暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの評価、感想ありがとうございます!

今回も投下しますのでお付き合いください……!



166話 これからの時間

 

 私にとって、信じられるのは殺せば人は死ぬという事実だけでした。力で勝てない相手は技術で、技術で勝てなければ力で、どちらも強い相手なら人間的魅力で籠絡し、自分の能力と相手を見て合ったチカラで殺し続けました。何年も何年もね。

 

 そうして築き上げた死体の数が1000を越えた辺りから、私は死神と呼ばれる様になりました。自身の戸籍がなく、生年月日も本名ですら分からない私に初めてついた、私だけを示す名前。優しい言葉は相手を殺す為の武器、笑顔は人を欺く為だけに身に付けた擬態でしかなかった。

 

 そんな中、仕事をする中で1人の少年と出会いました。私の技術に憧れたと、私の力が欲しいと弟子入りを志願してきた子供。暗殺現場に彼が居たことに私ですら気付かなかった。だから、その才能を育ててみることにした。自分と同じ能力を持つ人間がもう1人いれば、やれることは増えるからと。

 

 でも駄目でした。人に育てられなかった者が人を育てられるわけもなく。私は、管理することはできても、あの子を本当の意味で見ることが出来なかった。それが、初めての教え子だった彼を追い詰め、私を裏切る結果を招いてしまった。

 

 ……それが、彼女と。雪村あぐりとの出会いのきっかけ。

 

 弟子に裏切られた私は、皆さんにシロと名乗っていた男、本名・柳沢誇太郎が主導する研究所に移送され、そこで生体エネルギーの精製サイクルを加速させることで反物質を生み出す実験の被験体になりました。あぐりは、私の監視員だった。

 

 どうすれば、この女を脱出の為に利用できるか。そんなことを最初は考えていた筈なのに……。アクリル板越しに会話を重ねるうちに、私は彼女に救われていた。反物質によって齎された、人智を越えた力やその副作用である外見的特徴が少しずつ身体に発現し始めているというのに、変わらず、ただ真っ直ぐにこちらを見て、穏やかに笑う。まるで偏見や先入観の存在を感じさせない対等な目で。"見て"もらえる嬉しさを知ったのは、教えてもらったのはこの頃でした。

 

 でも、私は大切なことに何も気付いていなかった。人間ではない別の生き物に変わっていくにつれて、身に付いた尋常ならざるチカラ。私は頭の片隅でそれをどの様に破壊に活かすのかを考えていました。誰かの為に使うなど、考えもしなかった。

 

 ……あぐりと出会って一年が経った日。すなわち、今年の3月12日。彼女は唐突に言いました。今日を私の誕生日にしようと。思えば、その日はずっとソワソワしていた。切り出すタイミングを伺っていたのかもしれません。このネクタイはね、その時にプレゼントとして貰ったものなのです。

 

 ですが、時を同じくして月が蒸発しました。

 理論上、特に問題はなかった。けれど……反物質という人類にとって未知数なモノを利用するにあたって、念のため触手を植え付けたネズミを月に打ち上げ、無人施設で経過観察をしていたのですが、これが正鵠を射ていました。

 

 触手を埋め込まれた生物の反物質生成サイクルには、老化によって不具合が生じる。それが柳沢たちの懸念でしたが、実際、万一に備える為の対策が功を奏し、実験用のネズミを地球上で観察していたのなら、この星が消し飛ぶところでした。

 触手細胞は細胞分裂を終えた瞬間、内部に抱えていた反物質生成サイクルを自然消滅させることなく、サイクルは外へと飛び出してゆき、辺り一面に存在する凡ゆる物質を反物質へと変質させて爆発的に数を増やし、その結果として生じたエネルギーが月の7割を消し飛ばしてしまった。

 

 来年の3月13日。その日が私の暗殺期限と設定されている理由はここまで言えば察することが出来ますね?

 1年前に月が蒸発した翌日、柳沢が計算した私の細胞分裂が止まる日。それが、奇しくも君たちの卒業式と同じ日なのです。

 

 ……当時、それを私に伝えてくれたのはあぐりでした。

 本来、私の危険性を理解した柳沢が秘密裏に部隊を率いて私を殺す筈でした。けれど、月の一件の直後、色々な偶然が重なりました。本当に様々な偶然と、ある種、人として当然の反応が。

 

 柳沢は月の7割の消失という事件と地球滅亡の可能性に驚き、思わず声を上げてしまった。それは、無理のない反応でしょう。それだけの可能性を提示されたなら、声が出てしまうのは当然のことです。

 そして、それを偶然にもあぐりが聞いてしまった。彼女は知ってしまったのです。私に残された時間、地球滅亡の可能性、私がこれから殺されるという現実。この一年、言葉を交わして気心の知れた相手が殺される。そうなれば、なんとかして助けたいと思うのも、それを本人に伝えてしまうのも仕方のないこと。

 

 この中で、唯一間違っていたのは……死神()だけ。

 私は思ってしまったのです。わざわざ私の為に情報を持って来てくれたあぐりの言葉に耳を貸さず、助かる方法はあるのだと、生き残る方法を一緒に考えようと声を掛けてくれた彼女にも構わず、生にしがみつくこともせず、胸中にあったのは好奇心だけ。自分の新しい力で何ができるのか。これだけの力を使わず死ぬのはもったいない。そんな、くだらない好奇心でした。

 

 研究施設を破壊しながら進みました。

 立ち塞がる人間を"処理"しながら進みました。

 力の限り破壊を楽しみながら進んでいました。

 

 私にとって凡ゆるものは障害にすらならなかった。武装した兵士も、柳沢が作り出した触手地雷も、負け惜しみを吐き散らかす柳沢も。私を殺す能力は勿論、止める力などというものを、彼らは当然ながら持ち合わせていなかったのです。

 

 来年には死ぬ。どちらにしても死ぬのなら、ここで死ぬのも、来年地球と共に死ぬのも悪くない。そんな、悟った様な思考を巡らせていた私には見えていなかったのです。凡ゆるものが障害にならなかったからこそ、自分にとっては取るに足らないチカラであっても、他者にとっては致命傷になる可能性があるということも、自分を唯一、助けようとしてくれていた彼女のことも。

 

 彼女だけが、あぐりだけが私を助ける為に動いていた。

 敵意も、殺意も、悪意もなく。故にこそ気付かなかった。見えていなかった。反応が遅れてしまった。

 

 破壊衝動から私を引き戻してくれたのは、後ろから回されたあぐりの手の感触と、その温もりでした。

 声を掛けたくらいでは止まらない。彼女はそう言った。そして、事実として私は言葉だけでは止まらなかったでしょう。あぐりに引き止められ、ハッとした。私を押さえ込んでみせた彼女に視線を向けた瞬間、全てが遅かったことを突きつけられたのです。

 

 私に踏まれて起爆していた触手地雷の一つが、彼女の脇腹を貫いていました。

 貫かれ、吹き飛ばされ、瓦礫の山を転がり落ちていく彼女の身体。咄嗟に飛びついて、抱き止めましたが……あぐりは既に致命傷でした。

 

 全てが遅かった。

 私が全て間違っていた。

 

 彼女がしてくれた様に、彼女のことを"見て"いたら。

 彼女がしてくれた様に、他人を慈しむことができていたら。

 彼女がしてくれた様に、他者に手を差し伸べられていたら。

 

 あと0.1秒早く気付けていれば助けられた。触手を精密に使う訓練をしていれば、医療に、救うことに使うという発想に至っていれば。あぐりを助けることが出来た。決して救えない命ではなかった。

 

 なんとしてでも助けたいと思えた、初めての相手でした。

 

 彼女が、あぐりが私の腕の中で事切れる寸前。キミたちのことを託されました。『もし、残された時間を私にくれるのなら、あの子達を教えてあげて欲しい。あなたと同じ様に、あの子達も暗闇をさ迷っている。まっすぐ見つめてあげれば、きっと答えが見つかるから』と。『あなたなら、きっと素敵な教師になれる』というのがあぐりの最期の言葉でした。

 

 これが、この一年間キミたちが関わっていた事件の真実です。

 

 彼女が託してくれたから。この一年、本気で教師をやろうと思いました。時に間違うことがあるかもしれない。時に冷徹で冷酷な顔が出てしまうことがあるかもしれない。それでも、彼女がやろうとしたことを精一杯やろうと。

 

 顔を合わせる度に常々思っていた、彼女のファッションセンスの無さ。何度もダサいと伝えたけれど、結局最期まで変わらなかった、一見、短所に見える部分も、いつの間にか、それもまたあぐりの持つ長所(みりょく)なのだと気付けたように。短所や欠点であっても、磨き上げれば長所になるのだと教えてあげること。

 それが、私なりの"見る"ということだと思うから。これこそ、私が彼女から受け継いだ教師としての姿勢なのです。

 

 私の教師としての師は雪村先生です。目の前の人をちゃんと見て、対等な人間として尊敬し、一部分の弱さだけで人を判断しない。彼女からそういう教師の在り方を学びました。

 

 それからは皆さんと向き合う為の準備をしました。

 彼女から教わったことと、私が持っていた知識。それらを組み合わせ、自分の能力の限りを尽くし、最高の成長をキミたちにプレゼントすること。その為にはどんなやり方がベストなのか?

 

 その結果、考えて考えて辿り着いたのが暗殺教室です。

 先生自身の残りの命を使って、全力で向き合うこと。

 

 前にも言いましたが、私とキミたちを結びつけたのは暗殺者(アサシン)標的(ターゲット)という絆です。

 暗殺者(アサシン)標的(ターゲット)でなければキミたちと出会うことはできなかったでしょう。単なる元殺し屋の超生物では、キミたちの担任になることはできませんでした。

 暗殺者(アサシン)標的(ターゲット)でなければキミたちが本気で真剣に先生にぶつかってくることもなかった。

 

 だから、この授業(きずな)は殺すことでだけ修了することが出来ます。暗殺者(アサシン)標的(ターゲット)の関係を完遂すること。それが私の望みです。

 

 無関係の殺し屋が先生を殺す、出頭して殺処分される、自殺する、期限を迎えて地球が消滅する。それらの結末で先生の命が終わったのなら、我々の「絆」は卒業の前に終わってしまう。

 

 もし、殺されるのなら。……他の誰でもないキミたちに殺して欲しいものです。それが雪村先生から私に、私からキミたちにバトンを繋ぐことだと信じています。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

 目が覚める。見慣れた天井を見上げ、ゆっくりと身体を起こして伸びをする。もうすっかり寒くなった気温とは対照的に太陽は昇っているらしい。今年はいつ頃、雪が降るだろうか。

 

『おはようございます、乃咲さん』

 

「おはよう、律」

 

 スマホに入ってる律に挨拶を返して立ち上がった。

 

 雪村の触手を取り除いて数日。冬休みに突入したが、今の俺たちには夏休みの時ほどの活気はない。

 でも、そうなってしまうのも無理もないだろう。あの日、俺たちは殺せんせーの秘密を聞いた。俺だけが知っていた情報も、誰も知らなかった情報も全てが開示され、殺せんせーの暗殺教室最期の課題と言える設問が叩きつけられた。

 

 俺たちに殺せんせーを殺せるのか?

 俺たちは殺せんせーを殺して良いのか?

 

 今日の夢は、あの日の殺せんせーからの告白の一部始終だった。雪村先生と初代死神の出会い、別れ、そして俺たちとの出会い。全てが繋がっていたのだ。

 

 今、俺は実家に泊まっていた。実家とは言っても故郷の家ではなく、あくまで椚ヶ丘の俺と父さんの家だけど。

 でも、この家があるのは俺にとって好都合だった。1人になりたい時、思考をまとめたい時にはありがたい環境だ。

 

「…………みんなはどうしてる?」

 

『みなさん考え続けてます。どうするべきなのか、どうしたいのか。殺せんせーとの写真だったり、対先生ナイフを見つめて。みなさん真剣です。本当に真剣です………』

 

「………まぁ、そうだよな」

 

 律から返ってきたみんなの様子を思い浮かべ、思わずベットに深く腰をかけ直したくなる。みんなの気持ちが分かる。

 

『乃咲さんは……思った以上に大丈夫そうですね』

 

「ま、散々悩んだ後だしな。殺せんせーを殺すかどうかは」

 

 まだ悩んでないわけではない。でも、みんな程では無い。

 そこまで口にしてふと、律に声を掛けた。

 

「律にも苦労かけたな。お前、実は聞いてただろ。俺と殺せんせーの話だったり、俺がヒナに話した断片情報も」

 

『………はい。ごめんなさい』

 

「謝んなくていい。むしろありがとうな、みんなに黙っててくれてて。色々と歯痒かっただろう?」

 

『でも、そのおかげで私は今、みなさんのお話を聴く側の立場になれています。きっと、誰に問いかけているわけではなくても。口をついて出てしまった疑問に、本人とは別の視点から意見を出されることで考えが多少なりともまとまることだってあるでしょうから』

 

「お前、本当に変わったよな」

 

『えっへん!』

 

 画面の中で胸を張る律に思わず癒された。

 知っているのは俺だけだと思っていた色々な情報。実のところ、それは俺だけの知識ではなかった。スマホを持って行動していた場面では律も一緒に聞いてくれていて、そして考えてくれていたのだと、今、確信した。

 

 率直に言って心が軽くなった。俺だけが情報を持っていたわけでは無いのだと。同じ話を聞いてくれていた仲間がいるという事実があるだけで心強い。そのことに何となく救われた気がした。

 

『あ、それはそれとして倉橋さんからメッセージ来てますよ。これから行ってもいい?って言ってます』

 

「おkって返しておいて」

 

『……乃咲さん、そう言う一言だけの返信は如何なものかと。いくら倉橋さんが理解あるタイプの人とは言え、愛想を尽かされてもしらないんですからね』

 

「おはよう。待ってるからいつでも来てね。^_−☆」

 

『……はぁ。『おはよう、待ってるぞい。( ̄^ ̄)ゞ』と返信しておきました。彼女がくる前に着替えて下さい』

 

「わざわざ俺の文言を変えた上にため息吐いた理由は……?」

 

『倉橋さんからは『うん、今行くね!^_−☆』だそうです。なんで2人とも最初に使う顔文字が同じなんですか……?』

 

「以心伝心だな」

 

『どちらかと言えば類は友を呼ぶでは?』

 

「そんなに褒めるなよ。照れちゃうだろ」

 

『……………はぁ』

 

 画面がブラックアウトした。どうやら呆れられてしまったらしい。

 律の奴もだいぶ太々しくなったよなぁ。

 

 しみじみと娘の成長を見守る親の様な気分でスマホを眺め、ヒナが来る前に身支度を整える。

 まぁ、一緒に寝たこともあるし、今更な気がするけれど……んでも、恋人だし。流石にだらしない部分を見られるのも恥ずかしいし。軽く掃除でもしておくか。

 

 ゾーンに入って家の掃除を始める。

 トメさんのお陰で埃の類はほとんどなかった。いつもお掃除ありがとうございます、とトメさんがいるであろう我が生家の方に頭を下げつつヒナの到着を待つ。

 

 しばらくするとインターホンが鳴ったので迎えに行き、家に上げる。なんだか、彼女が家にいる状況にも慣れたもんだ。

 

「お邪魔しまーす……」

 

「そんな緊張せんでも。流石に慣れてるでしょうに」

 

「いや、確かに慣れてきてるけどさ。でもやっぱり彼氏の家に2人きりって状況で緊張しない子はいないでしょ」

 

「…………まぁ、仕方ないか」

 

 ちょっと前の同衾を思い出して彼女に釣られて照れる。

 あの日は結局、シなかったけど、ヒナも覚悟していたと言っていたし、俺の行動次第ではお互いに"卒業"していた可能性もあるわけで。そう思うとなんだかこっちまで緊張してしまう。

 

「……あ、ごめんごめん、忘れるところだった。律から聞いたけど圭ちゃんさっき起きたんだよね?朝ごはんって食べた?」

 

「あ、そう言えばまだだったわ。身支度と掃除で満足してた」

 

「マメなんだかズボラなんだか……。ちょっと待っててよ、何か作ってあげようと思って買ってきたんだ」

 

「朝からヒナの手作りか。これはロクな死に方しないな……」

 

「どう言う意味!!?」

 

「幸せでバチが当たるかもって意味」

 

「その時々やたらとワードチョイスが壊滅的になるやつ何とかならない?心臓に悪い発言してることとか結構あるよ……」

 

「この前も抱かしてとか言っちゃったっけか……」

 

「ほんと、カエデちゃんが色々と意味深な言い方ばっかりするから勘違いしちゃったよ。圭ちゃんなら言いかねないのに」

 

 言いながら歩き、コンビニで買ってきたのか食パンとハムやチーズに野菜を取り出す。食材的にサンドイッチだろうか。朝はご飯派だが、今日は別に激しく動き回るつもりはないし、カロリーセーブの意味では有難い。何よりヒナの御手から差し出されるものを感謝の念以外で受け取れるはずがない。

 

 彼女の朝食をwktkしながら待っていると、ヒナが思い出したように『あっ』と声をあげて俺を見た。

 

「カエデちゃんで思い出したけど、そういえば今日からお見舞いに行けるんだよね?」

 

「あぁ。昨日、烏間先生から連絡きてたな」

 

 そう、あの事件から入院して面会謝絶していた雪村の面会が今日から解禁されることになったらしい。

 何処かでお見舞いに行こうとは思っていたが、この分ならヒナを誘って今日にでも見舞いに行っても良いかもな。

 

「ヒナさえ良ければ今日行くか?」

 

「行こ!カエデちゃんも喜ぶよ!」

 

 それはどうだろうか。雪村の奴、あの日の戦闘で相当ハッスルしてたし。18禁スレスレのセリフというか、際どいことばっかり言ってたし。熱に浮かされていたとは言え、あんなセリフを連発していたのだ。もしかしなくても俺と顔を合わせるのは気まずいんじゃないだろうか。

 

 んでも、お見舞いには行きたいし。

 ま、1人で色々と暴走した奴に対するE組の伝統的なイジりということで甘んじて受けてもらおう。俺も散々弄られたし。

 

「見舞いの品は………プリンでいいか」

 

「カエデちゃんにはとりあえずプリンで、とか思ってない?」

 

「思ってるけど……?」

 

「うーん。もっと考えてあげなよーって言うべきなのかな。それはそれとしてプリンは喜ぶだろうし……」

 

 腕を前で組んで首を捻ると、また何か思い出したらしく、ポンと手を打って声を上げた。

 

「あ、そう言えばさ、この前の期末試験の勉強しにきた時にトメさんから特製プリンの作り方を教えてもらったよね。アレとかどうかな。圭ちゃんの家の味とか絶対喜ぶと思うよ!」

 

「え、なんで?」

 

「……………店売りのプリンでも喜んでくれると思うけどさ。手作りの方が気持ちが籠ると思うんだよ。どうかな?」

 

「あ、なるほど。確かにな。手作りの料理って気が滅入ってる時に凄く沁みるし。そうするか」

 

「………………鈍感クソボケばーか」

 

 なぜ、拙者は罵倒されてるのでおじゃるか?

 首を傾げるとヒナはプイッと顔を逸らした。

 

 あれか、恋人であるヒナを差し置いて雪村に手作りプリンを差し入れするのに妬いてくれてるんだろうか。

 え、何それ可愛い。そうか、あの普段は天真爛漫であんまり独占欲的なものを向けてこないヒナがヤキモチ?

 

 え、何それ嬉しい。

 

「折角だし、一緒に作るか」

 

「…………………作る」

 

 プイッとそっぽ向き、頬を膨らませるヒナ。

 彼女が作ってくれたサンドイッチを食べたあと、適度に頬を突いて空気を抜きながら悩んであの日に教わったレシピを再現しながらプリンを作る。

 

 その後、予定が合う連中に声を掛けて雪村の見舞いに行くのだった。

 

 

 

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