暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!

今回も投下しますので最後までお付き合いください……!

追記
申し訳ございません……。
やらかしました……。Ez8をEx8とかやってました……。
腹を切ってお詫びいたします……。


148話 結果の時間

 

「さぁーて、やって参りました結果発表の時間です!!いやぁ、みなさん大健闘でした!!よくぞここまで成長しましたね……。第二の刃を完全に見つけたこと、嬉しく思います」

 

 殺せんせーが俺たち以上にはしゃいだ様子でクラッカーを鳴らす。乾いた音と火薬の臭いが教室を満たす。

 そのテンションから察するに、どうやらクラス目標自体は達成することが出来たらしい。

 

「という訳で、さっそく順位発表です!他のクラスの分は色をつけていますので、白地に黒で書かれているのが君たちの結果です。それでは気になる順位はこちら!!」

 

 ハイテンションな殺せんせー。いくらテンションから俺たちの目標自体は達成していることは察せても、自分の順位を知ると言うのは緊張する。まぁ、正直に言えば結果なんて分かっているのだが。自信過剰的な意味ではなく、第三者要因で。

 

「俺が……46位……!」

 

 寺坂が短く、小さく、けれど叫ぶ様に言う。

 そんな彼の様子を見て、吉田と原さんが続く。

 

「たしか、E組のビリは寺坂だったよな……」

 

「その寺坂くんが46位ってことは……!」

 

「「「よっしゃぁ……!!目標達成!!」」」

 

 どっとわくクラスメイトたち。同席し、結果発表を見守っていた烏間先生とビッチ先生も安堵した様に表情を崩した。

 俺もこの結果には安心してるし、手応えを覚えている。なんだかんだで殺せんせーが赴任してから暗殺以外で出来た初めてのみんな共通の目標だった。

 

「よかったぁ……!よかったよぉ……!!」

 

「うん、うん!ウチらの悲願だったもんね!」

 

 女子たちも抱き合って、跳ねながら喜んでる。

 男子も拳を突き合わせて互いを称えていた。

 

 俺も似た様なもんで、悠馬にやったなおい!と肩をゆすられ、脇からカルマにはニヤニヤと肘で突かれていた。

 

 黒板に貼られている順位表を見る。確かに寺坂はE組最下位だったが、それでも186人いる3年生の中では名実共に上位入りを果たしていた。前回のテストで100位近い順位だったことと今回のテストの難易度を考えると、俺の最下位から51位になったアレよりよっぽど凄いことだよな。

 

 懐かしいもんだ。そう言えば、50位に入れなかったら土下座するとか言ったこともあったっけなぁ……。

 

 しみじみと思い返しながら順位表の左上に視線を向けると、そこには俺とカルマの名前があった。名前の左隣にある順位を示す欄に1という数字を堂々と従えながら。

 

「上位争いもかなり熾烈でした。あの超難問が並んだテストを良く戦い抜きましたねぇ……!先生は誇らしいです。1位と2位以下は5英傑と皆さんが交互に食い込み、そこから下の50位まではA組の大半を退けての勝利!目論み通り、上位50位は皆さんとA組で独占できました!!そして……」

 

 ニヤリと俺とカルマに向かって笑みを浮かべる殺せんせーがヌルヌルと触手を動かしながら俺たちの頭を撫でる。

 

「ついにやりましたね!2人とも完璧を誇った浅野くんに見事勝利して名実共にトップです!カルマくんは初の1位!乃咲くんは長らく続いた死闘にようやく決着が着きましたねぇ」

 

 殺せんせーの言葉に合わせて拍手が起きる。

 自分のことの様に満面の笑みの奴、周りのテンションに呆れながらも祝ってくれてる奴。烏間先生もビッチ先生も同じ様に俺たちを拍手で労ってくれていた。

 少しばかり過剰にも思えるのその祝い方に思わず照れ臭くなるが、悪い気はしない。正直に言えば嬉しかった。

 

「どうですか、カルマくん。高レベルの戦場で狙って1位を取った感想は。今の気分はどうですか?」

 

 持ち前の早着替えスキルでジャーナリストの様な格好に着替えた殺せんせーがボイスレコーダー……に見える様に外装を作ったタバコの空き箱をカルマに向けながら問い掛ける。

 普段であれば、そんな殺せんせーに一笑して適当なことを言うカルマも今回ばかりは照れ臭そうにしながらも答えた。

 

「……ん〜。別にって感じ」

 

「浅野くんとの勝敗が分かれたのは最終問題だったそうです。先生も問題を見せて貰いましたが、あの問題量とあの質の証明を良く制限時間内に完全制覇しましたね」

 

「……あれね。なんか良くわかんないけど、みんなと1年過ごしてなかったら解けなかった。そんな気がするよ」

 

「……えぇ。先生もキミのアプローチの仕方は驚きました。自分の外にも目を向け、一般的な方法とは違うイタズラ心を感じさせる解き方でした。カルマくんの在り方、そしてこの一年での成長を感じられましたよ。これからも期待しています」

 

 殺せんせーはそう締め括ると、今度は俺にニヤリとわざわざ口に出しながら視線とレコーダー代わりの箱を向けてくる。

 

「さて、乃咲くん。念願の勝利ですねぇ。この前の青春漫画さながらのライバル宣言は先生の秘蔵の写真に加わっています。いやぁ、カッコよかったですからねぇ……!」

 

「その写真は後で消すとして………まぁ、念願の勝利ではあるけど、勉強面では初勝利だ。白星以上に黒星の方が多い。俺が腐ってる間もアイツは努力し続けてたんだから。これで終わらず、次があるなら次も負けないくらいの気概でいますよ」

 

「その調子です。強者が強者として有り続けるには相手を侮ってはいけません。相手を侮るということは、自分にも未熟な部分があると言うこと。勝って兜の緒を締めることが肝心ですよ」

 

「肝に銘じます」

 

「うんうん。素直でよろしい。ですが忠告は本心ですけど、それはそれとしてキミのことも褒めてあげたいのです。キミも良く戦いました。テスト後に教室に戻って来て問題用紙を見ながら皆さんで答え合わせをしてる時に確認しましたが、最終問題をキミは良く『見て』いましたね。問題文にあった無数の下線とそれを消して出来たであろう跡。先生は見逃しませんでしたよ」

 

 素直に、そして跳ねることなく褒められた上に別に見せていた訳でもない俺の問題用紙のことまで把握されていて少し驚くと同時にやっぱり照れ臭くなってしまう。

 

「問題文を見た時からなんか違和感あったから」

 

「えぇ。カルマくんは問題文に囚われることなく立方体の外に目を向けて正解を導き出しましたが、キミは問題分の中に見落としがないか良く見ていた。問題文、出題者の意図、答えを出す上での合理性などを多角的に。考え方や答えに辿り着くまでのプロセスにキミの良さが実に出ていた」

 

「……まぁ、カルマと同じこと言うみたいだけど。俺もE組にいなかったら解けなかったと思う。みんなに教えられた部分を活用したから、今回、全教科満点なんて成績を出せたと思う」

 

 俺とカルマの頭に相変わらず触手を置き、ゆっくりと撫でながら殺せんせーは口を開いて言葉を紡いだ。

 

「その答えが聞けてなによりです。キミたちは他者に対する考え方と接し方が大きく成長しました。今回のテストではそれを色濃く感じました。その感覚を大事にすれば、将来、私の元を巣立ちどこへ行っても良い仲間、人間関係に恵まれることでしょう」

 

————巣立ち。

 

 殺せんせーの言った何気ない一言につい気を取られる。

 そうだ。テストが終わった。自分なりに決めていた期限が来てしまったのだ。そもそも俺たちに将来と呼べる未来が来るかどうか。殺せんせーを殺すか殺さないか。

——殺せんせーは、俺たちが巣立つことを望んでる。

 先延ばしにしていた現実が目の前にあった。

 殺せんせーにも伝えてある。テストが終わったら暗殺を仕掛けると。きっとあんまり時間を空けると煽られるだろう。『おやおや、先生を殺すとか言ってましたが一向に来ませんねぇ。もしかして先生の様な人格者を殺すことが怖くなっちゃいましたか!?』と絶妙に否定しずらい言葉で。

——なら、やはり殺すことが恩返しなんだろうな。

「ちなみに、A組は前半までは絶好調でした。ところが、後半の教科になるにつれ、徐々に難関問題に引っ掛かる生徒が増えたそうです。自分のペースで戦えたのは5英傑たちだけでした」

 

「……そりゃそうだわ。殺意ってそんなに長く続かないよ」

 

「だな。日頃から訓練してても1日ずっと殺す気でいるの大変だもん。殺意もそうだし、1日中怒るのだってしんどいって」

 

「殺意でドーピングしたいなら……じっくり育てるべきだったよ。一夜漬けの殺意じゃなくてね」

 

 殺意……か。この一年で嫌と言うほど聞いた単語だ。

 殺すと言うありふれた言葉の意味がこの一年で大きく変わりつつある。果たして、今の俺たちが抱いているのは本当に殺意なんだろうかと考えずにはいられなかった。

 

「というか、乃咲くん?折角悲願を達成したんです。もう少しわかりやすく喜んでもいいんですよ?」

 

「だって、アンタ。恐らく本校舎での採点が終わったくらいから急に物理的に飛んで来たかと思ったら触手ヌルヌルさせながら抱きついてきて『よがった、よがったですねぇ!がんばりましたねぇ!』とか言ってくるだもん。なんとなく目標達成したんだなってネタバレ喰らったから喜び爆発!みたいなテンションにもならないと言うか……」

 

「にゅやぁっ!?申し訳ありません!!!」

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

「なんでだ……?あそこまでやったのに、負けるなんて」

 

 どんよりとした教室の中でポツリとそんな声がした。もうそこには怒りとか憎しみとか、そんなものはない。ただ、諦めたような、燃え尽きたような、そんな色が見える疑問。

 やれることはやった。理事長から直接指導を受け、それに必死に喰らい付いた。テスト期間前に比べて自分たちのレベルが何段階も上がった実感すらある。だが、それでも届かなかった。

 

「君たちの勉強じゃ勝てなかった。それだけの話だ」

 

 そんな中で一際悔しく、一際震える声があった。

 その声の主を彼らは知っている。視線を向けるとそこにはこのクラスの支配者がいた。敗北の屈辱と分かっていたのに時間が足らなかった悔しさ。あと数分あれば満点だった。数分くらいなら捻出できた。結果論ではあるが、そんな悔しさに焼かれる男がいた。答案を握り締め、順位表で自分の上に君臨する2つの名前を睨み付けながら。

 

「かくいう僕も君達に誇れる成績を取れなかった。この悔しさは絶対に未来に活かす。高校に行っても……いや、高校に行ったら今度こそ僕が勝ち、君たちも勝たせる手段を探し続ける」

 

 浅野は立ち上がり、クラスメイト一人一人に目を向けた。敗北に打ちひしがれる仲間を見つめる様に。

 今まで彼はそんなことはしなかった。負けは負け。次は勝つから大人しく自分の指揮を待てと全体に通達して終わらせるだけだった彼が、仲間の目を一人一人見つめながら口を開いた。

 

「僕が導く。だから……キミたちも僕を支えてくれ」

 

「浅野くん……」

 

 浅野の言葉に沈み切った空気が僅かに軽くなるのとほぼ同時、教室の扉が開かれた。カラカラと建て付けの悪さを一切感じさせない軽快な音とは対照的に見るものを威圧する様な空気を纏った彼らの見知った男が入ってくる。

 

「キミは生死を賭けた勝負の後でも同じことが言えるのか」

 

 冷たく、けれど感情的に威厳ある声が浅野を咎めた。

 声の主はよく知る人物だった。だれあろう、彼の実の父親なのだから。決意を抱いた瞳で顔を向ける。

 

「人生は常に分からないものだ。その闘いが負けたら死ぬ勝負かどうかは闘いが終わってから初めて分かる。だから、キミたちは生きる為には勝ち続けなければならなかった」

 

「お言葉ですが理事長。今回、その闘いの指揮を執ったのはあなたです。その結果、彼らは敗北し、独自に闘った僕ら5人も負けた。負けたら死ぬ勝負ではなかったにせよ、先生の理屈で言えば……僕らは死人だ。死人に口無し。負けた僕らが次は負けないと意気込むのであればまだしも、強者としての在り方を語るのは愚の骨頂が過ぎるのでは?」

 

 浅野は自らの父に毅然と言い放った。その余りにも物怖じしない話ぶりにA組生徒は例外なく息を呑んだ。

 

「今年、いつだったかにあなたは言った。"自分は頑張った"と主張して認められるのは勝者だけだと。敗者が主張しても意味のないことだと。なら、結果を受け止めるべきです。我々は負けた。無論、先生だけを責めるつもりはありません。本来なら、彼らを導くのは僕の役目なのだから。しかし、事実としてあなたの教育はE組に敗れた。先生の教育論とは真逆の負け続けたからこそ強くなった彼らに。あなただって敗者のはずだ」

 

 自らが教育で言って聞かせ続けた言葉。

 

「僕らに勝負させてる、あるいは僕らの勝負と考えちゃいませんか?違うでしょう、それは無責任だ。E組を育てたのはE組の担任で、今回のA組を指導をしたのはあなただ。理事長、あなたは教育者としてE組の担任に負けたのでは?」

 

「………負けた、か。確かにその通りだ」

 

 學峯はその言葉を受け止め、しみじみ呟く。

 当事者にとっても、客観的に見ても浅野の言葉は正論だ。

 

 なかなかどうして生意気を言う様になったと、自分の息子であり、もっとも長く教えた生徒でもある浅野学秀というA組のリーダーとその近くに集まっていた生徒たちを見る。

 どこまでも毅然と、上位者に向かってまっすぐに意見し、自らの落ち度も認めながら戦い敗れた敗者としての矜持を貫こうとする彼にA組生徒の覚悟は決まった。

 

「理事長先生。はっきり分かりました。今のやり方ではE組には勝てません。僕らも頑張ってきたつもりです。でも、敗北を得て強くなった彼らや浅野くんはきっとそれ以上に努力した。張り詰めた強さじゃ、彼らのしなやかな強さには勝てません………」

 

「力及ばす申し訳ありません。お気に召さなければ……どうぞ、E組に落としてください」

 

「そっちの方が、僕たちは成長できる気がします」

 

 学秀を除いた5英傑が頭を下げるのとほぼ同時。A組の全員が徐に頭を下げた。まるで断頭台でギロチンを待つかの様な、それでいてそのいずれくる刃を待ち望むような態度。

 

 學峯は今度こそ停止した。理解が追いつかなかった。

 息子の反発は視野に入れていた。だが、他の生徒までもがこんな行動に出るとは思いもしなかった。

 

「……何かエラーでも起きたみたいな顔してるね」

 

 学秀は言いながら父親に背を向けてA組の出入り口の方へ歩き出す。他の仲間も特に号令すら受けていないのに、まるで当たり前かの様に、その背中に続いた。

 

「今回の数学。僕が満点を取れなかった最終問題を圭一と赤羽は満点で突破した。この僕ですら証明が間に合わなかった問題をどう解いたのか聞いてみたら……拍子抜けするほど簡単なやり方をしていたよ。僕や大半の生徒が取ったであろう正攻法のやたら長く、やたら難しい計算は一切せず、僕が見えていたのと全く同じ答えをあっさりと出していた」

 

 学秀は教室を出る直前で振り、そして言い放った。

 

「正解は一つでも、やり方は一つじゃない。僕は今回の敗北でそれを学んだ。だから、強者という答えにアンタとは違うやり方で辿り着いて見せる。僕もE組に落としたいのであれば構いません。むしろ望むところです。それじゃあ、僕はこれで」

 

 再び歩き出すと、今度こそ振り向くことなく学秀は教室を出た。1人また1人と教室から彼の背中を追うように去って行く。

 

「……それでは失礼します。理事長先生」

 

 ペコリ、と最後の1人が頭を下げて退出する。

 生徒が1人もいなくなった教室に1人残された學峯は誰にも読み取れない表情のまま、主人のいない無数の座席を眺める。

 

「…………強者も弱者も全て去っていったか」

 

 空虚な瞳が映すのはなんだろう。ポツリと溢れた言の葉は誰の耳に届くこともなく、強者も弱者もいない教室には教育に命を賭けた者が1人、人知れず牙を剥いた。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

「あー。ゴホン。念の為、一応、立会人的なことをやらせて貰うが……。今回の圭一と浅野の賭け。圭一が勝ったら浅野は圭一の言葉を怒らず、否定せず、粛々と受け入れること。浅野が勝ったら圭一が浅野の言うことをなんでも一つ聞くこと。それが相手への要求で間違いないよな?」

 

「あぁ」

 

「異存ない」

 

 俺と学秀は向かい合い、その間には悠馬が立っている。

 テスト前に交わした口約束とは言え、一応賭けは賭けだ。割と場の雰囲気に流されてあんなこと言ってしまった感があるので、しっかり白星を上げた今回はなかったことにしてもいたんだけど……。それだと学秀の方が納得はしないだろう。

 

 それに、せっかく勝ち取った権利だ。ありがたく使わせて貰おう。それがコイツの言う強者の権利と義務だ。

 

「それじゃあ……圭一。言ってやれ」

 

 悠馬はそこまで言うと一歩下がる。形式的な立会人とは言え、俺とコイツだけだったらグダッた可能性の方が高いし。一言だけ礼を言って学秀に向き合う。

 

「さて。学秀。俺は今回はお前に勝った。これまで個人的な対決では黒星か決着が着かない展開ばかりだったが……初勝利だ」

 

「初勝利と思ってるのはお前だけだ。全体の段階で圭一の方が点が高い教科もあったし、体育祭では僕の準備した精鋭を半分もお前1人に潰されたし、こっちの作戦を見抜いたのもお前だろう。細々とした白星自体はあったと思うが……まぁ、お前が言うのならそれでいい」

 

「それ、絶対に納得してない奴の言い方だからな」

 

「ほっとけ」

 

「あ、そ。んでも、テストでお前に勝つってのは1年の頃からの俺の悲願だった。お前より上の順位に立つって意味では初勝利なのは変わらない。んで、ここからが本題だ。単純な知識や思考力ではお前の方が上だ。それは誰がなんと言っても絶対に否定はさせない。けど、お前に勝てたことで俺はなんの臆面もなく、対等にお前のライバルだと言い切ることができる様になった」

 

「……………」

 

「その上で言わせてもらう。一年の頃からお前に言ってみたかった言葉がある。何がない日常の中で言うことはあったが、しっかりマウントを取って上から言い放つことが俺の夢だった………」

 

 俺は学秀の目を見る。対等なライバルとして正面から視線をぶつけ、学秀からも同質のそれが帰ってきたことを確認すると同時にスゥーっと息をゆっくり吸い、肺に酸素を充填する。

 E組の仲間たちとA組の連中が息を呑んで俺たちに視線を向ける中、俺はカッと目を開き、半ば身を乗り出す様に前傾姿勢になりながら、充填した酸素を搾り出すように言い放った。

 

「ばあぁぁぁぁかぁっ!!!!」

 

「…………?」

 

 力の限り叫ぶ様に投げた言葉。酸素を使い切り、久方振りに肩で息を整えながら深呼吸する。

 当の言われた本人はと言えば、キョトンとしたまま俺をみていた。言われたことを理解できていないみたいに首を傾げ、俺に視線を向け、更に首を傾げ、しばらく挙動不審になる。

 

「Foooo!すっきりした。いや、夢だったんだよ。お前に対して全力罵倒するの。いやー、夢が叶った叶った」

 

「……は、え……?ぁ……?ば、ばか……?」

 

「………?どうした、エラーでも起こしたみたいな顔してるぞ」

 

「………?」

 

「……?」

 

「…」

 

 まるで挙動不審なフクロウみたいな首の動きを繰り返したかと思ったら、学秀が唐突にその動きを止めた。

 そして、ようやく何が起きたのか、何を言われたのか理解したのからしく。額に青筋を立てながら大声を出した。

 

「はあぁぁぁぁぁっ??!!!」

 

 学秀のこれまで聞いたことがない大声にE組もA組も関係なくビクリと肩を跳ねさせたが、当の本人は俺に詰め寄ってきた。

 

「お、おまっ、お前っ!?言うに事欠いてバカとはなんだバカとは!?」

 

「うっせ、夏祭りの度にハメ外しまくるし、絡んでくる時は大体パリピテンションの癖しやがって!やってることとテンションがレベルの高ぇ頭に比例するみたいにブチ上がってるの正直怖いんだよ!!」

 

「それは転落するお前を誘いやすくするために僕なりに気を使ってたからだろう!?気遣いが分からんのか!?」

 

「嘘こけ!!俺が転落する前からだろうが!1年の1学期の期末試験、俺が2位に落ちる前のプールの授業でブーメランパンツ履いてノリノリでポーズ決めてる奴のどこがパリピじゃないと言うんじゃ?バーカ!!女子が目のやり場に困ってたの気付かなかったか!バーカ!!」

 

 俺の言葉に現A組と元A組の女子が「あー」と表情を引き攣らせながらも、どこか思い出すように同意して頷く。

 けれど、当の本人は女子の方には目が言ってないらしく、どうやら俺の罵倒しか耳に入ってなかった様だ。

 

「に、2回もバカって言った!!今、またバカって言ったな!?くそっ、僕がバカならお前はアホだろう!?たった1回負けたくらいでイジケやがって!!今年の前期中間でも最下位からいきなり51位とかやってたが、そこまで努力できるなら始めからやれと言うんだ、このアホ!!唐突にやる気出したかと思えばいきなり美味しいところを掻っ攫うようなムーブばかりして!!」

 

「ぬぐっ………!?」

 

 学秀の言葉のナイフが刺さる。

 しかし、我が愛すべきクラスメイトたちはと言えば、ヒナや悠馬までもが「確かになぁ」と言いた気に頷いていた。

 

「う、うるせぇ!大体、今回は俺の言うことを粛々と受け入れる約束だろう!?なのに2回もアホ呼ばわりしやがって!」

 

「お前だって3回もバカ呼ばわりしてきただろうが!」

 

「3回じゃねぇ!2回だ!!1回目はそれこそ約束の範疇だろうが!カウントすんなバカ!」

 

「また言った!これで3回目だぞアホ!」

 

「うっせぇバーカ!」

 

「アホ!!」

 

「バカバカバカバカバカバカバカ!」

 

「アホアホアホアホアホアホアホアホ!」

 

「お前の方が1回多くアホ呼ばわりしてんじゃん!!」

 

「一々回数を数えているのか、面倒臭い奴だな!」

 

「お前が言うなバーカ!」

 

「これで回数は五分だな!」

 

 その後もバカとアホの罵倒合戦は続く。

 そんな俺たちに置いてきぼりな連中はというと、各々で好き勝手なことを言い出しやがっていた。

 

「………これが日本有数のエリート進学校。椚ヶ丘学園中等部のトップ同士の口論である」

 

「ちょっ、千葉くん!?そのナレーションはやめてあげて!!」

 

「いや、千葉の言いたいことわかるだろ……。あー、そのなんだ。すまねぇな、うちのファザコンが」

 

「ファザコン!?乃咲くんってE組だとそんな扱いなの!?」

 

「まぁな……。初めこそ不良児として嫌厭されてたけど、今となってはすっかり弄られ役に納まりつつある。けど、まさか、浅野相手にここまでIQが溶けるとは思わなかったけどな」

 

「いや……それを言うなら浅野くんも似た様なものだよ。彼、乃咲くんが絡むと知能にデバフが入るというか……。この前の学園祭の時も、E組に僕らの作戦を暴露して勝利宣言してくると言って聞かなかったんだ。止めるのに苦労……」

 

「あー、榊原?それ、止められてなかったわよ。アイツ、結局E組の教室まで入ってきて高笑いしながら話してたから」

 

「………まじかー」

 

 どうやら、A組にはA組なりにリーダーに対する苦労が溜まっている様だった。んまぁ、それに流される様にE組からも俺に対する苦労みたいなのがポツポツと出始めてるが。

 

「あー、くそっ!罵倒合戦じゃ埒があかねぇ!」

 

「同感だ……!こうなったらもう一度白黒着けるか!」

 

「おっ、なんか話題が進展した?」

 

「んでも、あの2人が白黒着けるってなにで……?

 

「「ゲーセンでな!!」」

 

「仲良しか!?」

 

「エアホッケーとゾンビ撃つアレとメダルゲームで10分で1枚からどんだけ増やせるか対決をしてマリカーで締めだ!」

 

「あぁ、異存ない!!」

 

「いやいや、異存あるだろ。やってること小学生か!しかもなんでマリカーなんだよ、そこはワンガンとかイニDだろ!?」

 

「「あんな速いもん扱い切れれるかぁ!!」」

 

「お前ら息ぴったりかよ!?」

 

「あ、そう言えば最近戦場の絆やってないな。せっかくゲーセン行くし、久しぶりにやるか。店内対戦」

 

「いいな。僕のEz8捌きを見せつけてやる」

 

「はっ、俺のイフ改に勝てるわけねぇだろ」

 

「「「何で車はダメでモビルスーツはOKなんだよ!?」」」

 

 その後、俺と学秀の対決だった筈が、俺たちについて来ていた連中で何故だが再びA組vsE組のゲーセン対決みたいになり、最終的にはカラオケ勝負という話題が女子連中から生えて来て、テストの打ち上げをA組とE組でするみたいに17時くらいまでどんちゃん騒ぎになってしまった。

 

 ちなみに俺と学秀の戦績はと言えば、白星を取ったのはエアホッケーは俺、ゾンビシューティングは学秀、メダルゲームは俺、マリカーは学秀と言った塩梅で引き分けとなってしまった。

 最後の方でやった戦場の絆については、俺と学秀の対決だった筈がA組の強火オタクたちの参戦で連邦とジオンの機体ピックで各作品の見せ場の原作再現をするかのようなマッチになってしまい、オタクとオタクがぶつかり合った結果、学秀とかち合うことはなかったそうな……。

 

 BD1使いの鹿島くんがクソ強かったです……。

 




あとがき

戦場の絆、カムバック……。

そう言えば作中で圭一がゲームネタを使ってるのに具体的にどんなゲームが好きとかやったことなかったと思って、何となく投下してみます。

◾️圭一の好きなゲーム
・アーマード・コア(特に4系)
・ソウルライク系(特にBloodborne)
・ガンダム系(ガンブレ系統、クライマックスUC)
・敵も自分も柔らかいFPS(タイタンフォール2など)
◾️圭一の得意なゲーム
・カービィwiiデラックス(刹那の見切り)
・ファイアーエムブレム
◾️周りから見て圭一が一番上手いゲーム
・ヒットマン

なんというか、好きなゲーム=得意=上手い、じゃないのが自分で書いてて悲しくなりますね……。皆さんから見て圭一はこういうのゲーム得意そうとかあれば教えてください。私がやってみたいです……。

あと、年代的に〜とかは一旦スルーしてください……。何でもします……。

今回もご愛読ありがとうございます!
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