加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!
すみません、今回は普段よりかなり短いです……!
みんな空気はぎこちない。必要に暗殺の話題を避け、殺せんせーと話したり遊んだり、仲間と談笑したり。
各々がそれぞれのやり方で教室の中にいる。冬休み中も登校してこうして担任とクラスメイトと話しているという点を除けば、仲のいい学級の一言で済むだろうこの光景に違和感を覚えるのは、暗殺という単語がないからか。
「狂ったよなぁ、俺の価値観も」
「どういうことだ?」
思わず苦笑しながら頭を掻くと悠馬が首を傾げた。
「担任が超生物のタコってところを除けば、ありふれた仲のいい学級って感じの光景なのに、暗殺って要素がないと違和感を覚えるようになってしまったこと……だな」
「………まぁ、そうだな」
頷いたあと、コイツも腕組みして唸った。
言い淀むような、言葉を選んでいるような雰囲気。しばし見守っていると、言葉が見たかったのか、ゆっくり口を開いた。
「俺はさ、殺せんせーを殺したくない」
「……おう」
「でも、お前の言いたいことも分かるよ」
奴の向ける視線の先にはクラスメイトたち。それぞれのやり方で、同じ教室の中で過ごしている仲間たち。
「みんな、お前の言葉の影響でここにいる。1人で悶々と悩むより、確かに殺せんせーやみんなとの思い出を作りたいし、大事にしたい。でも、暗殺に対する答えが出てないから、誰も仕掛けない。その覚悟ができないでいるんだ」
「ちょっと前までなら、みんなで殺せんせーに襲い掛かってた。みんなで同じ教室に集まって、暗殺っていう同じことをしていた。同じ方を向いていたのに、今は違う」
「同じ教室にいるのに、みんなやってることがバラバラだ。趣味の話をしてる奴、ドラマの話をしてる奴、簡単なボードゲームをしてる奴、先生と駄弁ってる奴、今後のことを話し合ってる奴。本当にそれぞれのやり方で同じ空間で、時間を共有してる」
悠馬は息を吸った。言いづらそうに、それでもはっきりと言うために三拍子くらい使ってたっぷり息を吸って、言葉と共に吸った息を一気に吐き出した。
「これじゃあ、同じ空間で時間を潰してるだけだ」
「………随分とはっきり言ったな」
「じゃあお前は満足してるのか?たまにみんなで雪合戦して、笑いながら服を乾かして、腹が冷えたってトイレに駆け込む岡島と寺坂を眺めて心配しつつも笑って。冬休み前の空気に"似てる"雰囲気で。お前はそれでいいのか?」
「たまに鋭くはっきりしたことを言うよな、お前」
悠馬の言葉は俺の図星を突いていた。
俺はある意味では満足している。みんながこうして集まってくれただけで嬉しいと感じている自分がいる。
同じ方を向いてない。バラバラなことをしているけど、たまにみんなで遊んでバカをやれている。それでいいと思う自分がいると同時に、寂しく思う自分がいるのも確かなことだった。
「たぶんさ、今お前の言葉は正しいんだ。クラスメイトが同じ教室に揃って好きなことをしてる、たまにみんなで遊んで笑い合ってる。それは一般の学生にとっては充分以上に仲のいいクラスの証だと思う。でも、俺たちはもう一般とは言えないし、これ以上の一体感も知ってる。だから、寂しく感じるんだろうな」
「………だな」
「また前と同じ空気感になる方法は一つだけ。みんなで同じ方を向くこと。でも、向くことができる方向は2つある。殺すか、殺さないか。その答えを出せずにみんな悩んでる。違うか?」
「違わねぇだろうなぁ………」
「だろ?だからこそ、難しい話題だよな」
「倫理と心情というか人情的に殺したくないってのが正解だ。でも、この教室の中では殺すという答えも正解の一つだ。誰が間違ってるとかじゃない。一般的に間違ってるとされる殺しを世界の首脳から望まれてるし、他でもない殺せんせーが俺たちの手でって言ってるからかそ、考えた末の選択に間違いという行き先は存在しない。厄介な話しだ」
「それでも、強いて言うなら。このまま悩んで時間を浪費してしまうこと。悩んでる時間は決して無駄ではないけど、答えを出せずに尻込みし続けることこそが間違いってのが圭一、お前の考えなんだろ?」
「理解ある親友を持てて何よりだ」
「なかなか相談してこない奴が親友だからな」
「相談ならしたろ?この前、みんなの前で」
「あれは相談じゃなくて報告っつーか、宣言だバカ」
おお、悠馬にバカ呼びされたぞ。新鮮だ。
まぁ、なんだ。実際に彼の言う通りではある。どちらが間違ってるとかではなく、どっちも正しいから難しいんだ。
「………この際だ。みんなで腹割って話すか?」
「それでもいいけど……どうやって?正直、それは冬休み明けにしようかと思ってたんだけど」
「結論を出すタイミングはそうして、あくまで途中経過っていうかさ。自分1人で考えててと埒が明かないのだって事実だろ?だから、意見交換じゃないけどさ、周りがどんな風に考えてるのかとか」
「それは……良い考えだと思うけど」
「具体的には……そうだなぁ。いきなり全員でって言ってもかなり難しいだろうし、人数を分けるか?」
悠馬と腕を組んで教室の端からみんなを見渡しながら唸っていると、片岡が俺たちに気付いたらしく、近付いてきた。
「どうしたの、2人とも」
「じつはかくかくしかじかでさ」
「……なるほどねぇ」
「今ので通じるのか、すげぇなうちの学級委員!?」
まさかのかくかくしかじかで意思疎通を果たした悠馬と片岡。前々から思ってたが、息ぴったりだよな、この2人。
いや、片岡が悠馬のことを憎からず思ってるというか、懸想してるのは知っていたけどさ。
「それで?結局どういうこと?」
「通じてないんかーい!?」
前言撤回、以心伝心なんてなかった!
というか、流石に付き合ってもない奴らに以心伝心を求める方が酷というものか。俺ですらヒナが何を考えてるかなんて全てお見通し!なんて出来ないしな、ごく一部の思考以外は。
対照的にヒナは俺の考えてることとかズバズバ見抜いてるみたいな言い方で迫ってくることが多いけど。
「まぁ、簡単に言うと人数を分けて腹割って話そうぜってことよ。1人で悩み続けるのも限界があるしな。圭一のいうような後悔をしない為にもそれが良いんじゃないかって」
「……なるほどね、私は良いと思うな」
だが、これはあくまで俺と悠馬の考えでしかない。片岡も良いって言ってくれたけど、それでも俺らだけで話を進めるのはどうなのかと躊躇ってしまうな。みんなを教室に来させる段階で相当な我儘を言ってしまったし。
「よし、そうと決まればやるか。人数分けは……この際、男子と女子で分けるか?」
「人数的にはそれでちょうど良いかな。あとはやっぱりアドバイザーというか、進行役みたいなのは欲しい。例えば……もう既に自分なりの答えを出してる人、とかね」
片岡と悠馬が俺の方を見てくる。
正直、荷が重いと思う。女子の方はヒナに任せて良いと思う。でも、こればっかりは流石に押し付けられないな。言い出しっぺの法則。俺が始めたことなんだから、俺がやり切ろう。
「場所はどうする?どんくらい時間が掛かるか分からないし、そんな長時間、喫茶店とかにこの人数で居座るのもな……。店側に申し訳ないし、相応に金も掛かるだろ」
「そこはネックよね……。学校……は今、そんな込み入った話を長時間するには寒すぎるし、流石に許可出ないでしょ。先生同伴なら別かもだけど、その先生をどうする?って話し合いだしね」
「烏間先生を付き合わせるのは申し訳ないし、部下の人たちに至ってはこの学校の先生って形ですらないから無理だろ。ビッチ先生は……こう言う時は頼りになりそうだけど、今回の話は俺たちが結論を出さなきゃいけないからな。あまり頼みたくない」
2人して同じポーズで首を傾げて唸っている。
まぁ、やっぱり場所問題は大事だよなぁ。なら、ここは人肌脱ぐか。幸い、家主が長期出張で不在の男子中学生が1人しかいない一軒家がある訳だしな。溜まり場にはもってこいだろう。
「なら、俺の家はどうだ?冬休み中はじいちゃんたちの家じゃなくて、もともと父さんと住んでた家にいるんだ。家政婦のトメさんは時期的に俺たちの実家の方の保全に行ってるし、溜まり場にはできるぜ。寝袋と飯持ち込みなら泊まりも出来る。まぁ、女子連中は嫌じゃなければって枕詞がつくけど」
「男子連中はそれで問題ないと思う。女子はどうだろうな……」
「別に気にしないんじゃない?乃咲くん、変なことしないだろうし、何より陽菜乃もいるし。っていうか、女子ばっかりの空間に男子1人だけ突っ込まれて変な気を起こせるほど肝っ玉据わってないでしょ」
「悠馬、これは信頼なんだろうか、バカにされてるだろうか」
「両方じゃないか?たぶん、きっとおそらく……」
なんとも曖昧な返事である。
しかし、うちりのリーダー2人は俺の家で文句はないらしい。まぁ、そこに信頼と信用があると捉えましょう。
「よし、みんな聞いてくれ!」
良い加減、俺と悠馬と片岡がコソコソ話しているのも目立って来たのかクラスメイトたちの注目を集めていたらしい。悠馬が教壇に立ってみんなに呼びかけるまでもなく、視線は集まっていた。
「もし良かったら、腹を割って話さないか?」
それぞれのやり方で時間を過ごしていたみんなが今日、ようやく同じ反応を見せた。それは動揺という形では現れたけれど、でも、悠馬の言葉に否定的な意見はなく、なんとなく、みんなが同じ方向に歩き出すための一歩を踏み出したような気がした。
「お邪魔しまーす……」
「うわっ、乃咲の家ってなんか新鮮だわ」
「俺としても新鮮だよ、客がいるの」
3年E組腹を割って話そうの会。それは、悠馬や片岡と相談した次の日に早速開催されることになった。
最初は女子禁制の男子会である。まぁ、とは言っても議事録を取るとのことで律が俺のスマホから参加してるけど。
「何気にレアイベントだぞ。この家に来るのは。今のところは学秀とヒナしか知らないからな」
「へぇ、倉橋は来たことあるんだな」
にまぁ〜っとした笑みが連中から向けられた。
このあと、どんな質問が来るかは分かり切ってる。
「んで、どこまで行った?っていうかイったか?」
「イってはいない。同じ布団で寝るのは何度かしてるけど。誓って手は出してない。まぁ、顔を埋めたことはあるが」
「おお……。あの圭一が女子と………。なんか感慨深い」
「乃咲クン相手だと保護者っぽい視点になるよね、磯貝」
「なんだかんだであとで合流したイトナ以外だと圭一が一番クラスに馴染むのに時間が掛かったような気がするからな」
「え、そうかな。一番最初の合同暗殺あたりから割とみんなの中心にジワジワ食い込んで来てなかった?」
「指揮官的ポジションで見ればそうだったけどよ、俺は磯貝の言うことも分かるぜ。乃咲の本音とか聞けるようになったのは夏休み明けだしな?その後もちょいちょいコイツしか持ってない情報があって、それも口止めされてるから言えなくて〜って感じで近いんだけどなんか距離ある感じあったし」
カルマの苦笑に悠馬がしみじみと呟き、前原が同意して、寺坂までもが俺のこれまでを振り返り『あぁ〜』と納得。
俺としては結構馴染んでいたつもりだったけど、確かに言われてみると周りにはまだ言えないことってのが多かったから確かに俺1人で考えて、たまにヒナに寄り掛からせて貰ったりしたけど、やっぱり周りに言えないからって気張ってたこともあったから、彼らの言葉を否定できなかった。
「ま、なんだ。腹を割って話すのは晩飯の後にしようぜ。圭一と倉橋のデート結果の聴取以外だとこうして男子だけでじっくり集まるのはイトナのラジコン戦車以来だろ?」
「確かに磯貝の言う通りだな。この際だ、今後の暗殺について腹を割るのは飯の後!それまでは別の意味で色々と腹を割ろうぜ。修学旅行の時みてぇにまだお互いの知らねぇ部分が知れるかもだろ?男子会ってことで好き勝手やろうぜ!」
「好き勝手やんのはいいけど、掃除は手伝えよ?」
「「「「うぃーっす」」」」
悠馬が空気を作り、前原が援護射撃。やっぱり幼馴染というかこう言う時の2人は息ぴったりだ。
俺がやりたいことを提示して、悠馬や片岡がみんなをまとめて空気を作り、ヒナに前原や岡野や岡島あたりが援護射撃してそれを盛り上げる。やっぱりこれがE組の流れに合ってると思う。
なんとなく、組織図のような形にするのなら。
ボスのカルマ、リーダーの悠馬、ムードメーカーの前原たち、参謀として俺がいるって形になるのかもしれない。
まぁ、それでも全部ボスやリーダーに任せるつもりはない。発起人だから、飯食ったあとは俺が仕切るくらいのつもりでいないと。みんなにも申し訳ないしな。
「なら、一旦家に戻るかなぁ。DSとかPSP持ってかないと」
「Vita持ってるヤツいる?ガンブレでもやろうぜ」
「なら俺は遊戯王だな、カード持ってるやつは持ってこいよ?」
「カードゲームと言ったらデュエマだろ、デッキ何個かあるし、この際ルール知らないヤツいるなら教えるからやろうぜ!」
「いやいや、バトスピを忘れんなよ?」
「バトスピかぁ……『ライフで受ける!』くらいしかしか知らねぇや。ちょうど良いから教えてくれよ」
「シンプルなトランプもあった方が楽しいよな」
「あ、それくらいならこの家にもあるぞ」
「なぁなぁ、乃咲!テスト前に言ってたBloodborne?やらしてくれよ!ずっと気になってたんだけど、やってみてから買いたいっつーか。この際、おすすめのゲーム一通りやらせてくれ」
「久しぶりにPSPgoでも引っ張り出すか」
「なんでそんなレアもん持ってんだよ、イトナ」
「乃咲、そこのDVDプレイヤー借りてもいいかい?良い機会だ。みんなにアニメの一つや二つでも布教しようかと」
「おーおー!好きに過ごせや野郎ども!」
なんか、部屋がしっちゃかめっちゃかになる未来が見えた気がしたが、それはそれで楽しそうだし。ま、いっか。
我が家に足を踏み入れて早々に行動が2パターンに分かれた。遊び道具を取りに戻ったヤツと実は初めから持ってきていたヤツ。まぁ、目的は同じだし別に良いだろう。
和気藹々とした男子会が始まる……。
あとがき
はい、あとがきです。
みなさんは体調大丈夫ですか?実は私、偏頭痛持ちでして……最近は頭痛が酷いです……泣。インフルとかも流行ってきたのでどうかご自愛ください……!
今回は短くてすみません……!
今回もご愛読ありがとうございます!