加えてたくさんの感想、高評価ありがとうございます!
今回も投下しましたのでお付き合いください……!
学園祭が近い。もともとレベルが高く、中高関係なく競い合う椚ヶ丘学園の大行事に浮つく本校舎の空気が離れたこの山にも伝わって来る。クラスと生徒会で音頭を取ってる浅野くんのハイテンションな高笑いが聞こえて来そうな勢いだ。
「あいつ……まだ生徒会長やってんのか」
圭ちゃんがそんなことを呟いてたっけ。
一応、10月の下旬には新生徒会が発足したはずだけど、やっぱり浅野くんがいると頼りたくなるのだろう。
私たちは今日も今日とで下準備。みんなやってることにばらつきはあっても同じ方向に進んでいる。
特に学級委員の2人と圭ちゃんは忙しなかった。各現場の指揮をとりながら進める2人と、必要に応じてオールマイティーに動き回る圭ちゃん。彼は神出鬼没だった。
「おーい、最高司令……って。フィクサー乃咲は?」
「あれ、さっきまで律が作ったホームページ、プログラミング教わりながらコーディングしてなかったか?」
『乃咲さんでしたら、数秒ほど前にプログラミングで知恵熱が出たとかで外の空気を吸いに行きましたよ?』
「え、うち廊下から来たばっかりだけど会わなかったよ?」
『……どうやら、山の方に行ったようですね。乃咲さんのスマホに入ってる私がそう言ってます』
「はやっ!?」
「……っと、どうした。みんな」
「乃咲の神出鬼没っぶりに驚いてた」
「んじゃそりゃ……。んなことより、どんぐりつけ麺の試作品が出来たぞ。みんなで食ってみてくれ。乃咲の奴に聞くと唐突に美味しんぼごっこ始まって鬱陶しいんだよ……」
「あ〜。確かにアイツのセンスって妙に古いんだよな」
「そうなんだよ……。しかも微妙に的確なこと言って来るから聞き流し辛いしよ……。今だって試食させてたら山岡士郎ごっこ始めやがってさ……。その癖、俺の舌が全てじゃない。みんなにも食べて貰おうとか言い出して一線引きやがるし。んでまぁ、そんな感じの流れだからよ、是非食ってみてくれ」
げんなりしながら言う村松くんにみんなが苦笑する。
確かに圭ちゃんってそう言うところがあるよね。語録で会話しようとする節みたいな部分っていうか。
言ってることは間違ってないのに、語録が気になって内容が頭に入ってこないっていう感じの話し方をする。
彼のそんな所に関してはみんなも同意してる様で、圭ちゃんがやらかしがちなことを出し合う。
圭ちゃんがやらかすことに関してはみんなも大体同じ意見らしくて、口々に絶対やるとか同意しながら歩き出そうとした時。不意に誰かが口を開いてこんな質問を投げかけた。
「乃咲って今、山にいるんじゃなかった?」
全員の足が止まる。ピタリと踏み出そうとしていた足をその場で止めて、そのまま引っ込めた。
村松くんがそんな私たちに不思議そうな視線を向ける。首を傾げ、何言ってんだコイツらと言いたげに。
「アイツなら家庭科室に居たぞ?今言ったばかりじゃねぇか。アイツの美味しんぼごっこから逃げて来たって。あの野郎、言うだけ言って改良したのを出したら『味はいい。だが皿がな……』とか言い出しやがって……」
「……村松。乃咲のスマホのモバイル律に確認したんだが、お前が来る数秒前まで山にいたらしいぞ」
「……はぁ……?」
不思議そうという段階を超えたのか、困惑した様子で私たちを見る。けど、彼も私たちも嘘を吐いているわけではなかった。
「おい、村松。腹が減った。つけ麺食わせろ」
「……イトナ。乃咲の奴、どこにいるかしらねぇか?」
「校庭で広告用の写真撮ってるぞ。杉野とカルマを巻き込んでナラティブポーズして遊んでる。ちなみにゾルタンポジだ」
「……なぁ、乃咲って実は何人もいるか?」
「なんか、その可能性捨てきれないよなぁ」
「遺伝子をテーマに研究していた父親が作り出した息子のクローンが何人もいるパターンだったら映画になりそうだよな。アイツの親父ならやれそうだから笑えねぇけど」
「実はそれぞれに個性があって圭一、圭ニ、圭三郎、圭四郎、圭伍って名前があんだよな」
「んで、実は圭一もオリジナルじゃなくて、お母さんをベースにいろんな才能を詰め込まれて生まれた唯一の成功体なんだよね。そんな成功体に執着するのが、失敗作として見捨てられた過去を持つ死神って言う展開になると」
「そして物語の佳境、クローンたちの死を胸に立ち上がった圭一vs死神の構図で同じ顔、同じ声で問いかけるんだよ。『俺とお前で何が違ったんだろう?』って」
「けど、お互いに答えられないんだよね」
「あぁ……。そして生き残った"誰か"が相手を思って花を備えて当てのない旅に出てエンドロールな」
うーん。みんなしてとんでもない妄想してるよ。
いや、あるかないかで言えばないよりのあるだと思うけど。これ本人が聞いたらどんな顔するんだろう?
「おめぇらぁっ!なに笑えねぇ設定作り込んでるんだよっ!!?俺も混ぜろ!!!」
窓から飛び込んでくる圭ちゃん。うん、正直、彼なら割と乗り気で食いつくタイプの話題だとは思ったよ。
「おまっ、好き勝手に言われてっけどいいの?」
「深刻に考え込むより楽しい方に持ってこうぜ。その他の話題で辛気臭く悩んでも良い方向にはいかないしさ」
でもね、圭ちゃん。
「実は続編でクローンと死んでしまった"誰か"は遺伝子が保存されていて、戦闘技能にまつわる教育だけを施されたあと、記憶と経験をデータ化して機械の身体に入れられるんだよ。『好きに生き、理不尽に死ぬ。それが私だ、肉体の有無ではない』とか言ってさ、次回作の主人公と戦うんだわ」
「ここでもそう言うネタに突っ走るのか……」
「ナニカサレタどころの話じゃなくなって来たな」
「お前たちに素晴らしい提案をしよう。お前もファンタズマ・ビーイングしないか?」
心の底から楽しめてるって笑い方じゃないよね、それ。
笑ってるには笑ってるし、楽しめてないわけじゃないんだろうけど。また何か抱えてるんじゃないの?
「おや、みなさん集まって何を話してるんですか?先生も混ぜてくださいよ〜」
「実は乃咲にはクローンが複数いて、この前の死神は乃咲の失敗作と切り捨てられたことで同じ顔、同じ声の乃咲に執着していて、宿命の戦いを演じた果てに2人ともファンタズマ・ビーイングされるって設定です」
「…これまたニッチな話題ですねぇ。ですが、あまりそう言う話題に見ず知らずの人を使うものではありませんよ?壁に耳あり障子に目あり。案外、とっくに釈放されて虎視眈々と私を狙っているかも知れません」
「…」
殺せんせーが口を開いた瞬間、圭ちゃんが渋い顔をする。
本当に一瞬。瞬きする時間よりも短い瞬間。彼は殺せんせーの言葉にほんの僅かに眉を顰め、もとの顔に戻る。
「げっ……。それは確かに怖いわ。この話し止め止め」
「ヌルフフフフ、彼は優秀なアサシンですからねぇ。もしかしたらキミたちの使うコンビニとかに既に潜入していたり、電気屋さんになりすまして家に侵入していたりして……!」
「…もしくは、その辺で手品師の真似事でもしてるかもね」
「死神の奴、んなこともできんのかよ……。確かにこの教室に来た時、消えるように俺らを突破して脱出してたな」
「学んだのでしょうね。殺しとは遠いものこそ予想外の一撃になる。ただの中学生に過ぎなかったキミたちが何度も私を追い込んでいる様にね……だからこそ、惜しい。あの才能を、努力を人を活かすことに向けることができなかったことが」
「殺せんせー」
「…」
心の底から惜しむ様な声だった。
でも、その気持ちはなんとなく分かるかもしれない。何百、何千と殺せる技術と知識の為に努力出来たなら、同じだけの人を助ける努力だってきっと出来たと思う。
死神はもしもの姿だったのかな。私たちか、あるいは。
「………」
私の横で殺せんせーの言葉に何度も短く苦い顔を浮かべては消してを繰り返す彼の。
圭ちゃんは気付いているのだろうか。自分の顔が度々短く、けど深刻に苦々しく歪んでいることに。
「ねぇ、圭ちゃん知らない?」
「え、あっちでなんか作ってたぞ。イトナと岡島と菅谷に吉田で集まってわちゃわちゃと。たしか、乃咲がすげぇハイテンションでリア充追尾型自律走行兵器モルゲッソヨとか叫んでたっけ?」
「やってたやってた。校舎の裏で岡島を採寸しながらなんか組み立ててたわ。あんなの何に使うんだろうな」
「てか、モルゲッソヨって何よ……」
「平昌オリンピックの会場にあった像に付けられた俗称だな。弾丸男とかバレットマンとか正式な名前はあるけど、会場にいた人に『これはなんですか?』と聞いたら韓国語で『しらんがな』って返されたんだ。その韓国語の発音がモルゲッソヨなんだよ」
「千葉くんがたまに見せる謎知識なんなの!?」
「ねぇ、圭ちゃん知らない?」
「アイツならモルゲッソヨの完成を見届けたあと、カルマに呼ばれて山菜取りに行ったぞ?」
「なんか磯貝がすげぇでけぇ自然薯掘り当てたとかで人手が欲しいんだとさ。なんか磯貝の奴、自然薯掘り上手くなってね?」
「あー。あいつ、将来は自然薯掘りになるとか言ってたぞ。簡単に見つかる高級食材に将来設計を狂わされてた」
「んで、そのストッパーが欲しいってんでアイツが連れていかれたと。こっちも人手が欲しいんだけどな」
「どったの?」
「いや、それがよ。完成したはずのモルゲッソヨがなくなってんだよな……。スイッチはまだ入れてなかった筈なのに……」
「ねぇ、圭ちゃんしらない?」
「さっき生簀見てくるって言ってたよわよ?」
「自然薯……!俺は自然薯で生計を立てるんだ!」
「あー!もうっ!!いい加減目を覚ませって磯貝!!お前ならんな芋掘りより効率のいい稼ぎができるって!」
「おっ、磯貝磯貝、あれマツタケじゃない?」
「……俺、この山に住もうかな」
「カルマくん!!面白がって追加情報出さないの!!」
「ちぇー。でもさ、さっき乃咲クンだって磯貝に吹き込んでたじゃんか。この山で埋蔵金探そうぜとか」
「埋蔵金!!?」
「ほらっ、磯貝くんを刺激しない!!」
圭ちゃん求めて数十分。あちこちをたらい回しにされて探し続けるけど中々会えない。
彼が使う超高速移動えっと……ゾーン?を使うとこう言うことも出来るのかもしれない。さっきまでここにいたとか言いつつ、次に目撃証言がある場所までは余裕で数十メートル以上は離れてる。なんなら、入れ違いになることすらあった。
彼は世界が止まって見えるみたいなこと言ってたけど、実際のところどんな感じなんだろう?
そんなことを考えながらシビレを切らして圭ちゃんにメッセージを送る。自分の手で見つけたかったし、律に答えを聞かない様にしてたけど、ここまで見つからないと流石にお手上げ。
「ねぇ、律?」
『乃咲さんでしたら……倉橋さんから見て右の方にある小高い丘の上でクールダウンしてますよ。本人はサボりと言って憚らないですけど……。読書中みたいなのでしばらく探し回ることはなさそうですかね会いに行くなら今のうちです!』
「ありがと、律」
律はウインクして画面からいなくなる。
彼女はしばらく探し回る必要はなさそうと言ってくれたけど、あんまりゆっくりしてたらまた移動式の伝説のポケモンばりに動き始めるかもしれないし、フリーランニングで急ぐ。
ひょいひょいと枝から枝へ。簡単な足場は飛び越えて。そんなことを繰り返すうちに律の教えてくれた場所に着く。
まだ明るい空から降り注ぐ陽光を反射する銀髪がよく目立つ。本人に伝えたことはないけど、やっぱり綺麗な色だよね。
彼がそこにいることを認めてゆっくりと近付く。
青空に銀髪が映えるなんて詩的表現は私らしくないかもしれないけど、木を背にグレーのシックなブックカバーで保護された本を片手に読書している姿はサマになっているというか、目つき以外は中性的な顔立ちも相まって絵になるなと思った。
もしかして、そう見えるのは私だけなのかもだけど。倉橋フィルターを通して補正が掛かってるだけなのかな?カエデちゃんとか、わかばパークの一件以来、彼を慕ってる後輩の綾香ちゃんあたりなら頷いてくれると思うけど。
「圭ちゃん」
声をかけるの顔を上げてくれた。
さっきは目つき以外は中性的なんて言い方したけど、その目つきの鋭さもE組が始まった頃に比べると全然柔らかい。
彼は周りが見える人だ。少しだけ嫌な言い方をするなら周りの目を気にする人だった。そんな性格で余裕がなかったから、潰れかけてしまった。それが殺せんせー達との出会いで目だけでなく全体を見る様になった。それができるだけの余裕ができた。
少し偉そうな言い方をするなら……。彼の目つきの変化は彼自身に当初よりも余裕が生まれた結果であり、この1年での成長の証なのかもしれないなって私は思ってる。
口に出すつもりはないけどね。
「何読んでるの?」
「デルトラクエスト」
ぶっきらぼうに単語だけで答えると、ブックカバーをずらし、その表紙を見せてくる。そこにあったのは何処か見覚えのある絵だった。デルトラクエスト記憶がたしかな、小学生の頃、図書室とか朝の読書の時間で男子に人気があったっけ。
この人、こう言うところあるよね……。
なんかすごく深刻に考えてそうな時は6割くらい本当に深刻なことで悩んでるけど4割くらいで予想斜め上のこと考えてるっていうか。思わずツッコミ入れたくなるような思考してること。
1人で分かりづらいボケしてるっていうか。
「学秀の奴がいい参考書を見つけたとか言って渡してきたんだけど、目を通したらデルトラクエストだった……。なんか意図があるのかと思って目を通してたけどアイツが何考えてるのかさっぱり分からん……」
「しかも浅野くん経由なんだ!?もしかして渡そうとした参考書と間違えてるとかそう言うオチじゃない……?」
「あ〜、確かにありそうだな………って、アイツ、なんでこんなの持ち歩いてるんだよ。しかも裏表紙には図書室の管理バーコードあるし……。うちの図書室こんなのあったのか」
「いや、しっかり目を通してる圭ちゃんも相当だよ?流石に深読みしすぎじゃないのかなぁ……?」
「読書だけにな」
前言撤回。
なんだろう。浅野くんは圭ちゃんが絡むとコミカルになるとか、圭ちゃん"と"絡むとコミカルになるとかみんな言うけど、そう言う時は大体圭ちゃんもコミカルになってるよね。
2人だけで周りには伝わりづらい漫才してるっていうか……。2人とも天然な部分があってツッコミ不在だけど。なんだかんだ言って相性がいいのかもね。打てば響くっていうか。
「んで、どったの?律が『もうすぐ倉橋さんが来ますのでここで待っててあげてください』って言ってたんだけど」
「律、そんなこと言ってくれたんだ」
「あぁ。なんかずっと探し回ってたんだって?連絡してくれれば良かったのに。数秒で駆け付けたぞ?」
「……悔しいじゃん。みんなに聞き込みして今は何処にいるって当てたかったんだもん」
「なんじゃそりゃ……」
「好きな人はきっとここにいるってなんなく分かるって奴をやりたかったの!へんなことしてて悪ぅごさいましたぁ〜」
圭ちゃんはバツが悪そうな顔をした。告白してからこんな感じ。好きという単語に嬉しそうな顔をしたあと、即座にバツが悪そうにする。保留にしてることそんなに気にしてるんだね。
なんだかんだ11月。告白を保留されてから2週間くらい。ここまで考えてくれただから、たぶんだけどこのままバッサリとフラれることはないだろうけど、でも圭ちゃんが受けてくれるにはやっぱりもう一押し足らないのかな。
なんだかんだ、1年生の頃から圭ちゃんを見ていた私とは違って彼にとっては私は今年から同じクラスになった女子の1人ってポジションだった訳で……。
端的に言えば好感度のスタートラインが違うし。
相手に対する印象が気になる人スタートだった私と、クラスメイトその1スタートだった圭ちゃん。ステータスみたいなものがあるなら、移り変わり方に違いも出るのかな。
「けど、まぁ、なんとなくそう言うことがやりたくなるのは分かるよ。相手をどんだけ理解してるのか的なセルフ測定だろ」
「言い方……。ちなみだけどさ、もしも圭ちゃんがこの山の中で手掛かりなしに私を探すとしたら何処から探す?」
「ビッチ先生の所かな」
「即答なんだ……。ちなみにその心は?」
「だってお前、あの人のこと尊敬してるだろ。だからビッチ先生の昔話とか聞いて色々と勉強してそうだなって。次点で矢田さんを筆頭にした修学旅行の時の班の女子連中のとこ。1人が楽しめないわけじゃないけどみんながいるならみんなといたいだろ、陽菜乃は。だったら特に仲がいいアイツらのところかなって」
「………私が1人だったら?」
「この山で生き物が集まりやすい所かな。まずは夏休みで連れてってくれたムシのトラップを回って、次は魚介の生簀になってるプール。それでダメなら素直に居場所を聞くよ」
「トラップの場所覚えてるの?」
「………色々と思い詰めてた時期だけど、楽しかったし。実は杉野に言われてたんだよ、あの頃。これ倉橋はデートのつもりだったんじゃないのか、俺らと合流して良かったのか?って」
うん、杉野くん正解だよ。
まぁ、あの時はがっつりデートのつもりとかじゃなく、精々が一緒に遊べたらなぁ〜くらいで思ってたから気まずそうにした圭ちゃんへのフォローもかねて私からみんなと合流したんだけど。
「んで、実際に告白してもらってから杉野の言ってた通りなんじゃねって考え直して、陽菜乃があの時、どんなこと言ってたのか思い返しながら……あー、なんだろ、罠巡りというか、聖地巡礼的なことをフリーランニングの練習しながらしたことが」
……ほんと、この人。
「圭ちゃんさ、結構あざといことするよね」
「……そうか?」
「そうだよ」
「……そうか」
なにやら考え込む様に頷く圭ちゃん。
なんとなく、その仕草と言動を見ていると、夏休み明け、彼が話してくれたお父さんのことを思い出す。
話しても『あぁ』か『そうか』しか返さなくて何を考えてるか分からなくて怖かったってキミは言ったけど、やっぱり親子なんだろうね。そう言う圭ちゃんも同じ相槌が多いよ。
でも、圭ちゃんの相槌には適当に流してる感はないし、きっとお父さんもそうなんだろうなぁ。
それに、圭ちゃんが言った私を探すならココってスポットもかなり的確だと思う。最近の行動を振り返って考える。言われてみると確かにその何処かしらにはいることが多い。
そっか。私のこと理解してくれてるんだなぁ〜ってじんわりと嬉しくなる。だからこそ、彼の居場所を当てられなかったことが余計に悔しくなるけど……。
「んで、どったの。わざわざ俺を探して」
1人で悔しさを感じていると、彼が首を傾げていた。
少しだけムッとしそうになる。用がなきゃ一緒にいちゃダメなの?とか好きな人が何処にいるのか気になったとかそんな言葉が出そうになるのを飲み込んだ。
圭ちゃんのクソボケ具合は相変わらずだ。
周りの感情の機微に鈍い訳じゃないのに、どこかで何かが抜け落ちてる。この前のデートの時もそうだった。
ふと、2人以上で何かをするみたいなタイミングで自然に自分を勘定から外してることがある。集団行動ができないわけじゃないし、気遣いができないってこともないのに、自分に向けられる好意に鈍い。本人にその自覚があるのか分からないけど、『自分に声をかけるってことは何か理由がある筈だ』って無意識に考えてる様に思えて仕方ない。
自分に接するには何かしらの理由がある。そんな風に思われているのは寂しいと思う。
もっと感覚的に周りからの好意を受け取って良いと思うんだけどなぁ。好きだから一緒にいる、友達だから一緒にいるって周りもそう思ってるって考えてくれていいのに。
まぁ、でも、今回はしっかり理由があるからそこのところは一旦置いておこう。そう言う部分はまたゆっくり話そう。
「ちょっとね。なんか圭ちゃんに違和感があってさ」
「………違和感」
「そ。なんて言えば良いのかな、みんなとアレコレしてるのが楽しくなさそうって訳じゃないんだけど、本心から全力で楽しめてるって感じがしないって言うか。勘違いだったごめんだけど、また悩んでるんじゃないかなって」
「………………そうか。顔に出てた?」
「うん。笑い方が少し強張ってるって言うかさ。別に笑顔がわざとらしいとかじゃないんだよ?明らかな作り笑いでもない。でも、ただ楽しくて笑ってる純度100%の自然な感じの笑い方って感じじゃないって感じたって言うか」
そこまで伝えると彼は頭をガシガシと掻いた。そして少しの沈黙の後、ため息混じりに降参宣言をした。
「別に隠してたとかじゃないんだよ。思い詰めてるって訳でもなくてさ、自問自答中って言えばいいのかな」
「……それってこの前からなんか悩んでること?」
「……………うん」
なんでなんだろう。この学校に入学してから出会った乃咲圭一という男の子はどのタイミングでも何かしらの悩みを抱えてる。基本的にどの時期に話しかけても何処か深刻そう。
「………」
真っ直ぐ見つめると、バツが悪そうにして、頬を掻き、空を見上げて本日2度目の降参ポーズ。
「……自分でも整理できてない部分があるから全部は話せないけど、それでもよければ聞いてくれるか?」
「うん。聞かせて欲しいな」
こう言うところは変わったと思う。夏休みのあとの『お前らには分からない』とか『自分の人生を決める選択肢を他人に押し付けたくない』とか言ってた時期とは違う。
でもやっぱり周りを頼るのが苦手そうって部分は変わらないかな。聞いても答えてくれないのが、聞けば答えてくれるになったって印象だし。もう少しグイグイ来てくれて良いのに。
……………色んな意味で。
「悩んでることなら無数にある。殺せんせーの暗殺について、死神が最後に投げて来た質問への答え、そして陽菜乃からの告白」
「…………殺せんせーの暗殺っていうと……?」
「…………なんで殺せんせーを殺すのかなって」
言いながらポケットから乱暴にハンカチを出すと自分の隣に敷き、ポンポンと叩きながら私を見てくる。
立ち話もなんだし座ったら?という気遣いなんだろう。好意に甘えて彼の隣に腰を下ろす。
「殺せんせーを殺すのは依頼だから。殺さなきゃ地球の未来がないから。何処の馬の骨の凡骨とも分からない奴に殺されるくらいなら俺たちの手で殺すことがこの一年の感謝だと思うから。それは多分、陽菜乃たちも同じだよな?」
「……うん。そうだね」
「でもこれってさ、どっちかって言うと"殺したい理由"じゃなくて"殺さなきゃいけない理由"だよな。一番最後の奴以外は」
「………………確かに」
「だからちょっと考えてる。俺は殺せんせーを殺したいのかなって。やらなきゃいけない理由でも、誰かに殺されるならって消去法でもなく、俺は俺自身の意志で殺せんせーを殺すって選択肢を選びたいのかな……?」
彼は私ではなく、ぼんやりと空を見上げながらポツリと溢す。悩みを打ち明けると言うよりも自問する様に。
ちょっと考えてるなんて前置きしてるけど、きっとちょっとどころでは済まないくらいに考えてるんだろう。
考えもしなかった。いや、考えない様にしてたって言うべきなのかな。殺せんせーを殺す理由。
殺せば賞金100億円。殺しても罪には問われず、むしろ地球を救った英雄になれるという日本政府直々の依頼。落ちこぼれだった私たちにとってはこれ以上ない逆転のチャンスで、殺す理由なんて賞金が欲しいからでもともと済む話だった。
言われてみると確かにそうだよ。その賞金目当ての理由と知らない誰かに殺されるくらいならって理由からそのあとを考えようとしてこなかった気がする。
そっか。そんなことを考えてたんだね。
みんなと学園祭の準備を楽しみながら、でも心のどこかでこんな大きなことを1人でずっと。
「私も考えてみる。なんで殺せんせーを殺すのかなって」
「…………ごめん」
「私から聞いたんだからごめんはないよ。圭ちゃんが話してくれたことが嬉しいもん。だからさ、これからも何かあったら話してよ。前に言ったけど、圭ちゃんが悩んでるなら私も一緒に悩みたいからさ。私が聞きに来たタイミングでも、圭ちゃんが話したいって思ったタイミングでもいいから」
「………うん。話せると思ったら話すよ」
彼と話す様になってどれだけ経ったかな。確実にまだ1年は経っていないけど、なんとなく……彼の話し方の癖が見えて来たような気がする。気の所為じゃなければだけど。
普段の相槌とか返事は『あぁ』とか『そうか』とかなのに、時々、子供みたいに弱々しく『うん』と頷くことがある。
それだけじゃない。時々、妙に幼い口調が出てくる。そう言う時は、心の中で何かしら思うところがある瞬間だと思う。今の文脈とその予想が正しいのなら『まだ話せないことが、話せてないことがある』って言ってるように聞こえた。
けど、それが圭ちゃんなりに引いた一線なんだと思うから、今はまだ強引に踏み込まないでおこう。
「それで、死神についてって言うのは?」
これ以上は無理に聞き出すみたいになりそうだったから話題を変える。でも、彼はこの話題にも苦い顔をした。
「これについては俺も流暢に話せるほど頭の中でまとまってないって言うか、ある種の確信を持ってるけど、それが事実だと認めるのが怖いとは違うけど、気が重いって言うのかな」
「気が重い……?」
「うん。さっきの殺す云々はビッチ先生にも相談したけど、こっちは誰にも言えてない。陽菜乃に話すのが初めてだ」
私が初めて。そのフレーズに思わず嬉しくなる自分に少し自己嫌悪。真面目に悩んでるのに、誰にも話せず抱えてた内容を話してくれているのに、それに舞い上がっているのが彼が悩んでるのを喜んでる様に思えて少し申し訳なかった。
「死神がさ、烏間先生に負けた時に問いかけて来たんだよ。声は聞こえなかったけど、口の動きで何を言ってんのかは理解できた。『僕とキミで何が違った?』って。アイツはそう言った」
「ぁ……」
またポツリと語り出した彼の言葉に小さく息が漏れた。
烏間先生と死神の戦いを見守っていた時、その決着と同時に彼が呟いたのを私は聞いていた。『俺とお前で何が違った?』と。
「そっか………あの言葉はそう言う意味なんだね」
深く疑問に感じていた訳ではないけど、納得する。
「俺とアイツは親戚らしい。血が繋がっていて、顔も声も同じで、家庭環境も似ている。なんとなく、死神のことが他人と思えなくてさ、ずっと考えてたんだ。俺と彼とで何が違うのか」
「……違うところなんて沢山あるんじゃない?」
彼は私の言葉に頷くと、それから少し間を置いて言った。
「確かに違うところなんていくらでもある。生まれた国が違うし、生まれた年代も違うし、親も違う。そんだけ色々と違ってれば性格だとか考え方とかも違ってくるだろう。でもね、たぶん、アイツが言いたいのはそう言うことじゃないんだ」
「じゃあどういうことなの?」
「……わかんない。俺とアイツで違うこと。その疑問の本質的な部分が俺には見抜けてないから」
無造作に放り出した両足を左右にゆらゆらさせながら、両手で身体を支えながら空を見上げる子供っぽい一面を網膜に焼き付けながら、何気なく見慣れた彼の横顔を見つめた。
「アイツは、"先生"に固執してたんだよ」
「先生って言うと……誰のことだろ」
「死神の先生だろうな。たぶん、俺たちが出会った死神ってのは2代目とか死神の後継者なんだと思う」
「なんでそう思うの?」
「そうじゃなきゃ資産家に生まれたボンボンがあそこまでの殺し屋になれると思えないから。それにさ、なんとなく分かるんだよ。悔しいけど俺らは似てるからさ……。俺も烏間先生に憧れたから。ただ中途半端に強い奴だったら憧れなかった。でも、先生は圧倒的だった。アイツの話が本当なら、アイツが殺し屋に憧れるきっかけになった、自分の父親を殺した暗殺者。それが俺にとっての烏間先生で、きっと初代の死神なんだよ」
感覚的な話だった。普段の圭ちゃんの合理性からしたら理由になってるとは言い難い感情論。
でも、なんでか彼が言うならそうなんだろうって思った。根拠らしい根拠はないのに、なぜだかそう思った。
「つか、他人事みたいに言ってるけど、よくよく考えたら俺、その初代死神に親戚を殺されてるような………」
「………あ、そういえば……。圭ちゃんの大叔父さんの子供って本人が言ってたっけ……」
「あーあ……。どんどん相関図がぐちゃぐちゃになってく」
ぼやきながら頭を抱える。そう言えば死神も言ってたっけ。圭ちゃんを中心に相関図を書くと複雑になり過ぎて思わずドン引きしたとか。そこまで言われると気になるなぁ。
「その、大丈夫……?」
「……まぁ、思うところがないわけじゃないけど、特別思うこともないって言うか。俺からしたら名前も声も顔も知らない、薄く血が繋がった誰かが殺されたってくらい。薄情かもだけど、遠い県で起きた自分に縁もゆかりもない殺人事件のニュースを見て『怖いなー』って思うくらいの感動しかないな」
言いながらも複雑そうな顔をする圭ちゃん。
でも、確かにあんまり深く気にし過ぎてる様子でもないことに少し安心してしまった。
人として間違ってるかもしれないけど、とっくの昔に死んでしまった人のことを考えて圭ちゃんが気を病んでまた倒れてしまうことの方が私は嫌だったから。
「…………なんだかなぁ。死神周りに関しては気になることだらけ……というより、気にしなきゃいけないことだらけと言うべきか。俺は何をどこまで考えればいいのかなぁ」
「そこまで深く考えることかな?圭ちゃんは別に何も悪いことはしてないし、ただのそっくりさんの言葉をそんなに真に受けることもないんじゃないかなって私は思うよ?」
「違うんだよ、陽菜乃。むしろ逆」
圭ちゃんは私の言葉に首を横に振ると今度は俯いた。
さっきまでの迷ってるような、どうしたらいいか分からないと言外に出ていた雰囲気は一転して真剣なものに。
「他の誰かならそれでも良いだろうけど、俺はそう言うわけにはいかないんだ。きっと、俺の予想が正しいならね」
「予想って……?」
思わず聞き返すと彼は迷った顔をする。この一年で何度も見た、どうするべきか悩んでいる顔。
けど、悩んだあと私に話してくれるようになったのは彼から信頼を勝ち取った証と言って良いのかな。彼の口からとんでもない情報が飛び出して来た。寝耳に水どころかミミズを入れられるような予想の範疇の遥か外にあった可能性が。
「俺たちはさ、アイツの"先生"と接触してるんだよ」
「嘘……!?」
いくら圭ちゃんの言葉でも無条件は信じるにはあまりにも突破な言葉だったけど、同時に否定もできない言葉だった。せいぜい聞き返すのが精一杯な彼の言葉。
否定しきれないのは死神のことがあったから。街で出会った、圭ちゃんにそっくりな花屋さん。そんな彼が世界最高の殺し屋だった事実がある以上、頭ごなしに否定はできない。
けど、そんな私と違って彼には確信があるみたいだった。口では俺の予想が正しいならと予防線を張ってるのに、口調ははっきりとしていて、さっきまでの迷いを含んだ声音ではなかった。
「それもきっとちょっとすれ違ったとかそんな話しじゃない。もっと身近で日常的に接している相手に紛れてる」
「だ、だれ……?」
「……………ごめん。これは言えない」
「どうして……?」
「事実確認ができてないから。そんな状況で、俺の予想の人物と陽菜乃がギクシャクするのはイヤだし、なにより現実問題として、俺たちの言う初代死神……アイツの"先生"が俺たちに危害を加えることは絶対にない。だから、無理に情報を出す必要もないからさ。下手に知る必要はないと思う」
「なんでそこまで確信できるの?」
「………殺せんせーが守ってくれるだろ?あの人はビッチ先生やロヴロさん、2代目もびっくりだなレベルで万能だし、死神の件で俺たちへの危害に対する警戒心が上がってるから」
「殺せんせーへの信頼が厚いね……。でも、確かにそう言われるとそうかも。それに烏間先生もビッチ先生もいるし」
なんだかんだ、先生たちを信頼してるよね。
ゾーンとか、私たちから見たら瞬間移動も同然なスピードとか、人並外れたチカラを持ってる圭ちゃんだけど、先生たちへの信頼は結構一貫してる。
「何かしらの形で俺と関わってるアイツの先生である初代。そんな俺らの関係を比較してるのか、それともシンプルにそっくりさんな俺たち同士をみて聞いて来た質問なのかは分からないけど、俺は見て見ぬ振りはしちゃいけないんだ」
そんな彼のこの思いはどこから来るんだろう?
大いなる力には大いなる責任が伴うとかよく聞く言い回しだけど、圭ちゃんの背負いがちな部分はそう言う責任感なのかな?
もっと別の部分もあると思う。
でも、これもやっぱり聞いても答えてくれないだろう。きっと話すつもりなら初めから結論から話してくれるだろうから。
「俺の悩みはこんなとこ。聞いてくれてありがとな、陽菜乃。告白の件はもう少し待ってくれるとありがたいです……はい」
「それはまぁ……待つけど……。でも、私の告白ってそんな重たかった……?なんか、今話してくれた内容と同列に扱われるの少し恥ずかしいんだけど……。親戚が実は殺されてる疑惑とか、最高の殺し屋と自分で何が違うのかとかと同じレベルで思い詰められるとこっちも複雑というか……」
「そらなぁ……。適当な返事はしたくないし。ある種の人生のターニングポイントかもしれないわけだろ、お互いに」
「嬉しいけど重いよ……。どこかのチャラ男みたいに、どしたん話し聞こか?俺なら悲しませるようなことしないのになぁ〜?じゃあ、挿れるね?みたいなスナック感覚でいかれるのも嫌だけど、もう少しライト&ソフトにさ?」
「乃咲家は愛が重いのさ………たぶん」
最後の最後に誤魔化すように言った彼はそのままふと、笑顔を浮かべたままで停止した。そして再起動したかと思うと、めちゃくちゃ複雑そうな顔をして再度口を動かす。
「ごめん、たぶんじゃなくて、重いわ……。よくよく考えたら、乃咲の祖父母は半ば駆け落ち、両親は幼馴染な上に女の為に世界最高峰の科学者になったり……。やってることを列挙したら普通に愛が重い一族でした……」
「そっか……」
まぁ、その分、決めた人は一途に大事にしてくれるってことなんだろうけど。なんで重いって書き方をすると少しアレというか、よくない方向に捉えがちなんだろうね。
「………陽菜乃」
「ほぇ?」
圭ちゃんは立ち上がると、真剣な顔で私を見下ろしていた。
「最高の殺し屋ってのはさ、よろずに通じているんだよ。だから万能だ。きっとなんでも出来てしまう。殺そうと思えば殺せるし、逆に守ろうと思えば守る事もできると思う」
「圭ちゃん……?」
「ごめん。だからなんだって話に聞こえるだろうけど、俺に言えるのはこれが精一杯だ。だから、俺が何を言いたいのかは、陽菜乃に考えて欲しい。気が向いたらで良いからさ」
「……うん。分かった」
珍しいと思った。彼がこんな風に考える内容を投げて寄越すのは。普段は自分で考えるだけ考えて煮詰めたものを聞かせてくれるスタンスなのに。
返事をしながら思う。もしかすると、圭ちゃんなりのヒントだったのかもしれない。もしかしたらヒントはこれだけではなかったのかもしれない。会話の中に彼の言いたいことに繋がる材料はきっとあったと思う。
「んじゃ、俺は行くよ。陽菜乃は?」
「私は……もう少しここにいようかな。普段、圭ちゃんがここで何をみてるのかなぁって眺めてるよ」
「……恥ずかしいんだけど……。まぁ、いいか」
先に言ってるな〜と言って彼は姿を消した。比喩でもなんでもなくそこに立っていた場所から音とも立てずに掻き消えた。
「あっ、圭ちゃん!デルトラとハンカチ………はやぁ……」
彼のいた場所に残された本と私がお尻に敷いてるハンカチ。そのどれも回収することなくいなくなった。
「もう……そそっかしいんだから……」
とは言いつつ、ハンカチは私が持っておこうと言葉に出さずに心に決める。別に盗むとかじゃなくて洗って返すだけ。クッションとかならまだしも、お尻に敷いてたハンカチをそのまま返すのに抵抗があるだけ。他意はない。ないったらない。
心の中であれだ、これだと言い訳を並べつつ、彼のハンカチをポケットに入れる。別に盗むわけでもないのに何故だか、悪いことをしてるような感覚になる。
「……他意はないもん」
おまけに呟いてポケットに入れた。
ポケットに入れたハンカチの感触を確かめながら歩いていると、ふと、みんなの声が聞こえて来る。
どうやら圭ちゃんがまた何かをやらかしているらしい。遠くから『モルゲッソヨォォォォ!』と叫び声。
心の底から全力で楽しめてるわけではないだろうけど、それでもしっかり楽しんでるらしい圭ちゃんに安心する。
私も一緒にふざけてこよう。こうしてる間にもカエデちゃん辺りが動いてるかも知れないもんね。
駆け出した私は考えもしなかった。いま、この瞬間に圭ちゃんが何を考えていたことが後にクラスメイト全員を巻き込んだ暗殺教室始まって以来、最も根深く、深刻な命題になること。
その命題に、私がいち早く触れることになるなんて。
あとがき
はい、あとがきです。
圭一も新手の怪異になってそうですね……。
とまぁ、今回は圭一が抱えてることを倉橋さんに少しだけ共有する話でした。今まで散々教えることを渋ってたし、本質的なことは教えてないけど、何度も心配かけてるし〜とか、倉橋さんのこと信頼してるからとようやく一部を吐露しました。
ちなみに、このタイミングで圭一に何を考えてるのか聞いて、一部分だけでも答えがもらえる生徒はこの段階では倉橋さん以外はいません……。
頑張れ、倉橋さん。割ともう一押し!!
ご愛読ありがとうございます!