加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!
先週は申し訳ありませんでした。
体調戻って来ましたので、今回も投下しますのでお付き合いください……!
⬜︎追記
すみません、7:30くらいにお漏らし投稿しちゃいました……(〃ω〃)
混乱させてしまってすみません……。見なかったことにしてください……泣
『まず整理すると、殺せんせーを助ける方法で考えられるのは一つ。薬による治療。超生物とは言え、元は人間であり、生き物であることに変わりはない。殺す毒は効かなかったが、薬自体に耐性があるわけではないことに着目した方法ですね』
『現状、他に考えられるとしたら、手術などが挙げられるでしょうが……そも、手術が出来るレベルまで肉薄し、拘束出来るなら、殺す方が手っ取り早いと言うことで、この線は殆どないと考えられます。よって、方向性としては薬による治療、体質の変化がもっとも現実的です』
『しかし、問題はその薬の作り方。机上論でも作れるでしょうが、それでは信頼性に欠ける。だからこそ、信憑性のある実験データが欲しい。そして、そのデータを入手する方法が現在の最難関という状態です。訂正などありますか?』
彼女の言葉に集まったみんなで首を振る。
そしてそれを見た磯貝くんが代表して律に言葉を投げると、彼女は頷き返して言葉の続きを話し出した。
『最難関と言える部分は3つ、この世界の何処かで行われる情報の受け渡しの現場を抑えるか、宇宙に行って実験結果を直接奪取するか、その実験結果を受け取ってる施設を特定して情報を奪うか。方法らしい方法はこれしかないことです』
『1つ目に関しては、その情報を掴むのは至難の業であることは間違いなく、なんでしたら、受け渡し要員も当日か前日になって知らされる可能性があり、突き止めるのは現実的ではありません』
『2つ目は、冷静に考えれば無謀そのものです。そもそも宇宙に行くと言う前提からして発想がぶっ飛んでます。無事に辿り着けるか、着いたとしても情報を奪って、無事に帰って来られるのか。不確定要素が多過ぎます。これも現実的ではありません』
『そして3つ目。ある意味でこれが1番現実的です。世界中から特定の人間を探すより、施設を探す方が楽なのは言わずもがな、宇宙に行くよりは簡単だといういい方をすれば、ですけれど』
みんなで問題を再び考える。
考えると言っても、乃咲が上げたものを再度、本当に穴はないのかって穴を探すんだけど、それでも、律の言う0.1%を見つけられれば、勝機はあると信じてる。
乃咲が見つけられなかったそれを、みんなで見つける。
そのために僕らは知恵を絞っていた。
「1つ目は……たぶん、冷静に考えると1番厳しいよな」
「うん。正直、宇宙に行くっていうのは実現できるかはさておき、方法自体はシンプルだもん。ロケットに乗ればいいからね。そこまでの工程と帰ってくる方法は本当に無視した場合だけど」
「まぁ、宇宙に行く方法はそこが1番重要だと思うけどな」
「けど実際、どこの誰ともどんな奴かも分からない、どんな方法で受け渡すかも分からない、どんなものを受け渡すのかすら分からないって状態よりは現実的に思えるよな」
「うん……。3番目は……それこそ、強行手段だけど、施設が特定できれば……やるかどうかは別として、攻め込めるって思えば現実味も感じるかな」
「まして、全力が未知数な乃咲と自他共に認める破壊生物の殺せんせーがいるしな。施設破壊と情報の奪取って意味ではそうかもだけど………乃咲の親、殺せんせーの触手の元になった研究してて、今は先生を無力化するための研究してるんだろ?だったら、もしかすると……俺たちの探してる施設にいる可能性ないか?」
「……ぁ」
「たぶん、答えてくれるかはさておき、施設自体は乃咲の親に聞けば特定できる可能性自体はゼロじゃない。それでもアイツがこの方法は無理だって言ったのは……」
「そもそも俺たちだけで攻略するのは現実的じゃない。乃咲の身体能力に任せて破壊っても、自分の父親がいるかもしれない状況じゃやりたくないだろ……?それに、そんな施設で暴れでもしたら、最悪の場合、人質になるかも」
「…………それじゃあ、下手にやれるとは言えないわね」
「圭一なら、施設を破壊してでも情報を奪うって部分は見逃さないと思う。でも。それをしないというか、提案しなかった理由はそこだな。アイツの場合は親が政府の下で触手の研究してるから、下手に動いて身バレしようものなら、危ないのは圭一よりも親だ。だから、親がいるかもしれない場所は1番襲撃したくないだろ……。殺せんせーを助けられる可能性が1番高いのがこれだとしても。俺だって同じ立場なら嫌だ」
「……なるほど、乃咲のチカラは当てに出来ないし、そうなると殺せんせーも下手に暴れられない。つまり、やるとしても私達だけでやらなきゃだけど……そうなると、鬼のようなセキュリティが待ち構えていると」
「………くっそ。確かに理解できてきたぞ……。思ったよりも雁字搦めだな、これ。単純な難易度で1番目は無理。なりふり構わなきゃ3番目が可能性あるけど、なりふり構う必要があるから無理。2番目の宇宙に行くってのはもう、中学生に同行できるレベルじゃないから無理……」
「宇宙飛行士の人らって、無重力でも動けるように訓練するんだろ?つか、訓練しないといけないだろうし。一方、俺らはそんな訓練したことないし。仮に行けたとしても、まともに動けないんじゃ、交渉にすら持ち込めないだろ」
確かにそうだと思った。
単純な難しさ、無理だと言った乃咲の立場、実行した後のことを考えると、どれも『よし、やろう!』なんて簡単には言えない難易度のものばかり。
でも、僕には一つ。宇宙に行った後のことでなら、僕らの中で唯一、無重力に適応してそうな人に心当たりがある。
けど、これを提案していいのかな?
『宇宙に行ったあとの行動についてなら、乃咲さんならどうにかできるかも知れません』
「り、律っ……」
「乃咲くんが……?」
『はい、彼は我々の中で唯一、足場がある状態ならば、全方位への移動ができます。覚えていますか?以前の暗殺、射撃の有用性を確かめるための暗殺で……彼は地面に対して水平かつ平行の姿勢で木々を蹴って木の間を反射するように移動していました』
「あー……。あのとんでもマニューバな。人間辞めちゃってる立体機動してたわ、確かに」
『皆さんも無重力下での適性は一般人に比べると天と地の差があると過言ではありませんが、乃咲さんは例外中の例外です。室内でも、必要ならば、天井を蹴り、壁を蹴り、縦横無尽に飛び回ることができるでしょう。間違いなく適任です』
律の意見は僕と同じだ。
そう言う意味でも、彼のチカラを借りることができれば頼もしいと思う。でも、一つだけ気掛かりがあった。
「……律の言うこともわかるけどさ、ちょっと何でもかんでも乃咲くん乃咲くん言い過ぎじゃない?」
矢田さんが口を開いた。
それは、僕も感じていたことで、そしてもっともな意見だった。なにせ、これはその乃咲を説得するための話し合いだ。それなのに、彼を作戦の中心に据える前提なのは少し思うところがある。
「それは僕も感じてた。もうちょっとアイツに頼らない方法を考えてみない?」
そんな僕の提案に待ったをかける人物がいた。
みんなの中心で話し合いの音頭を取っていた磯貝くんだ。
「矢田や渚の言うことも分かる。でも、圭一を説得する為なら、逆にアイツも作戦に組み込むべきだ」
「……理由を聞いてもいいかな?」
「圭一を説得する為に、圭一が思いつかなかった手を考える。殺せんせーを助けるのは大目標として、今回の話し合いの目的はあくまでそこだろ?それと圭一を組み込む、組み込まないは別問題だ。むしろ、組み込むべきだ。だって、圭一を組み込まない作戦なら、前提として圭一を説得する必要がない。圭一は無理だと言った、だから俺たちでアイツに頼らない方法で殺せんせーを助ける道を見つけた。そこまで考えてるなら、俺たちだけで実行すればいい。そう思わないか?」
「それはそうかもしれないけど……」
「分かってるよ、お前らも、殺したいって言ってる奴らと協力したい、同じ方向を向きたいって思ってるのは。だから、俺たちだけでやれる方法を見つけても、俺たちだけで実行する発想はない。話し合って、アイツらを納得させたいからだ。でも、それなら……尚更、アイツらも作戦に入れる前提で考えるべきだ」
「……そうだね、磯貝くんの言う通りかも」
「神崎さん?」
「『こんな作戦を考えてみたの、だから一緒にやらない?』って誘い方もいいと思う。でも、『こんな作戦を考えたんだけど、この役目はキミに頼みたい、キミにしかできない。だから力を貸してくれないかな?』って言われる方が説得力があると思う」
「神崎さんの意見に賛成かな。もっと言うなら、キミにしかできないって部分に乃咲くんやカルマくんしか本当にできなさそうな部分を当てた方がいい。だって、ただ作戦を考えるだけなら、『お前らで勝手にやれば?』ってなっても不思議じゃない。みんなで同じ方向を向く為に、みんなの役割を考える。確かに自分じゃないと厳しいかもしれないって思うような、そんな何かを。説得力は大事よ」
神崎さんの意見に片岡さんが頷く。
言われてみると、確かにそうかと納得する。
「うん、ありがとう。そうだね。ごめん、乃咲を説得することだけ考えて、説得力とか考えてなかったよ」
「私も。確かにそうだよね」
「いいさ、そのための話し合いだろ?」
磯貝くんが笑う。
やっぱり、こう言う時に1番頼りになる。
「でも……どーするよ?このままだと、宇宙に行くのが1番現実的って結論になっちまうぞ?」
木村くんが重々しく言う。
彼の言葉に空気が重くなった。木村くんは、思わず慌てた様子で謝っていたけど、彼は悪くない。誰もが思うことだ。
それでも、乃咲やカルマくんを頼る前提での作戦なら、僕にも少しだけ提案できる部分がある気がした。
僕だって、彼の意見を聞いた後で何も考えなかった訳でも、調べなかった訳でもない。考えて、調べて、メモとして書き出す中で、とあるニュースを見つけた。
「みんな、いいかな。宇宙に行く方法、あるかも」
みんなの目が僕に向く。期待のような、疑惑のような、訝しむような。向けられて心地がいい視線じゃない。
普段、磯貝くんや乃咲はこんな感じの視線を向けられてるんだね。ちょっと……いや、かなり尻込みしたくなる。
でも、今は僕が言わないと。今挙げた2人と対等に話す為にも、今こそ自分の意見をしっかり伝えるべきだ。
「僕なりに色々調べたんだ。乃咲が言ってることを実現出来ないかなって。そしたら、宇宙に行く方法なんてドンピシャな奴はなかったけど……こんな記事を見つけたんだ」
僕はスマホの画面をみんなに見せる。
そこにあるのは、僕らの国の技術を結集した最先端の結晶。
「……日本で開発中の………有人往還船……ってなに?」
「往還船って言っても分かりずらいよな。簡単にいうと、地球と国際宇宙ステーションを往復できる貨物船みたいなもん。それに付け加えて有人で飛ばせると来た………」
「………それってすごいの?」
「だな、かなりすごい。確か有人でロケットを飛ばせる技術を持ってる国はかなり少ない。正直、日本にそんな技術あるってのは分からなかったけど……確かに不思議じゃない。日本の技術は世界でもかなり高い水準だし」
「あ……そういえばネットニュースで見たことある。年明けに日本でロケット飛ばす見たいな話!」
「……このタイミングでこの話を出すってことは……渚?」
杉野が戦慄したような顔で僕を見る。
みんなも反応としては似たようなもの。
だから、僕はあえて力強く頷いた。
「これに乗って宇宙に行こう」
「………………マジ?」
前原くんに頷く。
「乃咲が無理って言って、僕も厳しいと思った理由。それは世界中の何処を、誰を、どんなものを、何を探せばいいのか分からないって部分だよ。でも、これは少なくとも日本で実験が行われる。ネットニュースにもなってるくらいだから、きっと実験場とかも情報として公開されるはずだと思うんだ」
「これで、何処を、何を、どんなものを探せばいいのかって課題はクリアできた。あとは方法だけど……。彼らを頼る前提なら、ある程度はカバーできると思う。乃咲は言わずもがな、あの卓抜した身体能力と思考力で。ロケットの発射場とかなら、屋外だろうし、最悪、彼に頼めば脱出できると思う」
「現地での指揮はカルマくんなら心強いかな。悪戯好きな部分のおかげで、相手が嫌がること、喜ぶこと、こういう場面なら相手はこう考えるかも〜とか、心理的な部分への理解が強いと思う。そういう面を活かして、現地での周囲警戒とか、状況判断なら僕は乃咲よりも彼の方が上だと思う」
「宇宙に行くために必要な潜入と、万が一の脱出、現地で行動する時の指揮。そして宇宙に行ったあとの適性。乃咲は普段の立体機動で無重力に適応できると思うし、カルマくんはそういう適応力は高い。そして2人ともうちらの主席なだけあって頭の回転も速いし、駆け引きとか必要でも対応できると思う」
「……問題は、監視カメラとか張り巡らせてるだろう道中を誰にも見つからずに攻略出来るかどうかって部分と、無事に地球に帰って来られるかどうかってこと。それをクリアできれば……一気に現実味が出ると思う」
そこまで説明すると、みんながポカンとしていた。
口を半開きにして、唖然としてるって言い方が正しいかな。
「……渚、それ、ずっと考えてたのか?」
「ずっとって訳じゃ無いけど……。今、咄嗟に思いついたこともライブ感で話してたし。でも、もしもみんなで出来るなら、どんな方法があるかなってのは考えてた」
「でもさ、思いつくか?それ」
「……悔しかったんだ。乃咲に『お前の話は"やりたい"ばかりで中身がない』って言われて。分かるよ、自分でもあの時の言い方はそんな風に取られて当然だと思ってる。でもさ、僕だって本気なんだって。それを伝えるにはどうすれば良いかなって考えて。乃咲たちを説得する方法を考えながら、彼らを説得できたら、どんなことができるかって考えてた」
「………まじかよ」
「でも、こんなことができるかもしれない、あんなことができるかもしれないってのは思っても、説得する方法は全く思い浮かばなくて。だから、目から鱗だったよ。彼らを説得する方法に、彼らがいることで可能になる方法を組み込むの」
僕は、乃咲の家にみんなで泊まったあの日に、こんな話し合いがしたかった。それができなかったのは、もともと、僕らは助ける、殺すの選択の後でどんなことをすれば良いのかってわかってなかったから。だから、その辺も考えてた彼らにとって、僕の話は面白くなかった。彼らができないと思う理由に目を向けてなかったから。だから、あんならギクシャクしてしまった。
話を切り出したタイミングも良くなかった。みんなの気持ちが固まってない場面で、いきなり助けたく無いの?なんて聞き方をするべきじゃなかった。
みんなは言ってくれた。お前らの会話は参考になった。どっちが正しい、間違ってるの問題じゃ無いんだなって。そう言ってくれるのは嬉しかったけど、でも、切り口はもっと浅くするべきだった。
『単刀直入に聞くけど、2人はさ、殺せんせーに死んで欲しいわけじゃないんだよね?』
これは、聞いてるんじゃなくて、問い詰めてるっていうんだと、今なら分かる。今、乃咲が無理だと判断した理由を知ってる状態でこの聞き方をされたら、僕もカチンとくる。
『この教室にそんな奴いないでしょ。その質問、流石に無神経すぎない?』
カルマくんの言う通りだった。無神経だった。
中身がない、空想だの夢想だのと乃咲に言われたのはこの後だったけど、言われてカチンと来たりしたけど。でも、僕も似たようなことを事前にしてたんだ。
もっと違う言い方があった。
殺せんせーを助けたいんだけど、何か方法はないかな?とか、そう言う聞き方でよかったんだ。そうすれば、乃咲は翌日に女子会で話したことを男子会の段階で話してくれたかもしれない。
そうすれば、もっと話し合いも違う形になっていたはずだ。少なくとも、今みたいに少し険悪な雰囲気で派閥に分かれるようなことにはならなかったんじゃないかなって思う。
乃咲は女子会の方で、このことを先に話さなかったことを反省してるとか言ってたけど、多分、あの会話の流れを作ってしまったのは僕だ。僕だって、同じく反省しなきゃいけない。
「……そうだな、確かに悔しいよな。俺もさ、少し思ってたんだ。殺せんせーを助けたい。なのに、どうして否定すんだろうって。俺たちだって何も考えてない訳じゃないのにって」
「……………うん」
「まずはさ、そこをひっくり返そうぜ。アイツはそんなこと思ってないのかもしれないし、もしかしたら、似たようなことは思ってるのかもしれないけど……。でも、まずは胸を張って俺らの考えを話せるようにさ!」
「…………うん!」
僕の話を聞いて、次々に仲間たちがうなずく。
そうだ。まずは僕らの意見を胸を張って話せるようになる。芯を通す。そうじゃなきゃ、殺せんせーを助けられないだろう。
言うが易し、今の僕らの作戦は口で言うのは簡単だけど、実行するハードル自体は決して低くはないんだから。どれだけ指摘されても可能性を上げ続ける。それくらい考え続けるんだ。
『宇宙から帰ってくる方法は私がどうにかできるかも知れません。往還船に私のデータを入れることができれば、機体の制御は私が掌握できると思うので……あとは殺せんせーから協力を得られれば……』
「発射施設の図面とか漁れないかな?そこから監視カメラの位置とか割り出せるような気がする」
「律のデータを施設の端末に入れられれば……監視カメラの掌握ができて、侵入を悟られないようにしつつ、逆に監視カメラを使ってナビができるんじゃない?」
「問題は入れる方法だよな……誰か潜入するとか?」
話が進んでいく。僕1人で考えていた時より遥かにとんとん拍子で。仲間の力を借りるとこんなことができるんだね。
乃咲は……1人で考えてしまったから雁字搦めになったんだと思う。きっと誰と考えてもダメなことはある。彼にとって、今回のはそれだった。でも、視点が変わればそうではなくなる。
僕らにとっては、難しいけど、無理って内容じゃないと思う。それが、僕らにとっての学びだったかも知れない。
今度こそ話し合うんだ。ただ気持ちを主張するじゃなく、ただ、指摘されるでもなく、どうすれば実現できるのか、僕らの考えた作戦は実行する価値があるかどうか。議論がしたい。
それが彼や殺せんせー、雪村先生も言っていたという、相手の気持ちや考え方やその背景を"見る"ことに繋がると思うから。