暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの評価、感想ありがとうございます!
 
今回も書けましたので投下します。 
最後までお付き合いください……。



169話 これからの時間 4時間目

 

「ちょーい!?圭ちゃん、そのバナナだめぇ!!」

 

「ひっひっひ、良いではないか、良いではないか〜!」

 

「あ〜れ〜!!?」

 

 宣言通りにお泊りセットを持ってやって来たヒナと並んでマリオカート。俺の家である程度、楽しく対戦できるゲームは、携帯ゲーム機かテレビゲームしかない。だから、適当に人生ゲームとか黒髭危機一髪でも買って来ようかと思ったら止められた。

 ヒナもこういうゲーム自体は嫌いではないと言ってくれたので、しばらく動かしてなかったwiiで遊んでいる。

 

 リモコンをハンドルに入れて色んなモードで遊んで見ているが、2人以上でやるのにちょうど良い塩梅だよな、マリカー。

 そんなことを思いながら1位を独走しつつ、たまに真後ろに迫ってくるヒナをバナナで迎撃する。

 

「えぇい!これでも喰らえ〜!!」

 

「ぬおっ!!?」

 

 これでまたしばらく独走かなと思ったら、後ろから飛んでくるバナナ3連発。そして運悪く猛スピードで滑走してくる緑甲羅。滅茶苦茶良い角度で滑って来て、このままでは当たりそうだったので手持ちの最後のバナナを使って防いだが、ヒナの謎に良いバナナエイムが俺を捉えた。

 

 思わずハンドルごと身体を傾けるが、努力虚しく命中した。まぁ、ゴール目前だったこともあり、滑りながらも辛うじてゴールを切ることができたので1位フィニッシュだったが。

 

「あはは、圭ちゃんってこう言うゲームで身体ごと曲がるタイプだったんだね?」

 

「ヒナこそ。ちょいちょい悲鳴を上げながら体でぶつかって来てたじゃないのよ」

 

「私のはワザとだもーん」

 

「え〜?本当にござるか〜?」

 

「本当だもーん」

 

「なら、このゲームやってみんしゃい。これをやって身体が曲がらなかったら認めてあげようじゃないのよ」

 

「なにこれ」

 

「エース・コンバット。杉野から借りてんの。ACはアーマード・コア以外認めんぞ!んでも、エース・コンバットは認めようかな、面白そうだし、メカ好きならハマりそうだし、とか言った時にんじゃ貸してやるからやってみ?って」

 

「ふーん、戦闘機?」

 

「そそ。これ、画面に集中してプレイしてるとマジで身体が曲がる……。低速で飛んでるならマシだけど、高速で飛んでるとターンする時とか、障害物避ける時とかマジで自然と身体が曲がるぞ。1人でやってて恥ずかしくなるくらいに」

 

「あはは、流石に大袈裟でしょ〜」

 

 笑いながらペシペシと肩を叩いてくるヒナ。

 しかし、それから大体20分後くらいのこと。

 

「ちょちょちょっ!!?ここ何処!!って言うか、上下どっち!?ストールって何!?ミサイル来てるのどっから!?雲いつまで続くの!?って山だぁぁぁあ!!?」

 

 上へ下へ、右へ左へ。滅茶苦茶パニクリながらコントローラーをガチャガチャして偶然クルビットを成功させて更に大混乱。雲を抜けた先にあったのは山肌。ヒナはそのまま遥かなる山に向かってΖガンダムの最終回ばりの突撃をしたのであった。

 

「滅茶苦茶体動いてたぞ。ほら、動画」

 

「ちょっ!?撮ってたの!?」

 

 俺が差し出したスマホには悲鳴を上げながら、なんやかんや敵機の後ろに着いて撃ち落としながらも、ドッグファイト中に方向感覚を失って身体ごとコントローラーを動かす大変愛らしいヒナの姿があった。

 

「曲がりたい方向にコントローラーを向けてさ、釣られて体まで傾いて。なお面白いのが、実際にゲームの中の機体が動くよりも先に身体が動いてるから事前に曲がりたい方向が分かるのが可愛かったなぁー」

 

「楽しみ方が意地悪すぎない!?って言うか、この飛行機早すぎるよ!?」

 

「そりゃそうだ。一応は本編で手に入る中で最強って言われてる機体だもん。DLC以外でなら最速じゃない?」

 

「いきなりなんてもの使わせてくれてるの!?」

 

「いや、俺も迷ったんだよ……。そこそこの性能の機体で手に汗握るドッグファイトを楽しんで貰うのがいいか、最高の性能の機体で無双を楽しんで貰うのがいいのか。んで、思い至った。そも、初心者なら基本的に触ってるだけでも楽しいだろうし、早い機体を動かしてる方が身体を動かしてるところ見えるだろうしってことで可愛い陽菜乃が見たいが為にスピードと加速性全振りカスタムしておきました」

 

「い、意地が悪いよ………」

 

「いや、可愛かったぞ。特にコントローラーを右上に掲げながら、身体がそっちに傾いてるところなんて」

 

「わー!わー!聞こえませ〜ん!!」

 

 言いながらコントローラーを無理矢理渡してくる。

 ぐぃ〜っと肩を預けながら。

 

「はい、お手本見して」

 

「続けんの?エスコン」

 

「だって悔しいし」

 

「負けず嫌いか」

 

 コントローラーを受け取り、コンテニュー。チェックポイントまで進んでなかったからコンテニューで初めからできる。

 正直、あんまり上手くないんだよなぁ、このゲーム。プレイ動画でやってるような変態マニューバーとか絶対ムリ。

 

 んでも、いくらゲームとは言え、あんまりカッコ悪いところも見せたくないのでちょっと集中してプレイする。

 ゾーンに入ってコントロールステックを精密に動かし、聴力を強化してアラートを拾い上げ、並列思考でレーダーを常に確認し、ヒナが肩に頭を預けて来てるのであんまり身体を揺らさない様に自分の体の姿勢制御をする。

 

 そうしてプレイすること十数分。なんとかノーダメで最高ランクでクリアできた。途中、ヒナから何回か妨害もあったけど、なんとか乗り越えることができて達成感がある。

 

「うそぉ………」

 

「ドヤァ」

 

「いや、プレイもそうだけど、難易度ハードだったの……?」

 

「…………あっ、やべっ」

 

「…………けーいちゃーん?」

 

「だだ、だって、あたふたしてるヒナが見たかったんだもん!!」

 

「意地悪すぎるでしょ!?」

 

「だぁって……」

 

「だってじゃありません」

 

 プイッとそっぽ向きながら、コントローラーを操作してプレステを切ってしまった。どうやらボーナスタイムは終了したらしい。仕方ない、もっと可愛い所を見れるソフトを考えながら、wiiをもう一回起動させる。

 オーソドックスにゾンビゲーでもするか?それかcallingでもやるか?うーん。ちょうど良い塩梅のホラーが分からないな。あんまり怖がらせ過ぎるのも気が引けるし。

 

 仕方ない、wiiパーティーあたりにしておこう。もしくは、はじめてのwiiとかでスコア対決か。

 驚かし系、心霊系じゃなくて人怖路線で責めるか。ゾーンに入ってTASさんもびっくりな挙動を見せてやる。

 

 wii自体は彼女の家にもあり、どうやら俺が選んだソフトも持っていたようで『これからやったことあるよ!』と意気込んでプレイするヒナ。いきなりやったこともないゲームをやらせてリアクションを楽しむのも俺は楽しかったが、こうやって意気揚々と楽しそうにやってる姿がやっぱり一番かもなぁ……。

 

「タンクやろ、タンク!」

 

「お、自信ありそうだな」

 

「ふっふっ……。実は20面までクリアしたことあるもん!」

 

「おぉっ、それはすげぇ。地味に難しいからな、あれ」

 

「これなら、圭ちゃんに勝てるかも!勝負しよ、勝負!負けたら相手の言うこと、できる範囲で聞くってことで!」

 

「ほぅ……」

 

 これは俄然、やる気が出て来た。

 勝ったらヒナにできる範囲でお願いを聞いて貰えると。ふむふむ。なるほど、よし、本気出しちゃおっかな、わし。

 

「…………え、なに、いまの"興が乗った"みたいな声」

 

「なんでもないお。先手はヒナ氏に譲るぞい、レディファーストってことで。残機全部使った時点で負けでおじゃるよ」

 

「う、うん……。なんか話し方が変……」

 

 困惑しながらプレイするヒナ。

 

 しかしながら、自信あり気に話すだけはあり、途中で何度か死につつ、残機を2残した状態で20面をクリアした。

 

 だが、実はこのゲーム、初回は20面クリアで全面制覇になるが、その後に20面をクリアすると最大でステージが100まで解放される仕様がある。彼女はそれを知らなかったのか、忘れていたのか、21面が始まったときに『……あれ、20面で終わりじゃなかったっけ!?』と焦っていた。

 

 そんな動揺を引きずってしまったのか、30面まではクリアしたけど、続く31面で全ての残機を失った。

 

「う、うぅ……。20面で終わりじゃなかったの……?」

 

「20面をクリアするとその後のプレイで100面まで解放されるんだよ。しかもミッションの内容もランダムだから覚えゲーになりずらいってことで、何年経っても愛好家たちがプレイしてるらしい。本当にこんなのクリア出来んのかよって調べたら、TASさんで理論上25分台でクリアできるらしい」

 

「知らなかった……。っていうか、あれ、私が20面をクリアしても終わらなかったってことは………?」

 

「俺も20面はクリア経験があるってことだな」

 

「もしかして、分の悪い賭けをしたかも……って、ほんとだ。『ミッション100をクリアできるのはあなただけでしょう』って流石にムリだよ!?あれ、でも、マイレコードの一位更新した……?もしかして記録的に私が一位なの?」

 

「あぁ、当時は25面までしかクリアできなかったんだ」

 

「へ、へー。って言うことは、私もチャンスあるってことだよね!?どーしよ、勝ったら何をして貰おっかなぁ〜!」

 

「まぁ、チャンスはあるな。理論上は」

 

 言いながらヒナからコントローラーを受け取る。

 さて、ちょっと本気出しちゃいますか。

 

「デュフ、デュフフフフ………」

 

「私、ちょっと早まったかも……」

 

 ヒナの言葉を聞きながら、ゾーンに入る。

 反則?知ったことか、勝ちゃいいんだよ、勝ちゃぁ!

 

 その後、ゾーンに入り、反射速度と情報処理速度が上がった俺の手によって大体のステージの敵は瞬殺。せめてもの縛りで体の動きは普段通りの速さにしておいたが、ノーミスの29分というタイムで100面をクリアした。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

「ま、負けた……尽く……」

 

「可愛さならダントツだったぞ」

 

「可愛さ勝負じゃないからねぇ……。それはそれとしてもっと可愛いって言ってください。圭素が足りてませーん!」

 

「圭素ってなんぞ?」

 

「圭ちゃんが普段からクラハシウムとか、ヒナイオンとか言うから。私も圭ちゃんから何かしらのエネルギーとか物質を補給した方がいいかなって」

 

「………ヒナのエッチ」

 

「何処が!!?」

 

「仕方ない。ヒナイオンがダメなら、ヒナジャスで」

 

「お店の話してる?イオンとジャスコの話してる!?」

 

「ジャス子って何処の女よ!!!?」

 

「ちがうっ、それ言うなら私のセリフにするべきでしょ!?」

 

「んまぁ、実際、圭素って言うより、圭粒子みたいなのはありそうだよな。殺せんせーの細胞の反物質生成サイクルって元は父さんの細胞内のエネルギー生成効率を上げるって研究がオリジナルだし。俺の強化人間パワーも母さんから受け継いだ遺伝子による圭粒子によるものかも……」

 

「重い、設定が重いよ……」

 

 風呂にも入り(別々に)、晩飯も食べた(ヒナの手作り)あと、俺たちは大して特別なことをするでもなく、俺の部屋でダラダラしていた。ゲームは散々したし、ちょっと趣向を変えて随分前に買ったラノベを読みながらくだらないことを話す。

 最初はそれぞれ椅子やベットに腰掛けていたはずなのに、もう寝巻き姿の緩い空気になっている所為か、いつの間にかベットに並んで転がっていた。

 

 中身のないくだらない話をしてみたり、ただページを捲る音だけが残る静けさが訪れたり。話したいことが出来たらお互いに話題を振って好き勝手に話し、そしてゆっくりと無言になる。

 この空気が俺は好きだ。E組が始まった頃だったら、間違いなく天気の話でもしていただろう。俺も成長したな。

 

「ラノベってさぁ、恋愛要素があると必ず1人は出てくるよねぇ。美少女の幼馴染」

 

「いるなぁ。家が隣だったり、家族絡みの付き合いがあったり、兄妹とか姉弟みたいに育ったから〜とかで滅茶苦茶距離感近い奴な。あるあるだよな」

 

「実際、こんな感じの人っているのかな?」

 

「いるんじゃね。知らんけど」

 

「圭ちゃんにはいなかったの?」

 

「幼馴染は1人いるけどな。男だぞ。たまに文通してる」

 

「文通!!?」

 

「まぁ、あっちの家庭の都合だ。椚ヶ丘に来ることはないからあんまり気にすんな」

 

「そ、そっか……」

 

 目をぱちくりさせながら彼女は頷いた。

 今度、あっちに行く時にでも紹介するか?いや、でもそこまでする必要あるかなぁ。うーん。考えておこう。

 

「んまぁ、でも憧れはするよな、そう言う関係って。今でこそヒナがいるけどさ。朝も起こしに来てくれる超美少女の幼馴染って奴。現実に居たらいたで嫉妬しそうだけど」

 

「そう言うもの?」

 

 話題を変える。恋人とする話でもないだろうが、でも、恋人ができた今だからこそできる話でもあるか。

 

「顔も良くて、性格も良くて、家族で付き合いがあって、昔からの付き合いで〜とかさ。あるあるなのは、距離の近さの所為でお互いに意識してない所からスタートするか、どっちか片方だけ相手を意識してるパターンな」

 

「あー。あるあるだよねぇ。んで、いざ両思いになったら、実はずっと前から相手のことが好きだった〜って」

 

「そんなの現実でやられたら『何だこいつら』ってなるでしょ。それで付き合ってなかったのかよ、的な奴」

 

「あー、まぁね」

 

「んでも、そこまで行くともはやギャルゲーとエロゲーみたいなもんだし、現実にあってたまるかぁ!ともなるけど」

 

「圭ちゃん、ギャルゲーとかエロゲー知ってるの?」

 

「流石にR18版をやったことはないけどな。プレステとかに移植されたエロシーンなしの奴なら何作か」

 

「へぇ、なんか意外かも」

 

「そうかね」

 

「割とね」

 

 意外そうに目を丸めるヒナに苦笑する。

 確かにギャルゲーとかエロゲーとか単語だけで聞くと身構えちゃうよなぁ。俺も最初はそうだったし。

 

「よくある話だけどさ、リトルバスターズってアニメがあるんだ。見てて面白くて、ネットで続編とかあるのかって調べてみたら、原作がエロゲーみたいな話を見つけてさ。実際にエロゲー版もあるらしくて。けど初回版は全年齢版で出てるとか。これを原作=エロゲーに認定していいかは分からないけど、そっからかな。ノベルゲームとかに興味を持ったの」

 

「フロムとガンダムだけじゃなかったんだね」

 

「トメさんには内緒な」

 

 実際、トメさんの目を盗んで買ってたっけ。

 下手にネットで調べられて元々はエロゲーですって知られるのが恥ずかしかったから。

 

「んで、そっからCLANNADとかに手を出して、fateとかに触ってってやってるうちに『あれ、原作がエロゲーとかギャルゲーの作品って色眼鏡を外すと滅茶苦茶面白い話が多いよな』って気が付いたんだ」

 

「あ、聞いたことあるかも、その作品」

 

「気が向いたらアニメでも良いから見てみ?くっそ面白いから。なんなら恋愛ドラマとか漫画より面白いって思う作品もある。ゲームとかでさ、どっちの勢力に付くかって選択肢を選ばされる場面あるだろ?あれを個人単位でやってるだけだ」

 

「そういう見方もあるんだね」

 

「だと思ってるよ。王国に付くから王国ルート、革命軍につくから革命ルート。それを個人名にしたのが謂わゆるギャルゲーだな。ちょっと穿った言い方かもしれないけど」

 

「へぇ〜、そう言われると印象変わるかも」

 

「岡島と竹林も面白い奴知ってるから興味があるなら聞いてみ?面白い作品の情報は共有してるから」

 

「え、圭ちゃんたち学校でそんな話してたの?」

 

「してるぞ?俺と岡島で話してたところに竹林が入って来て、演出が面白いって話をしてたら三村も入って来た」

 

「なんか意外な組み合わせだね……」

 

「割と男子の話なんてこんな感じだぞ」

 

 とは言え、俺たちも他の2人が会話に混ざって来た時はびっくりしたけどな。特に三村が入ってくるとは思わなかった。

 

「じゃあさ、圭ちゃんが今までやったギャルゲーで一番感心したセリフとかある?感動するセリフとか、そうじゃなくてもいいけどさ。面白いなぁって思った言葉とか」

 

「そうだなぁ……。魔王と勇者を育てる現代日本の学校が舞台のゲームがあるんだけどさ。登場人物たちは大抵、何かしらの特殊能力持ってるの。その作品の魔王学校側のヒロインのセリフかな。ある種の箇条書きマジックなんだけどね」

 

「どんなセリフなの?」

 

「正義の味方と悪役の客観視についてのセリフでさ。『正義の味方は、自分の具体的な目標はない、他人の目標や夢を邪魔するのが生き甲斐、いつも何が起きてから動く、常に少人数で行動、いつも怒ってる。悪役役の特徴は世界征服など大きな夢を持ってる、夢の達成の為に新しい兵器や技術の開発を惜しまない、夢に向かって積極的に行動、失敗してもへこたれない、組織で行動、よく笑う。だから、私はそんな悪の組織がいい』みたいなこと言うんだ。本人も決して悪い子ではないんだけどさ」

 

「……確かに。言われてみるとそんな感じするかも」

 

「そう、主人公もそんなリアクションしてた。俺もプレイしたの結構前だからうろ覚えだけどさ。実際、面白い考え方だと思ったよ。ネット調べたら現実でもそんな感じの意見は少なからずあるってのもその時に初めて知ったしな。でも、凄いのは後々にこのヒロインのセリフを主人公が引用するだけどさ。『へこたれるな、大組織で行動するんだろ?なら、俺の組織にお前もいてくれよ。一緒に世界征服しようぜ?』みたいなこと言うんだ。それが告白になって付き合い出すって言うね」

 

 何となく記憶を辿って口を動かす。

 そんなシーンもあったなぁ、と思いながら話しているうちに、ヒナが少し驚いたような顔を見せる。

 それに今になって気が付いて、俺は自分のやらかしに気が付いた。流石に恋人にエロゲーやらギャルゲーの面白さを話すのは間違いだったかもしれない。ミスったよな、これ。

 

「ごめん、ヒナ。流石に嫌だったか?」

 

「え?いや、そうじゃないよ?でも、やっぱり意外かも。圭ちゃん、主人公の告白シーンとかですげぇってなるんだ?」

 

「……んまぁ、多少はね。俺にはない感性だったと言うか。告白の言い回しって別に『好きです』だけじゃないんだなぁとか」

 

「ふ〜ん。圭ちゃんって結構恋愛脳?」

 

「恋愛脳って程ではないと思うけど、まぁ、ある程度一緒にいる男女を見ると『あれ、もしかしてこの2人?』とか思う程度には。んでも、それって普通の感性じゃない?」

 

「うん、普通だとは思うけど……。圭ちゃん、そんな風に思えるのに私たちの好意には全然気付いてくれなかったなぁって」

 

「ご、ごめんなさい……。って、私"たち"?」

 

「要らない部分だけ聞き取らなくてよろしい」

 

「あ、はい……」

 

 ヒナが半目で見てくるので思わず謝る。

 まぁ、そこまで気にすることでもないだろう。

 

「……けど、うん。意外って感想が大きいかな。意外っていうか、意外って思ってることが悔しいって言うか」

 

「悔しい?」

 

「この1年で圭ちゃんのこといっぱい見て来たし、いっぱい知ったと思ってたけど、きっとまだまだ私の知らない引き出しがあるんだろうなぁ〜って。それがちょっとだけ」

 

「それを言うなら俺だってそうだ。普段、どちらかといえばヒナが俺に話題を合わせてくれてるし。ヒナがどんな話題で喜ぶのかとかあんまり分からない。生き物全般の話が好きで、年相応に烏間先生みたいなカッコいい人をいいなぁーって思ってたり、賞金が貰えたら動物園を作りたいって夢見てるくらい」

 

「それ言ったら、私もそうだよ。フロムゲーとガンダムが好き、将来のことはまだ迷ってて何でも屋とか目指そうと思ってたり、いま、新しくギャルゲーとか文字の多いノベルゲーも好きってことを知ったし。好きなことってそんなもんじゃない?」

 

「そうかなぁ……」

 

「そうだよ。でも、まぁ、これら知っていけば良いよね」

 

「ま、そうだな」

 

 ラノベを閉じて、身体を翻して天井を見上げた。

 一方、ヒナは身体ごとこっちに向けていた。

 

 寝巻きの無防備な姿。この姿を知っているのは、彼女の家族か、E組の女子連中以外だと俺だけなんだって思うと嬉しさがある。あるのだが、ちょっとだけ思うところがある。

 付き合って2ヶ月経ってない男女の距離感ではないだろう。それも中学生だぞ。一度、同衾したからか、距離感がバグっている実感はある。我ながら、情けない話だが。

 

 なんとなく、そのまま彼女を見つめる。

 

「……?……あぁ、はい、どーぞ」

 

 そうやって見ていると、彼女は何かを察したように俺に両手を伸ばした。まるでハグを受け入れるかのように。

 あ、いや、違うな。これはような、ではなく、受け入れているのだろう。たぶん、俺がハグを求めてると思ったんだ。

 

 正直に言えば、そんな気はなかった。

 けど、気があることと、したいかどうかは別。彼女がいいのなら、と俺も手を伸ばした。彼女の手の中に収まり、控えめながらも確かにある胸に顔を埋めた。

 

「よしよーし。いらっしゃいませ〜」

 

「くぅーん、くぅーん」

 

「あはは、おっきいわんちゃんだ」

 

 甘える犬のような声を出すとわしゃわしゃされた。

 あぁ、なんか安心する。こうやって、ヒナの胸に顔を埋めて、抱かれていることが凄く安心できて幸せだ。

 

「圭ちゃん、抱きしめられるの好きだよね」

 

「………うん、好きだ。恋人にする話じゃないかもだけど、多分、俺って人一倍、こう言うことに飢えてるかも」

 

「そうかもね。圭ちゃんって、母性に飢えてるって感じはあるかも。でも仕方ないんじゃないかな」

 

「……………いやじゃないか?」

 

「嫌じゃないよ?」

 

「キモくない?」

 

「そんなことないけど!?私が圭ちゃんにキモいって思ったの、カエデちゃんが不機嫌な理由を生理とか考えた時くらいだよ」

 

「ごめんなしゃい……」

 

「あーもう、ガチで深刻じゃない程度に傷付くとすぐに真っ白モードになるんだから……」

 

 呆れたように言いつつ、声は優しい。

 彼女の顔は見えないけど、きっと苦笑しつつも優しくこっちを見てくれているのだろう。

 

「……大丈夫?居心地悪くない?」

 

「あったかい通り越して少し暑いくらいだ」

 

「そうじゃなくてさ、もうちょっと大きい方がいいとか」

 

「前も言ったけど、俺はヒナの胸だからいいんだ。確かにデカいのに夢がないわけじゃないけど。こうして抱かれて、ヒナの心臓の音が聞こえてくる。大きいのに抱かれたことがないから分からないけど、ヒナくらいの大きさだから安心するんじゃないかな」

 

「そっか、ならいいんだけど」

 

 うん。温かくて、柔らかくて、いい匂いがする。

 ヒナの香りは匂い(におい)

 俺の香りは臭い(におい)って感じがする。

 

「……うん、こうしてるのやっぱり好きだなぁ」

 

 この心地よい感覚とパジャマの妙にスベスベしてる感覚が癖になって、思わず頬擦りするように、もっと居心地の良い部分を探して顔を動かす。

 同じ布団にヒナがいて、こうして彼女に身体を預けて、同じように預けられて。物理的な居心地の良さではなく、精神的に心地よくて、思わず頬が緩むのを感じる。

 

「ヒナ、ヒナァ……」

 

「はいはい?」

 

「呼んでるだけ〜」

 

 ぎゅっと背中に回した手に力を入れる。

 幸せで、嬉しくて、本当に居心地だ。瞼がどんどん重くなって、目を瞑ったら寝てしまうような気がする。

 

「………ね、圭ちゃん」

 

「ん〜?」

 

「……さっきの勝負のさ、ご褒美。ここで使わないの?」

 

「…………………まじ?」

 

「………………………まじ」

 

 思わず顔を離す。

 彼女の胸元から見上げるように目を向けると、ヒナは普段の溌剌とした表情の面影を残しつつ、期待を孕んだ目を俺に向かって真っ直ぐに向けていた。

 

 ゲームで勝てたら相手の言うことを無理のない範囲で聞く。

 無理のない範囲で、と保険を掛けていたが、実際にこの縛りは要らないものだと思っていた。俺もヒナが嫌がることはしたくなかっし、ヒナもしないだろうと思っていたから。それでも、もしも本当にやらかしそうになった時にお互いに嫌だと言い出せず、本音を飲み込まないで良いように。

 

 その上で俺が彼女に"お願い"したこと。

 ある意味、ここまでいろんなことに受動的だった俺がせめて自分からやらないと、あるいはやりたいと思った一線。

 

————キスは、俺からしたい。

 

「………………お恥ずかしい……」

 

「今更恥ずかしがらないでよ……」

 

 良いんだろうか。これは、ある種のおねだりだろう。

 こう、俺からキスをするというのはせがまれてからする〜とかじゃなくてせがまれたり、おねだりされるより先に空気を読んでするってことなんじゃないのかなぁ。

 

 んでも、ここで日和ったらまた受動的な奴になっちゃうし。だったら、今からでも求められて受け身になるよりも先にこっちから動いて少しづつ慣れていき、自分から察して動けるように頑張るさ。一歩一歩進んでいこう。

 

 覚悟を決めて顔を上げる。

 俺はぱっと見で分かるくらいに強張った顔をしていたのか、ヒナは一瞬驚いたみたいに目を見開いたあと、目を閉じた。

 

 考えるまでもなく、受け入れ姿勢だ。

 拒んでくるような挙動はなく、むしろ逃がさない時言わんばかりに俺に回っていた手にも力がこもっている。

 

 むろん、逃げるつもりはない。

 ヒナから少しだけ身体を離し、下からよじ登るように、あるいは布団の中で彼女目掛けて迫り上がるように身体を出し、首を伸ばして無防備な唇に触れた。

 

 唇が触れ合って、離れる。

 それは本当に一瞬の出来事で、その柔らかさに驚いて俺の方から唇を思わず離してしまったのが理由だった。

 

 そしてその瞬間。

 

「んむぅ!!?」

 

 彼女の手か俺の後頭部に伸び、引き寄せられた。

 すっとか、ちゅっとか、じゃなくてぶちゅっと行った。

 

「ぷはっ」

 

「んふぅ……」

 

 唇を食べられる様なキス。

 こんな場面で他の女性の名前を出すべきではないのだろうけど、キスに対する躊躇いのなさというか、容赦のなさがビッチ先生の弟子なんだなぁ、とかしみじみ思わされる。

 だから、今度はこっちから同じようにキスをする。ヒナの口を食べるようなヤツを。ヒナが可愛くて何度も。

 

「……これ、思った以上にやばいかも」

 

「あはは……そうだね。唇の感覚がなくなって、でも痺れてるわけじゃなくて。ビッチ先生の言ってること分かっちゃったかも。これ以上は変なスイッチ入っちゃう」

 

「…………だなぁ。なんとなく、ドラマとかでデート終わりにキスするの理解できたわ。これ、キスで終わりにしないとR18展開になっちゃうからだわ」

 

「うん……。ここまでにしよっか」

 

「だなぁ。我慢出来なくなるわ、これ」

 

 キスをやめてぎゅーと今度はヒナが俺の胸に顔を埋めて来た。

 顔を下に向けると、彼女の耳が真っ赤になってるのに気がつく。というか、耳だけでなく、うっすら頸も赤く……。

 

 これ、やばいわ。ベロチューとかしたら絶対に我慢できなくなるヤツ。よし、ヒナに相談して寝る前にキスするのは禁止にしよう。やったとしてもほっぺにチューとかで。

 

 何があるか分からないものだ。意外とギャルゲーとかエロゲーも好きだぞって話しから、お互いに知らない部分がまだまだあるよねぇって話になり、これから知っていけばいいよねぇってなって、ヒナが抱きしめてくれたから甘えて、キスを誘われて。

 

 惜しむべきは俺ら揃ってビッチ先生にファーストキスを持っていかれてるってことだな。まぁ、E組全体に言えることだが。

 

 俺たちはしばらく抱き合って、そろそろまた眠くなって来たなぁとか思い始めた頃。ヒナが口を開いた。

 

「……圭ちゃん、明日はどうするの?」

 

「————俺は」

 

 どうやら甘い時間は終わりのようだ。




あとがき

ちなみに圭一のゲームの腕はストーリー攻略という意味では上手いという部類ですが、ネットとかの対人戦で強いという訳ではない、みたいな感じです。ゾーンに入れば変わりますが、集中の深さ次第ではコントローラーが反応できない速度になって逆に弱くなります。

はじめてのwiiとか懐かしい……。
SDガンダムスカッドハンマーズとか、MS戦線0079とか、マリオストライカーとか、どのくらいの人に通じるでしょうか……。調べて懐かしくなったタイトルをとりあえず挙げてみましたが……。

マリオギャラクシーが好きだったのに、ヌンチャクが壊れてプレイできなくなったのは悲しい思い出です……。

ご愛読ありがとうございます!
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