暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!

今回も投下しますのでお付き合いください……!
……明日、11月1日ってま?IFルート全然書き上がってないんですが……。遅れたら申し訳ありません……!!


177話 男子会の時間 2時間目

 

「単刀直入に聞くけど、2人はさ、殺せんせーに死んで欲しいわけじゃないんだよね?」

 

 2巡目、渚がカードを切りながら口にした。

 単刀直入に俺たちの意思を確認するように。

 

「俺はそうだな。カルマは?」

 

「俺もだね。っていうか、この教室にそんな奴いないでしょ。その質問、流石に無神経すぎない?」

 

「カルマの言いたいことも分かるけど、大事な部分だから流してくれよ。俺も渚も分かってはいるんだ。でもさ、根本的にみんなが抱えてる思いは同じだってのは確認したいだろ?」

 

 悠馬が切る。彼が切ったのはダイヤの2。これに勝てるカードは俺の手元にはない。だからパスを選択した。

 他のみんなも同じだった。悠馬に順番が再度回ってきて、再び彼が口を開いた。俺とカルマを見つめながら。

 

「殺せんせーに死んで欲しい訳じゃない。その部分が共通してるなら、話し合いは成立する。共通してないなら会話にすらならないからな。まだ、みんなの意思を統一するチャンスがあるってことだ」

 

 悠馬がダイヤの4を出す。だから、こっちもハートの5を出して順番を回しながら口を開いた。

 

「確かにそれは不可能じゃない。殺せんせーを殺すか、生かすか。どちらを選ぶにもみんなで一丸になる必要がある。でも、こんな場を設けておいてなんだけどさ、相当に難しいことだぞ」

 

「だね。考えてることは同じだけど、向いてる方向は違う」

 

「でもさ、それって始発点は同じでしょ。方向は違くても原点で繋がってるんだからきっと同じ方を向けると思う」

 

「だから話し合いたいんだ。圭一だって殺すべきだって主張してるけど、それを押し通すつもりはないんだろ?だからこうして話し合いの場を作ろうとしたし、自分単独でも成し遂げられる暗殺をみんなでやろうとしてる」

 

 悠馬の言葉に手を止める。

 そうだ。俺はやろうと思えばいつでも終わらせられるのだ。この一年を、暗殺という始発点から始まった、これまでの時間を依頼完了という形で終わらせることはできる。

 でも、俺1人じゃダメだ。俺たちはみんなが殺せんせーの生徒だ。殺すべきと主張しても、それを押し付けたくはない。みんなにはみんなの考え方があって、俺の独り善がりになりたくはない。そのくらい、俺はこいつらが好きだ。

 

 だからこそ、分かって欲しい。

 あっちだってきっと同じ気持ちだ。殺したくない、殺せんせーに生きていて欲しい。だから助けたい。みんなで、みんなの力を合わせて殺せんせーを助ける方法を探したい。

 

 気持ちは分かる。みんな同じだろう。

 その気持ちを間違いだとは思わない。でも、それは現実味が無さすぎる。それはただ、漠然とした願いでしかない。

 

「そうだ。否定しない。俺は叶うならみんなで同じ方向を向きたい。だから、この際だからハッキリ聞くぞ。殺せんせーを助けるってどうやるんだ?」

 

 クラブのキングを出した。カルマは俺がカードを出すとほぼ同時にパスを宣言して、渚と悠馬に順番を譲った。

 まるで、お前たちの意見を聞かせて見ろ、と言わんばかりにカードではなく、2人に向かって視線を向けた。

 

「わからない。でも、それをみんなで探したいんだよ。これまでだって無理だと思う場面はたくさんあった。でも、みんなで乗り越えてこられた。絶対に殺せない先生だから、殺せんせー。そう名付けられたあの人にも、僕らの刃は何度か届き掛けてる。教室が始まった頃よりも強くなった僕らなら、きっと出来るよ!」

 

 渚がエースを出した。悠馬はパスした。彼の言葉に同意したのか、シンプルに出せるカードがないのか、彼に対する反論をしてみせろと俺に順番を譲ったのか。その真意はわからない。

 

 でも、俺だって言いたいことならある。だから、手元にあったハートの2を場に出して言葉を紡いだ。

 

「言いたいことは分かる、気持ちも伝わってる。でも、渚。お前が言ってることには何一つとして具体性がない。みんなでなら何とかできるって気持ちは否定しない。でも現実を見ろ。それで何とかなるほど世の中は甘くない。その意見、お前が言われる立場なら納得するか?」

 

「それは……」

 

「俺たちはあくまでも依頼されてる側だ。殺せんせーがこのE組にいるから暗殺という舞台に上がれてるだけ。政府は殺せんせーを殺すための計画は水面下で進めてるだろう。俺たちはある種の時間稼ぎに過ぎない可能性だってある。そんな俺たちが暗殺を放棄したら?最悪、先生と関わることすら出来なくなるぞ」

 

「…………確かに……乃咲の推測はあり得る話だ」

 

「でもよぉ、悲観し過ぎじゃないのか?」

 

 外側から俺たちのゲームと会話を見守っていた仲間たちから納得の声が上がった。ただ、全てが納得してる訳ではない。俺の言葉はある種の極論だとする声もちらほらと出てきた。

 

「渚、お前の助けたい気持ちは分かる。何度も言うが、それは否定しない。でもな。今のお前の主張はただの夢想だ」

 

「夢想……?」

 

「現実味のない荒唐無稽な想像が妄想、現実的にあり得ないフィクションのような想像が空想、漠然とした目標はあるけど道筋が立ってないのが夢想、そしてそんな夢想を現実にする為の道筋が立っている理にかなった想像が理想だ。助けたいばかりで道筋が一つもないお前の主張は理想ではなく、夢想だろう?」

 

 俺の言葉に渚がカチンと来たようで目付きが鋭くなる。

 このままでは確かに俺が渚を煽ってるだけだ。

 

 だから、自分なりの理屈を並べる。

 

「仮に竹林や奥田さんが助けたいと主張したとする。それなら俺も夢想だなんて言わないさ。彼らは俺たち以上に医学とか専門分野に精通してる。そんな彼らがある程度の理屈と理論を持って助けたいって主張するなら、それに賭けてみたいって思ったさ。でも、お前はどうだ?殺せんせーを助けるのに必要な知識を何か、一つでも持ち合わせてるか?」

 

「仮に俺たちが助ける方向に舵を切ったとしよう、仮に俺たちが暗殺を放棄するのを政府が見逃してくれたとしよう。それで、具体的にどこを探す?何を探す?どうやって調べる?調べるのに使う期間は?本当に見つかるのか?」

 

「…………」

 

「何も答えられないだろ、だから夢想なんだ。だから俺は殺す方を選んだ。できればみんなで同じ気持ちで実行したい。でも、俺1人でも達成できるから。確実で、可能な限り殺せんせーと一緒にいられる方法だからだ。殺せんせーが殺されるなら俺たちにって望んでるからだ。暗殺で始まった一年を暗殺で終わらせることが俺たちの成長を証明することに繋がると信じてるからだ」

 

 再び俺に順番が回ってきた。今度はもう一度様子を見る為に手持ちで一番弱いカードを切る。

 カルマが俺の出したヤツより1つだけ数字が上のカードを切って再び渚に発言権を譲るように手番を回した。

 

「……分かってる。乃咲の意見は正論だと思う。確かにそれに比べて僕のは先生を助けたいって漠然とした気持ちでしかないのかもしれない。でも、それでも乃咲の言葉は、僕には『絶対に殺さなきゃいけない、絶対に殺したい』って気持ちが篭ってないと思う。『助ける方法がないから、見つからないから、見つかるか分からないから。だから、仕方なく殺す』ってそんな風に聞こえる。僕にはそれが、それが諦めに見える……!」

 

「乃咲らしくないって、そう思う。カルマくんだって前に言ってたじゃん。乃咲クンの怖いところは手持ちの手札で最大打点を出してくるところだって!なら、まだ諦めるには早いと思う!確かにまだ道筋は立ってないけど、でも、まだ気付いてないだけで色んなヒントがあるかもしれない!」

 

「弱点がないように見える強敵の殺し方、難しい問題の解き方。それだってこの教室で僕らが殺せんせーから教わってきた事だよ!確かに殺せんせーは殺されるなら僕らにって言ってた。でも、それは殺せんせー自身が助かることを諦めてるってこと。ならっ、そんな先生を助けること、先生自身ができないって思ってることを僕らが成し遂げること!それだって、僕らが成長した証明になるって思うんだ……!!」

 

 彼の言葉尻が口を開くたびに強くなる。

 渚は普段、自己主張というものをあまりしない。周りに流されるというのは悪様に言い過ぎだが、それでも周りに合わせて、サポートに回ることが多い。そんなコイツから発せられた力強い主張は、少なからず周囲の人間の心を打つ。

 

「これは……俺もよく分からなくなってきた。何が正しいんだ……?」

 

「正しい、間違ってるの話じゃねぇだろ。"どっちも正しい"。だから俺らは答えを見つけられてねぇんだろうが」

 

「乃咲の主張は理にかなってる。何処までも現実的で、俺たちが殺すことを受け入れれば……殺せんせーと最後まで思い出を作りながら一緒にいられるし、先生の願いを叶えることができる」

 

「渚の主張は全体的にフワッとしてる。立ってる道筋があるとすれば、ひとまずみんなで結束するってことくらい。でも、最良を目指そうって主張だ。みんな殺せんせーには生きてて欲しいって部分は共通してるんだから」

 

「乃咲は最善、渚は最良。根幹は共通してるのに、結論は180度逆を向いてるなんてな。こんなの、やっぱり簡単に答えを出せる問題じゃねぇよ……!!」

 

「俺は………乃咲の言うことも分かるけど、やっぱり殺したくねぇよ……!これからも俺たちがどんな風に成長するのか見てて欲しいし、困ったとき、嬉しかったとき、やっぱり先生に話をしたい……!」

 

「杉野………」

 

「………これからどんな風に成長……か」

 

「岡島?」

 

「俺さ、いや、俺たちって言った方が良いかな。裏方で暗殺の準備したりしてる奴。菅谷と三村も同じ気持ちだと思うけど……殺せんせーの暗殺って、俺たちにとっては卒業制作なんだ」

 

「………だな。俺もそうだと思う」

 

「そうだな……否定しねぇよ」

 

「卒業する俺たちから、1年間、いろんなことを教えてくれた殺せんせーへのお礼。これだけ成長できたんだぜって証明。殺せんせーだけじゃねぇ、烏間先生とかビッチ先生だって暗殺の為に、俺たちのために色んなことをしてくれたし、教えてくれた人たちへの。だから、暗殺を成功って俺たちの最高の作品を見て欲しい。ずっとそう思ってた……」

 

「………あぁ」

 

「でもよ、分かんなくなってきちまった。俺はこれからも芸術関係で生きていきたいって漠然と考えてる。そういう将来のことを考えたらさ、中学校の卒業制作が人生最高の作品でした、なんて言いたくねぇよ……!それって中学の頃の自分をいつまでも超えられないってことだろ……俺はもっとすげぇもんを作りてぇ!もっとすげぇもん作ってさ、いつか先生を驚かせてぇよ!『あの頃よりも成長しましたねぇ』って言って貰いてぇよ……!!」

 

「岡島……」

 

「岡島のいうことも分かるぜ……。それに渚の言ってた、殺せんせーが諦めた部分を俺たちの手で成し遂げる。それが俺たちの成長の証明になるっての、俺は気に入った。乃咲の言ってることも理解できるけど、俺は殺したくない……」

 

 杉野、岡島、前原が殺したくないと思い始めたらしい。

 こうしてみんな少しづつでも答えを持ち始めることが出来たのなら、この場を設けた甲斐があった。

 

 俺の主張は変わらない。みんなで殺したい。

 でも、それはそれとして、仲間たちが自分なりの答えを持って主張をし始めたことが嬉しかった。

 

 まぁ、ある程度仕方ないとは言え、自分の意見と反対のことを言われると多少なりとも俺を否定されてるようで複雑な気分になってしまうけどな。

 

「乃咲、きっとまだ方法はあるはずだよ。前にキミが『俺が殺せる可能性が一番ある。その俺が殺しを降りるって、殺したいって思ってる奴らからしたら、納得できないんじゃないか』って言ってたよね。カルマくんがみんなに聞かせてくれた」

 

「言ったな、そんなこと」

 

「確かに間違ってないと思う。でも、僕からしたら乃咲は殺せる可能性が一番高いのと同時に助けられるかもしれない可能性が一番高い人だって思う。僕らよりも何十倍も考えるのが早くて、その上で乃咲博士ってすごい人がお父さんにいる」

 

「そうだな、実際その通りだろう」

 

「僕は、乃咲が助けられる可能性を諦める方が納得できない。一番、僕らの中で助けられる可能性が高いんだから」

 

 渚はそう言いながらカードを切った。

 たった一枚、それでいて最強のカード。

 

「僕が思う乃咲はコレだよ」

 

「JOKER、ね」

 

「乃咲は色んな意味で切り札だよ。暗殺でも、勉強でも、殺せんせーを助ける方面でも。絶対に必要な力だ。最強のカード、キミにピッタリな評価じゃないかな」

 

 渚がそういうと、悠馬に番が回るが、JOKERを倒せるカードは一枚しかない。そしてそれは俺の手元にもそれはない。必然的にパスすることになる。ともなれば、カルマに番が回る。

 

 俺も、悠馬も持っていないのであれば、カルマと渚の手元にあるのだろう。そんな考察とも言えない思考を巡らせていると案の定、俺の隣で面白くなさそうな顔をしてるカルマが動いた。

 

「乃咲クンがJOKERなら、渚くんはこれじゃない?」

 

 そう言ってカルマが出したのはスペードの3。

 ローカルルールではあるが、JOKERを唯一殺せるカード。最強ではないし、それ以外は殺すことができない。最弱ではあるが、全く役に立たないことはない。弱者が強者を殺すことができる力を持っているかもしれないという意味で、大富豪における、俺たち3年E組を体現したかのようなカードだ。

 

「俺としてはね、異論ないよ。実際、このファザコンは最強だしね。でもさ、俺から見た渚くんはスペードの3。喧嘩が強い訳じゃない、勉強ができるわけじゃない、特別手先が器用って訳じゃない。でも、暗殺って一分野だけで見ればクラスの中で最強。それ、自覚してない訳?」

 

「それは……」

 

「ぶっちゃけ、渚くんの言うことも分かるよ。論理だけなら筋が通ってると思う。でもさ、キミがそれ言うの?渚くんが言っちゃうと『お前が言うな』って案件になるって思わないかな?今の反応、自覚してんでしょ?」

 

「……」

 

「黙り決め込むワケ?なんとか言いなよ。乃咲クンが全分野で最強なら、渚くんは暗殺って分野では最高。俺としては乃咲クンが暗殺を続けたいって言うより、渚くんが暗殺を止めたいって言う方が納得いかないな?」

 

「カルマ……」

 

「渚くんさぁ、自分が言ってるのブーメランになってること気付いてる?乃咲クンが助ける方面に動かないことが納得できない。それは殺せんせーを助けたいって思ってる連中も同じ。でも、俺みたいな殺したい派からしたら殺しの才能で卓抜してる渚くんが暗殺をやめようとするのが納得できない」

 

「自分を棚上げすんの止めなよ。それって合コンに言って自分が一番可愛いって理解してる奴が『こんなことやめよーよ!』って言ってるのと同じじゃない?」

 

「そんなつもりは………」

 

「ないんだろうね、余計にタチが悪い。渚くんには渚くんの主張があるように、乃咲クンには乃咲クンの主張がある。でも、やっぱり俺は乃咲クン派。理解はするけど納得いかないんだよ、お前の理屈。更に言うなら腹が立つ」

 

「っ……」

 

「何のためにタコがこれまで暗殺できる空気を作ってきたと思ってんの?こんな空気になってクラスがバラバラにならないように、希望があるかも分からないことを探して時間を浪費する。そんなの先生が望んでるわけないじゃん」

 

「なんで乃咲クンが助ける方向に舵を切ってないと思ってんの?先生の意思を少なからず汲んでるからじゃん。それでも心情的に殺せんせーを助けたいって言う奴は出てくる。んで、それは大多数になるかもしれない。それでも殺したいって思う奴はきっと出てくる」

 

「……」

 

「そういう奴が殺したいって言いやすい空気を作る為じゃん。なのに殺しって分野では乃咲クンと同等の渚くんが殺したくないとか。俺からしたら何言ってんのって思うんだけど?」

 

「…………まぁ、実際そうだわな」

 

「その上、言うに事欠いて乃咲クンの主張全否定?」

 

「ち、違うっ!」

 

「なにが違うのさ?乃咲クンはひたすらに現実的なことを言ってる、渚くんの助けたいって主張にも理解は示してるし、その上で方法を聞いてる。これってさ、具体的な内容があるなら……最悪、折れても良いって聞こえる。どう?実際は」

 

「……そうだな。俺が一番問題だと思ってるのは、あるかも分からないことを期限も当てもなく探して時間を浪費して、殺せんせーを助けられない、殺せもしないって展開だ。逆に言えば……確実な方法があるなら、心情的には助けたいさ。そんな方法があるなら、だけどな」

 

 そう、本心で言えばそこなのだ。

 俺も殺す一辺倒という訳じゃない。渚や殺したくないと言った連中の気持ちも分かるし、理解もできる。だけど、これはトライアンドエラーという訳にはいかない。だから、確実な方法がないのなら、折れる訳にはいかない。

 

 何も果たせないのは誰も望まない。

 だから、だから、この一線は譲れない。

 

 もちろん、殺すべきという主張で俺が言った、殺すことこそ成長を見せつける何よりの手段というのも本音だが。

 

「それに対して渚くんは?乃咲クンの意見に納得できない、殺せんせーを助けたい、具体的なことは何も決めてません。逆にそれで俺らに納得しろっての?」

 

「それは流石に悪く言い過ぎなんじゃねぇの?」

 

「んじゃ反論してみなよ。感情論じゃなくて俺らを捩じ伏せられる正論、理屈でさ」

 

 カルマの言葉に渚は口を閉じた。

 

 正直に言えば、今のカルマは言い過ぎだ。

 でも、止めるつもりはない。彼の言葉は何一つとして間違いではない。渚の意見は間違いじゃない、だが、道筋がないと言う意味で中身がない。

 そして、『殺す助ける』その能力が云々という話に関しては、俺も思う。渚、お前に納得いかない云々を言われる筋合いはない。いや、気持ちは分かるけどな。

 

 俺にとっては、お前はスペードの3じゃない。渚こそがJOKERだろう。自分はトランプというカードにおいて最大の数値である13、つまりはキングだ。俺は最強でも、最高でもない。俺は最大のカードと言うべきだろう。

 

 ……なにより、カルマは多分、俺のために言ってる。

 奴はこの一年で人を見るようになった。その上でおそらく、雪村の見舞いに行った日に俺が言ったことを気にかけている。

 

 だから、俺の理屈と渚の主張を合わせて考えて、その上で自分自身の考えを振り返った結果、渚の言葉が許せないのだろう。

 見るからにカルマはイラついていた。浮かべられている薄ら笑いを隠すことなく、目は一切笑っていない。

 

「まぁ待て、2人とも。今回の話はどっちが間違ってるとか、正しいとか、そんな話じゃないだろ?」

 

「っ……磯貝くん」

 

「………そだね、ごめん。冷静さを欠いた」

 

 それでも、こう言う時に統率を取れるのが悠馬だ。

 俺にもこいつと同じ動きができれば良いんだがな。

 

「別にいいさ。それだけ熱意があるってことだ。それに、正直言えば俺も揺らいでる。こんな言い方したくないけど、派閥でいえば、殺したくない派だ。でも、圭一もカルマの言うことも分かる」

 

「渚、お前だって2人の言ってることは分かるんだろ?だからムキになっちまうんだ。理屈が通ってるからこそ、その理屈が助ける方向に向いていないことに焦ってる。ましてうちのクラスでも能力がトップレベルで高い2人だからだ。2人も助けたいって言ってくれたら心強いのにって」

 

「………うん」

 

「圭一とカルマも同じだ。渚の言うことは分かる、気持ちも理解してる。だけど、能力が高いからこそ考えてしまう。先生の気持ち、現実的な話、あり得るかもしれない最悪の結末。辛い部分だよな。人一倍、周りを見ようとするようになったお前らだから、選んだ奴の気持ち、今後するかもしれない思い、そう言う部分に目を向けて、最善を尽くそうとしてる」

 

「………お前、小っ恥ずかしいこと言うな」

 

「ほんと……まあ、磯貝らしいけどね」

 

「茶化すなよ……。んでも、なんつーかさ。俺はが一丸になるのに必要なことは分かった気がする」

 

 悠馬は俺とカルマ、そして最後に渚に目を向けた。

 

「理屈として強いのは殺す派だ。何処までも現実的だから。もしも、それでもら助けたいって主張を通すなら。俺たちは示さないといけない。具体的な方法、もしくは圭一たちに可能性を感じさせるだけの何かを」

 

「……うん」

 

 渚が頷いた。

 

 彼の言葉は的を得ていたと思う。

 悠馬の言う通りだろう。俺たちの主張を変えるには、殺せんせーを助けられる希望や可能性を示して貰わなければならない。決して絵空事ではないのだと。それを目指した結果、何もできないなんて不幸な結果にはならないのだと。

 

 同時に俺たちも理解して貰わないといけない。

 主張だけではどうにもならない現実。俺たちだって殺せんせーが憎い訳じゃない。ぶっ殺してやるぜ、あのタコ!とかそんな感情なんてあろうはずが無い。それでも現実的か考えれば殺すべきだと考えたんだと。

 

 大富豪は最終的に俺、カルマ、悠馬、渚と言った順位で決着した。まあ、会話を進める為の手を選んでいたのだから、この順位は飾りだな。

 とは言え、勝ちは勝ちだ。素直に喜んでおこう。

 

「殺せんせーの気持ちを慮って、その上で理屈や筋を通そうとするなら……殺せんせーを殺さないと」

 

「理屈や筋は甘いけど、でも、本心に素直になるなら、殺せんせーを助けたいって主張になる。自分の気持ちを通す為に必要なこと。やり方を考える力をこの教室で学んだ。だから、助けたいって思うことも間違いじゃない」

 

「殺せんせーを殺すなら割り切る覚悟が必要で」

 

「殺せんせーを助けるなら、不可能を押し倒す覚悟が必要か」

 

 クラスメイトの数人が頭を抱えた。

 悶絶するように息を深く吸って、そして吐き出した。

 

「む、難しすぎる………!!」

 

 それはみんなの気持ちを代弁していた。

 俺だって、そう思う。

 

「……でも、何となく掴めたような気がする」

 

「……………答えを出すには生半可な覚悟じゃダメなんだな」

 

「どっちの言い分も理解できるからなぁ。これは話が堂々巡りになりそうだ。と言うか、既になりかけてる」

 

「話がループしちまうのも仕方ないぜ……。んで、この後はどっちの言ってることも分かるからって続いてまたループだ。共感し合うだけの中身のない会話ってか、お互いに共感できる部分ばっかりだからこうなっちまう」

 

「そうなんだよなぁ……。理屈で考えるなら乃咲、感情で考えるなら渚。でも、渚の方に理屈がないって言えばそれは違うと思うし、乃咲の方に感情がないのだって絶対に違う」

 

「そして気が付けば、どっちが正しいのかって考えちまう」

 

 今の世の中でこんなことを言ったら男女差別と言われるかも知れないが、男と女の違いを表したこんな言葉がある。男は理屈、女は感情で判断する生き物。だとか。

 今の男連中の会話を聞いていると、この言葉もあながち間違いではないのだと思ってしまう。だって、結局は殺したいか、殺したくないかで答えればいいのに、俺たちはそこに理屈を付けようとしている。ある種、合理性を求めて自分の意見を正当化しようとしている。

 

 そういう意味で、殺したいか、殺したくないか。それを問われている場で素直に殺したくないと主張してから理屈を立てて道筋を探そうとしてる渚より、理屈を出してから感情を後出ししている俺やカルマの方が場に適さない発言をしてるのかも知れない。

 

「やっぱりどうしてもそう言う方向に考えちまうよな。でもさ、みんな素直になろう。今回の趣旨は腹を割って話すこと。正しいかどうか考えちまうのもわかるけど、一番話したいのは自分がどうしたいのかだ」

 

「……悠馬の言う通りだ。渚にあんだけ理屈を語っておいてどの口がって思うかもしれないけど。みんな思ってることを言って良いんだ。殺したい、殺したくない、まだ決まってない、こんな風に悩んでる。それを吐き出そう。俺たちの今までの会話はあくまで俺たちはこんな風に思ってるって言い合ってるだけのモデルケースの一つだ」

 

「俺と圭一、カルマと渚の言ってたことが全てじゃない。俺たちを基準に考えなくていい。こんな考え方もある。その程度でいいんだ。この場で結論を出す訳じゃない。仮にこの場で自分なりの考えを言って、あとからやっぱり〜って意見を変えても誰も責めないからさ」

 

 俺たちの会話は朝まで続いた。誰も寝落ちすることなく、俺はこう思う、こんな風に感じてる。そんな会話がずっと。

 ただ、カルマと渚はその後、互いに言葉を交わすことはなく。何処かツンケンした態度になっていた。

 

 俺は手段を間違えたのだろうか。俺が最初に理屈を切り出さなければ、2人はこんな空気にならなかったのだろうか?

 そう思うと気が重たい。今日の夜は女子達の話し合いに進行役というか、仲介人として参加することになっている。

 

 本当は女子達にこの家を貸して、俺は祖父母の家に行って電話で参加と思っていたのだが、流石にそれは申し訳ないというか、家主不在の方が気になるとのことで俺も直接的に参加することになってしまってるから。

 

 男子達の中でも自分なりの答えを出せた奴はやはり少ないようで、男子会はみんな腕組みして首を傾げながら解散となった。

 

 さて、この後は女子会に混ざって第二ラウンドだ。

 

「なぁ、悠馬。悪いけど女子会の方にも参加してくれないか。さすがに俺1人だと荷が重いというか、女子の中に俺1人って状況にしないでくれ………心細い、怖い、気不味い……」

 

「お前な……いや、気持ちは分かるけどさ。仕方ない、片岡に連絡するからちょっと待ってろ」

 

「持つべきものは学級委員長だな」

 

「そこは親友って言うところじゃないのか?」

 

「持つべきものは学級委員長やってる親友だわ」

 

「学級委員長って肩書は必須なのな……」

 

 泣きついた甲斐あって、悠馬が頷いてくれた。

 よかった。これでヒナ以外に頼れる相手のいない気不味い我が家で過ごす〜なんて結末にはならなそうだ。

 

 安堵の息を吐きながら、次の話し合いではもっと上手くまとめられるように頑張らないと、なんて気合を入れ直すのだった。

 




あとかぎ

はい、後書きです。
また体調を崩しかけております……泣
皆さんも体調には気を付けてください……。

それはそれとして、最近、YouTubeくんが私に身に覚えのない動画をおすすめしてくるんですが………どういうメカニズムなんですかね?

以下、ここ最近目を引いたあなたへのおすすめピックアップ
・お猿のジョージ魂が震える名言ランキング
・「こいつは何を見てるんだ?」と困惑させる為の動画
・阿波踊りするデオキシス
・弥助やないかい
・コイキングが魅せる……?極楽浄土
・絶対に笑ってはいけないルビコン
・管理者ひろゆきシリーズ
・AC6万歳エディション
・大丈夫だ問題ない(笑い×感動)

……YouTubeくん、俺をなんだと思ってんねん。

ご愛読ありがとうございます!
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