暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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今回も投下しますのでお付き合いください……!


171話 陽菜乃の時間 2時間目

 

 朝、ベットから体を起こして窓から見上げた景色は変わらず私たちの前に広がっていた。

 快晴とは言い難く、かと言って気が滅入るような曇天でもなく。まぁ、季節相応と言えるような時たま日の差す、まあまあな曇り空。これはこの後も雪が降るかもね。

 

 そんな空の下に広がる雪景色を彼と歩いていた。

 まだ朝もそこそこ早いから、除雪された痕跡もない、真新しい足跡一つない雪道に自分を刻む様に、圭ちゃんは率先して私の前をズボズボと音を立てながら楽しそうに歩いていた。

 

 彼曰く、雪道はあんまり好きじゃないが、雪しかない道は好きらしい。その違いが私にはあまり分からなかったけど、誰かの歩いた雪道は踏み固められて滑り易くて嫌い。誰も歩いてない雪道はあんまり滑らないから好きってニュアンスなのかもね。なんて自分を納得させる。

 まぁ、実際にその通りなのかも。誰も足を踏み入れてない処女雪に足跡を残す横顔は心なしか笑っていた。

 

 その姿は実際の年齢よりも少し幼く見える。普段の姿が同級生の男子たちに比べると大人びてる部分があるからなのか、その印象が強すぎるあまり、好きなゲームとかプラモデルとかおバカな話をする姿にギャップがあった。

 今も靴に着いた雪を飛ばして、数メートル先に落下痕を着けて遊ぶ無邪気な小学生の様な姿はとてもじゃないけど、恩師の命を背負っているようには見えなかった。

 

「圭ちゃん、楽しい?」

 

「うん、割と!」

 

 返事も無邪気だった。

 今にして思えば、話を聞くに夏休み明けまで彼はずっと肩肘を張って生きて来た。親や周囲の期待を背負って、頑張って、そして折れた。折れた後も挫折したことを引きずって好き勝手に振る舞うことは出来なかったんだろう。

 喧嘩はしていたけど、精々がそれだけ。磯貝くんを助ける時のことを除けば、カツアゲとか盗みとか、そう言ったことはしてないんじゃないのかな。

 

 もしかすると、ずっとこんな風にハメを外してはしゃいで遊んでみたかったのかもしれない。

 

 この、一箇所に降り積もった雪の山でもあれば飛び込んでいきそうな勢いの私と同い年の男の子が地球の存亡と恩師の命を握っているなんて誰が思うのか。

 もちろん、圭ちゃんだけが特別な訳じゃない。みんな可能性自体はきっとある。その中でも手を伸ばせば届く位置に殺せんせーの命がある場所まで迫っているのが彼だけという話だ。

 

 マッハ20の超生物を上回る速度で追い詰め、暴走して正気を失った人間を指一本触れることなく無力化する戦闘能力。

 僅かな情報から本質に迫る思考力、それを無数に展開する並列思考、それらを有効に使う体感時間が遅延するほどの集中力。

 

 今、私の目の前で雪にはしゃぐ彼の姿の奥側にはそれだけのチカラが隠れていた。とてもそんな風には見えないけれど。

 それでも、私が知る限り、乃咲圭一という男の子は人類という枠を越えて、地上最強と言っても過言じゃなかった。

 

 もし、そんな彼に弱点があるのだとしたら、良心と良識があることと、なにより、私や家族やE組のみんな、先生たちがそれに該当すると思う。

 死神との戦いで、例え殺したとしても罪に問われないような状況だったのに彼は加減して戦って負けてしまった。

 そして、もしも私たちに危険がある状態なら、彼はきっと守ろうとしてくれるだろう。そういう人だから。でも、その本人が言っていた。俺の力は人を守るのに向かない。むしろ、守ろうとして全力を出したら逆に危険な目に遭わせるだろうと。

 

 だから、もしも彼を倒せるような人がいるとすれば、圭ちゃんの良心を擽り、ある程度実力があって、尚且つ守ろうとする、大切にしようとしてる人。つまりは私たちくらいだろう。

 

 もっとも、そんな展開にならないことを祈ってるけどね。

 

「…………真っ白な雪って美味そうだよな」

 

「ダメだよ?お腹壊しちゃう」

 

「分かってはいるんだけどなぁ。小学生が食べたくなるのもなんとなく分かるというか。ブルーハワイでも掛けたら美味いだろうなぁ、とか思っちゃうのよ」

 

「アレかけたら基本美味しくなるでしょ、アイスなら」

 

「確かにな」

 

 時々、彼は思わず脱力してしまう様なことを言う。

 まるで小学生の様な、と言うか発言は小学生そのものだった。なんか目を離したら本当に食べちゃいそう。

 

「せめてやるなら自然の中の綺麗な空気の奴でやりなよ。都会の雪って空気が汚れてるから本当に汚いんだから」

 

「らしいよな。一方、かなりの標高の山を登ると水は重いし嵩張るから、その辺の雪を溶かして飲み水を確保するんだってさ。烏間先生が言ってた。空気が綺麗だから、念の為に煮沸すれば問題ないって。飲み水確保の重要性を力説してくれたよ」

 

「あー。烏間先生って訓練でナイフ一本で無人島に行ってこいって奴に行ったことあるんだよね?」

 

「訓練なのか趣味なのは危ういところだけどな」

 

「有り得そうだよねぇ。ちなみに圭ちゃんは無人島に何か一個好きなものを持ってて良いならって質問になんて答える?」

 

「全裸で無人島とかじゃないなら、俺は……虫眼鏡かな。もしくは綺麗なペットボトル」

 

「ナイフとかじゃないんだ……?」

 

「ヒナは?無人島に持って行くなら何にする?」

 

「じゃあ、圭ちゃん」 

 

「物扱い!?」

 

「圭ちゃんは私のだもーん」

 

「ぐぬぬ……。俺だってヒナって言いたかったし。でも、無人島に連れてくのは可哀想だから止めただけだし」

 

「あぁー、その理屈ずるい!」

 

 いつの間にか隣に並んでいた彼が、早いもん勝ちだよ〜と言い残して駆けてゆく。とても雪の上を走ってるとは思えないくらいに軽やかな足取りで、動く歩道の上を走ってるかのような速度で、楽しそうに高笑いしながら。

 足取り軽く、雪の積もった山道もまるで障害ではない様に軽快に掛ける恋人の背中を追いかけていると学校に着く。正確に言えば、もっと前に学校自体には着いていた。それでもこんな言い方をしてしまうのは、私たちにとってあの大きくて立派な最新設備モリモリの校舎よりも、こっちの古い校舎の方に思い入れがあるからなのか。陸の孤島と形容したくなる様な白い大地の真ん中にポツンと佇む校舎を見ると不思議な気持ちになる。

 

 そう、ここには先生がいる。

 今、私たちE組の生徒が悩み、考え抜いていることの中心にいる人物。私たちの恩人で、先人で、大好きな人で、殺さなきゃいけない人で、私たちみんなの先生。

 

 思わず足が止まる。この先に彼がいると思うと体が動かなくなった。私は決めたはずだった。私のやりたいことと、圭ちゃんの本心を守るために動く。だから、私も答えは出したはずだった。みんなよりも一足早く、彼と同じく結論を出した。

 なのに、いざ、再び会うことになると思うと足が重く感じる。伝えたいこととか、やりたいことはまだまだ沢山ある。けど、この前聞いた話が脳裏を掠める。彼の過去や雪村先生との関係。殺せんせーの自らの最期に対する願い。

 

 どうするのかは決めた。でも、どう向き合うのかは決められていないと言えばいいのかな。

 

 足跡一つない雪道に自分の痕跡を残しながら歩く圭ちゃんの後ろ姿が遠くに見える。物理的には離れていないのに、手を伸ばせば届く距離なのに、たった一歩が凄く重い。

 

 一歩、また一歩と離れる彼の後ろ姿と足跡が残る雪道。

 まるで今のE組みたい。1人だけ答えをとっくに出していた彼だけが先に行ってる。先に行ってるから、私たちよりも先に多くのことに気付いてる。一歩踏み出せば知ることが出来る多くのことを1人だけ。誰よりも先を歩いてるから。

 

 殺せんせーとどう向き合うのかを決めるために学校に行くと言い出したのは彼だった。まるで、私に付き添いを求めるみたいに『一緒に来てくれる?』と言ってくれたのに、足取りに躊躇いはなかった。付き添いって1人だと勇気が出ないから誰かに頼むことだと思うのに、付き添いを求められたはずの私が尻込みしていた。まるで勇気がないのはこっちの方だった。

 

 今朝の喧騒が懐かしい。

 

 朝起きたら同じベットに彼がいて、彼が作ってくれた朝食を食べて、いろんなことにヤキモキしながら、なんだかんだでイチャイチャして。主に私が騒がしくしてたのかも知れないけど、でも、退屈しないけど穏やかな朝だった。

 

 まだ30分も経ってないはずなのに、随分と前のことの様に感じる。私も彼と同じ様にゾーンに入れる様になったのかな。

 きっと、私以上に今朝の光景を遠くに見ているだろう恋人に向かって手を伸ばす。私がこんなことを考えている間にもきっと前に進んでいるはずで、だから、手を伸ばしても、もうきっと手の届かない距離に居るはずなのに。

 

 雪原が暗く感じる。何処までも白い雪景色が見えるはずだったのに、今では彼が私の前に残した足跡しか見えない。

 あぁ、視野が狭くなってるんだな。なんて冷静な部分が理解する。どうやら、自分で思っていた以上に悩んでたみたい。

 

「ヒナ?」

 

「え?」

 

 宙を彷徨っていた手が握られた。ただ掴まれたのではなく、正面から指の間に指を入れて絡めるみたいに。

 指の間に感じた冷たくて、細くて、なんとなくゴツゴツした彼の指の感触で視界が広がった。眠気が覚めるみたいに、モヤが晴れるみたいに私の視界は明るくなり、いつの間にか私の正面に向き合う様に立っていた彼の顔が写る。

 

「寒かったか?手袋かカイロ持ってくれば良かったな……。すまん、気が利かなかった」

 

 心配そうに私を見て、謝りながら、まるでメガネでも磨く様に繋いだ手を摩る。はぁー、ゴシゴシと息を吹きかけて揉みほぐす様に。摩られた部分がじわじわと温かくなる。

 ちょっとだけくすぐったい。こんな風に息を吹きかけて手を擦るだなんて最近では中々見なくなった暖の取り方だ。

 

 くすぐったいけど、指の先がジンジンと痺れて、チクチクした感覚が襲ってくると同時に指先が温かくなる。

 いつの間にかこんなに冷えていたらしい。そんなに気になる程、寒いとは感じなかったのに。

 

 いや、分かってる。考えているうちに、どんどん血の気が引いていったんだと思う。正直に言えば驚いてる。

 人に向かって思い詰めてるとか指摘して来たけど、実のところ、私も人のこと言えないくらい考え込んでたのかも。

 

 それをまさか、私以上に抱え込み、思い悩み、考え込んでた人に気付かされるなんて。

 

 彼は結構真剣な顔で私の肌を擦ってる。

 ほんのちょっとだけ痛い。でも、なんだか微笑ましく感じてしまうのは何故だろう。さっきまでモヤのかかっていた視界が晴れてゆく。彼が私の手を温めるために擦る度に、目の曇りが拭き取られる様な気分になっていく。

 

「……ヒナ?」

 

「…………なんでもないよ」

 

「そう?なら、早く行こうぜ」

 

 私の顔を見てキョトンとした後、互いの手を繋いだまま振り返って歩き出す彼。前に向かって引かれる力に釣られて歩き出す。何処までも重く感じていた一歩が信じられないくらいに軽くなった。一歩、また一歩。足が嘘みたいに軽い。

 彼の痕跡しかなかった道に私の足跡が刻まれる。彼が歩いて引き返した足跡を眺めながら、手を引かれて歩く。

 

 少しして圭ちゃんの古い足跡も途切れ、今は一歩先を行って新しい跡を残す彼の背中を一歩遅れて追いかけている。

 

 歩き出すとこんなにも軽いのに、歩き出すまでが酷く重たく感じた。今もきっと、彼の手が離れたら立ち止まってしまうかもしれない。引き返すことも、進むことも出来ずに立ち止まってしまうかもしれない。

 

「ぁ……」

 

 そこで気が付いた。

 

 一歩を踏み出す重たさと、それでも踏み出す覚悟。既に自分以外が歩いた足跡があるにも関わらず酷く重たかった足取り。もしも、踏み出そうとしたその先に誰の足跡もなかったのなら、それはきっと今よりもっと重たかったんじゃないのか。

 

 繋いだ手に視線が向き、そこから徐々に顔を上げてゆく。腕から肩へ、肩から背中へ、そして首を登って後頭部へ。

 ここからでは、彼がどんな表情をしているのは見えない。それでも考えられることがあるとすれば、圭ちゃんは今日学校に行くのにどれだけの覚悟を振り絞ったのかということ。

 

 昨日、彼は学校に行くと表明した。それはみんなカルマくんからの電話で聞いていた。だから、私も知っていた。また1人で抱え込んでないのかと心配になって2度目のお泊まりに踏み込んだ。そして、今日一緒に学校に行こうと誘われた。

 実は嬉しかった。誘われた時、ようやく頼って貰えるようになったんだと思って嬉しかったんだ。

 

 でもきっと、彼は私がいなくても学校に来ただろう。

 

 今まで何度も同じ様に1人で先を歩いて来たから。いつも通りに1人で悩んで覚悟を決めて、1人で歩けただろう。

 気付いてしまったのはそこだった。私は一歩目の重たさを知らなかった。最初の一歩を踏み出す覚悟の重たさを、自分なりの結論を出し、みんなに示し、歩き出すことの過酷さを知らなかった。それは、"知ってるから"で通せる覚悟じゃない。

 

 もちろん、彼がそんなことを思ってるかは分からない。でも、実は結構な甘えたがりで抱き締めて、抱き締められてってやり取りが好きな人が何の負担もなしに出来る選択ではないと思う。

 だから、彼は何かある度に追い詰められていたんだ。周りよりも真実を知っていたから、自分しか踏み込むことができない場所があると知っていたから、自分が踏み込むしかなかったから。

 

 そんな意図はないのかもしれない。でも、そういう意味だと頼って貰えないのはある意味で当然だと腑に落ちてしまった。

 だって、私は知らなかったんだから。答えに悩む質問に対して自分なりの解答を準備して歩き出すことの難しさを。

 

 ふと、数ヶ月前のことを思い出す。

 あれは確か、夏休み明けに彼がA組に移籍した直後のこと。倒れるまで無茶をしたことを私たちは心配したし、怒った。その時、人一倍に圭ちゃんへ言葉を投げていた磯貝くんに彼が言った一言。私の思い出す限り、最も彼が声を荒げた瞬間。

 

『————知った様な口を叩くなッッッッ!!!!』

 

 悲鳴の様な、搾り出すような、それでいて暴発したかのような、彼の怒鳴り声。状況はまるっきり違うのに、あの時の声を思い出さずにはいられなかった。

 今にして思えば、彼はどんなことにも自分なりの答えを出しながら歩いて来たのだと思う。

 

 今、私たちの誰よりもまっすぐ歩いているのはその積み重ねじゃないのかな、とつい考える。

 今まで目を背けて来たから、私たちは答えを出せていない。今まで考えて向き合って来たから、彼は答えを持っている。

  

 その上で考えると、自分が滑稽に思えてしまう。

 私はこれまで、彼に対して知った様な口を叩いていたのに自分のしっかりした答えは持っていなかったのでは?と。

 

 何気なく、ここまでの道を振り返る。

 雪に残ってるのは彼と私の足跡だけ。1人だけ先に進んで、答えを見つけて戻って来て、みんなと一緒にもう一度前に進む。それも、足並みを揃えるのではなく、少しだけ彼がみんなの先頭に立ちながら。案内でもするみたいに。

 

 私にはこのE組に続く雪原が今のE組の様に思えた。

 

 私の手を引いて歩く圭ちゃん。少し前まで年不相応に無邪気で幼い様子を見せていた恋人の後ろ姿が今はとても大きく感じる。不思議だ。アンバランスだ。そう感じるくらい、一部の精神的な部分が彼はこの一年で大きく変わった。

 

 きっと、この学校ではない場所でお父さんとの関係を改善できたのなら、彼は普段は年相応に好きなことがあって、男の子らしくプラモデルとかロボットとかに目がなくて、でも甘えられる相手には少し幼さを感じる態度で接するような人になったんじゃないかなって考えてしまう。

 この教室で殺しの技術を学んで自分のチカラを自覚して、責任という言葉を重んじる様になって、彼は一般常識では測ることができない精神的な強さを持ったんだ。

 

 たぶん、それは圭ちゃんだけじゃない。みんな少なからずそう言う部分はある。少なくとも他の学級の同級生たちに比べて、殺すって言葉の意味は重たい意味を持っている。

 

 でも、それでもまずは1人で歩くことを選ぶ人と比べてしまうと孕んでいる重さと意味合いの開きは大きい。

 私はそれでいいのかな?圭一くんの一般常識では測ることのできない強さに甘えて一歩後ろを歩く。それで本当にいいの?

 

 まずは1人で歩いてみて、その後で他の誰かと歩く。それって逆じゃないの?まずはみんなで歩いて、歩き切ることができたら、1人で歩いてみる。それが本来あるべき流れでしょう?

 

 私は散々、圭ちゃんは受動的だと思って来た。特にコミュニケーションとかスキンシップはそう。

 でも、それこそが彼の本当の気質なんだとやっと本当の意味で理解できた気がする。この道を1人で歩くのは、そうするしかないと思っているから。他に選択肢を思い浮かべることが出来てないから。何処まで求めていいのか分からないから。

 

 そういえば、竹ちゃんがこんなことを言っていた。『乃咲には指標がないんだ』と。どうやっていいのか、何処までやればいいのか分からないから、がむしゃらに突き進んでいるのだと。

 

 きっと、暗殺とか重要な場面で無理させない為に圭ちゃんに本来の気質を出してもらう為にも、恋愛とかの方面で自分から能動的に動いて貰うためにも、必要なのは何処までなら求めても良いんだっていう指標なんだ。

 

 なら、それを示すのが私の役目なんじゃない?

 これまでだって積極的に動いて来たつもりではいる。でも、それはどちらかと言えば、彼の隣を歩くという意味ではなく、背中を押すという意味合いの方が強かった。

 

 でも、それじゃあ一歩足らないんだ。

 背中に回って押してあげるんじゃなくて、手を取って一緒に進むか、時に隣から後ろに手を回して押してあげる。そう言う位置どりこそが、彼に必要なんじゃないのかな。

 

 うんん、必要というか、私がそうしたいと思った。

 

 そう思うと足が軽くなった。前に進む足に力が入り、手を引かれて釣られる様に歩いていたら姿勢を正せた。

 なら、あと3歩。1歩目で背中に追いついて、2歩目で隣に並んで、3歩目で少し追い越す。常にみんなの先を彼が歩いてるなら、物理的に1歩前を進むくらいが今はきっとちょうど良い。

 

 少なくとも、この雪原が終わるまで、校舎にたどり着くまではそうしたい。それが私にしか分からない、今後の決意表明だ。

 

「……あれ、ヒナ?」

 

「ふふ、何でもないよ。ほら、早く殺せんせーのとこにいこ!」

 

「あちょっ!?そんな風に手を引っ張られると……!!?」

 

「ふげっ……!?」

 

 勢いに乗って足を進めた。予定通りに1歩で追い付き、2歩で並び、3歩目で追い越した。

 彼の先を歩いて、勢いに乗って4歩目を踏み出した時、勢い余って彼を巻き込んで思いっきり転んでしまった。

 

 持ち前の反射神経とスピードで私を庇う様に下敷きになった彼の顔は楽しそうに笑っていた。

 自分の締まらない決意の歩みは物理的にも企画倒れという意味でも転んでしまったけど、彼の表情と自分らしさに思わず苦笑が漏れてしまった。まだまだこれからだ。

 

 気を取り直して再び歩み出そうとした時、遠くから私たちに気付いて、そしたら2人してすっ転んだ様子を心配して飛んで来た殺せんせーの登場により、決意の再々出発も頓挫したことをおまけとして残しておこう……。




あとがき

うーむ。最近、セリフが多くなりすぎてた様な気がして思いっきり削ってみたら、その分セリフとそれを補完するための他の文も無くなって結構短く出来た……。
んでも、せっかくだし冬休み編をやってみたいから、暗殺のこと以外にも触れさせようとすると、どうしても長文化してしまう……。

ぐぬぬ……。いっそ、日常回は割り切って暗殺に一切触れないのもアリ?いや、そうすると今までの日常と今ある非日常の境目に中学生が立っているって暗殺教室独特の雰囲気がなくなってしまう気がする……。

自分がその辺を表現できてるかはさておき、ちょっと迷走するかもしれません。とっくに迷走気味だろ!というツッコミは生暖かく飲み込んで貰えると嬉しいです……。

塩梅が難しいなぁ……!

ご愛読ありがとうございます!
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