暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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言い訳をきいてください……。
まだ2月だと思ってたんです。スマホの画面に写る日付とか特に気にしてなかったんです。今日投稿すれば良いと思ってたんです……!

まさか2月が28までとか思ってなかったんです!

許して…………許してつかぁさい………。


IFルート ハナコトバの時間 part11

 

「……ふむ」

 

 生徒たちへの指導。まぁ、危機感を覚えさせ、自らの能力を自覚させる為の脅かし兼、非常時に向けての予行練習とでも言うべき計画はあっさりと承認された。烏間からも二つ返事で。

 曰く、今回の事故で少なからず自分の力を自覚したとは思うが、それでも限界を知った訳ではない。万が一のために、自分がどこまで出来るのかは知っておいた方がいいだろう。とのことだった。うん、大事なことだよね。

 

「あんた、本当に乃咲そっくりね」

 

「まぁ、親戚だからね。再従兄弟ってやつさ」

 

「血縁的にはかなり遠いじゃないのよ。それでここまで似るわけ?親でもないあんたに言っても困るだけかもしれないけど、ほんっとうにそっくり。瓜二つでありながら、アンタにはアイツの面影があるというか。乃咲は将来こんな風になるのかぁ〜とか思うと新鮮な気分ね」

 

 横でペラペラと喋っているのはイリーナだ。

 今回の件で人質役に選ばれて、僕の側にいて貰っている。

 

 この訓練のシナリオはこうだ。

 伝説の殺し屋、死神がついに沈黙を破って殺せんせーの暗殺に乗り出した。イリーナは1人でいるところを拉致され、生徒を誘き出す為の餌にされる。生徒を呼び出すのもいずれ殺せんせーを呼び出す為の活き餌にする為だ。死神は、生徒たちが来ない場合、あるいは外部へ連絡した時、イリーナを殺すと言っている。誰にも連絡を取らず、死神の元へ潜入し、教師を救出せよ。

 

 さて、子どもたちはどう動くか。

 

「けど驚いたわ。乃咲とカエデが、まさか"あの死神"の弟子なんて。通りで2人とも周りとレベルが違うわけね」

 

「キミから見て、あの2人はどうかな?」

 

「レベルが高いの一言で片付けるのは簡単だけど……。そうね、言語化するとカエデの方はハニートラップへの適性が高い。身体が薄いから私みたいなタイプにはなれないけど、どこで身につけたのか判らない演技力と……女としての余裕みたい空気が出す色気がね。それに加えて近接戦闘が上手い。正直、私以上にね。私が相手を完全に油断させて完全な不意打ちで必殺を狙うタイプなら、あの子は相手と仲良くなって生まれた隙を突いて一気に押し切れるタイプ。私みたいに相手を落としてベットに一緒に入る必要がない分、仕事の速さなら私よりも上じゃないかしら。このまま殺し屋になるなら、だけど」

 

 なるほど、流石にハニートラップの達人だ。雪村さんのことをしっかり分析して評価までしている。

 

「乃咲の方は………うん、なんというか、ドン引きね。何をしたらあんな怪物になるわけ?」

 

「伝説の殺し屋の死神に出会って、自衛隊の第1空挺団出身のエリートに出会って、最強の傭兵と呼ばれる神兵に出会って、全員と定期的にガチ戦闘レベルの訓練をしたら……かな」

 

「………頭おかしいわ。なにサラッと群狼の神兵と出会ってるのよ。どうりで戦闘力が飛び抜けてる訳ね」

 

「ちなみに群狼のメンバーとも交流があってね。前に会った時にサバゲーしてから気に入られたみたいでさ。定期的に遊びに来るんだ。この前、神兵とタッグを組んで彼らを相手に模擬戦してたけど、見事に全滅させてたね」

 

「…………まぁ、あれね。乃咲への評価は怪物。その一言に尽きる。というか、これ以上になんて形容していいのか分からないもの。あれで表社会で生きていけるのか心配なくらいかしら。殺し屋としての評価はそれくらいしかできない」

 

「まぁ、そうだよね」

 

「けど、それも悔しいから、女として男への評価をさせてもらうと……少なくとも、私が出会った男の中では最高峰かもね。女にガッツク訳でもなく、興味がない訳でなく、標準より少し高いくらいの身長でぱっと見は細身、なのに実力面は世界最高峰。だって言うのに筋肉ダルマって訳ではないし、けど脱いだらしっかり筋肉が付いてる。寡黙ってわけじゃないけど、口が軽い訳でもない。超が付く鈍感だけど、刺さる相手にはトコトン刺さるタイプの人誑し。刺さる範囲は狭いけどね。父親はあの乃咲新一で、本人も能力が高くて将来性もかなり期待できる」

 

「まぁ、妥当な評価かな」

 

「総評、結構いい男。将来のルックスも……まぁ、アンタみたいになるって思えば保証されてるし。カエデは良くあんなの捕まえたわね。いや、あの娘もいい子なんだけどさ」

 

 彼女はそこまで言うと、顎に手を当て、僕に一応確認するけど、と前置きしてこう言った。

 

「ねぇ、あの2人ってデキテルわよね。つか、デキテルというか、デキることシてるわよね?」

 

「………だね」

 

「………色々納得。生娘とチェリーじゃないのは分かってたけど、カエデの色気の正体と乃咲の女に対する余裕さは理解できた。進んでるのね、最近のコは」

 

 あの子達が特殊なだけじゃないだろうか。

 

「ていうか、この作戦。実際どうなの?」

 

「うん?」

 

「だってほら、その自慢の弟子も参加するんでしょ?」

 

「するねぇ。教室に宣戦布告してきた時、『なにしてんのアンタ』みたいなシラ〜っとした目を向けられたよ」

 

「……なんだろ、裏世界最強の男がこんなんでいいのかしら。随分と緩い雰囲気よね、あなた」

 

「弟子たちのおかげだね」

 

「あ、そう」

 

 雑談をしていると、僕が残してきた地図を辿ってきたらしい。子供達がこの急造のアジトにたどり着いた様だ。

 うん、結構早いじゃないか。ちょっと驚いたよ。

 

「私が心配なのは、乃咲たちがこの訓練の意義をぶっ壊すんじゃないかって部分なんだけど?」

 

「それは心配いらないよ」

 

「え?」

 

「ほら、入っておいで」

 

「はーい!」

 

 懸念を口に出したイリーナに僕が用意していた訳でない解答を見せる。少し前からここに来ていたのは分かっていた。それを彼女も理解していたのだろう。僕の呼びかけに特に動揺もなく、明るく元気に返事をすると、雪村さんが部屋の死角からひょこっと現れた。

 

「カエデ!!!?」

 

「なんとなーく、そういう趣旨だと思ったので自分から拉致されに来ました〜」

 

「恋人が拉致られた。これは怒りを原動力に圭一が暴れてもおかしくないシチュではあるけど、同時に頭がキレる故に、下手に動いたら恋人が危ない目に遭う可能性も考えられるという状況でもある。だから、圭一が力を出せない、周りもそんな彼を見ても違和感を覚え難い状況を………彼女が演出したのさ」

 

「いえ〜!」

 

「えぇ………?」

 

「これで今回の作戦を壊す要因が無くなったね。圭一は自分からは動けないけど、現地アドバイザーの役を出来る、茅野さんはそんな状況を自分から作り出したんだ。いや、気が効くね」

 

「えっへん。先生がビッチ先生を拉致ったとか教室に来た時からこんなことだろうと思って先生たちの後を尾行してました!」

 

「えぇ……?ちなみに、髪の色がいつもと違うのは?」

 

「こっちが地毛なんだよねぇ〜」

 

「えぇ……?」

 

「ちなみに、名前も偽名ね。本名は雪村あかりって言うの」

 

「………それ、乃咲も知ってるの?」

 

「当たり前じゃん。ちょっと色々と事情があってね。今は茅野カエデでやらせて貰ってます」

 

「えぇ……?」

 

 イリーナがまじまじと彼女を見る。

 

「なんか、普段と雰囲気が違う。これ、普通に髪の色を戻しただけでこんなに変わるのね。ガキどもも気付かないでしょ」

 

「あはは……目つきはちょっとキツめって言われるかなぁ。だからE組ではできるだけ表情作ってたし。あ、でも全部嘘って訳じゃないからね?みんなのこと好きだし」

 

 そうこうしてると、監視カメラに子供達が写った。

 どうやら圭一が指揮をしてる様で、僕が偽装に使っている建物に迂闊に入らせようとしない。まずは周辺を手早く調査して人が出入りしてる痕跡がないかを探させている。

 

「……ねぇ、今、監視カメラ越しに乃咲と目が合ったんだけど」

 

「うん、それが?」

 

「……偽装とかしてないわけ?」

 

「してるよ?普通は見つけられない程度には。あとは一応、ダミーのやつも数機仕掛けてる」

 

「…………あらかじめカメラの場所を教えてたり?」

 

「してないよ?」

 

「……………偽装に手を抜いた?」

 

「それだと訓練にならないじゃん。本気ではないけど技術は全力さ。金に糸目を付けずに最新機器を導入してるとも」

 

「…………………えぇ………?」

 

 画面の奥で指示を飛ばす圭一。どうやら周辺に怪しい部分がないことは確認が取れたらしい。ちなみに、こんな時に警戒するべき部分にはカメラを仕掛けて、生徒達がどんな動きをしてるのかは録画してある。

 イリーナと会話をしながら横まで見ていたが、彼らの確認の仕方は花丸を上げられるものだった。足跡がないか、折れてる枝はないか、不自然に木の葉が落ちていないか。前後左右上下を確認しているのはしっかり見れた。

 

 今は圭一が千葉くんやサポート組数人と一緒に建物に入って色々と調べて回ってる。床を叩き、壁の厚さを確認し、部屋の壁と床の繋ぎ目を見させて、そして床の下に何か仕掛けられてることを気付かせた。

 うん、いいね。こんな時、犯人に複数人が捕まるのは防ぎたい。でも、時間的猶予もない。だから、調べるのに向いてる数人で中を調べて、他は外で待機をさせつつ、周辺警戒をさせる。

 

 判断としては間違ってない。

 

 でも、このままでは訓練が進まないので声を掛ける。

 

「やぁ、来たね。E組のみんな。それじゃあ全員部屋に入って。10秒以内に入らなかった場合、茅野さんの指を1本切り落とすよ。10秒後に1本だ」

 

 ここでさりげなく雪村さんが捕まってることを伝える。

 全員動揺し、圭一に視線を向ける。圭一といえば、たじろぎ、とても辛そうな表情を作ってみんなに申し訳なさそうな顔をしていた。歯を食いしばってるのが画面越しでもわかる。

 

「案外、演技派ね。アイツ」

 

「一緒にいる日とか、私が前にやったことがある役に合わせてドラマとか映画のセリフを読み合わせたりしてるからね。"もっとこうして"とか"ちがう、もっと表情は穏やかに、でも声は震わせて!"とか要求してたらドンドン演技力あがってさ」

 

「……前にやったことがある役?」

 

「あ、私、これでも女優なんだよ?芸名、磨瀬榛名」

 

「……ねぇ、死神」

 

「なんだい?」

 

「このバカップルどう思う?」

 

「お似合いじゃない?」

 

「えへへ……。実は演技力上がってきたところに付け込んで、最近は憧れてたドラマとか一緒に見て言って欲しいセリフとか言わせて密かにキュンキュンしてます………。でも、実は私に頼まれてセリフを言ってるけど、言ってる内容自体は演技じゃなくて本心だってのが伝わって来て……ねぇ?そのまま盛り上がることもしばしば………ねぇ?」

 

「……ちなみに、最近はなんて言われたの?」

 

「えとね、色々言われたからコレ!ってのはパッと出てこないけど……印象的だったのは、圭一がアニメだかゲームだかラノベだかのセリフで覚えてたらしいんだけど、『キミさえいれば、武器などいらない』ってやつかな」

 

「雪村さん、それ、最終的に『やっぱり武器が必要だ。クローゼットにあるから取ってこい』って数年後になって今度は家族を守る為に武器が手離せなくなる人のセリフだからね?いや、名作だし、すごく感動的な部分なんだけどさ………」

 

 後ろ2人はキャッキャしてる。まぁ、女子ってこんな感じの会話好きだし。一旦放置して子供達に会いに行こうかな。

 簡単な装備を身につけ、階段を下って扉を潜り、彼らの元に向かう。一応スマホに繋げてる監視カメラからの映像を見てみると、磯貝くんがショックを受けてる圭一に変わって指示を出してる様だった。

 

「やぁ、E組のみんな。よく来てくれたね」

 

 穏やかな会話から始まり、様子を見てみると、彼らは僕に殺意がないことを見抜くと同時、行動を開始した。

 ここから出ようと踠く様に壁を叩きまくり、隣に空洞があることを確認すると簡単な爆弾で壁を破壊し、見事に脱出した。

 

「へぇ。悪くない」

 

 壁だけをピンポイントで破壊できる威力調整。破壊には申し分なく、かと言って周りを必要以上に巻き込むことのない絶妙な加減が素晴らしい。

 そして奥田さんの投げた煙幕も良い塩梅だ。しっかりと視界を遮りつつ、長く煙が止まりすぎない。

 

 それに、今のわずかな時間で脱出するまでの段取りをしっかりと伝えていたのか。あるいは、ここに来るまでに決めていたのか。どちらにせよ、あまり油断できないらしい。

 

「聞こえるかな、白状するとキミたちが逃げてくれて嬉しいよ。超生物に挑む前のちょうど良いウォーミングアップだ。もうちょっとしたら捕まえに行くから精々好きに足掻くと良い。それじゃ、束の間の逃走劇を頑張って」

 

 今来た道を戻る。

 監視室の扉を開けると、イリーナが何やら際どい格好をしていた。

 

「どうしたんだい?ここに烏間はまだ来ないよ?」

 

「そこまで色情魔じゃないわよ。ガキどもは私を取り返しに来たんでしょ?んで、これはある種の防災訓練だと。それなら、助けに来た相手が裏切ってる可能性ってのも考えさせた方が良いわよね」

 

「………それもそうだね。じゃ、それで」

 

「あ、私もビッチ先生に付いてくよ。ずっとみんなに正体を隠してるのも申し訳ないしね」

 

「分かった。キミは任せるよ」

 

 2人の背中を見送る。

 E組の子供達はといえば、壁を破壊した先を移動しながら作戦やこれからの注意点を擦り合わせていた。

 狭い通路で所々に収音マイクやカメラを設置してるから、聞こうと思えば内容はこちらに筒抜けだ。

 

『いいか、最終確認だ。俺たちはこれから3チームに分かれる。ビッチ先生とカエデの救出班、脱出班、そして死神を足止めする為の戦闘班。それぞれのチームに戦闘員と足が速い離脱要員を最低1人ずつ、配置する。戦闘員は万一、死神が現れた時の足止め役、離脱要員は最悪、仲間を相手でも走って他のチームに危険を知らせろ』

 

『でも忘れるな、そもそも鉢合わせて戦闘にならない方が先決だ。見つかったら逃げろ。足止めは逃げ切れないと判断してからで良い。でも、判断は急げ。焦らず急ぐんだ』

 

『それから、警戒するべきは前後だけでなく、壁もだ。俺たちがそうした様に、死神も壁を壊して突撃してくる可能性がある。壁の向こうに空洞があるか、それを常に警戒しろ』

 

『んで、可能ならマッピングをするか、壁に沿ってあるけ。ここは敵のテリトリーで、可能なら最短で抜けたいが、迷子になって脱出も敵との戦闘も叶わないって場合が最悪だ。有名な話だが、スタート地点から壁に沿って進めば、大体の迷路はゴールに辿り着ける。俺たちの場合は今ぶち上げた壁の穴な。自分たちが何処から来たのか、それは常に把握しろ』

 

『無線は常に入れて、お互いの状況がわかる様にしておけ。律が使い物にならない分、俺たちで気を配るしかない』

 

 うん。警戒するべき点と注意しなきゃいけない点という意味で、圭一の指示は的確だ。

 実際、壁の中に仕掛けをしてる場所もある。そして圭一から聞いた注意点をしっかり踏まえて進む彼らも優秀だ。

 

 どれ、じゃあ猟犬でもぶつけてみるかな。

 

 僕はスイッチを押して、仕込んでいた猟犬を放つ。

 訓練なので噛まない様に徹底してあるし、銃器も装備させてるが、装填してるのは対先生弾だから子供達に殺傷力はない。加えて、彼らが着てる世界最新鋭の装備、超体育着の前では蚊ほども威力を発揮しないだろう。

 

 さて、犬達にどんな対応を取るのかな。

 

『あれは……犬だ……!?』

 

『しかも銃を装備してるぞ………不味くないか!?』

 

『どーする!!?』

 

『どーするって……迎撃するしかないっしょ』

 

『赤羽の言う通りだ。だが、分かることがある』

 

『なんだよ!!?』

 

『一つ、アイツらは俺たちに撃ってこない。あの口径でこの距離なら俺たちを蜂の巣に出来る。なのにそれをしない。つまりは絶対に当たる距離でないと撃つなって教育されてるか、あるいはターゲット以外に撃たない様に徹底されてるか』

 

『……つまり、殺せんせーの写真でも見せて、こいつに向かって撃ちなさいよって丁寧に教え込まれてる訳ね』

 

『かもしれない。そして2つ、奴らは犬。つまりは嗅覚が鋭い。この場で逃げても追跡される可能性の方が高い』

 

『だから迎え撃つってか!?どうやって!!?』

 

『俺たちには奥田さんの睡眠弾がある。人を眠らせるだけの威力はあるが、出来るだけ危険性が低くなる様に調合された奴がな。けど、犬に対して使うのは、犬の命に関わる。最悪、殺してしまうかもしれないが、背に腹は変えられない』

 

『なら撃つのか!!?』

 

『でも、可哀想じゃない……?』

 

『だな。だから、直撃はさせるな。犬の数メートル手前に撃つ。地面に当てて臭いを少し嗅がせる程度に加減する。犬の嗅覚にはそれで充分だ。んで、アイツらが倒れたら念の為に少し距離を離した場所に寝かせておく。やれるな?』

 

『ったく、そうするしかなさそうだね……』

 

 圭一と赤羽くん、磯貝くんが銃を構える。

 

 チラリと監視カメラ越しに圭一と目が合った。念の為に待機しておけと言うことだろう。前に今、圭一たちの使おうとしてる奥田さんの薬を見せてもらったが、あれも中学生が作ったとは思えないくらいよく出来ていた。

 

 即効性はあるが、長くは止まらない。効果はあるが、効きすぎることもない。確かに人の用の睡眠弾の成分は犬にはかなり危険なものだが、ちょっと嗅がせる程度なら適切な処置すればしなことはないだろう。

 

 少し後、彼らが撃った弾は犬達の5メートル前くらいに着弾し、中の薬液をぶちまける。それを嗅いだ猟犬たちは徐々に崩れ落ちる様に眠った。

 その先に待機してた子達が走り出して犬を遠ざけ、そのまま装備していた機銃を取り外すと、即座に離脱する。

 

『これでいいのか……?』

 

『問題ない。ただ、それでも俺たちの命には変えられない。今回は殺気も敵意もなかったからどうにかなったが、マジで殺すつもりの奴が来たら迷わず撃て。助かる為に殺すしかない』

 

『………俺ら、動物を殺せるチカラ持っちまったんだな』

 

『人間を含めた、色んな生き物を殺せるだろうさ。だから加減を知らなきゃいけないし、知識も必要になる。今回だって、犬に当てちまったら最悪殺してたんだ。でも、犬には危ない成分だって知ってたから加減できたし、殺さなかった』

 

『…………そっか』

 

『この睡眠弾も、竹林の爆弾も、烏間先生から教わった色んな技術も。使い方を間違えたら、この前の松方さんみたいな事故になりかねない。あの時だって、タイミングが少しズレてたら、あの人を殺してたかもしれないんだ』

 

『そうならなくて良かったと安心するのと同時に、良かったって気を緩めちゃいけないのはよく思い知っただろ。俺たちの技術は一つ一つ他者の命を奪えるものだって自覚しないといけない』

 

『…………だな、乃咲の言う通りだ。ここを出たら、みんなで考えよう。殺せんせーとかも交えてさ。俺たちの力にどんな危険があるのか』

 

『そうしよう。でもな、磯貝。人はそう言う言葉選びを死亡フラグって言うんだぞ?』

 

『ちょっ……!?縁起でもないこと言うなよ!!?』

 

 カメラの奥で少し笑いが溢れるのを聞いた。

 うん、程よく緊張させて、少し緩めたね。カメラを切り替えると、松方さんに接触した子たちはより決意を固めた表情になってるし、これなら、僕の本来の目的としては大成功かな。

 

 彼らが通り過ぎたのを確認してから猟犬達の元へ向かい、軽く診察するが、特に命に別状はない。なんなら、少ししたら目が覚めるだろう。念の為にケージに戻してから裏道を使って圭一たちの進路を先回りする。

 

 どれ、彼らが警戒してるのをそのまま教訓にする為、壁を壊して派手に登場するとしようかな。

 

 生徒達に危険がない位置を確認して爆弾を作動。壁を吹き飛ばして、わざと足音を鳴らしながら、カツン、カツンと彼らに正面から近付いていく。

 

「正面から来るぞ!全員警戒!」

 

「やぁ、圭一。そんなに警戒しなくても良いじゃないか」

 

「さっきの指示は覚えてるな、俺たちは時間稼ぎが主な役目だが、全員で掛かっても返り討ちに遭う可能性が高い。まずは俺が残る、全員で逃げて、一人ずつ間隔を空けて停止して1秒でもながく足止めしろ!」

 

「俺たちが死んだら、殺せんせーが手段を選ばなくなる可能性がある分、絶対に殺されないはずだ!しがみついてでも止めろ!」

 

 その指示に全員が頷いて走り出す。

 みんなが離れ、声が聞こえなくなった頃に圭一が口を開いた。

 

「こんなもんでいいですかね、先生」

 

「あぁ。充分さ」

 

 軽〜く格闘戦をしながら現状確認。

 数秒だけそれをした後、スンっと圭一が言う。

 

「こんくらいで良いですかね。時間稼ぎ」

 

「キミは彼らの中で最高戦力なんだろう?なら、圭一が数秒しか保たせられなかったとなれば、生徒達も必死になるだろう」

 

「わかりました。んじゃ、最後に一花咲かせますか」

 

 彼はそう言うとゴムナイフを取り出し、震える声で叫んだ。

 

「て、テメェなんざ怖くねぇ!野郎ブッコロッシャー!!!」

 

「この局面で選ぶセリフがそれなのかい!!?」

 

「あ、あかりと練習したぁぁぁ……」

 

「えぇぇぇ………」

 

 雪村さん、映画はそういう趣味なのかな。この前なんてお姉ちゃん直伝!とか言いながら、フルメタル・ジャケットの微笑みデブの笑い方を真似してたし。

 いや、個人の趣味にとやかく言うつもりはないけどさ。

 

 僕が特に何をすることなく、手前で勝手に倒れたと思ったら、白目をむき、口の端から涎を垂らしてヒクヒクと痙攣し始めた圭一を見下ろしながら思う。その痙攣は徐々に弱まり、何処から出したのか、指先に血糊を付けて、地面に『あかり』とダイニングメッセージ。

 うん、これだと雪村さんが殺したみたいになってるよね。ノリノリで死んだふりをする教え子を見ながら思った。

 

 そも、無力化するだけだから死んだフリはいらないんだけどなぁ〜と。

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