暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!

今回で棒倒し決着です!
投下しますのでお付き合いください……!


107話 決着の時間

 

「……ついに気付いたか」

 

 棒を支えながら呟く。4方向から迫ってくるE組の攻撃隊。流れ的に気付いたのは圭一だろう。気付かれることも予想していたが、実際に現実になると驚きを禁じ得ない。我ながら常識外れた戦術を取っている自覚があったが故に尚更だ。

 

 思い出す。数日前の蓮たちとのやり取りを。

 

「交換留学?」

 

「ギシシ……。そこまでするのかい」

 

「別に良いんじゃねぇか?E組の吠え面が見えないのは残念だけどよ、アイツらが必死こいて戦ってる間でものんびりしてられるのは。優越感ってやつで心地よさそうだろ」

 

「いや、悪いが君たちには留学中もやって貰いたいことがある。五英傑として僕に並ぶ頭脳の持ち主であるキミたちにしか頼めないことだ。E組に勝つためには全力を尽くすしかない」

 

「僕らにしか出来ないこと?」

 

「その通り。今年から体育祭の様子を記録する為にカメラを設置することになったのは生徒会メンバーであるキミらなら知っているだろう?アレを使うんだ」

 

「観客席とフィールドが近いから地面に設置するのではなく、柱を用意して上から四方向で撮影するって話だったっけ。確か保護者への販売とかも視野に入れてるとか」

 

「そう。実はそれに使うカメラはネットに繋げばライブ配信なんかも出来る。今回はそれを利用する」

 

「……なるほど。僕らは留学して場にいないと見せかけることでE組の油断を誘うわけだね。留学しているという名目なのだから僕らがリモートでも参加しているという発想に至るのは相当難しいだろう。しかし、そこまでする相手かい?」

 

「今年のE組は今までの雑魚とは違う。不良なだけあって腕っぷしは学校トップの圭一と赤羽。体格が良くて度胸がある寺坂、吉田、村松。元運動部の木村、杉野。参謀としてなら竹林もいる。リーダー格の磯貝は勿論だが、器用な前原も油断できない」

 

「……………まぁ、球技大会のこともあるしな」

 

「そういうことだ。A組は頭脳面で優秀だ。僕の指揮にも積極的に従ってくれるだろう。だが、フィジカルで言えば毎日あの劣悪な山道を登って旧校舎に登校しているE組は未知数だ」

 

「確かにね」

 

「そこで君たちの目を借りたいんだ。球技大会の時の様に異様化するのは必至だ。その時対応できるよう、君たちにはリモートでそれぞれのカメラから様子を見て僕に伝えて欲しい。当日、A組はクラスの識別の為に帽子着用と評してヘッドギアを付けることになる。そこにブルートゥースのイヤホンを仕込んでおく」

 

「それならクラスの連中全員につけるかい?」

 

「いや、僕だけで良い。君らに指揮を任せることを考えなかった訳ではないが、そこは現場で意思統一しながらするべきだ。今回の作戦、バレる確率は低い。だが、仮にバレたとしても僕らには8人の留学生という外人部隊がある。最悪、E組の殲滅は諦めて速攻で止めを刺しに行けばいい」

 

「恐ろしい話だ。E組には同情するよ」

 

「まぁ、浅野くんのこの作戦、見抜ける奴がいるとは思えないけどね。盤外戦術がすぎる。気づく奴がいるなら普段何食って、何を考えて生きてるのか是非とも知りたいところだね」

 

 そんな会話をした。まさか本当に気付かれるハメになるとは。思ってなかったと言えば嘘になるが、現実になると確信していた訳でもない。今年のE組は手強い。

 加えて、毎日マッハ20のモンスターを付け狙っている彼らの底を僕は見切れていない。何せ、巨大プリン爆殺計画なんてものを考えつき、実行する集団だ。速攻で仕留めるしかない。

 そうでなければ更に僕の予想を超えるとんでもないことをやらかされかねない。何をしてくるか分からないというのはこんなにも厄介で恐ろしいとはな。

 

「『ケヴィン、サンヒュク、カミーユ、ジョセフ!指令(コマンド)A!お遊戯は終わりだ!仕留めろ!他の攻撃部隊は防衛に戻れ!』」

 

 今のうちに指示を出す。圭一のマイクを使うと言う奇策に効果が出始めれば会場は再び盛り上がり、声での指示は厳しくなる。そうなる前に指示を出しておくのは恐らく最善策だ。

 

「『了か………うぐっ!!?』」

 

「『あっれぇ〜、よそ見してて良いの?あんまりにも隙だらけだったから思わず投げちゃったけど』」

 

 防衛に戻ろうとしていた追撃部隊。しかし、僕の指示に従って動こうとした刹那、その隙を見逃さなかった赤羽によって一つの山を思わせる巨大が宙を舞った。

 ズシン!と地響きの様な音を立てて地面に落ちた巨漢をアイツは薄ら笑いを浮かべながら見下ろす。

 

「『乃咲クンが投げて、投げられての茶番で基準(・・)を作ってくれて助かったよ。ある程度の加減が分かった』」

 

「『う、ぉぉぉぉぉ………』」

 

「『流石に意識を刈り取るまでは出来ないけど、このくらいならね。お前は頑丈そうだから心置きなくヤれる。俺はこのまま攻め込むけど……追ってくるならまたおいで』」

 

 吐き捨てて赤羽は杉野と合流すると磯貝の指示通りに僕らを四方向から囲む様に陣形を組んだ。

 

「みんな、防御を固めろ!!何をしてくるか分からない!全員棒から離れるな!」

 

 叫ぶ。おそらく、4人の声を聞いているのなら四方向から同時に攻めればそれぞれからの報告と対応できるのは僕1人という状況から、突破口に繋がると考えているのだろう。事実、まさかの四方向からの攻撃に通話越しのみんなから動揺が伝わってくる。

 

『吉田、カルマ、前原、村松は発射台!他のメンバーは今の4人を足場に上から攻撃を仕掛ける!』

 

 磯貝のそんな指示から間をおかず、4人の人影が飛んでくる。流石に暗殺者を名乗るだけの身のこなしと判断の速さだ。うちの生徒はみんなE組の突拍子のない攻撃に唖然としていて動けないでいるから、僕しか対応できない。

 

 けど、幸いなことに攻撃を仕掛けてきている4人は発射台の役目をしている連中に比べて体格が劣る。動きが特に身軽だった木村は警戒しなければならないが、彼らは既に空中。ロボットみたいなスラスターでもなければ空中で軌道を変えるなんて不可能。それが対処の鍵になる。

 

 僕は1人づつ彼らを脚で払い落とす。

 攻撃班はなす術なく落ちていったが、着地と受け身を巧みに使って再度攻撃態勢に入ろうとしている。

 

 たったそれだけの攻防で観客は再び熱を取り戻した。

 観客の沸く声で僕の指示は既にE組の攻撃に向かった4人へ届くことはないのだろう。やはり先に指示を出しておいて良かった。向こうの棒の下で固められてる連中には多分、僕の声は届いてないだろうし、ケヴィンたちに任せるしかない。

 

 うちに攻撃に来ているのは指示役の磯貝を含めて9人。向こうの防御は圭一含めて7人。こちらの攻撃部隊より倍近い戦力だが、僕は今の空中戦で一つの確信を与えた。

 

 磯貝たちだけではうちを攻めきれない。空中戦を主軸にしている以上、多くても4人はジャンプ台に徹さなくてはならないし、指揮官の磯貝が潰されるのは不味いだろうから、攻撃してくるのは多くても4人。そして、そのメンツは体格の関係的にも今の面子になるだろう。

 

 お前達だけでは僕の城を落とすことはできない。

 落とし切るには人を呼ぶしかないだろう。いくら圭一という猛者が居たとしてもあの人数で倍高い体格を持つ4人に対して長く防衛するのは不可能だ。お前達の勝ちの目は防御を捨てた捨て身の特攻しかない。

 

 加えて言うなら、地上での防御は鉄壁だ。20人以上で棒を囲み押さえている。その分で、磯貝の仕掛けた空中戦は理に叶っている。だが、それでも4人ぽっちでは上からでも攻めきれないだろう。僕からしたらただの的だ。

 

 ならばただでさえ薄い防御から人を割くしかない。

 だが、それしか勝ち目はないだろう?攻めてこい、磯貝。E組を叩きのめすことは叶わなかったが、お前らの攻撃を全て凌ぎ、攻撃隊の圧倒的な力で捩じ伏せてやる……!

 

『防御隊、攻撃に移るぞ!』

 

 マイクを持って宣言する磯貝にニヤリと口元が歪む。

 そうだ。増援をよこして全力で攻めて来い。攻撃は最大の防御というが、それは違う。この局面では、どちらを疎かにしてもお前達は勝てないし、元々の戦力差的にどちらかにチカラを入れたとしても決め手にはならない。

  

 しかし、磯貝は僕の予想を超えた。

 

『渚、菅谷、三村!"音速"!』

 

「なにっ!?」

 

 アイツの出した指示は完全に予想の上だった。E組が勝つには攻め手を増やすしかない。そこはあっている。だが、問題は増援に出してくる人数だ。敵陣を見ると、棒を支えているのは3人だけ。それを守っているのは圭一だけだ。

 

 圭一は強い。確かに強い。今攻撃に当たった3人で決死になりながら足止めし、圭一が1人づつ撃破していく戦法なら理解できる。まだ彼らの防御が生き残る可能性はあった。

 

 しかし、防御が圭一だけだと……?流石に無茶がすぎるだろと思う。その辺の不良ならまだしも、彼らは肉体改造や格闘技、ラグビーに全力を注いでいる上に体格差もある相手だ。それも4人。いくら圭一と言えど棒を守り切ることは不可能だろう。

 

——防衛は全部お前に任せる!!

 

 磯貝の言葉が脳裏を掠った。まさか、あの時の言葉はそう言う意味だったのか?それを圭一も、今の3人も瞬時に理解した上でこんな迷いなく動いているというのか?

 

 そんな僕の思考をしるわけもなく、潮田たちは巧みにケヴィンたちをすり抜けると、つい数秒前に僕が蹴り払った連中を足場に飛び上がって急襲を仕掛けてくる。

 

「ぐっ!?」

 

「捕まえたぜ、浅野……!」

 

 潮田と三村は打ち落とせたが、菅谷に取り付かれた。そんなやり取りの間にも下では他の連中が再び飛び上がろうと準備しているのが視界の端に映る。防衛隊は必死に菅谷を引き摺り下ろそうとしているが、文字通り鍛え方が違うだかあって粘り強い。

 

 これ以上取り付かれるのは不味いだろう。

 

「『ぐぉぉぉ!!これ以上はやらせん!!』」

 

 赤羽たちを追っていた攻撃隊も立ち上がり、戻って来た。ムエタイをやっているジョッシュが雄叫びを上げて菅谷を掴むと投げ飛ばす。やはり、彼らの膂力は凄まじい。

 

 だが、その膂力も複数に取り付かれてしまったら発揮しずらいだろう。僕は腕を袖を捲り、ヘッドギアを投げ捨てる。

 戦局が混乱している以上、もはやこれは邪魔なだけだ。

 

「『全員、棒を支えることに集中しろ』」

 

「『いいのかよ!?コイツら引き剥がさなくて!?』」

 

「『それは——僕がやる』」

 

 棒の天辺を掴み、身体を持ち上げて、飛び掛かってくる奴らを蹴落とす。暗殺者だろうが、殺し屋だろうが、無防備な瞬間を狙えば簡単に無力化出来るだろう。

 

 E組全員を蹴り落とす。勝ちは絶対に譲らない。そんな意地と送り出した攻撃隊への自信。今日の日の為に用意した僕の人脈を使った最高の人選での特殊部隊だ。いくら圭一と言えど、あの布陣を崩すなんてできっこないだろう。

 体格も体重も倍近い4人を相手に僕が陥落するまで棒を守り通すとか無理筋にも程がある。そんなことができるなら、僕はアイツに日本の格闘技を背負って立つことを全力で勧めるだろう。

 

「『うおぉぉぉぉぉぉーーーーッッッッ!!!』」

 

 今日一番の雄叫びだった。獣のそれに何よりも近い気合いの叫びを伴ってブルドーザー、あるいはロードローラーの様な巨体が自軍の棒の手前10mの位置にいる圭一に迫る。

 猛烈な勢いで突進するサンヒュク。クラスメイトたちを足場に周りより高い視線を持っていた僕には全てが見えていた。

 

 そんなサンヒュクの姿を睥睨する圭一の姿も、その迫り来る重機の様な巨漢に対して回避する素振りもまして迎撃しようとする動きすら見せない姿勢も、何もかもが。

 

 サンヒュクのショルダータックルが圭一に炸裂する。

 その次の瞬間、再び静寂が訪れた。

 

 僕らも、観客も、そして当人たちも何も言わない。

 ただ、自分の掌の何倍もある重厚な肩を右腕一本で受け止め、一切の後退も見せない冷徹な死神だけが口を開いた。

 

「『……タックルは腰から下じゃねぇの?』」

 

 刹那、巨体が宙を舞った。投げられた訳ではない。僕には見えていた。腰を落とし、跳躍しながらサンヒュクへショルダータックルを仕掛ける様を。下から突き上げる強烈なそれを。

 

「『……次』」

 

 静寂の中、圭一の声だけが響いた。声量は大きくない。ただ圧倒的な存在感とある種の威厳が彼を一段と際立たせていた。

 

 アイツは僕によく軽口で『魔王』とか『ラスボス』とか言う。でも、正直なところ圭一にだけは言われたくない。

 やる気になって、本気を出せば比類ない強さを発揮するし、新しいことを教えればスポンジの様に吸収する。

 

 僕がラスボス、理事長(父さん)が裏ボスなら、圭一は戦う度にステータスが高くなる隠しボスだろう。一昔前のドラクエで例えるのなら、宝の地図の魔王とでも言うべきか。

 

 そんな隠しボスは僕がさっき彼にやった様に人差し指をクイクイと曲げて挑発し、残ったケヴィン達を煽る。

 

「『こんなもんか。図体ばかりデカい見せ筋って奴?有効活用できない筋肉なんてただのデッドウェイトだぜ?』」

 

「『調子に乗るなよ、チビが!この俺が相手してやるから逃げるなよ!?叩き潰してやるぜ!!』」

 

「『この俺が……?チャチなこと言うなよ。全員まとめて来い。1人ずつじゃ相手にならないのは証明しただろ?』」

 

「『……殺す……!』」

 

 言葉巧みな煽りにケヴィンたちも青筋を立て、倒れていたサンヒュクも地面を拳で悔しそうに叩いて立ち上がる。

 

 まずい。圭一に乗せられている。彼らの目的が棒を倒すことが第一ではなくなってしまった。 

 圭一を倒してから棒を倒す。今の彼らはそれが目的に変わってしまった。これは良くない。それでは攻めきれない。

 

 流石に分かった。彼らと圭一では格が違う。何かが根本的に違うのだ。格闘家だとか暗殺者だとか、それ以前の致命的な何かが違う。アイツらでは圭一に勝てない。絶対に。

 

 僕が判断するとほぼ同時にそれは起きた。

 

 ケヴィンは圭一の腕で逆上がりでもしたみたいに空中で一回転してそのまま無防備に背中から落下した。

 

 サンヒュクは勢いよく飛び上がった彼に首を絡め取られ、容赦なく背中から地面に叩きつけられた。

 

 カミーユは着地の隙を狙って掴みかかるが、先ほどのケヴィン同様にその腕力を逆に利用され、投げ飛ばされた。

 

 ジョセフは前者2人が刈り取られ怯んでいる間に圭一に負け、投げ飛ばされたカミーユとぶつかって倒れ込んだ。

 

「『連携がなってない。そもそも多対一でお前たちの様な巨体が密集しては無駄に身動きが取りづらくなるだけだぞ。連携できないなら尚更だ。一人一人丁寧に潰すことで対処できた。叩き潰すとか殺すとか言ってたけど、お前らじゃ俺は殺せないよ』」

 

 一瞬だった。全員、瞬く間にやられた。

 

 とんでもないジャイアントキリングを兼ねた一方的な虐殺に観客が目に見えて興奮し、中にはスタンディングオベーションまでする奴も現れる。恐らくは椚ヶ丘の体育祭史上、一番な歓声だ。

 

 やっぱりおかしい。一方的過ぎる。いくら暗殺術を習っているとはいえ、武道経験のない喧嘩慣れしてるだけの元不良が一撃もくらわず体格差の大きい4人を完封瞬殺できるものか……?あの中には武道家だっているんだぞ!?

 

 僕の思考が反射的に圭一に向いた時、スピーカーから磯貝の毅然とした声が校庭全体に響いた。

 

『"キノコディレクター"は"中二半"を足場に飛べ!みんなの基本作戦は"粘液"だ!隙が出来たらその都度、声をかける!声を掛けられた奴の作戦は"音速"に変更!攻め落とすぞ!』

 

 返事と言わんばかりに三村が赤羽に受けあげられて飛んできた。反応が一瞬だけ遅れたが、それでも辛うじて蹴り落とす。

 

『家庭科1位2人は"ヘチマ"が飛べ!"野球バカ"は青髪男子を打ち上げろ!それ以外はシャッフルだ!A組が追ってくるまで囲む様に入れ替わり撹乱し続けろ!』

 

 コイツ……!指示にコードネームを混ぜ始めたか!?まずい、反射的に誰か判断しずらくなってしまった。

 

「みんな!吉田と村松、それから……潮田と杉野に注意しろ!」

 

『浅野の指示で死角が出来た!"美術ノッポ"は"ギャルゲーの主人公"を、岡野の左隣の席の奴は倉橋の右隣の席の奴を打ち上げろ!岡島、カルマで飛べ!』

 

 E組で美術関係でやらかしたのは……菅谷、ギャルゲーの主人公ってのは容姿的に……千葉か!?

 問題はその後だ、E組の席順までは完璧に把握しきれていない。そもそも左右は教壇から見てなのか、席から見てなのかどっちだ……っ!!?岡野の左右は確か磯貝と前原だ……指示的に磯貝じゃなくて前原だろう……。倉橋も同様に磯貝が隣にいる……つまりは木村か!!?

 

「くそっ……!!」

 

 判断が遅れる。上手い指示だ。E組のことを知ってなければ反応できず、知っていたとしてもいくつかの前提が必要になり、即断は出来ない。そんな中にボソリとさり気なく混ざる本名での指示は更に頭を混乱させる。

 

「やるな、磯貝……!!」

 

 思わず出た賞賛。

 手強い。素直に認めざるを得なかった。

 

「防御部隊C!奴らの連携を断て!」

 

『防御が薄くなった!カルマ、前原!"音速"!』

 

 連携を断つべく人数を妨害に割けば人混みへ逃げ、予想しない方向から飛び出してくる。そうして防御を突破し、棒に取りつかれる。追い払おうと人を呼び戻せば再び空から責められる。

 

 E組の曲芸染みた動きにA組の生徒では対応出来ない。飛んだ、滑るように割り込んで、間を縫うように逃げて。

 

 鉄壁を誇っていた地上の守りでさえも崩れていた。もはや、形勢は完全に逆転していた。

 僕らの守備はほぼ崩壊している。今、決定的な一撃を入れられてしまったら……。そんな懸念が思考を支配する。そして、磯貝はそんな隙を見逃すほど甘い相手ではなかった。

 

『今だ!"コロコロ上がり"!』

 

 誰だよっ!?と総ツッコミの入りそうな指示と共に陸上部もびっくりなフォームで全速力で走ってきたのは敵の本陣に陣取ってケヴィンたちを煽り倒していた圭一だった。

 お前かよ!?と驚いている場合ではないだろう。

 

「圭一が来るぞ!全員、衝撃に備えろ!あの巨体をぶっ飛ばす馬力だ!下手な受け方をしたら一気に崩される!」

 

 指示を飛ばす。全員が僕の声に身を硬くし、棒を押さえる。

 しかし、その瞬間、圭一と磯貝がまるで示し合わせたかの様なタイミングでニヤリと口元を歪ませた。

 

 どういうことなのか。考え出すと同時、圭一が僕たちに背を向ける。疾走した勢いを殺し切れず、地面を滑る様に砂埃を立てて轍のような跡を残しながら後退してくる背中。それが不意に低くなり、それを認識した頃には叫び声と共に1人の男子が尋常ではないスピードで発射された。

 

「行って来いや、イトナァァァァァァ!!」

 

 イトナ。堀部イトナ。プリン爆殺計画の時には居なかったE組への転入生。今回目立つ活躍はなかったが、最終兵器として温存していたということなのだろう。

 スピードも、高さも尋常ではない。発射された大砲を思わせる勢いで堀部イトナが僕らの棒の先端に蹴りを入れた。

 

 初撃は耐えた。用意した助っ人3人も頑張って耐えてくれたが、一撃目で斜めに傾く。続く二撃目、勢いを殺さず、棒の先端に堀部の体重をかける攻撃で僕たちの防御は完全に瓦解した。

 棒の先端に入る強い衝撃でテコが働き、磯貝の指揮で混乱し、もともと棒に取りつかれていた僕らにそれを塞ぐ手立てがあるわけがなかった。下準備は完璧だったのに、それでも負けた。

 

 倒れゆく棒と共に空を見上げる。

 

 負けだ。言い訳しようがない負けだ。倍以上の戦力差を覆され、用意した助っ人の半数はたった1人に無力化され、奇策で意表を突かれ続け、ダメ押しの最終兵器の完璧な見せ方。

 

 認めるしかないだろう。僕の負けだと。

 何が原因だろう、圭一というウルトラC?磯貝という指揮官?それとも規格外の能力を持ったクラスメイトの有無?

 堀部の出現はヘッドギアを付けたままなら気付けていた。観客を肉壁にして逃げる戦術だってそうだ。

 

 僕は何手目で間違えたのだろう?

 

 棒が地面に着くまでの間に答えを出すことはできなかった。

 

 




あとがき

はい、あとがきです。
棒倒し決着になります……!

次回で体育祭編は終了となります。はてさて、いよいよ中盤というか、終盤に差し掛かってきたというか。
普段、浅野のことをラスボス呼びしてる圭一ですが、側から見ると圭一も大概ラスボスちっくなことしてますよねぇ………。

ご愛読ありがとうございます!
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