこれはアイツの仕組んだことじゃない。だったらそもそも、この前ここで話した時に痛烈に批判し、学校に報告したはずだ。

 五英傑とは言ってるが、学秀がトップであり、A組にとって絶対的な支配者である以上、コイツらも俺たちの処遇を勝手に決めることはできない。つまり、学秀の判断次第だな。

 

 ……多分、条件自体はそんな酷い物にはならない。

 アイツは妙なところでフェアだ。勝負中はルールで縛られてないことならなんでもしてくるけど、不戦勝で勝ちに行くタイプじゃない。理事長の妨害のようなイレギュラーは想定するべきだが、アイツ自身は真っ向から俺たちを潰しにくるだろう。

 

「すまない、待たせてしまったな」

 

「こっちも店長からOK貰って来た」

 

 そんなこんなしてると件の人物が現れた。

 

「よし、じゃあ、ひとまず場所を変えよう」

 

「だな」

 

 俺たちは会計を済ませて店を出る。

 そして、改めて五英傑と対峙した。

 

「さて。磯貝くんが無断バイトをしているのが発覚したと言うのが今回の主題で間違いはないかな」

 

「……あぁ。その認識で間違ってない」

 

 学秀からの問い掛けに悠馬が頷く。

 なんとも居心地の悪い空気だ。学秀はE組の味方ではなく、生徒の味方。協力者ではあるけど、あくまでそこ止まり。そして、生徒会長としての判断を優先すると合流初日に表明していることで、みんな、学秀が庇ってくれる線には期待していない。

 

 それゆえのピリついた空気が痛い。

 

「……浅野。このことは黙っててくれないかな。都合のいいことを言ってるのは分かってる。でも、今月いっぱいで必要な金は稼げるからさ。あとは絶対に違反しないから」

 

「………そうだな。確かに都合が良すぎる。しかし、キミの事情もある程度把握している僕としてはチャンスをあげたい気持ちは山々だ。けれど事情を汲んで簡単すぎるチャンスを与えるのは話が違う。こうして不特定多数に目撃された以上、誰もが納得するような結果を示さないとね」

 

 少し考えるような仕草を見せた学秀が口を開く。

 

「よし、君たちに一つ、条件を出そう。これをクリア出来たのなら……今回の件は目を瞑ろう」

 

「条件……?」

 

「あぁ。今度の体育祭の棒倒しで僕らA組に勝つこと。これが出来たのなら告げ口はしないと約束する」

 

 棒倒しで勝つ。それは、俺の想定していた最悪の条件に比べればかなり希望はあるように見える。

 しかし、A組とE組はあちらが有利と言い切れるほどに人数差がある。いくら鍛えてると言っても、人数差を覆すのは簡単じゃない。これが喧嘩なら大したハンデにもならないが、ルールがあるスポーツとなれば別だ。希望はあるように見えて、結構危ない橋を渡ることになるだろう。

 

 と言うか……。

 

「学秀。通年の流れ的にE組はそもそも棒倒しに参加できないんじゃないか?毎年不参加だろ?」

 

「そうだ。でも、E組が僕らA組に挑戦状を叩きつけるのなら、話は別だ。A組と言う強者に最底辺の扱いを受ける君たちが戦いを挑むという行為は、うちの学校では勇気ある行動として称賛される。椚ヶ丘の校風は社会に出て闘える意思を持つ者を何より尊ぶ。違反を帳消しにするほどの尊敬を集める闘志。それを示せたのなら、僕らは何も言わないよ」

 

 そんな校風があったのか、と驚くが、まぁ……。一応は生徒会長の言葉だし、信じておくとしようか。

 

「わかった。その条件を受ける。E組は棒倒しでA組に勝つ」

 

「いや、圭一……。俺の為にみんなを巻き込むのは……」

 

「俺もサンセー。約束守れよな、浅野」

 

「前原、お前まで……」

 

 前原の賛同する言葉に浅野は頷くと歩き出した。

 

「当然だ。約束は守るさ。僕たちはここで失礼する」

 

「ギシシ……。見てろよ、E組ぃ、痛い目見せてやる……!」

 

「ふふふ……まぁ、華麗に勝って見せるさ」

 

「そういうこった、ビビって本番でチビるなよ?」

 

「君たちが勝てるとは思ってないけど全力で相手してあげるよ。次の校内新聞はE組がボロ負けた特集ページになりそうだね」

 

 なんかそれぞれ言いたいことを言い捨てて行く学秀を除いた五英傑。言われっぱなしもあれなのでいつも通り、煽り返す。

 

「別に特集組むのは良いけど、その前に前回のテストの結果を記載しろよな。【五英傑!まさかの4人抜き!?E組生に大敗北!!トップ6名で五英傑!?】って。四英傑に改名する準備でも進めてろや」

 

 両手で中指立ててそんな言葉を投げつけると、学秀を除いた全員が屈辱に満ちた表情を浮かべ、中指を立ててくる。

 

「あー。五英傑煽るのたーのしー」

 

「えっ、性格悪っ!?」

 

「むっ、失礼なことを言うんじゃないよ、茅野。俺に性格悪いだなんて言ったのはキミが初めてだよい」

 

「うそぉ……」

 

「ほんとほんと。みんな『良い性格してる』ってさ」

 

「それは褒められてないと思うけどなぁ!!?」

 

「つか、えげつないな、主席からの煽り。総合点も順位もアイツらのトップの浅野と同じだから言い返したくても言い返せない絶妙なラインを突いてやがる………」

 

「まぁ、言われっぱなしよりすっきりするけどさ」

 

 各々の反応を見ながら、LINEを開き、今回の出来事をまとめてクラスのグループに送信する。

 まず作戦会議だ。一旦はみんなのやる気を確かめないとな。

 

「圭一、前原……。こんな事する必要ないよ。ルールを破ってる俺が悪いんだからさ、俺が罰を受ければ丸く収まるだろ」

 

「まずはみんなに話そうぜ?お前が勝手に全部背負って居なくなっちまった時、周りがどんな気持ちになるのか考えろよ」

 

「っ……。こんな風に自分の言葉が返ってくるなんてな……」

 

「俺は根に待つぞ?俺に言ったんだからお前が実践してみせろ」

 

「………わかった」

 

 とりあえずは悠馬を焚き付ける。

 

 しかし、気になるのは学秀だ。なにか、様子がおかしかった。アイツならもっとえげつない方法を出してくる事も想定していたのだが……。こっちの事情を慮って手心を加えてくれたのか、それともなんか別の思惑があるのか……。

 

 何が起きるか分からない体育祭。俺たちは気を引き締めた。

 

 




あとがき

はい、あとがきです。

ついに始まりました、イケメン回。
磯貝の金銭事情って暗殺とかその辺を上手く使って国から援助してもらえないのかなぁ……。面倒事が嫌いそうな烏間先生の上なら今回みたいにE組が注目を下手に集めない為なら善意ではないけど、支援を受けられそうな………無理か。

次回、A組潰すゾ!!宣言。
果たしてあと2話くらい続きそうなイケメン編でうちの子はイケメン認定してもらえるようになるのか!?

今回もご愛読ありがとうございます!
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