暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!

今回も投下しますのでお付き合いください……!


181話 0.1%の時間

 

「さっき、渚たちが来てたよ」

 

「知ってる。気配があった」

 

「………気配とか、そういうレベルなのね」

 

 雪村のお見舞いに来た俺は、買ってきたプリンを手渡し、椅子に座る。レジ袋の中を見て破顔すると、中からプリンと貰ってきたスプーンを二つ取り出し、1セット、俺に渡して来た。

 

「一緒に食べよ、折角だし」

 

「………なら、お言葉に甘えて」

 

 鼻歌混じりに蓋とスプーンの包装を破き、美味しそうに食べる姿を見ていると、本当に体調面での心配はなさそうだと安心する。彼女にならって俺も一口食べて、頷く。うん、うまい。

 しばらく無言でプリンを突き、いつの間にか2人食べ終わる。今日のプリンは大当たりだった。帰りにヒナにも買って帰ろ。

 

「そう言えば陽菜乃ちゃんは?」

 

「誘ったんだけど、家に残ってる。女子会で使ったところを掃除してるから〜ってさ。俺も一緒にやるって言ったんだけどな。有無を言わさぬ笑顔で断られた」

 

「あはは……そっか」

 

 彼女から空になった容器とスプーンを受け取り、一応の匂い対策として袋に入れてから口を結んで捨てる。

 ヒナとのやりとりを話してみると、結構想像がついてしまったのか、雪村は乾いた笑いを浮かべていた。

 

 さて、一旦話が止まる。そうなると自然と次の話題は、今のE組が抱える問題について。殺せんせーの暗殺と殺すか、殺さないか。そういう内容にシフトする。

 

「ね、乃咲。何度も聞かれて辟易してるかもだけどさ。やっぱり、殺せんせーを助けるのは難しい?」

 

「……俺は無理だと思う。渚たちとも話したんだろ?律の議事録も見た上で。なら、そこに書いてあるのが俺の意見だ」

 

「……………ま、そうだよね。でもさ、言い方には気を付けた方がいいよ、やっぱり。折角色々考えてるのに、言い方がキツいと損するのは乃咲だよ?」

 

「分かってはいるんだけどなぁ……。だから、女子会の時は予めキツい言い方することは警告したわけで。でも………うん、やっぱり、辟易してるんだろうなぁ」

 

「それは……みんなが質問してくるだけだから?似たような内容の問答ばっかりでやっぱり疲れる?」

 

 雪村の真剣な顔と声音。その質問が単にこっちを気遣い、仲間を心配してるだけのものじゃないと何となく感じ取って答える。話を逸らすのは違う気がした。

 

「否定はしない。殺せんせーを殺すって覚悟を決めて暗殺を仕掛けるまでに俺は散々考えて来たから。だから、みんなより認識してる問題の数は多い自負はある。最近になって考え始めたみんながそういう部分にまだ気付いてないのも仕方ないと思う。でも、このだけの話……少し、疲れてはいる」

 

「…………」

 

「俺自身、殺せんせーを助ける方法についてはお手上げなんだ」

 

「……みんなに相談しないの?」

 

「相談しても無駄というか、どうにか出来る問題じゃないだろ」

 

「乃咲から見て、みんなの能力が低いから……?」

 

 雪村の質問。その一言で、俺の言葉選びがみんなにそう思ってるという印象を与えていたのかもしれない可能性に思い至る。

 個人的にはそんなつもりはない。だが、確かに思うところがないわけではないから真っ向から否定できない。

 

 さて、なんて言うべきか。

 

「勘違いしないでね、責めてるわけでも問いただしたいんじゃないんだ。でも、乃咲だって吐き出したいことあるでしょ?殺せんせーを助けたくないって思われてるかもしれないって不安はない?自分だって好き好んで諦めたわけじゃないのにって」

 

「……雪村も、ヒナみたいなことを言うのな」

 

 参った。これは気を遣われてる。また抱え込んで1人で突っ走ってぶっ倒れるみたいな展開にならないように。

 でも、まぁ、ありがたい話だと思う。カルマは俺の意見に賛成してくれてる。悠馬も俺の話を聞いてくれる。だけど、少し話しずらい部分もあった。これから俺が吐き出そうとしてるのは、愚痴とか文句とかそう言った類いのものだ。

 

 そう言ったものを、すでに自分の答えを持ってる奴らに聞かせてしまうと、少なからず、思考が片寄ってしまう。こいつの言う通りだ、アイツらは考えなしだ。こいつの言うことは違う、俺たちだって考えてる。そんな同調と反発は望んでない。

 

「……病人に聞かせる話じゃないぞ?」

 

「もうすぐ退院だもん。それに、乃咲は私を助けてくれたじゃん。だから、私も助けたい。吐き出せるなら吐き出して欲しいかな。アンタの話で、私の気持ちを変えたりはしないから」

 

「……」

 

 そう、本当にありがたい気遣いだ。

 でも、それでも、今の彼女に話すのは違う。

 

「ありがとう、気持ちは本当に嬉しい。だけど、今は話せない」

 

「……………また、溜め込んで暴走しない?」

 

「ついこの前、暴走した人に言われてもねぇ?」

 

「あ、そんなこと言っちゃう!?」

 

「…………大丈夫。まだ話せないってだけだ。いつかさ、どんな形であれ、この教室が終わったあとで。聞いて欲しい。こんなことを考えてた〜とか、振り返る形でさ。愚痴らせて欲しい」

 

「陽菜乃ちゃんには勝てないかぁ……」

 

「勝つ、勝てないの問題か……?」

 

「ちょっ!?聞かないでよ!?難聴系主人公のスキルをもっと発揮して!!」

 

 理不尽なツッコミを貰いつつ、苦笑する。

 鈍感だの、クソボケだの言われるから偶には鋭いところを見せようとしたらこれだ。なんて理不尽なのかしら。

 

「………まぁ、なんだ。お言葉に甘えてちょっとだけ、雪村が聞いてくれた部分を少しだけ漏らすとさ」

 

「うん?」

 

「登山する時に先に山を見て諦めるか、先に仲間を見て諦めるかって話し。順番の問題かな」

 

「………というと?」

 

「雪村が登山家で、これから仲間と山を登るとする」

 

「うん」

 

「山は前人未踏、人類が挑める最高峰の山。仲間はプロ、それぞれの分野に精通したエキスパートだとする」

 

「………うん」

 

「仲間の能力が低くて諦めるってのは、山を前にした時、仲間たちを見て、『こいつらじゃダメだ』ってなること」

 

「………」

 

「俺が言いたいのは、山を見て、『これはどんな装備、仲間がいても無理だ』ってこと。あれだこれだと計画を立てて、いざ、登ろうと山の前まで来たら、天気は大荒れ、明らかに人間を拒絶するような空気が漂ってる。そんな様子を見て、『みんな行こうぜ!やれるさ、俺たちなら!!』とか言うのは勇敢さではなく無謀。無責任だ」

 

「つまり、みんなの能力が低いからとかじゃないんだね?」

 

「そういうこと。俺だって夏休みのこととかあって、それなりに学習したさ。いざって時は仲間を頼る。その大切さは身に染みてるつもりだけど……それでも、俺が頼る前に諦めたのは、みんなに期待してないからじゃないんだ」

 

 言葉を選ぶ。

 そして、自分なりの言い回しを見つけた。

 

「初めから期待してないから諦めるってのと、諦めたから期待してないってのは、言葉の少し順番が違うだけで意味合いが凄く変わるだろ?まして、俺が諦めた部分の難易度が難易度だ」

 

「雪村、俺の話を議事録で見たんだろ?どう思った?殺せんせーを助けるのに必要なプロセスを見て。『できるよ、これ!』ってなったか?乃咲の考えすぎって思ったか?」

 

 彼女は目を伏せて、一言、呟く。

 

「……正直、無謀だと思った」

 

「だろ?それが正しい判断だ。何も間違ってない。全人類の中から情報交換する2人だけ見つける、宇宙ステーションに直接乗り込む、データの送信先を突き止めて世界最高峰のセキュリティを突破してハッキングするか、潜入して情報を抜き取る。これを出来る、なんて普通は思わない」

 

「…………間違ってないと思うよ、私は」

 

「じゃあ聞くぞ?これって俺たちが能力不足だからか?能力があれば突破できるか?何とか出来る問題か?」

 

「……………」

 

 答えられず、俯く彼女に告げる。

 

「違う。確かに能力不足は否定しない。でも、例え、どんな能力があっても、そんだけの施設、設備に潜入、あるいは掌握するのは無理だ。現実的に考えて、無理だと思うだろ」

 

「うん……」

 

「だから諦めた。解決策が見つかる可能性は否定しない。でも、その解決策も内容によっては絵空事だ。だったら………殺せんせーがそう望んでるように俺たちの手で、みんなで殺す。それが1番いいと俺は思うから」

 

「……そっか。うん、ありがと、話してくれて」

 

「……こっちこそ、悪いな、結局愚痴に付き合わせてしまった。次はもっといいプリン持ってくるよ」

 

「お高いプリンより、乃咲の手作りの方が嬉しいな。それに、まだ、全部話した訳じゃないんだよね?」

 

 そうか。俺の手作りの方が嬉しいか。

 そう言って貰えると嬉しいもんだな。

 

「………分かった。次は作ってくるよ。それに……まぁ、うん。助けたい派が俺の言い方や内容に多少なりとも思うところがあるように、俺にだって思うところはあるからな。まぁ、それは別の機会に聞いてくれ」

 

「分かった、じゃあ、約束ね」

 

 この会話が少しくすぐったくて思わずふざける。

 

「………あぁ!俺、この戦いが終わったら、全部話すよ!思ってること、感じたこと!それでみんなと仲直りするんだ!雪村も絶対に付き合ってくれよな、約束だぜ!」

 

「どうして急にふざけるのかなぁ!!?しかも縁起悪いよ、死亡フラグだよ、それ!?」

 

 うん、自分でやってみて、この話題をしてる時に死ぬ系のネタは流石にどうなんだろう?と反省を禁じ得なかった。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

 頭を抱える。今頃、乃咲と茅野は合流した頃かな。

 そんなことを考えながら、僕は腕を組んで首を捻っていた。

 

 乃咲の言ってることが正論?ただひたすらに現実的?そんなことは分かってる。分かってるけど、それでも、僕は殺せんせーを助けたい。生きていて欲しい。

 だから、乃咲が考えていた内容を振り返って、そこに僕なりの突破口を見つけられないかをずっと考えていた。

 

 でも、考えれば考える程に、可能性に目を向ければ向ける程に、色んなパターンが脳裏に浮かぶ。それも、あんまり良くない形で。成功することを妄想するのは簡単だ。こうかもしれない、ああかもしれない。そんなかもしれないという部分に縋って都合のいい妄想をする。

 分かってるさ、それはあくまで妄想。それでも優しい言い方をするなら、希望的観測って奴なんだろう。

 でも、対照的に、悪いことはいくら考えても足りない。悪い可能性は思いつく限り考えるに越したことはない。実際に、考えた可能性が現実にならないのであれば、それは取り越し苦労だったね、で済むことだから。

 

 問題は、悪い方の可能性はいくら考えても、取り越し苦労で済みそうにないこと。何せ、地球の命運を握る研究だ。アイツの言うように、世界最高峰かつ最新鋭の防御で固められているだろうから、考えすぎなんてことは絶対にないだろうと予想が出来てしまう。ただ、そうなると、いくら考えても足りない。

 

 考えても、考えても、悪い可能性ばかり浮かんでくる。

 そして、その可能性は希望的観測と比べても、起こるかもしれない事象としては数段現実的であるということ。

 

 考えても、考えても……いや、考えれば考えるだけ、詰んでいるのではないか?という思考ばかり巡る。

 これを繰り返し続けるのは……正直、しんどい。出来ない理由ばかりが充実していく。現実的に考えて、出来るかもしれない光明はちっとも見つからないのに。

 

「………乃咲に…………いや、ダメだ」

 

 もう一度、乃咲に話してみようかと考える。

 でも、そもそもこれは彼を説得する為の考察だ。他でもない、乃咲本人が匙を投げた、殺せんせーを助ける方法を考えているんだ。だから、今回は彼を頼れない。

 

 なにより、これで彼と相談して答えが出せたとして、僕はそれでいいのかな?仲間と一緒に答えを見つけました!と言えば確かに理想だ。それで答えが見つかるなら、そうするべきだ。

 けれど、頭の中でそれを否定する自分がいる。諦めたと言っている人を巻き込む為に考えている。巻き込む為の方法を探す段階で強引に巻き込むのだって、手段としてはアリだと思うけど、それって、僕の本気は伝わるのかな。なし崩し的にって言わないかな、そう言うの。

 

 違う。僕はそんなことがしたいわけじゃない。

 一緒に探してたら、たまたま良さそうな方法が見つかったから、仕方ないし、このまま一緒にやるか〜とか、そんなんじゃない。そんなんじゃ納得できない。

 

 乃咲が諦めたと言ってるのを、可能性を示して納得させる。こんな方法もある、こんなやり方もあるって、彼の考え付かなかった内容を提示する。仮に考えていたんだとしても、具体的なプランを練ることで、成功率を上げる方法を示す。

 

 それが、僕の本気を証明することになる。

 僕だって殺せんせーを助けたいって気持ちだけをアピールしてる訳じゃない。本気で考えて、悩んで、助ける為の方法を探したんだって、探し続けてるんだって、分かって欲しいから。

 

 乃咲に空想だ、夢想だと言われたことを理想にする。

 

『悩んでますね、渚くん』

 

「律……?」

 

 議事録を見ながら、考えを整理するためにペンを動かして思ったことを書き出していると、スマホに律が現れた。

 

『殺せんせーを助ける方法について、ですか?』

 

「うん」

 

『彼にあれだけ言われても諦めないのですね』

 

「ほら、僕らの偉大な先輩たちの中に『諦めたら試合終了』って言葉があるからさ。まぁ……実際、何も思いつかないんだけどね。このメモも、助ける案って言うより、やりたいことリストみたいになってる」

 

『無理もありません。乃咲さんですら、無理だと判断したのです。ちょっとやそっとでは思いつかないでしょう』

 

 画面の中で目を伏せて、律が言う。

 僕は、彼女の意見も気になった。

 

「律的にはどう?やっぱり、今ある情報だけでは殺せんせーを助けるのは厳しいかな?」

 

『……厳しいですね。私は殺せんせーを殺す為に生まれました。そう言う意味で、彼の暗殺を諦めることは、自分のルーツの否定になってしまいます。そんな思考ルーチンから目を逸らして、助ける可能性も模索したとしても、私は乃咲さんの言っていた課題が1番大きく、分厚いと考えます』

 

 彼女もそう言う見解になるか。

 そして、言われて思い出す。律は、殺せんせーを殺す為に生まれたんだ。そう言う意味で、殺せんせーを助けることは、彼女自身のルーツの否定になってしまうのか。

 

『ですが………』

 

「……律?」

 

 言い淀み、言葉を区切り、そして僕を見た。

 液晶の中の彼女は複雑そうな顔をしていた。

 

『私は、諦めて欲しくないです』

 

「…………どうして?」

 

『1人では足りない部分を、100%には及ばない部分をみんなで埋める。それが、私がこの教室に来て初めて学んだこと。みなさんと協調することで不確実を確実へ変える。その大切さを、重要性を否定しないで欲しいから、でしょうか』

 

 思わず聞き返してしまった僕に、彼女は答えた。

 1人で足らない部分をみんなで埋める。聞いたことがあるセリフだ。律が暗殺教室に来たばかりの頃に繰り返した周りのことを考えない暗殺。それを止める為の乃咲の言葉。

 

『かつて、暗殺成功率が90%と計算していた私の言葉に彼が言いました。【キミの持つ砲門に加えて27の火力が上乗せされるんだ。可能性は上がるか、下がるか】と。みなさんの力を不要だと思っていた私に向かって』

 

『実際、彼の言う通りでした。可能性は大きくあがり、任務完了に掛かる所要時間を大幅に短縮できるというデータが得られました。周囲との協力は、それだけの可能性を秘めています』

 

『今の彼は、あの頃の私と似ています。乃咲さん自身は、周りを必要ないとは思っていないけれど、問題の大きさに対して、何をしても無駄という思考で雁字搦めになり、協調して答えを探すことが出来ずにいます。私1人で充分という結論か、みんなでやっても無理だという違いはありますが、似たような物です』

 

『彼の論理は、現実的に考えて100%無理だというもの。つまり、ある意味では確実性があると言うこと。であるのなら、絶対に穴があるはずです。人間も機械も完璧ではありません。理論上は完璧に見えても、何処かに必ず綻びはある。ファンタジーでもない限り、100%という数値ほど信頼できないものはありません。100%大丈夫だとか、100%無理だというのは、AIの私が言うのもアレですが99.9%、あり得ません』

 

 彼女は言い切った。100%なんてことはあり得ないと。

 その上で、更に言葉を重ねた。

 

『今、我々がするべきことは、その0.1%でも良いから可能性を見つけることです。完璧に見える防御の中にも隙はある。あるいは、予想外の方向から攻撃を喰らわせること。違いますか?』

 

「……うん、きっと、その通りだよ」

 

『でしたら一緒に考えましょう。乃咲さんに1人で考えた内容には限界があると言うには、まずは渚くんが人に頼らないとダメです。それこそ、彼の二の舞になりますよ?』

 

 律が手厳しい。

 でも、言う通りだと思う。

 

 けれど、僕はこれだけは聞くべきだと思った。

 

「いいの?律がさっき言ってたじゃん。殺せんせーを助けることは自分のルーツ……つまりは生まれた意味を否定することになるんだよ?」

 

『それは殺せんせー暗殺用に作製された自律思考固定砲台としてのルーツです。今の私は椚ヶ丘中学校3年E組の律、です。それが私と言うAIが確立した自分自身のアイデンティティですから』

 

『以前、彼が言ってくれました。私は電子生命体なのだと。知性ある、命ある存在だと定義してくれた人に、かつて私を言い負かした理論を忘れて欲しくないのです。予想以上の可能性が広がる感覚を知って欲しいのです』

 

「……そっか。友達に諦めて欲しくないんだね」

 

『きっと、そういうことなのでしょう』

 

『諦めとは合理性ではありません。目的の為に確率を上げる。その為に必要な最も効率的な考え方や手法をそう呼びます。殺せんせーを助けたい、でも方法の難易度が高すぎて可能性を見出せない。だから諦める。これは、本来目指したかったゴールをあきらめています。だから、合理的ではないです』

 

『私は乃咲さんに示したい。ただ目の前のことを現実的に考えるだけでなく、捻った視点を加えることで得るモノもあること。100%という数字ほど、信頼できないモノなく、0.1%でも不確定要素があるのなら、それを見つけてみんなの力でこじ開け、数字をどんどん大きくしていけばいい』

 

『そして、0.1%を見つけることは難しくありません。100の中から特定の何かを探すのではなく、100の中からなんでも良いから0.1を見つければ良いのです。難癖でも、非現実的でも、突き詰めることにこそ、意味がある。それが目的を達成する為の合理性を裏付けるのに必要なこと』

 

『可能性、不安要素はあるだけで問題だと言っていました。その通りです。だからこそ、我々の手で、それを見つけることが出来れば、現状の突破口にもなる。私はそう信じています』

 

 この一年で変わった人は沢山いる。

 

 寺坂くんは変わらずガキ大将だけど、みんなの前にたって直向きな姿を見せることで以前とは違う安心感や信頼感がある。

 神崎さんはほんのちょっととっつき難かった。美人で、落ち着いた雰囲気で、何処か話しかけづらかった。それでも、ゲームが好きという一面を知ってからは、結構話せる機会も増えて、本人もよく笑うようになった。

 竹林くんは自己主張しない人だった。あるがままを受け入れて、仕方ないと迎合して、それでもがむしゃらに1人で勉強して。でも、今は仲間と笑って、メイド喫茶を布教して、いざって時は知識面でサポートしてくれる頼もしい人になった。

 

 乃咲やカルマくんもそうだ。

 

 でも、僕が思うに、この一年で最も変わったのは律かも知れない。王道なSFやファンタジーでは『信じる』なんて確実性に欠ける言葉をAIは使わない。それこそ、使うとしたら、人間との接触で人間性を獲得した存在とかそう言う奴だろう。

 今の彼女は、間違いなくそちら側だ。ただのAIではなく、自分の気持ちや考えを持った1人の人間だと、そう思う。

 

「ありがとう。じゃあ、一緒に考えてくれるかな。律」

 

『はいっ、お任せください!』

 

 そうだ。僕の周りには心強い人は沢山いる。

 乃咲は個人としては最強だ。単独の能力もそうだし、いざって時はみんなの指揮も出来るし、リーダーではないけど、間違いなく中心にいる人物。だからこそ、真っ先に彼を頼ろうと思ったし、今も説得しようとしてる。

 

 でも、彼に頼ることだけが突破口じゃない。

 最終的にチカラは借りる必要はあるし、僕だって彼に納得して欲しい。でも、そのために必要なことを僕だけで考える必要はないんだ。こうして心強い仲間がいるんだから。

 

 頼るの方向性を変えよう。どうすればいい?というすがるような頼り方ではなく、こうして欲しいという対等な立場での頼り方。それこそ、乃咲やカルマくんが暗殺で指揮する時と同じように。目的達成の為の方向性を僕が示す。

 

 少しだけ、楽しくなってきた。




あとがき

頼り方にも色々とありますからね……。

どうすればいい?というのは信頼してるからこそ出来る、自分の行動を委ねる頼り方。ただし、それはすがっている様に見えることもある。
こうして欲しいというのも信頼してるからこそ、相手に役割を任せられるという頼り方。ただし、信頼関係がないとただ丸投げされてる様に感じてしまうこともある。

頼るって信頼関係が大切ですね……。

でも、誰にも頼らないというのは、誰も信じてないのと同じ。

現実的に考えて無理って理屈も分かるけど、1人で考えて、そこで諦めてしまうのは確かに仲間には失礼なこと。

今の渚と圭一を私が客観的に見るとこんな感じですかね。

でも、自分は基本的には後ろ向きな人間なので、現実的に考えてどうにもならないじゃんってのを周りに相談するのは無駄だと考えるタイプだから、どうしても圭一に感情移入しがちですね……笑

ご愛読ありがとうございます!
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