暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!

今回も投下しますのでお付き合いください……!


130話 悩みの時間

 

 その日は、祖父母の家ではなく、俺と父さんの家で寝た。

 翌朝に目が覚めると、なにやら日本でも仕事があるらしく、朝早くから家を出たとのことで、食卓に父さんの手作りらしい朝食とメモが置かれていたのでありがたく頂く。

 

 クソ美味かった。我が父ながら、あの人、コミュ障と親バカ以外に弱点あるんだろうか?

 

 などと思いながら考えるのはやはり、陽菜乃と進路のこと。今日も今日とで悩み多き乃咲くんである。

 

「あれ、圭ちゃん?いつもと来る方向違くない?」

 

「おはよう、陽菜乃。実は昨日は乃咲本家に泊まったんだ。父さんと俺で……恋愛相談とか進路相談とか色々やった」

 

「れ、恋愛相談……」

 

「あぁ。惚れた女の為に徹底的に妥協を許さない姿勢は男として尊敬できるけど……あんまし参考にならなかったな」

 

「そうなんだ……?例えばどんな話だったの?」

 

「母さんと居る為に頑張って、母さんの為だけに世界屈指の結果を残して、世界屈指の科学者と認められた。だから私は彼女を世界一愛していると断言できる〜とかなんとか」

 

「カッコいいね!!?それ言える人どのくらいいるんだろ……」

 

「さぁなぁ……。少なくとも、今の俺には言えないのは確かだ」

 

 ほぇ〜と頷きながら俺の話を聞く陽菜乃。

 なんとなく、気になることがあったので聞いてみる。

 

「陽菜乃は俺に何して欲しい?俺が父さんみたいな方法で、陽菜乃のことが好きだって証明するなら、何がいい?」

 

「圭ちゃんが私を好きだって証明する方法……?」

 

「今みたいな中途半端な関係じゃなくて、しっかり陽菜乃を恋愛対象として好きなんだってさ」

 

 俺の問い掛けに彼女は考える様に顎に手を当てた。

 数秒の沈黙の後、ゆっくりと答える。

 

「答えにならないかもだけど……私としては、自分で考えて欲しいかな。"して欲しい"じゃなくて、"して欲しそう"って考えて出してくれた答えの方が嬉しい」

 

「これまた難しいな……」

 

「そういうもんです〜。『◯◯ちゃん、これ好きだよね?』ってプレゼントは好みを覚えてくれてるんだって伝わって嬉しいけど、『◯◯ちゃんはこういうの"好きそう"だと思って』って方が私のこと考えてくれてるんだなって伝わってくるでしょ?私はこっちの方が好きかな。ちなみに、この前のテーマパークのチケットは『アレが好きだったから、こういうのも好きそうだと思って』って合わせ技で高得点です!」

 

「難しいな、女心」

 

「難しいよ?女心」

 

 父さんにも似た様なこと言われたっけ。

 がっくりと項垂れて見せると、横で彼女がコロコロと笑う。

 

 何気なく、その柔らかい笑い方を見つめた。

 

 彼女の笑ってる顔は好きだ。こういう笑顔を見てると、両手でほっぺを挟んでムニムニと弄くり回したくなる。

 でも、それって相手が陽菜乃だからなんだろうか?別の誰かに似た様なことをしたいと思うかな……。

 

 試しにクラスメイトたちで想像する。

 

 片岡とか矢田さんとか岡野とか茅野とか。

 しかし、したいかどうかよりも実際にしてしまった時のリアクションを想像して胃が痛くなる。

 片岡に冷たい目で見られ、矢田さんに困惑され、岡野に蹴り飛ばされ、茅野にキモがられる。

 

 うん、やりたいかどうか以前にそんな未来が見えるからやろうと思わないってのが正解な気がして来た。

 

 渚……はアリだけど、あれで男だし。

 

 うむ。人の業よな。

 

 よし、この話題やーめた。

 

「そういえばお父さんと進路相談もしたんだっけ」

 

「したな。なんか色んな話が出て来て頭の処理が追いつかなかった。飛び級とか実質浪人とか」

 

「どんな進路でそんな話になるの!?」

 

「海外留学しないかって」

 

「………へ?留学?」

 

 陽菜乃の脚がピタっと止まる。

 そういえば、父さんも陽菜乃とのことを真剣に考えるなら考慮するべきだって言ってくれたっけか。

 

「海外行っちゃうの、圭ちゃん?」

 

「決めてはいないけどな」

 

 彼女はそんな俺の答えに何処か安心した様な、それでいて考え込むよような複雑な表情を浮かべる。

 しかし、ちょっとの沈黙のあと。彼女は言った。

 

「そっか。圭ちゃんが決めたことなら私は応援するよ」

 

 その言葉は何というか意外だった。

 なんとなく、自分で言うのもなんだけど、好きな相手が海外に行くとか引き留めたりするんじゃないだろうか?

 

 そう思って、自分の立場を陽菜乃に置き換える。

 

 俺が告白した陽菜乃が高校から海外に行くかもと言った。

 告白の返事もまだ貰ってなくて、でもやっぱり陽菜乃が好きだから答えを出すまで友達以上恋人未満でもいいから、と食い下がる程に思っている相手。

 

 そこだけ考えると、俺は止めたいと思うだろう。

 

 だが、それが彼女が考えた末の答えなら?陽菜乃が海外で学びたいことがある、やりたいことがある、将来の為に。と言い出した時、俺はそれでも引き止めるだろうか?

 

 答えは否だ。

 

 行きたくない、引き止めて欲しいと思っているならまだしも、将来の為に行くと決めた相手を自分のわがままで繋ぎ止めるのは、恋とか愛ではなく、独りよがりのエゴだ。

 

 圭ちゃんが決めたことなら、私は応援する。

 彼女の言葉にはそういう思慮があるんじゃないのか?

 

「ありがとう、陽菜乃」

 

「あ、でもしっかりそれまでに告白の返事は欲しいからね?してくれなきゃ、殺せんせーの賞金で着いてっちゃうんだから」

 

 ベー、と舌を出して釘を刺される。確かにどれだけ遅くなってもそれくらいには答えを出さないといけない。

 まぁ、いくらなんでも何ヶ月も待ってもらうつもりはないけど。せめて今月中には答えを出したいところだ。

 

 俺も好きな子の夢は邪魔しない、そのために海外に行くなら引き止めない。引き止めない代わりに俺が一緒に着いて行く、くらいの気概は見せられる様にならないとな。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

 さて、そんなことを言ってもやっぱり答えは出ない。 

 そんな中で迎えた体育では射撃テストを行っていた。

 

 みんなで高度な技術を習い、習得して来たが基礎は忘れてはならないと言うことで、久しぶりの射撃訓練である。

 頭が煮詰まっている時の射撃訓練は落ち着く。ただ的を見つめて撃てば良いだけなのだから頭の中をリセットできる。

 

「乃咲くん満点!次の者は前へ!」

 

「アイツ、動いてる的が重なったタイミングでワンホールとかマジか。いよいよ人外染みてきたな」

 

「もはや、殺し屋っていうか歴戦の兵士って感じの風格だ……」

 

 エアガンを降ろしてみんなの元に戻る。

 すると、千葉が話しかけて来た。

 

「凄いな乃咲……。照準に時間を掛けず連射して満点」

 

「ありがとう。でも、お前や速水さんの方が俺は凄いと思うぞ。俺の場合は周りから見たら瞬時に撃ってるように見えるだけで、コンマ1秒を何千倍にも引き延ばして照準してるからな。俺の感覚ではお前らの何倍も狙って撃ってるよ」

 

「だとしてもだ。実際、撃つ瞬間って思考がブレたり迷ったりすると射線がズレるからさ」

 

「実弾撃ったことがある奴が言うと貫禄あるな……」

 

「事件でさえなければ良い経験だったな」

 

「そう言えるあたり、俺らも相当メンタル強くなったな」

 

 千葉の貫禄があり過ぎる発言に苦笑する。

 しかし、千葉や速水さんの射撃精度はどうなってるんだろう。風が吹こうと砂埃が舞おうと技術で満点を叩き出す彼らの方がよっぽど化け物染みていると俺は思うのだが……。

 

「乃咲、千葉〜何話してんだ?」

 

 杉野がカルマと渚を連れて話に混ざる。

 

「射撃の照準と精度と貫禄の話かな」

 

「貫禄……?あぁ、確かに千葉と速水って貫禄あるもんな」

 

「………そうか?」

 

「知らぬは本人ばかりなりってな」

 

 千葉の自覚がなさそうな態度に杉野も苦笑する。

 そんな中でふと、渚が思いついた様に言った。

 

「そういえばさ、乃咲とカルマくんも射撃の点数高いのに暗殺で仕掛ける時って近接ばっかりだよね?」

 

「あ、それなんか分かるかも。カルマは搦手で絡め取ってからナイフで確実に仕留めに行くし、乃咲も基本ナイフとかマチェットとかだよな?たまに変わり種で対せんせー縄跳びとか引っ張り出してくるけど。なんかこだわりとかあんの?」

 

 3人からの視線が向けられ、カルマと顔を見合わせる。

 

「なんつーか……喧嘩殺法の名残り?」

 

「かもね。群れた連中とやる時、下手に距離あると手当たり次第に色んなモノ投げられるし。人数差的に投げ合いじゃ流石に勝てないから、懐に入り込んで殴り合いしてたね。その方が手っ取り早いし、向こうも味方に当てない様に投げるの止めるし」

 

「そんなカルマを見て育ったので俺も同じ手口です」

 

「合理的な経験に基づいた癖だったのか。すげぇなうちの不良2人。それでしっかりトップなんだから」

 

「同感……」

 

「いや、もちろんそれだけじゃないぞ?例えば——」

 

 呆れた様な視線を向けられた。

 

 だが、実際はそれだけではないのも事実だ。

 だから、俺なりの理論を掻い摘んで話す。

 

 殺せんせーには遠くからの狙撃も臭いでほぼ確実に気付かれてしまう。射撃なんて仕掛けても銃を構えて撃つって2動作の間に逃げられてしまうだろう。

 殺せんせーに銃撃をヒットさせるにはよっぽど上手く殺気を隠すか、予想外の地点から狙撃するか、神がかり的な誘導で狙撃ポイントを作るしかない。

 

 その点、近接は俺たちの中では誰でもチャンスがある分野だ。殺せんせーは基本的に俺たちの側にいるから、比較的に攻撃チャンスが多いし、銃は構えて撃つ2動作なのに対し、ナイフはただ振るだけだ。無論、正確な方向から繰り出す一撃の方が威力はあるけれど、殺せんせーの場合、触れただけでダメージがいくわけだしな。基礎が出来ていればあまり関係ない。

 それに近接武器は身体の延長として使える分、直感的な動作が楽だ。ただでさえ肉薄しやすい俺たちにこのメリットはデカい。

 

 それに、殺せんせーは初速は時速500〜600キロ程度。それも室内なら風圧とか建物の強度とかの兼ね合いで更に意図的にスピードを落としてる。そんくらいのスピードなら肉眼で追えるし、トラップを使えば更に遅く出来ると思う。

 加えて、殺せんせーは俺たちに危害を加えられない以上、俺らの近くで全力回避は出来ないはずだ。

 

 総合的に見て、近接戦の方がチャンスがある。

 

「以上のことから、俺は近接戦を仕掛けるのが良いと思う」

 

「…………怖っ」

 

 自分なりの論理を話したら杉野に引かれた。

 というか、さっきまで俺が苦笑する側だったのにいつの間にか俺だけが苦笑される側になっていた。

 

「なんかさ、魔法とか銃とかある世界観のアニメとか漫画には必ず1人は剣とか近接武器に拘って戦うキャラっているよな。んで、本人も相当な強キャラって奴」

 

「いるいる……。『銃?弾切れしたら戦えねぇじゃん。魔法?魔力無くなったら動けねぇじゃん』とか言って剣をブンブンする奴。腰に剣を2本挿してるけど、二刀流用じゃなくて剣が折れた時の予備ってオチの用意周到なタイプな」

 

「んでも、二刀流が使えない訳じゃないってパターンな。自分のこれまでの経験から導き出した自分なりの最適解で銃やら魔法やら切り飛ばす強キャラ。周りが派手な魔法とか使ってるのに自分は身体強化の魔法だけか、あるいは魔法使えない系の」

 

「そんで自分なりの理屈を理路整然と語るけど、周りからしたら『お前以外に誰が出来んだよ、それ』って内容なんだよネ〜」

 

「なんか、今の乃咲はそういう世界に片足突っ込んでたよね」

 

「解せぬ」

 

「「「「解せる」」」」

 

 酷い言われようである。

 

 確かに強化人間パワーありきだが、理屈としては間違ったことは言ってないつもりなんだけど。

 この理論で問題があるのなら、それはむしろ俺ではなく、殺せんせーだと思う。なんだよ、遠くからの狙撃に臭いで気付くって。そう言うのに気付かれないための遠距離狙撃だろうがよ。 

 

「でも、乃咲の言う通りだよ。当てられるかどうかは別として俺や速水の狙撃は今のところ殺せんせーに当てられたことがない。みんな射撃で俺らを頼ってくれるけど、それに応えられてるとは思えないこともある」

 

「そうか?夏休みのアレとか良い線いったろ?」

 

「確かに良い線だったとは思う。けど、逆に言えばあれだけお膳立てしないと俺たちの強みは活かせないってことだ」

 

「……千葉にもこんな悩みあったんだ?」

 

「お前や乃咲、磯貝とかみたいに全部バランス良く一定水準で出来るタイプじゃないからな、俺」

 

「スナイパーの難しいところだよな。条件が整えばめっちゃ刺さるけど、そうじゃなければ活かし辛い。ついでに言えば、ここは山の中だ。高所から撃ち下ろすって視点なら優位かも知れないけど、木々で上手くいかない。付け加えて俺たちが撃ってるのは結局のところBB弾だしな。そも、殺せんせーを高所から撃ち下ろすタイミングなんて中々ないし」

 

「俺らとしては、お前と速水が後ろで銃を構えてるの頼もしいけど……。本人の所感も大事だしなぁ」

 

 5人で頭を悩ませる。射撃を活かす為に何が出来るのか。

 臭いが原因なんだよなぁ……。殺せんせーの嗅覚の鋭さは俺が入院してる間のプリン爆殺作戦で実証済みと聞く。

 ……あっ、そういえば、あん時に電話で茅野と約束したバケツプリンまだやってねぇわ。やりたいなぁ……。でも、大の男が女子に『俺とのバケツプリンの約束はどうしたぁっ!』って泣きつくのはダサいし………。いいや、またの機会に話してみよ。

 

「おいおい、5人だけで何話してんだよ、水臭ぇな。臭いだけに……。まぁ、こんなくだらねぇ親父ギャグは置いといて……暗殺の話なら俺らも混ぜろよ。ちょうどテストも終わったしな」

 

「流れる様にボケて、流れる様に自分のフォローしたな」

 

「つっつくなっての!」

 

 考え込んでいると、前原が混ざって来た。

 前原の声に反応してみんな集まってくる。

 

 ちょうど射撃テストも終わったことで、自然とE組全員集結という状況になると、監督役の烏間先生もやってくる。

 

「なんの集まりだ?」

 

 話を初めから聞いていなかった奴もいるし、一応は授業中。烏間先生がそんな体で形だけの質問をしてくる。

 

「殺せんせー相手に射撃を活かすにはどういう作戦を立てるべきなのかなって考えてました」

 

「奴相手に射撃を活かす方法か……」

 

「烏間先生から見て俺たちの射撃の腕はどうですか?」

 

「全員、命中率8割は超えている。実弾以上に風の影響を受けやすいBB弾でしっかり離れた的に命中させる腕だ。充分すぎるだろう。訓練開始から6ヶ月でよくここまでと驚かされる毎日だ」

 

 烏間先生からの嬉しすぎる評価にみんな笑った。

 だが、喜んでばかりもいられないので口を開く。

 

「折角、烏間先生から習って認められる腕になったんです。しっかり暗殺に活かしたいと思うんですけど、狙撃は今のところは臭いで気付かれて失敗続き。かと言って殺せんせーと相対してるならナイフの方が有効打になると思うし……ってことでして」

 

「……なるほど。それは俺の課題でもあるな」

 

 烏間先生が深く頷く。

 腕を組み、考え始めたであろう所で渚がふと声を上げた。

 

「ちなみに、烏間先生はナイフと銃だったらどっちが殺せんせーには有効だと思いますか?」

 

 なるほど、確かに気になる部分ではある。

 烏間先生の伸ばし方は基本的に偏りがない。基礎練習、テストと言った形で皆んなに同じ技術を教え、殺せんせーを交えた実践で得意分野を伸ばすという教え方だ。

 

 そんな彼にとって、どの攻撃が有効だと思っているのかは大変興味深い内容だった。

 

「ふむ……。皆に射撃術、近接格闘術の2つを教えている身としては偏った答えを出したくはないが、個人的にはナイフだ」

 

「それはどうしてです?」

 

「前提として、キミたちの考えた通りに遠距離からの攻撃を当たるのは難しい。夏休みの時の様に奴を封殺する完璧な布陣を整えられるのならば話しは違うが……懸念の通り、普通の環境では臭いに気付かれ、攻撃は避けられるだろう。世界中から暗殺者が向けられる中で奴が今だに生きているのがその証拠だ。加えて言えば、君たちの他のアサシンにない強みは奴に近付けることだ。そういう意味で、クラス全員が遠距離射撃に偏るのはキミたちの強みを殺すことに他ならない」

 

「言われてみると確かにな……」

 

「無論、射撃は魅力的な攻撃方法だ。律と堀部くんが加わったことで朝の一斉射撃によるダメージは確実に増えている。射撃は基本的に点の攻撃だが、大人数で正確に撃ち続ければ、それはいくらBB弾であろうと、高速で迫る壁に等しい」

 

 点ではなく、壁で攻める。それは律が転校してくる前の初めての合同暗殺で俺も意識したことだ。

 それが射撃による攻撃の利点だ。みんなで撃てば殺せんせーを圧殺できる可能性がある。近接戦でこれをやるなら、それこそ本当に壁やドアを振りますしかない。

 

「しかし、同時に欠点もある。やはり、超スピードで動くターゲットを狙うのなら、構えて撃つという2つの動作は致命的だ。しかし、その点で言えばナイフはただ振るだけだ。無論、正確な方向から繰り出す一撃の方が威力はあるが、幸いにも我々の武器は一撃で奴の細胞を破壊できる。基礎も固まっている君たちなら問題ない部分だろう」

 

 なんか、何処となく見に覚えのある理論である。

 

「付け加えて、ナイフは身体の延長として使えるから、直感的な動作がしやすい。ターゲットに近づきやすいキミ達にとってこれはかなり重要で大きなメリットとなるだろう」

 

 グイグイとカルマに肘で突かれる。

 なんというか、憧れている相手と同じ結論に至っているのは嬉しい。目標に着実に近づけている気がするから。

 

 しかし……こうして側からこの理論を聞くと……。

 

「そして見逃せないのは一番接する時間が長いのは室内であること。君たちに危害を加えられないという制約上、あの老朽化の進んだ校舎の耐久性を考慮して奴はかなりスピードを落とすことになる。奴の初速はおよそ600キロ程度。それが更にスピードダウンする上、キミ達の肉薄具合では更なる鈍化も期待できる。それこそ目で追えなくはないスピードまで。以上のことから俺個人で評価するならナイフだな」

 

 烏間先生が一通り喋り終える。

 

 なんというか、さっきまでの渚たちの反応の意味が分かった気がする。うん、確かに怖いわ。俺はゾーンを使えば殺せんせーの触手を見切ること自体は容易い。しかし、ただの人間の筈の烏間先生が俺と同じ論理でナイフが有効だと考えるのは本当に怖い。

 

 なに当たり前のように言ってるの?そんなの出来るの先生くらいですよ?と突っ込みたくなる。

 加えて、純粋な人間ではトップの実力者であろう烏間先生が言うと説得力がある。渚たちの言う強キャラ感ではなく、ガチの強者というか猛者のオーラがひしひしと伝わってくる。

 

「なんて言うか、似た者師弟ですね」

 

「どう言うことだ?」

 

「乃咲も同じ理屈を言ってたので」

 

「ほぅ」

 

 烏間先生がニヤリと笑みを浮かべた。

 普段、俺たちに向けている不器用だが確かな信頼と期待を込めた笑みではなく、これまで何度か見て来た、強者と戦闘になった際に見せる好戦的な笑み。まさに獰猛な捕食者の笑みである。

 

「俺と同じ理屈に思い至ると言うことは、戦闘時における選択と運び、そしてそれらを構築する術理が俺に近いレベルに達したと言うことだ。今度、試しにヤってみるか」

 

「………」

 

 俺は空を見上げた。

 雲一つない、晴天の空。この大天空の上にある宇宙(ソラ)には一体、生物がいる星はどれだけあるのだろうか。

 あぁ、きっと、そんな星があったとしても、俺は星の数ほどいるちっぽけな生き物の一つに過ぎないんだろうなぁ。

 

「……陽菜乃。先立つ不幸を許してくれ」

 

「決死の覚悟!!?駄目だよっ!私と生きて!!」

 

「あまりの恐怖と緊張で「真っ白」モードになってやがる。この前の死神のドーベルマンみたいな震え方してやがる」

 

「どんだけ怖がってるんだよ、お前……」

 

 口々に飛んでくる言葉に俺は泣きギレした。

 

「お前らには分からんだろうなっ!自分がそれなりに強いことを自覚した少し後にやったケイドロで上には上がいると思い知らされる気持ちが!!ガチ逃げしてるのに後ろから『鬼ごっこは終わりだ!』とか聞こえてくる恐怖ッ!!」

 

「あーあ、乃咲のトラウマスイッチ入っちゃったよ」

 

「…………………………流石に冗談だ、ぞ……?」

 

「嘘だぁっ!何スか、今の長い沈黙と自信なさそうな言葉尻!!『えぇー?そこまで嫌がるなら仕方ないから諦めるけど、やっぱりやりてぇなぁ!』って後ろ髪引かれてる感じが伝わって来るんですけど!!?」

 

「あ、あの乃咲が烏間先生にキレてる……」

 

「どんだけ怖かったんだよ?死神の時もこんな反応してなかった癖に。ここまで怯えることが……?」

 

「(ゾクゾク)」

 

「ん、どうしたの茅野?」

 

「なんでもないよ?」

 

「そう……?なんか顔赤くない?」

 

「え、そうかな……。私はいつも通りだよ?」

 

「なら良いんだけど……」

 

「ただ、普段強かったり、優しかったりする人の弱ってる姿って唆る部分あるよね」

 

「あっ、それ分かる〜。基本的に1人で抱え込んで、どうしようもなくなった時、ふと見せる困り顔とか凄いよね〜。でもそうなる前にこっちから質問した時の普段とは違う意味で自信のなさそうな所もクるものがあるよ?」

 

「茅野!?倉橋さん!?悪い顔してるよ!?」

 

「…………なぁ、前原。圭一って女難体質なのか?」

 

「だろうよ。むしろまだ2人で済んでる分、マシな部類じゃね。アイツがガチなタラシだったら修羅場だぞ、修羅場」

 

 どいつもこいつも好き勝手に言いよって……!!

 

 なんか関係ない方向に脱線し始めた頃、烏間先生が咳払いをして空気を変える。新しく提供された話題は興味深いものだった。

 

「……………あー、その、なんだ。まぁ、俺の趣味についてはここらにして、射撃を活かす為の作戦なら案がある」

 

「へぇ、烏間先生の暗殺作戦か」

 

 自然と期待が集まる。

 指揮を取ってくれる事は多いが、なんだかんだで烏間先生が考えた暗殺作戦を決行する機会は多くない。

 

「概要は————」

 

 語られる作戦の概要は、思わず唸ってしまうものだった。悪い意味ではなく、良い意味で。

 確かにそれなら殺せんせーを騙せるかもしれない。というか寧ろ、なんで今日まで思いつかなかったんだろう、俺。と頭を抱えてしまいそうになるほど簡単な工夫で実行できる暗殺。

 

 殺せんせーが乗ってくること前提ではあるが、それでもこの作戦、充分すぎるくらいに期待できるだろう。

 

「以上だ。どうする?」

 

「やりましょう、というかやるべきだ。それだけの工夫で殺せんせーを騙せる可能性を見つけられるなら射撃組にとってもかなり大きなアドバンテージになる。渚とか奇襲が得意な奴にも大きなメリットになる。戦術の幅が相当広がるぞ」

 

「おっ、乃咲が久々に暗殺に前のめりだ」

 

「そういえば前にこんな空気になったの茅野のプリン計画だっけ。あん時はコイツ居なかったし、確かに懐かしいかも」

 

「では、作戦の決行日は……」

 

「あっ、烏間先生。提案が一つ」

 

「言ってみてくれ、乃咲くん」

 

「折角の外部協力者ですし、学秀の奴も参加させましょう。腕っぷしと身のこなしは体育祭で見た通りですし、何より、殺せんせーが色んな意味で"馴れてない"。今回の作戦では頭数はもちろん、殺せんせーにとってかなりのイレギュラーになる筈です」

 

「なるほど、良い提案だ。しかし、連携という分野で少し不安が残るな。普段から共に訓練しているキミたちとでは」

 

「そこは大丈夫です。アイツなら合わせますよ」

 

「…………分かった。キミがそこまで言うのなら」

 

 折角、優秀な上に頭数としてもちょうど良い奴がいるんだ。利用しない手はないと思って提案したが、結構あっさり受け入れられた。学秀の奴、よっぽど高く買われているらしい。

 

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⬛︎

 

 さて、暗殺計画を練って迎えた放課後。

 決行日は週末と言うことで決定し、たまには学生らしい放課後を探してみようと言うことで、放課後訓練は休みとなった。

 とは言っても、烏間先生が会議で居ないだけである。どうやら、暗殺も佳境に入り、会議が多くなってるらしく、ちょくちょく居ない日が増えるのだとか。

 

 たまには友達と放課後に遊んでくるのも悪くないぞ、と烏間先生直々に休暇を言い渡されてしまった。

 

 しかし、日頃訓練ばかりしている所為か、こう言う時に何をして良いのかわからなくなる。

 計画的に休むのであれば予定が立てられるが、唐突に休みになると何をして良いのかわからない。いずれ何もしてないことに対する不安から喉が圧迫される様な息苦しさに襲われるだろう。入院していた頃の様に。流石に本物に比べれば可愛い方だとと思うけど俺ってば本当にワーカーホリックなのかな。

 

 生憎と陽菜乃は予定があるとかで放課後は一緒に過ごせないし、悠馬はバイト、前原は合コン、木村はジャスティス。

 

 俺、孤独死するかも。

 

「乃咲?どうしたの、ぼーっとして」

 

 席に座ってぼーっとしてると、渚とカルマ、杉野が来た。

 仲がいいよな、この3人。修学旅行でも一緒だったっけ。

 

「暇でぼーっとしてた。烏間先生いないし、そもそも烏間先生から今日は休めって言われちゃってるから訓練もなぁ」

 

「……じゃあ、ウチ来る?」

 

 青天の霹靂。何事じゃ。

 渚から飛び出した予想外の言葉に驚く。

 

「杉野とカルマくんでモンハンやろうと思ってさ。暇なら乃咲もどう?なんか上手そうだし」

 

「よろしいのかしら?太刀ブンブン丸だけど」

 

「なんでオネエ口調なんだよ。俺は構わねぇけど。カルマは?」

 

「嫌がる理由無いッショ。太刀でコケさせられるのは勘弁してほしいけど。でも乃咲くん、モンハン出来んの?フィジカルでどうにかできるゲームじゃないけど」

 

「舐めんな。フロムの作ったモンハンをクリアした男だぜ。俺は。お前らにとんでもないカルチャーショック見せてやるよ」

 

「えっ、フロムってモンハンみたいな狩ゲー作ってたのか?」

 

「ぽかぽかアイルー村」

 

「確かにモンハンだけどもっ!!」

 

「大丈夫だ。ゴグマジオスをソロで行ける男だぜ。俺は」

 

「バケモンじゃねぇか……」

 

「2段QB、MAXアクト、ロイヤルガードを極めた俺にフレーム回避なんて朝飯前だぜ」

 

「DMCはともかく、AC関係あるかな」

 

「AC……?エースコンバットに2段QBなんてあったか?」

 

「あ゛?………いや、まだセーフか」

 

「の、乃咲……?」

 

「あはは、違うよ杉野。ACはアサシンクリードでしょ」

 

「カルマ……ぶっ殺すぞ、テメェ」

 

「え〜。乃咲の地雷そこ……?」

 

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⬛︎

 

 と、言うわけでやって来ました潮田家。

 マンションだ、すげぇ〜と小市民感だしてお邪魔した。

 

「乃咲……態々菓子折りなんて………」

 

「いや、万が一ってことがあるし……」

 

「きぃ使いすぎだろ……」

 

「乃咲クンらしいけどね」

 

 そういえば、アパートとマンションの違いってなんだろう?

 

 ……いいか、どうでも。

 

「よし、エロ本探すか」

 

「そんなの無いよっ!!」

 

「えぇ〜!じゃあ渚くんって………まさか……」

 

「そういう趣味でもないよっ!変な話題出さないでよカルマくん!あと乃咲もこれ見よがしにタイとモロッコの国旗画面に出さないでよっ!なんで僕から"とろう"とするの!!?」

 

 渚からの絶叫混じりの質問に俺たちは顔を見合わせた。

 

「面白そうだから?」

 

「……ジュルリ」

 

「怖いよっ!ナチュラルサイコパスだよっ、面白そうだからって理由もそうだけど、ジュルリって何さ乃咲っ!!」

 

 あー渚が面白い。やっぱりいじり甲斐があるわ。

 んでも、あんまりいじりといじめの線引きはしないとな。

 

「ま、ここまでにしてモンハンやろうぜ」

 

「そだねー。俺はハンマーにしようかなぁ」

 

「マイペースすぎんだろ、コイツら………。いいけどさ……。俺は片手剣でいこっと」

 

「もぅ……。それじゃあ、僕はライトで行こうかな」

 

「俺は太刀一択で。むしろ太刀意外使えないんで」

 

「んじゃ、尻尾は頼んだよ〜」

 

「出来るだけコケさせんなよ〜?」

 

「任しとけ。アカムの突進を大回転斬りで避けられる男だぜ」

 

「当たり判定の隙間狙い過ぎでしょ……」

 

 そうして始まった協力プレイ。やっぱりこういう風にゲームを持ち寄ってワイワイやるのは楽しいもので。

 普通に装備を作る為にクエストをやったり、折角だからと闘技場を遊んだり、武器攻撃禁止の持ち込んだ道具だけで狩れるかチャレンジだったり、色んな遊び方で盛り上がった。

 

「ちょっ、カルマくん、尻尾剥ぎ取ってないで前でてよ!?」

 

「なーに言ってんの。尻尾は鮮度が命じゃん」

 

「うわ出た。ネットで一緒になったらイラッとするタイプ」

 

「そんな事言ってないで乃咲クンも剥ぎ取りなよ〜。杉野はもう剥いでるよ?」

 

「杉野までっ!?」

 

「そこ言われると気になるじゃん?尻尾は鮮度説………って!?天鱗だぁっ!?俺、改宗するわ……。尻尾って鮮度命だよ」

 

「ずるいっ!!?」

 

「落ち着けよ、渚。こう言う奴らは報酬で物欲センサーが……」

 

「乃咲クン乃咲クン、今、落とし物出たよ」

 

「落とし物は鮮度が命だよなっ!!」

 

「乃咲ぃっ!?あっ……………僕、死んだ」

 

「「「乙〜」」」

 

「こ、この野郎………!」

 

「そう怒んなよ、ほら、マンドラゴラやるから」

 

「じゃあ俺はハチミツあげる」

 

「そんじゃこっちは栄養剤な」

 

「普通に秘薬でちょうだいよ!?」

 

「材料で渡せば秘薬の所持数より多く作れると思って」

 

「お気遣いどーも……」

 

 ゲームの中でも渚いじりは止まらなかった。

 しかし、まぁ、そんな不憫な渚を天は見捨てなかったらしく、報酬でレア素材が複数出るなどで気を持ち直した。

 

 そんなこんなでかなり盛り上がって来た頃。

 ふと、玄関の開く音がした。

 

「やばっ……」

 

「どうした?」

 

「母さん帰って来ちゃった……」

 

 まさかの親フラ。しかし、友達の家に遊びに行って帰って来た親に鉢合わせるなど初めての体験である。

 けれど渚の顔色から察するに、友達も遊んでるって状況はあんまりバレたくないらしい。そういう家庭もあるだろう。

 

 このままでは渚くんのゲームが没収されるかも知れない。俺はゾーンに入って全員の鞄に手を突っ込み、適当な教材を引っ張り出してお菓子とゲーム機を置いていたテーブルの上に置いた。

 

「…………乃咲の超スピード、まさか、こんな所で見るとは」

 

「マジか。これで殺せないのかよ、殺せんせー」

 

「それはそれとしてナイスフォロー……!」

 

 次の瞬間、ガチャリとノックも無しに扉が開いた。

 

「渚、友達が来てるの?」

 

「あ、うん。お帰りなさい、母さん……」

 

「アンタの友達ってことはE組でしょ?遊んでばかり………って訳でもなさそうね」

 

 いきなり入って来てチラリと俺らと机に広げられた教材を見る。その目つきはとてもじゃないが好意的ではない。

 しかし、俺らが黙ってばかりでは状況は好転しなさそうだ。なにせ、渚が萎縮してる。殺し屋とか狂った体育教師には向かってく癖に、どうやら母親は苦手らしい。

 

 人の家庭だし、色々と事情はあるだろうが、助け舟を出そう。

 腰をあげ、買って来ていた菓子折りを持ち、前に出る。

 

 いや、菓子折りかって置いて正解だった。

 

「挨拶遅れてしまってすみません。邪魔しています。渚くんのクラスメイトの乃咲圭一と言います。今日は勉強会ということでお邪魔させて頂きました。なるべく騒がしくしないよう努めさせて頂きます。こちら、つまらない物ですが、よろしければ」

 

「ご、ご丁寧にどうも……。えっと……渚のクラスメイトで乃咲って言うと……あの乃咲博士のご子息かしら……?」

 

「恥ずかしながら、その通りです。しかしながら、まだまだ半人前です。きっとお母さんの足元にも及ばないでしょう。どうかご子息だなんて丁寧な言葉ではなく、単に乃咲なり、圭一なり、名前で呼んで頂ければと」

 

「………………渚、この子。本当にアンタと同い年?」

 

「うん。間違いなく」

 

 へっへっへ。世の中、下手に出られて嫌がる者は少ない。なにせ自分は上の立場だと認められる上に尊重されてると感じることが出来るからだ。平時は威圧感たっぷりで周りを威嚇するより、弱者として振る舞った方が敵も作りずらいし。

 なにより、熟女……もとい、大人の女性に対する接し方はビッチ先生から叩き込まれてるからな。

 

「けど……勉強会ってアナタ達だけで大丈夫なのかしら。よりレベルが高い人がいるなら良いけれど、同じかそれ以外で集まっても良い刺激にはならないと思うわ」

 

「そ、そこに関しては大丈夫。乃咲は学年主席だし、カルマくんは学年2位だから。基本的に聞けば教えてくれるし」

 

「………そう。なら良いわ。精々、頑張りなさいな」

 

 そう言うと渚の母ちゃんは部屋から出て行った。

 バタンと閉まる扉に全員から思わず安堵の息が出る。

 

「ごめん、みんな……母さん、ああ言う人で」

 

「そうか?母親ってあんなもんじゃね?俺からしたら母親がいるってだけで羨ましいよ」

 

 口でそんなことを言いながら、扉の外にまだ気配があることを見落とさなかった俺はスマホに文字を打ってそれを伝える。

 みんなギョッとした顔で扉の方へ視線を向け、渚は頭を抱え、カルマは苦笑し、杉野は引き攣った笑みを浮かべた。

 

 しかし、だ。タイミングが悪いことに少し催してしまった。

 この状況で部屋を出るのは少し怖いが、仕方ない。

 

「渚、トイレ借りて良い?」

 

「あ、うん。出て右ね」

 

「サンキュー」

 

 トイレ借りるって話題を出すと扉の前の気配が動いた。聴力を強化すれば聞こえてくる。勇み脚でリビングに向かう音。

 

 少し間を開けてからトイレに向かう。別にトイレマニアってわけじゃないが、やっぱり綺麗なトイレは良いよな。人ん家の印象って、第一印象が庭を含めた外観、第二に廊下の見た目や臭い、第三くらいにトイレで決まると思う。

 

 潮田家には見える位置に埃は無いし、トイレも綺麗で、玄関には芳香剤がある。渚も掃除を手伝ってるかもしれないが、恐らく8割くらいあの母親の仕事だろう。

 

 加えて、渚や俺たちの成績に対する疑惑の視線。

 前回のテスト、色んな事が重なって結果が振るわなかった奴らが大半のE組。その事情を一般人が知る由もないが、それでも渚の成績は全体で見れば半分より上。つまり、エリート校たる椚ヶ丘でも一応は上位である。

 しかし、不満そうな態度だった。その視線は息子だけではなく、友人の俺たちにも向けられていた。俺やカルマの順位を知ると深く突っ込むことはしなかったが。そこから察するに、トップ集団に入るくらいじゃなきゃ成果を認めてくれないタイプ。

 

 家の管理の几帳面さと成績に対する価値観など総合的に見て渚の母ちゃんは自他に妥協を許さない完璧主義ってところか。

 

 などと友達の母親の考察をしてトイレから出る。

 渚の部屋に戻ろうと歩き出した時、ふと、リビングから視線を感じた。敵意とか悪意じゃない。しかし、無視しずらい視線。

 

 顔を上げると渚の母ちゃんが居た。

 口に人差し指を立てて、手招きしている。

 

 どうやら、友達の家に遊びに来ただけだと言うのに修羅場を呼び寄せてしまったかもしれない。

 俺は肩を竦めながら、気配を消して手招きに応じた。

 




あとがき

はい、あとがきです。

次話、圭ちゃんが渚母に詰められます。
頑張れ圭一……!

モンハンか……最近やってないなぁ。
3rdから初めました。好きな装備はユクモ、一番使ったのは太刀は裏月影です。でも一番好きな武器は滅尽の一刀【絶】です。対戦よろしくお願いします。

ご愛読ありがとうございます!
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