加えて、たくさんの高評価、感想ありがとうございます!
今回も投下しますのでお付き合いください……!
——時は遡り、クリスマス数日前。
なんとなく、射撃練習を繰り返す。
もしもの時に外さないように。もう二度と、この弾では殺せないと撃った直後に理解するような事態を招かないために。
失敗してもやり直せば良いとよく言う。でも、一度逃したチャンスをやり直すには相応の努力と段取りが必要になる。だから、失敗してもやり直せばいいとは言うものの、やり直せるチャンスが来るとは限らないと自分に言い聞かせてひたすらに射撃精度を磨く。
「………………」
ふと、手を止める。俺は、気持ちとしては殺したい派だ。生きてて欲しいとは思う。でも、殺すことが先生への恩返しにもなる。そして、あの暗殺旅行で狙撃に失敗した俺たちにチャンスをもう一度くれたみんなにもう二度と同じ事は繰り返さないと胸を張る為に。
でも、喉に小骨が引っかかっているような感覚があるのも確かだ。このままだと、殺す派と助ける派で衝突が起きるかもしれない。乃咲、カルマ、渚が一緒にいる姿を最近はあまり見ない。
もともとよくみる組み合わせというわけではないが、それでも決して見ない組み合わせでなかったことも確かだ。乃咲とカルマで渚を弄り、渚から反撃を受けた乃咲をノーダメージでケラケラ笑うカルマ、そんなカルマに言葉で殴り掛かる乃咲とそれをみて見て苦笑する渚。
ちょっと見てないだけなのに、ずっと見てないような寂しさがある。それもこれも、あの日、乃咲の家でみた言い合いのような意見のぶつかり合いが原因なんだろう。乃咲とカルマ、そして渚は互いに引かなかったし、譲らなかった。
聞いてる側としてはどちらの言い分も納得できるし、理解もできる。だからこそ、正解なんてものはなく、どっちが悪いという言い方もできない。して言うなら、お互いに言い方が悪かった。そんなところだろう。
なんて、あの場で仲裁に入らずに今内心で吐露してる俺に偉そうに言う資格はないのだろうけど。
でも、それでも俺の気持ちがどちらに近いかと言えば乃咲だ。だって、その為に力を磨いてきた。殺せんせーや烏間先生、ビッチ先生に磨かれ続けて来た。だから、彼らに結果で応えるという選択肢を考え方を絶対に否定したくない。
「………………」
何気なく射撃を再開して、一射目が狙いから少しズレる。窓の真ん中の赤い部分には確かに当たったけれど、ど真ん中じゃない。本当に僅かにズレた。もしも、これが本番なら、このズレが致命的なミスになるかもしれない。
自分に言い聞かせて再度発射した弾丸は今度こそ、的のど真ん中を捉える。気持ちのいいくらいにドンピシャだった。
「………けど、チャンスがないのは……違うよな」
ポツリと思わず溢していた。
ミスってもやり直せる。だから、こうして俺は一度目のズレを二度目に矯正して狙った通りの射撃が出来た。
でも、それはチャンスがあったからだ。そもそも射撃する機会がなければ、外すことすら出来ない。
そういう意味で、俺は少し今の状態に思うところがあった。今の教室は助けるか、殺すかの2択を迫られている。気持ちとしては殺したいけど、だからと言って、助けたいって言ってる奴らが考えた方法を一度も試さないっていうのは極端だと思う。
逆もまた然りと言うべきか。助ける一辺倒で期限も回数も設定しないで助けることしか考えていないのも問題だ。
そこまでは分かっている。でも、そんなことはみんなも思っているだろう。その上でどうしたいのか。
そんな問題にあっさりと答えを出せるわけもなく。少しでも気を紛らわせる為に、練習に戻ろうとした時。
「……ん?LINE……?」
俺のスマホが新着メッセージの通知を知らせる。
つい、何気なく覗いてみた液晶には、意外な送り主とぶっきらぼうな言葉が表示されていた。
「……だ、ダメだぁ……!いけるかと思ったけど、不確定要素を考えれば考えるほど不安になる……!」
前原くんがそう言って大の字に寝転がった。
そんな様子を倉橋さんと一緒に廊下を歩く乃咲がキョトンとした顔をしながら横目で見て、なにか悟ったような顔になると視線を前方に戻して歩き出す。もう直ぐクリスマスだからか、この教室で初めて生まれたバカップルは今日もベッタリだ。
「千葉のヤツ、今日も射撃練習してたな」
「うん。すごい真面目だよね」
「あとでLINEでも送ってやるか。考え込んでたみたいだし」
スタスタと歩き去っていく。乃咲としても、僕らに気付いても会話に入りづらいだろう。だから、特に引き止める事はしない。ちょっと教室が寂しい空気になる。こんな時、今までだったら……結構ノリノリで計画を立てるのに参加したり、自分から音頭をとってくれていた分、本当に意見がすれ違ってしまった様に感じる。
そんな空気を変えるみたいに磯貝くんが声をだした。
「律と渚の話を聞いた時はなんとかできるかもっ!って希望が見えた気がしたけど……」
「うん。具体的な方法を考えると難しすぎるね」
ロケットの発射予定地。そこへの侵入と宇宙へ上がってISSへの殴り込み。その計画を練るのは思った以上に難しい。
律は図面を手に入れてくれたけど、実際、どんな配置でどんな風に警備していて、どこに監視カメラがあるのか……それは今の僕らには分からない。
「建物自体、普久間島のホテルみたいに実は侵入者に強く出られる設計です〜とかだったりしないかな」
『ないとは言えません。ですが、今の私には図面を比較して似てる設計の建物を見つけることが限界です。そこにどのような設計思想があるのか。感じ取ることができれば多少は変わると思いますが……』
「設計思想かぁ……そんなん、俺らじゃわかんねぇよなぁ……。かと言って鵜飼さんたちに協力頼むわけにもいかねぇし」
みんなで考え込んでいると、新しい足音が聞こえてくる。
真っ直ぐに向かってくるそれに気を取られて、教室の扉へ視線を向けると千葉くんが不思議そうに立っていた、
「千葉くん?どうしたの?」
「………いや、ちょっと外が寒くなってきたから中で暖まろうと思っただけ。そういうそっちは?」
あ、そう言えばさっき乃咲たちが千葉くんが射撃練習をしてるとか言ってたっけ。確かに外は雪がチラついてるし、こんな中でずっと撃ってても寒くなるか。
「殺せんせーを助けるための計画を立案中」
「…………殺せんせーを助ける計画か」
彼はポツリと呟いて僕らに歩み寄ってきた。
僕らが見ていたのは、律が拾ってきたロケット発射場の図面。彼はそれをみると、難しそうな顔をした。
「………なんだ、これ」
「ロケット発射場の図面」
「………………………!!?」
たっぷり5秒ほど固まり、僕の短い説明を理解した後で千葉くんは目に見えて動揺した。
そう言えば、具体的な作戦はここにいるメンバーにしか言ってなかったっけ。そりゃあ驚くか。
「なんでそんなもの………っていうか、もしかして、殺せんせーを助ける方法ってのは………」
「うん。宇宙に行ってみようと思う」
「…………………………」
「最終的に地球爆発がリスクとしてあり得る以上、実際に実験をしてデータをとってるのはやっぱり宇宙だしね。それに今度、この近く日本の企業がISSにロケットを飛ばすって聞いてさ。それなら、宇宙に行く手段も、場所も、時間も実質特定できたことになる。だから、これが殺せんせーを助ける方法を探す手段としては1番有力だと思うんだ」
「………すまん、理解が追いつかない。え、宇宙?宇宙……?宇宙ナンデ!!?」
「千葉が壊れたぁ!!?」
素っ頓狂な声を出した千葉くんに木村くんが思わず駆け寄った。珍しく分かりやすい動揺を見せる彼だったが、少し呼吸をおいてようやく落ち着きを見せると、頭を抱えながら口を開く。
「そ、そうか……。いや、わかる。理由は分かる……。そうだな、確かにそれが1番可能性がある………のか」
難しそうに、半ば自分を納得させる様に呟く。
たぶん、こんな反応をこれから沢山見ることになるだろう。乃咲から提示された可能性の中でも1番ぶっ飛んでいるものを選んだという自覚はある。でも、1番ぶっ飛んでいるものが1番可能性がないと言うわけではない。僕らなりに考えて、考えて。そしてこれが1番可能性があると思ったから。
僕は今考えている計画を彼に話す。
一通り考えている内容を全部。考えた動機、最終的にどうしたいのか。それらを話した上で言葉を投げる。
「千葉くん。よかったら力を貸してくれないかな」
「………俺が?」
「お、おい。渚……それは流石に……。だって千葉は殺す派だろ?」
「そうだけど、でも殺せんせーを助けたくないわけじゃない。乃咲も言ってたでしょ?殺せんせーに生きてて欲しいのはみんな共通だって。だったら協力を仰ぐのは悪いことじゃないよ」
「………だったら、この計画してる段階から乃咲とカルマにも声をかけるべきじゃないのか。あの2人の言い方はキツかったけど、理屈は間違ってなかった。渚の考えもわかるけど、最後に2人の力が必要な部分と理由を話すんじゃなくて、2人がいることで視野に入れられる可能性を初めから念頭に置ける様に、今の段階から説得はするべきじゃないか?」
千葉くんが鋭く言葉を投げてくる。
それはもっともな意見だ。2人をしっかり説得できれば、もっと効率的な方法はあるのかもしれない。でも……。
「……分かってるよ。でも……なんていうか意地なんだ」
「意地?」
「乃咲やカルマくんがいなくても、僕らは考えられるんだって。2人が思ってるほど考えなしじゃないんだぞってさ」
「………確かにそんな感じのニュアンスの物言いというか、たしかに言ってたけど……でも、アイツらの言ってたことってそんなことか?」
「わからない……でも、彼らが僕の言葉にイライラしてたのは確実だよね。僕だってそうだもん。それで考えて……思ったんだ」
「何を?」
「彼らは何かしらの作戦を実行する時、いつも中心にいた。乃咲が大まかな作戦を立てて、カルマくんは成功率を上げる為に必要なことを考えて、いつもの悪知恵を働かせて、みんなを支えてくれてた」
「じゃあ、僕らは?確かに作戦の一つ一つで役割を貰ってる。でも、自分にしか出来ないことって意味合いでの役目は少ないよね。極端にいうと、僕らがいなくても彼らは作戦を立てられるし、殺せてしまう」
「特に乃咲はそうだよね。冗談抜きで殺そうと思えば殺せる。不良がイキってる訳じゃない。現実にそれだけの実力はあるし、この前もビッチ先生が止めなかったら……殺せんせーは死んでた。これは極論でもなんでもない。動きようのない事実として、殺せんせーを殺すって目的に絞れば、いつでも実行できるし、乃咲に僕らの協力なんて必要ないんだよ」
「でも、それを実行しない。乃咲本人も言ってた様に、自分1人で終わらせたくない。みんなで終わらせたいから。彼がそう言ってる余裕がある今だから、僕らもカードが欲しいんだ」
「僕らの考えてる作戦に、あの2人は絶対に欲しい。もちろん、他の殺す派のみんなも欲しいけど、目指してるのは、いてくれたら成功率が上がるってレベルの作戦なんだ。彼らがいざとなったら自分たちだけで実行できるのと同じ様に、僕らも、いざとなったら僕らだけで実行できる手札が欲しい」
「この前、乃咲の家でトランプしながら話をした。あの時とゲームの種類は違うけど、ポーカーで言うなら、僕らが目指してるのはスリーカード。そこに殺す派のみんなを加えてフォーカード、ファイブカードにしたいんだ」
「…………渚はポーカーにJOKERを入れる派か」
「入れたほうが面白いじゃん」
「……ま、わかるけど」
千葉くんは考え込む様に手を組んで俯く。そしてゆっくりと顔を上げて口を開いた。
「まずは役を作って、勝負できる状態にする。その役を強化する為に殺す派の力が欲しい。つまりはそう言うことだな?」
「うん」
その確認に頷くと、千葉くんは頷き返してくれた。
「わかった。俺でよければ力を貸すよ」
「……ほんと!?」
「嘘ついてどーすんだよ。実際、殺せんせーを助けられる方法を探すこと自体には誰も反対してないだろ。乃咲たちもな。具体性が何もない状態で助けたいを連呼しても意味がないって意味合いだからな、あの時の言葉は………。実際、乃咲自身は方法が見つからなくて挫折したって言ってたけど」
「分かってる。でも、それは乃咲1人で考えたからだと僕は思う」
やはり、思えば不思議だと思う。乃咲といえば、僕らの中では最高戦力であると同時に、指揮官みたいなイメージがある。適材適所というか、みんなに指示を出してる時の乃咲は人を使うのが上手いイメージがあった。
初めての合同暗殺の時は、まだ僕らは何が得意とかそんなことも分かってなかった。お互いのこともよく分かっていなかった。でも、そんな状態でも指示は的確だった。誰に負けるか、どんな風に指示を出すのか。
クラスから浮いていた寺坂くんたちに、当時の彼らならしてもおかしくない行動を取らせて殺せんせーの注意を誘導したり。そう言えば、その次の律を交えた合同暗殺の時は千葉くんに何処に、どう撃てば殺せんせーの触手を壊せるのかを指示していた。
乃咲は、周りを頼れないヤツじゃなかった。
でも……いつの間にか、乃咲が1番強くなって。いざという時は俺がやればいいって。そんな考え方になってしまった。そんな風に思う。周りを必要としてない訳じゃない。周りを軽んじてる訳じゃない。ただ、どうやっても動かない事実として自分が1番目的を達成する可能性が高い。
いつだったか、乃咲は言っていた。ぼやいていたという表現が正しいのかもしれない。たしか……そうだ。なんとなく、彼や殺せんせーがゾーンと呼ぶ能力の詳細が気になって何気なく聞いた時のことだった。
『俺の力はざっくり言うと自分自身を超加速させるというものだ。素早く動ける分、その動きに追従する為に思考も早くなる。あるいは逆かもしれないけど……。まぁ、そんな理由で1秒が何分にも、何時間にも感じる訳だな』
『僕らの目には瞬間移動してるようにしか見えないアレはゾーンを使いながら動いてるんだよね?でも、実際、そんな能力があれば無敵じゃないのかな………。いや、誰かと敵対するとかそう言う意味じゃないけど』
『たぶん、1対1って状態や、多対1って状態でも1の側が俺ならそうだと思う。でも、やっぱり欠点はある。俺のチカラは加減が効かないんだ……。制御はできるけど、力加減が出来ない』
『……えと、ごめん。考えてみたけど想像できないや』
『えっとな。ある意味当然だけど、早く動く為には、それだけ強い力が必要になるんだ。力を弱めるとその分、遅くなる。だから、素早く動くけど力は弱いってのは出来ない』
『あー。漫画とかで良くある、スピードタイプは力が弱いのが弱点!みたいな奴の逆ってこと?』
『そ。でも、これって当然だろ?スピードが出てるってことは、それだけのエネルギーで打ち出されてるってことなんだから、力が弱いわけがない。でも、制御は出来る。素早く動いて、即時停止ってのは出来る。でも、その停止する瞬間は力を下げてる訳だから、当然、動きが遅くなる』
『……確かに当然だけど、それって弱点かな?』
『状況次第ではな。俺の力は他人を守るのには向いてない。例えば……車に轢かれそうになってる人がいるとする。車は目と鼻の先、轢かれるまで3秒とない。でも自分は車が人接触するまでに撥ねられない位置まで突き飛ばせるポジションには辿り着ける』
『うん』
『で、問題はここから。ポジションに辿り着けるけど、選択肢は3つある。車を吹き飛ばすか、自分を身代わりに人を突き飛ばすか、轢かれそうな人ごと安全圏までぶっ飛ぶか』
『1番最後のやつの方がよくない?』
『だろ?でもな、ここでさっきの話が出てくるんだ。ゾーンでは力加減ができない。早い話しがONかOFFか。素早く動くには相応の強い力がいる。ゾーンに入ったまま、誰かを巻き込んで飛んでみようものなら、車に轢かれた方が軽傷で済むレベルの怪我をする可能性がある。ならばとスピードを落とせば、車との距離はどんどん縮まり、相手を助けようとするなら、ゾーンから抜けた状態で突き飛ばすしかない。でも、その直後に自分が轢かれるだろう。車を吹き飛ばせば……まぁ、運転手がただではすまないよな』
『そう言われると……確かに』
『殺せんせーが超スピードで俺たちに触れたり、一緒に飛んだり出来るのは、あの柔らかい触手を無数に持ってるからだ。触手で俺たちへの衝撃を防ぎ、空いてる触手で風圧とかそう言うのをブロックしてくれる』
『確かに、まえにソニック忍者見せてもらった時も一緒に飛んでるのに風は殆ど感じなかったよ』
『殺せんせーの力は最強じゃない代わりに器用万能。俺の力は最強の代わりに個人芸特化って言えば自分的にはしっくりくるな。殺せんせーは本気で動いても触手で風圧とかを防げるからよっぽどの近距離じゃなきゃ力に制限はあまりないけど、俺は周りへの被害を力を使いつつ抑えることが難しい。前提として、俺が本当の意味で全力かつ本気を出すには、周りに誰もいないことが必須なんだ。誰かを守るのに向いてないって意味、伝わったか?』
あの時、乃咲はこう言っていた。
力加減ができないから、他人を助けるのに向いていない。そもそも全力を出すには周りに誰もいないことが必須。それを自覚しているからこそ、無意識のうちに周りを頼らず、1人で解決する方向に思考がよってるのかも。
「このクラスにはさ、いろんな奴がいるじゃん。みんなそれぞれに得意分野があって、得意なことに関しては誰にも負けないような強みがさ」
「それは彼らも分かってると思う。普段指揮をしてくれてるんだからね。でも、僕らだけの底力を見せたいんだ」
「今は殺せんせーを助けるって目標に対しての進捗はゼロだと思う。計画してるだけで、実行はできてないし、計画すら完成してないから。でも、もし、計画を完成せることができれば……彼らが数字を大きくしてくれるって僕は思うんだ」
「カルマくんが前に言ってたんだよ。乃咲は手持ちのカードで最大打点を出せる奴だって。だから、僕らは見せつけるんだ。ゼロを1に出来ること。その可能性を。その上で、お互いに力を合わせたいんだ。そうすれば、きっと、殺せんせーを助ける方法は見つけられるって、信じたいんだ」
信じたい。そのだけは弱気になってしまった。
千葉くんは、そこをついて言葉を投げてくる。
「水を差すようで悪いけど、見つからない可能性もあるんだぞ?」
「分かってる。だから、この計画がダメだったら……諦める。何があっても諦めないっ!って言いたいけど、でも、それをやったら本当に乃咲の言う通りだもん。助けたいばかりで現実を見てない奴って」
「そこまで直接的には………あ〜……まぁ、言ってたか」
磯貝くんがフォローしようとして諦めた。
みんなも苦い顔をして目を逸らす。
「だから、この計画に全力を注ぐ。失敗しても後腐れなく……は無理だと思うけど、僕らは出来ることをやったんだ、その上でダメだったんだって、少しでも納得したいから」
「………チャンスが欲しいってことだな」
「………うん。一言で言えばね」
「なら、尚更協力しない理由はない。俺は狙撃メインだ。みんなが作った隙をついて攻撃してきた。俺が暗殺に挑み続けられたのは、みんながチャンスをくれたからだ。だから、今度はこっちが力を貸す番だ」
千葉くんが力強く頷いてくれる。今の僕らにとっては滅茶苦茶嬉しい助っ人だ。何せ、建物の構造に関しては彼が僕らの中で1番詳しい。
「ありがとう、よろしくな。千葉」
「しょーじき、すげぇ助かるわ。ロケットの発射場の図面を手に入れたのは良いけど、監視カメラとか警備の配置だとか。そういうのがちっともわからなくて。どんな意図で空間を作ったか〜とか、お前、そういうの詳しいじゃん?」
「だね、すごいベストタイミングだったよ!欲しい時に欲しい人材が来たって感じ?」
みんなも同じ認識だった。口々に千葉くんの登場と参加を歓迎する声を出している。すると、彼は意味深に言った。
「……ベストタイミング、か」
千葉くんが顔を動かした。長い前髪の所為で視線は分かりづらい。でも、その意識の波長が向く先にさりげなく視線を向けると、窓の外を見ていた。
どんどん遠ざかって小さくなっていく、うちのクラスのバカップルの後ろ姿があった。
「意地を張ってるの、お前だけじゃないってことだな」