暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!

今回も投下しますのでお付き合いください……と、言いたい所ですが、実は今回の話は自分でも引くほどトンチキというか、しっちゃかめっちゃかになってます。

キチ気解放回というか、キャラ崩壊成分しか含まれていません。
苦手な方はとことん苦手な話だと思うので、今回の話はスルーして頂いた方がいいかもしれません……。ほんと、下ネタが酷いので。

次の話は今回を踏襲してなくても問題ない展開にはなっていますので……。

それでもいいよ〜と覚悟ガンギマリな方……。
どうか最後までお付き合いください……。

いや、ほんと、申し訳ありません……。




156話 起床の時間 ※閲覧注意

 

 柔らかい。そう、今の状況を端的にまとめるならその一言に尽きるだろう。名状し難い柔らかいものが身体に当たっている。それはもうこの世にこれだけ柔らかい物質があるのかと思うほどに柔らかい。マシュマロというのとは違う。だが、温かくて力を加えただけでむにゅりと形を変えるモノが身体に当たっていた。

 

 これはなんだろう。だなんて惚けた思考は訪れない。昨日のことはしっかりと覚えている。

 そう、これはおっぱいである。うん、そう。散々待たせまくった挙句にしっかり返事をする前に同衾をかまし、いざ告白しようとしたら言葉は出ないわ語録が飛び出るわで散々無様な姿を晒しまくった俺を受けいれてくれた恋人の。

 

 いや、なんか、うん。本当にね。申し訳ないよね、うん。

 

 まぁ、色々と反省はしながら今後に活かそう。

 俺たちは今度こそ恋人になった。これまでのやらかしを雪ぐ機会はきっといくらでもあるはずだ。

 

「…………髪、柔らかいな」

 

 目が覚めたのは良いが手持ち無沙汰だった。

 だから、ふと何気なく目の前にあるヒナの頭を撫でてみる。そう言えば夏休みだったり昨日だったり、ヒナに撫でられることは結構あったけど、俺が撫でる側に回るのは珍しい。

 

 女子の髪って柔らかいのな。なんて表現すれば良いのか。ゴワゴワした感じがしない。絡まってもちょっと櫛を入れるだけで解けそう。さらさらしてるというか、ツルツルしてるというか。ザラっとした感じがない。

 

 しばらく撫で続ける。左手で頭を撫でながら、右手で赤ん坊でも寝かしつけるように背中をトントンと軽く叩く。

 

 しかし、こうして彼女の髪に触れているとつい考えてしまう。これってやっぱり手入れの問題なんだろうか。毎日風呂で髪は洗っているが、それでもそれ以上のことはしない。精々毎朝オールバックにセットする時に軽く梳かすくらいだ。

 

「…………俺も手入れとかしたほうがいいんだろうか。あんまり放置し過ぎると禿げるみたいな話だし………」

 

「した方がよくない?せっかく綺麗な銀髪なのに勿体無いよ」

 

「うおっ!?」

 

 独り言だったつもりが、いつの間にか起きていたらしいヒナが顔をこちらに向けてヌルッと話しかけてくる。

 思わず驚き、下がった拍子に後ろが壁だったことを忘れていたせいでゴチンと後頭部を壁にぶつけた。

 

「いっ………てぇっ……!?」

 

「わっ!?大丈夫!?」

 

「大丈夫……。今の部分が将来禿げるだけだ」

 

「相当なダメージだよ!?今ので頭皮死んじゃったの!?」

 

「諸行無常、生える髪あれば抜ける髪あり。破壊と再生こそ世界の真理なれば」

 

「なんで微妙に古風な喋り方してるの?っていうか、その理屈だと死んだ頭皮も再生されるじゃん」

 

 もっともな指摘である。ある程度、頭をさすって痛みも引いた頃、彼女がふわりと浮く様な、少し溶けたような顔と声音で声を掛けてきた。彼女との間に置いた手をスッと握りながら。

 

「さて、おはよ、圭ちゃん」

 

「あぁ、おはよう、ヒナ」

 

 握り返した手は柔らかく、でもマメが硬くなって少しだけ硬い部分もある。ナイフ術クラス3位になるまで努力した痕だと思うとこの硬い部分にも味がある様に思う。俺はこの手が好きだ。

 

「圭ちゃん手、硬いね」

 

「………考えることは同じなんだな」

 

「そりゃそうじゃない?マメが硬くなってる部分が圭ちゃんの頑張った痕なんだよねって思ったらさ。愛着ってのも変だけど、この手は圭ちゃんのだった感じられるもん」

 

「2人揃って手フェチか」

 

「ねぇ、圭ちゃん」

 

「ん?」

 

「レオナルド・ダヴィンチのモナリザって絵あるよね」

 

「え、あ、うん。あるね」

 

「あの絵を画集で見た時なんだけどね。モナリザがヒザの辺りで組んでる手、アレを初めて見た時、なんて言うかその、下品なんだけど……下品だからこの話止めようか」

 

「ええっ!?そこまで言うならしっかりやり通せよ!?ヒナ吉影をやり通せよ!」

 

「やだよ、恥ずかしいもん……」

 

「ヒナ、俺は責任を果たそうとする奴が好きだ」

 

「なっ!?ずるいよ!?」

 

「言ったもん勝ちだよ〜」

 

 あぁ、なんてくだらないやりとりだろう。

 およそ恋人と同衾してする話題ではない。酷い下ネタだし、色気も雰囲気もカケラもあったもんじゃない。

 でも、目が覚めた時に誰かが同じ布団に居てくれて、こうして他愛のないことを起き抜けに話すことが出来る。そして、それがちゃんと好きになった人とやれている。正直に言ってこれ以上に幸せなことがあるだろうか。

 

 ……いや、これで満足してちゃダメなんだろうな。

 

 まだ付き合い始めて2日目。こんな考え方をするには俺は若過ぎるし、ヒナとの関係性だって分厚くない。俺の知らない一面なんてまだまだ沢山あるだろうさ、ヒナが知らない俺の一面だってきっとある。

 でも、そう言った知らない面だったり、幸せだと思える時間を守る為にやらなきゃいけないこともある。

 

「…………顔、また難しいこと考えてるでしょ」

 

「そりゃな。ヒナのおかげで急ぐ必要はないって割り切りは出来た。ポジティブに言えば考えるだけの時間はまだあること、それをするだけの心理的な余裕は出来た。でも、ネガティブに言えば問題を先送りにしたってことだ」

 

「………………殺せんせー、本当に地球を壊したいのかな」

 

「あんなに必死に私たちを守ろうとしてくれてるのに、地球を壊そうとするだなんて矛盾してる気がする。だってそれって私たちを殺そうとするのと同義じゃないかな」

 

 ヒナの疑問。抱くに当然な違和感。

 それに対する答えを俺は持っている。殺せんせーが担任になったすぐ後、彼を問い詰めてその秘密を暴いてしまったから。

 

「………ヒナ」

 

「うん?」

 

 言いたい。言ってしまいたい。好きな子が悩んで、考えている内容の答えを俺は知っている。

 それを彼女に伝えたい。ぶちまけたい。でも、それは殺せんせーとの約束を破るってこと。

 

 正直、俺だけが握ってる情報が多過ぎる。

 もちろん、俺の知らない情報だってきっとまだまだ沢山あるだろう。でも、やっぱり事件の真相にいちばん近い位置にいるのは俺だと思う。少なくとも、あの教室にいる教師陣を除けば。

 

 その情報の重さに潰れそうになることもある。

 今回の暗殺未遂も情報を持ち過ぎたことが発端であることは間違いない。だから、もしも本当に俺が反省しているのなら、今抱えている情報をみんなに話すべきなんだろう。

 

 でもそれは殺せんせーとの約束を破るってこと。もしかすると今回の暗殺未遂を皮切りにみんなも色んなことを考え始めて、俺しか握ってない情報を彼が公開し始めるのも実は秒読みが始まってるのかもしれない。

 けど、それでもそれは俺が約束を破っていい理由にはならないだろう。今はまだ俺しか知らないってだけ。いずれみんなも知ることになる。口惜しいがそれまでは俺1人で握っておこう。

 

「その疑問はそのうち殺せんせーが答えてくれる。だから、それまでは待っていてあげてくれ」

 

「………分かった。でもまた思い詰めちゃダメだからね」

 

「大丈夫、ヒナがいるから」

 

「もう、何の理由にもなってないよ?」

 

 やっぱりというか、彼女は気付いていた。俺が何かを握ってること。もしかすると仲間たちも気付いてるのかもしれない。

 難しいもんだ。恩人との約束か、仲間への義理立てか。そこまで複雑怪奇なことでもないのだろうが、やっぱり割り切れるほど簡単でもない。

 

 これも抱え込んでるって言うのだろうか。

 でも、こう言う考え方を止めちゃいけないと思う。思考停止でその場凌ぎで動き続けることほど身勝手なこともない。しっかり後に繋げられるならその場凌ぎも悪くはないが、その場凌ぎを繰り返すと身動きが取れなくなるだろうから。

 

 なにより、こういう考え方をしてないと落ち着かない。言ってしまえば、これも乃咲圭一らしさなんだろう。そう言うふうにある程度は自分で割り切ろう。

 

「………そろそろ起きるか」

 

「え〜?もう少しこうしてようよ」

 

「魅力的な提案だけど、今日も学校だろ。遅刻しちゃうぞ」

 

「サボる!」

 

「ダメです。病気でもない限り、サボりは許しません」

 

「恋の病!」

 

「やかましい」

 

「いやらしいの間違いじゃない?」

 

「そういう展開にはならなかっただろ」

 

「ならなかったね、色々と覚悟して準備したんだけどなぁ」

 

「…………覚悟してたんだ……」

 

「ビッチ先生がこう言う時に効くのは人肌よ!文字通り体で慰める展開になるがだけどやれるの?生娘には荷が重いかもよ?って念押ししてたからね」

 

「慰めックス寸前だったのか……」

 

「慰めックス言わないの」

 

 ヒナに嗜められながら身体を起こす。

 布団を腰あたりまで捲り、グッと伸びをする。

 

「でもなぁ、なんかタイミング逃した感あるかも」

 

「んー!ん、タイミング?」

 

「そ、タイミング。手を繋ごうとか、キスしたいとか、エッチなこともしてみたいとか。色々と意気込んでみたけど結局出来なくてさ、そのあともズルズルと意気込んでは失敗してって繰り返すうちに引き摺ってさ。避けられてるのかなって思うようになって別れ話に〜ってあるあるらしいんだよね」

 

「難しい話だな………」

 

 タイミングとすれ違い。確かに重要なことだろう。自分がしたいと思ってる時に相手がしたいと思ってるとは限らない。逆もまた然りではあるけど、かと言って相手を気遣って口に出さなくなればすれ違いのきっかけになる。

 ベクトルは違うが、父さんと俺が不仲になったのもそれが原因だった。互いに気遣った結果、自分に興味がないとか、既に自立しているとかそういう勘違いの原因になった。

 

 気遣いや相手を慮ることは関係を良好に保つ上で必要な努力なんだろうけど、気遣いが行き過ぎて遠慮になるとスムーズな意思疎通が出来なくなってしまう。

 遠くから慮ると書いて遠慮と読むが、慮ることから遠ざかるという意味も遠慮には含まれているんじゃないかな。

 

 さて、そうなると伝えるべきだよな。エロいことしていいならいくらでもしたいし、ヒナと色んなことをしてみたいと。

 

「んっ、んぅ………!」

 

 チラリと横にいる彼女に視線を向ける。

 ヒナの声に何となく悩ましい色が混ざっているように感じてしまうのは気のせいだろうか。

 あるいは聞き慣れない声に少し色気を感じてしまっているだけなのか。男の悲しいサガを感じつつ何気なく頭のてっぺんから布団から出ている腰から上まで眺めてみる。

 

 やっぱり可愛いよな、陽菜乃。それこそ俺には勿体無いくらいに。だからこそ大事にしないとと思う反面、俺にしか見せないであろう一面を早く見てみたいと思う獣性が顔を出す。

 

 寝起きの恋人という普通はもっと段階を踏んでから見るであろう姿を見ているとこう、湧き上がってくるものがある。

 しかし、こんな時こそ冷静に。大事にするというのは何も頭ごなしにキスはまだ早い、セックスはもう少し付き合いを重ねてからとそれっぽい理論を並べることではない。でも、こんな無防備な姿に一方的に興奮して襲い掛かるのはナンセンスだろう。

 

 今はヒナの初めて見る姿を脳内フォルダに焼き付けてよう。

 そう思って何となくゾーンに入って彼女を眺める。

 

 身体を起こし、目をキュッと瞑ってググッと左手で右手こどと背筋を引っ張り上げるように伸びをする姿。なんとなく気持ちよさそうな表情と寝起き姿にほっこりしていると、一つ気がついた。気が付いたというか、パンドラの箱を開けてしまった。

 

 ひまわりの花のような彼女に良く似合う薄黄色のパジャマ。昨日散々顔を埋めただけあって控えめながらも確かに"ある"と断言できる彼女の胸のあたり。なにか、浮き出ている。

 

「…………………」

 

「やっぱり寝起きは背伸びするとスッキリするよね」

 

「ソウデスネ」

 

「圭ちゃん……?なんでカタコト?」

 

 思わず抑揚のない声で返事を返すと彼女は首を傾げながら、俺の視線が向いている先を見る。キョトンとしながら首を下に向け、自分の胸に視線を落とし、ヒナが自分のそれをみた瞬間、時間が止まったような気がした。

 

「————」

 

「……………………」

 

「…………………………圭ちゃんのえっち」

 

 両手で自分を抱くように隠す。

 うん、そういえば言っていたっけ。昨日は体で慰めることも視野に入れていたこと、その為の準備と覚悟もしていたこと。

 女子って寝る時、上の下着は付けないの?とか思ったが、もしかするとこれも彼女なりの準備だったのかもしれない。

 

「…………黙ってないでなんとか言ってよ」

 

「オーチンハラショー!」

 

「圭ちゃんのばかぁ!」

 

「じゃなんて反応しろと……」

 

「誰も感想なんて求めてないよ……もっと気の利いた言葉はなかったのかなぁ……!」

 

「はぁ……。これだから素人は困る。あのなぁ、好きな子の乳首が浮き出てるの見て感動しない男はいないんだぞ?これで今日はいい天気ですね、とか言ってみろ。俺はそいつを徹底的に侮蔑する。絶対にだ。好きな子の胸と乳首にはそれだけの価値がある!!否、価値しかない!!」

 

「うわぁ……。これまで控えめだったのに付き合い出した途端に急に下ネタぶち込むようになって来たよ、この人」

 

「俺だって距離を計りかねてるんだよ。好きな子と付き合うのは初めてで、その上に色々とすっ飛ばして同衾した上に昨日散々顔を埋めてた恋人の胸にポッチが浮かんでるんだぞ、寝起きで。これで冷静でいられるほど童貞は強い生き物ではないんだ」

 

「童貞………」

 

「童貞を馬鹿にすんな!?」

 

「馬鹿にしてないけど!?」

 

「俺は色々と事件を経験して思ったよ。自分の身を守れない奴が誰かを守れるはずがないって」

 

「…………身を守るって言うか、操を守ってるよね、それ。そんな後生大事に持ってるもんでもないでしょ。なに無駄にカッコいい言い方してるのかな、この人」

 

「男は誰しも(みかど)だった時期があるもんさね」

 

(わらべ)のね」

 

 ヒナも中々鋭い返しをするよなぁ……。

 

「つか、ベットでする会話じゃないよな、これ」

 

「圭ちゃんが馬鹿なこと言うからでしょ」

 

「好きな子のおっぱいの価値を熱弁しようとしただけだ」

 

「………………………触る?」

 

「触らん!!」

 

「なんでよ!?」

 

「昨日と違って今の俺たちは恋人同士だ。しかし、だが、しかし!そういうのは一度意識して触ってしまったら歯止めが効かなくなるだろう。俺が野獣になるのも時間の問題だ」

 

「そうかな、圭ちゃんってかなり理性強いし……」

 

「それを言うならヒナだってそうだろ。かなり下ネタに寛容だけど、線引きはしっかりしててガードも硬い。いや、硬かったと言うべきか。昨日、おっぱいに顔埋めた後くらいから顔埋められたんだし、触られるくらい……とか吹っ切れ始めてない?」

 

「それは……まぁ、否定出来ないけど。だってそりゃあ顔から火が出そうなくらい恥ずかしいけど、触られるどころか胸に顔を埋められてた訳だし、別に触るくらい今更かも……とか思わなくはないかな。確かに吹っ切れた感はあるかも?」

 

「これで俺まで吹っ切れてみろ、歯止めが効かなくなるぞ」

 

 昨日の夜ですらヤバい場面が結構あった。

 最終的に擽り合いにまで発展してしまった際で、色々と掻き立てられるところを彼女に沢山見せられてしまったから。

 

 ……あ、ヤバい。昨日のこと思い出したり、朝からヒナの刺激が強い姿を見てしまった所為で息子がスタンディングオベーションし始めた。一刻も早くヒナから物理的に距離を取らないと。

 

「まぁ、ふざけるのはここまでにしょっか。じゃないと本当に遅刻しちゃうし」

 

 もぞもぞと布団から出たヒナ。

 

「私は洗面所で着替えて来るから」

 

「はいはい、いってらっしゃ〜い」

 

 俺の願いが通じたのか、ヒナから距離を空けてくれた。

 これで助かったと思った刹那、彼女が不思議そうに俺をみる。

 

「……?圭ちゃん、早く布団から出ないと着替えらんないよ?」

 

「え、あ、うん。えと、布団からまだ出たくなくて」

 

「いや、そんなこと言ってると遅刻するってば、ほら、早く布団から出ようよ!」

 

「あなやっ!?何事なさるんですの!?」

 

 器用に片手で胸を隠しながら布団をググイッと引っ張って来る。このタイミングで引っ剥がされたら言い訳が出来なくなってしまうので俺も程々に対抗する。

 腕力で捩じ伏せることなら容易いが、ヒナに怪我させてしまうかもだし、布団も破れるかもだし。

 

「なんで反応の仕方が少し古いの!?」

 

「古風な話し方を意識しようとおもって」

 

「古風がすぎるでしょ!?あなやって今日日聞かないけど!?いいから早くお布団から出ようよー!」

 

「んあっー!引っ張らないでくださいまし!」

 

 終いには胸を隠すことすら忘れて両手で布団を掴むヒナ。 

 パジャマ自体も余り厚い生地ではないらしく、彼女が動いて布が身体に張り付くような状態になるとやっぱりポッチが浮き出る。もう、色んな意味で辛抱たまらなくなりかねないので白旗を上げる。背に腹は変えられない。

 

「朝勃ち!あ、いや、そっちは一旦治ったか……?とりあえず勃起してるんです!だから布団からは!出られぬ!!」

 

「あさっ……ぼっ……!!?」

 

 俺の言葉に目を白黒させて布団を離すヒナ。

 なんとか難を逃れたかと安堵する。

 

 いや、勃起カミングアウトした時点で逃れられてないと思うが。それでも最悪の事態は回避した。

 

「……ね、ねぇ、圭ちゃん?」

 

 かと、思ったのも束の間だった。ヒナは俺が思った以上に開き直っていたらしく、口をワナワナとさせながらそれでも凄まじい勢いで再び襲い掛かってきた。

 

「私だけ恥ずかしい思いすんの不公平だよ!!おっぱいに顔を埋められて乳首まで見られて!圭ちゃんのも見してー!」

 

「前半はともかく、後半は不可抗力!!しかも乳首は見てない!『あっ、そこにあるのね』って形と位置がわかっただけだ!」

 

「似たようなもんじゃん!!圭ちゃんだって下半身裸で寝てたわけじゃないでしょ!!ズボン履いてて、その上でおっきくなって形がわかるようになってるんだもん。私と条件は一緒だよ!!」

 

 一進一退の攻防は続く。

 

「あなやっ、あなやっ、んあっー!」

 

「変な鳴き声出さないでよ!?」

 

「ヒナの方こそ冷静に考えろ!?この状況で俺が大人しくお前に見せたら、それはそれでかなりヤベェ絵面になるぞ!」

 

「どうして!?」

 

「いいかよく考えろ、今の状況って女子の乳首が服の上から浮き出てるの見ちゃいました、私だけなの恥ずかしいからズボンの上からで良いから勃起してるちんちん見せてよって女子に迫られてる状況だぞ!?俺が大人しく見せたら絶対に見せるだけじゃ収まらない展開になるって!」

 

「ならないように頑張るからっ!」

 

「俺が持ち込むって言ってんの!見られて興奮する趣味はないけど、絶対雰囲気に流されて我慢できなくなるからっ!男子中学生の性欲舐めんな!昨日の比じゃないくらいインモラルな雰囲気になるぞ!?絶対にだ!俺の全てを賭けて断言する!」

 

「流石に考えすぎじゃない?」

 

「よーし、危機感足りてないヒナに男の危険性を教えてやる。いいか、床にペタン座りした状態で恋人のズボン越しの勃起したチンコを見上げるってどんな状況だ!?普通に情事が始まる5秒前だろ、そんなん!そんな状況で色々と好奇心的なものを我慢できるか!?俺は我慢できないね!!こんなテンションで誤魔化してるけど、目の前に乳首が浮き出たパジャマ姿のヒナの胸がありますって状態でまじまじ眺めてたら絶対に触りたくなる!!」

 

「う、うぅ……。想像したら恥ずかしく……」

 

「だろう?」

 

「両手の人差し指を左右にいやらしく振りながら圭ちゃんが徐に私の胸に手を伸ばして————圭ちゃんのえっち」

 

「いや、いくら責任感の塊の様な乃咲くんでも、さすがにヒナの妄想の中でやったことに責任は取れないよ……」

 

「良いではないか、良いではないか〜ってコリコリしながら、圭ちゃんのとっつきを……な、なんてことするの圭ちゃん……!」

 

「俺がドン引きしてもいいか、それ!?え、なに!?俺のちんこパイルバンカーかなんかだと思ってる!?」

 

「でもやること……失敬、ヤることは似たようなもんでしょ?」

 

「ドン引きだよ……。え、なに、これって俺が悪い?俺の好みに合わせようとした結果なの、これ。俺、将来的にヒナに致命の一撃(意味深)をズゥーンって叩き込むことになるの?」

 

「…………しないの?」

 

「…………………………したい」

 

「………………圭ちゃんのむっつりスケベ」

 

「失敬な、オープンスケベだぞ、俺は」

 

「さっきも言ったけどやっぱり、なんか圭ちゃん、いきなりド下ネタ突っ込んでくるようになったよね」

 

「おーおー、斬れ味鋭いブーメランが飛んでるなぁ」

 

「モンハンでウカムの尻尾ブーメランで切る動画あったなぁ」

 

「ほんと守備範囲広いな、お前!?ぶっちゃけ女子の口からとっつきって言葉が出て来る時点でかなりビビってるよ、俺は!」

 

「ムーンライトとか良いよね、月光の聖剣とか設定とか名前の響きにロマンがあると思ったよ」

 

「あ、それは分かる」

 

「圭ちゃんが伝説の暗殺者とかになったら使ってた装備も圭一の聖剣とか言われるようになるのかなぁ」

 

「…………さぁ、どうでしょうねぇ」

 

 一瞬、さっきの会話の流れで圭一の性剣とかいう直球の下ネタをぶち込んでくるかと思って身構えたが、杞憂だったらしい。

 

「今、性剣とか考えたでしょ」

 

「高度な誘導尋問だな!?」

 

 にやっと思惑が上手くいったとでも言わんばかりに笑うヒナに戦慄しながらも攻防は続く。

 

 ちなみに、実は俺が使ってる布団は結構肌触りが良かったりする。むろん、11月となるとそれなりに寒いのでその下に毛布もあるが、俺たちが攻防を繰り広げているのはその肌触りのいい掛け布団だったりするのだ。

 触るとすべすべ、ツルツルと言い換えていいくらいに肌触りがいい。少し厚い時に寝転がると少しひんやりしてて気持ちいい肌触りの布団。

 

 なぜ、こんな情報を出したのかと疑問に思うだろう。

 実を言うと、ヒナのやたらと鋭い下ネタにツッコミを入れながら、昨日の朝からは想像できなかった展開に冷や汗をかいた所為で、指先が湿ってきたのだ。

 

 汗をかくと湿るのは当然だろう。だが、この掛け布団、水が掛かっても染み込むことはなく、多少程度なら水を弾くくらい撥水性がいい。まぁ、何が言いたいかと言うとだ。

 

「あっ」

 

「わっ!?」

 

 ゆびがすべっちゃった!

 

 呆気ない声を出す俺と、短い悲鳴のような声を出しつつも態勢を崩すことなく立っているヒナ。

 俺の身体は彼女との攻防に対応する為に身体の向きを変えていたせいで下半身は毛布から出てしまっている。掛け布団で下半身をガードしていた状態であったわけだ。

 

 そんな状態で布団を引っ剥がされてしまえば……。

 

「……でっ———!?」

 

 テントを張った愚息がこんにちはするわけで。

 

 ヒナの言葉にならない叫びを聞いた気がした。

 




あとがき

反省してます……。
すみませんでした……。
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