加えて、たくさんの高評価、感想ありがとうございます!
今回も投下させていただきます!
最後までお付き合いください……!
『ねぇ、乃咲。久しぶりにわかばパークに行かない?』
カルマとの電話が終わった後、タイミングを読んだみたいに掛かってきた着信にて渚はそんな誘いを掛けてきた。
わかばパーク。綾香ちゃんたちがいる保育施設か。確かに最近は顔を出していなかったような気がする。
『さくらちゃんに勉強教える為に顔を出してるんだけどさ、大体の確率で綾香ちゃんがいて。寂しそうにしてたよ』
「それ、別に俺がいなくて寂しいとかではないと思うが……。それならLINEしてくれればいいのに」
『恋人が出来てもその辺は鈍感なままだよね』
「鈍感な訳じゃない。シンプルに『寂しい思いをさせてごめんよ〜!』とか言いつつ絡みに言って『別に、先輩がいなくて寂しいわけじゃないです』とか言われたら…………ねぇ?」
『変なところで小心者————』
「興奮しちゃうじゃないか」
『変質者の間違いだったね』
「渚でご飯3杯いける男だぞ、俺は」
『せめて倉橋さんって言いなよ』
「お前を……いつも狙ってるぞ!」
『小心者の毒蛇め………』
渚から着信が来た時、正直に言えばビビった。この前のこともあるし、自分に非があるのも分かってる。ただ、それでも普通に会話する為にはどうするべきだろう。なんて考えてしまった程だ。だから、今、結構普通に話せていることに安心した。
もともと、仲が悪いわけではないと……俺は思ってる。たぶん、暗殺さえ絡まなければ、こんな風にみんなとも話せるだろう。その暗殺の話題で自分が最初の主張からかなり揺らいでいるのが俺に取っては問題だった。
渚たちが殺せんせーを助ける為の計画を立てることは知ってる。そして、今の俺にはその計画に対する代替案がない。そう言う意味で、代わりの案がない以上、議論や方向性を決める話し合いで自分には勝ち目がない。
そも、勝ち目云々の話ではないことは分かってる。でも、渚が出してくる意見を素直に受け入れられるかが分からない。いざとなったら俺なんか放っておいて、当人たちで勝手に実行してくれた方が気が楽だ、なんて甘ったれた思考が脳裏をよぎるくらいに。まぁ、それでも俺に声をかけてくれるかも、なんて考え自体が甘えである自覚はあるさ。
俺なりに考えた、ではない。俺は考え抜いた。そしてダメだった。助けられる方法は出て来なかったし、可能性を感じる手段はあったけど、実行できるとは到底思えないものばかり。だから、俺は諦めた。
だからこそ、渚の案を素直に受け止められると思えなかった。この前、そうしてしまった様に、つい口から否定が出てくるのではないのか。そんな可能性が頭から離れない。
分かってるさ。論点がどんどんズレていってる。
最初は責任だった。殺せんせーを殺すことで確実に地球滅亡を回避すること。それこそが、それを実行できるだけの能力を持ってしまった俺の責任だと思っていた。だって、元を返せば父さんの研究が発端だった。殺せんせーが超生物になったのは、地球を破壊する触手細胞なんてものを作り出したのは叔父だった。
まぁ、柳沢のやらかしについて背負うつもりはないけれど、でも、この事件そのものが俺にとって無関係ではいられないことだった。自分のルーツが関わってるんだから当然だ。
これに対して俺には関係ないと言ってしまえる奴がいるのなら、是非目の前に連れてきて欲しい。俺が悪いなんて思ってない。でも、俺には関係ないとは言えない。関わってしまったのだから、確実な方法で、より大勢が助かる方法を取る。それの何が間違っているのか。殺せんせーを助ける為の方法も考えたけど思い付かなかった。だから、責任を取った。
そんな責任感に加えて、殺せんせーや烏間先生やビッチ先生の生徒として、教わったことを活用してこの教室の最初の目的であった、殺せんせーを暗殺するという目標をやり遂げる。初志貫徹することが彼らへの恩返しである、という自分の考えがあった。だから、俺は殺すべきだと主張した。
責任感とやりたいことを殺せんせーに生きていて欲しいと言う願いとで天秤に掛けた結果だった。
だから俺は最初、助けたいとしか言わない渚に言い放った。今のお前の意見は空想や夢想の類で現実や実現には程遠いんだと。足蹴にした。助けられる方法なら俺も考えた。でも、見つけられなかった。だからこんなことを言ってるんだ。どうしてそれが分からないんだと苛立った。
それからだ。話の論点がおかしくなり出したのは。
助けたいか、殺したいか。意見は二極化された。どちらかしか選べない。そんな風になっていったし、俺の思考もそういう方向に寄って行った。
生きてて欲しいけど、方法がないなら殺したい。生きてて欲しいから、方法を見つける。中間の意見は何故だか誰も出せなかった。期間を設けて探し、ダメだったら殺す。想像しなかった訳ではない。でも、意見としては出せなかった。
そんな時、父さんが俺に言った。確実に殺せるというのなら、助ける方法を探すのは悪いことではない。むしろ、できると確信してることと、出来ないかもしれないことならば、後者に挑戦して欲しいと。俺が背負おうとしていた責任は大人が背負うべきで、自分が背負ってみせるからと。
そう言われた時、嬉しかった。肩の荷が降りた気がした。
でも、同時に思った。渚の言葉に苛立っていた理由。その大部分と言える、彼らにそんな意図はないのかもしれないけど、俺がそう感じたというある種の被害妄想に似た胸に刺さったトゲ。
——まるで、俺が殺せんせーに死んで欲しがってるみたいだ。
この話題が始まった時から、ずっと頭の中で思っていた。渚や、助けたいと言ってる連中の言葉を聞くたび、彼らが話し合っていると耳にする度に、そんな声が聞こえてきた。
俺には、俺なりの信条がある。方法は探したけど見つけられなかった、だから、家族や友達や何も知らない人を確実に助ける為に、殺せんせーに地球滅亡なんてさせない為に殺すことを選択した。地球滅亡は、俺たちの死でもある。先生が大事にしてくれた俺たちを先生自身の手で殺させない為にも。
それを何度考えても、やっぱり間違ってるとは思わない。でも、それなのに、心のどこかでチラつくんだよ。
——なんで?なんで渚たちの会話に加わらないの?生きてて欲しいのが本心なら、協力するべきだ。カルマを説得し、他の殺したい派の奴らも一緒になって探すべきだ。殺せんせーに死んで欲しくないのがみんなの共通の思いならできるだろう?
そんな言葉が脳裏を過り続ける。居心地が悪くて仕方ない。思考がまとまらなくて気持ち悪い。
殺せんせーを殺すことにした理由に、動機に間違ってる部分はないはずだ。後悔はするだろう、それでも、これも正しい選択だと確信してる。だから、渚に謝ることはしなかったし、まだ、そんなつもりもなかった。
俺は、これを意地だと思っていた。
………でも、きっと、実際は違うんだろう。
正直に言うと……なんとなく、分かってはいる。どうして渚の言葉に苛立ちを覚えるのか、どうして殺す派のみんなを説得しないのか、なぜ、助ける方法を探す話し合いに加わらないのか。
とてもありきたりで、くだらなくて、しょうもない。そんな考え。意地だなんてたいそうなものじゃない。もっと矮小で惨めでレベルの低いプライドと自意識。
——俺は、きっと…………。
「つーん……」
「ほったらかしにてごめんよぉ〜」
「ふーん」
頬を膨らませてそっぽ向く綾香ちゃん。
可愛い後輩の構ってアピールにほっこりしつつ、どうしたものかと考え込む。これがヒナなら、頬を突いて中に溜まってる空気を押し出すんだけど。流石にそれは出来ないからなぁ。
当のヒナと言えば『別の女の所にいくのね!?』とハンカチを噛んでいた。だから、俺も負けじと3年目の浮気ごっこを初めてみたのだか、ノリノリで返してくる彼女とのやりとりはキリがなくなりそうなので、適当に切り上げて来たのである。
「乃咲さぁ、女心分かってないよね。綾香ちゃんってば、冬休みに入ってから毎日来てるし、渚が来る度に入り口を見て、アンタがいないことを確認するとスマホを眺めて寂しそうにしてたんだから。偶には連絡してやんなさいよ」
「へへぇ。さくら姐さんのありがたいお言葉、頂戴しやしたぁ〜。金言として心に刻みヤス」
「ふふん!」
「ちょっとさくら!余計なこと言わなくていいからっ!先輩も本気にしないでくださいね、別に寂しくなんてなかったんですから!勘違いしないでください!」
「乃咲、これがツンデレよ」
「へへぇ〜」
「ッ〜!先輩!そのキャラ付けなんなんですか!?」
「さくら姐さんの腰巾着?」
「……何してんの、3人とも」
さくら姐さんと綾香ちゃんを弄っていると渚がシラ〜っとした目を向けてくる。まぁ、会話に入って来れなくて疎外感を感じてるようなニュアンスを覚える視線だ。
「あとさくらちゃん。あんまり歳上を呼び捨てにしたらダメだよ。僕らはいいけど、怒る人は怒るからね」
「えー」
「えーじゃありません。乃咲も、しっかり注意しないと」
「それはそうだけど真っ先に呼び捨てにされてる奴に言われても……」
「うぐっ……。実は密かに、乃咲のことはしっかり敬称つけて呼ぶんじゃないか〜とか、乃咲なら注意してくれるんじゃないか〜とか期待してたんだもん」
いつもなら、人任せかよ。なんてスラスラと軽口を叩いたはずなのに、言葉が出て来なかった。
「渚こそいいの?先生目指すって言ってたじゃん。それこそ注意するなんて先生の仕事じゃないの」
「ぐさっ……」
「……潮田さん、先生になりたいんですか?」
さくらちゃんの鋭い指摘に突っ伏す渚。そんな一連の会話を聞いて興味を持ったらしい綾香ちゃんが首を傾げた。
「うん。今年の担任の先生に憧れた……で、良いのかな。うちの教室の生徒はみんな先生が好きだよ。ね、乃咲」
「………うん、そうだね」
「……先輩?」
「ん?」
「………?いえ、すみません。なんか違和感があったので」
違和感。何かあったのだろうか。
少し考えるが、思い当たる節はない。
「(先輩、偶に口調がすごい穏やかになることは前からあったけど……潮田さんは気にしてないみたいだし、気のせい?)」
「乃咲は?渚みたいにちょくちょく綾香ちゃんに勉強教えてるんでしょ?先生になりたいの?」
無邪気な質問に思わず苦笑する。教師か。まぁ、先生たちを見てれば真っ先に憧れそうな職業だよな。
自分の経験を伝え、時に道を示し、時に共に考え、時に見守り、時に叱ってくれ、そして守ってくれた。自分も将来はあんな風になりたいと思うのは自然なことだろう。
「うーん、俺はいいかな。先生って柄じゃないし」
「そうですか?私は結構良いと思いますけど……。少なくとも私は先輩のおかげで学校に行く気になれましたし、成績も上位に返り咲くことができました」
「それは綾香ちゃんがしっかり俺の話や伝えようとしてることに興味を持って、聞く姿勢を作ってくれたおかげだ。キミの頑張りを俺のおかげとか言えるほど大したことはしてないし、これからもできるとは思えない。だから、俺には向いてないよ」
「それは違うと僕は思うな」
後輩の言葉をやんわりと否定すると、渚から横槍が入った。
「俺の陰で〜とか言うのは違うけど、
渚から飛んできたのは叱咤だった。それは違うと言い出したから、どんな展開になるかと身構えたが、まさか叱られるとは。
まぁ、確かに言われてみるとそうだ。烏間先生や殺せんせー、ビッチ先生に感謝を伝えたのに『私は何もしてない』とか言われたら複雑な気分になる。言うか言わないかで判断するなら間違いなく、あの人たちは言うだろうけど、それは俺の様な卑屈な姿勢ではないだろう。
「ごめん、綾香ちゃん。無神経だった」
「いえ!?そんな謝ってもらうことじゃないですから!」
謝ったら凄い勢いで謝罪の受け取りを拒否られた。
これはこれで複雑だ。
「実際、僕は乃咲が先生に向いてるかは分からないけど、"あってる"とは思うよ。松方さんの代わりにここの手伝いに来た時、乃咲は綾香ちゃんに勉強に興味を持ってもらう為に一生懸命考えてたし、その結果、今もこうして慕われてるんだから。それに、乃咲は責任を果たそうとするでしょ?正直、うちの学校にも無責任な先生はたくさんいるから子」
「………また責任か」
「え?」
「なんでもない」
責任。その言葉を最近は随分と聞く様になった気がする。
いや、元々その辺に溢れている言葉が、自覚した途端に鮮明になっただけなのかもしれない。
責任を果たす者が、責任を果たそうとする者が自分にとって目指すべき強者の像だと定義した日から、耳に残る機会が増えた。知ったばかりの言葉をよく聞く様になる現象に近いと思う。
まぁ、でも、仮に先生が俺にあってるとしても、今のお前程じゃないよ、渚。俺が"あってる"なら、渚は"あってるし向いてる"と俺は思う。照れくさいから言わないけど。
「ていうかさ、先生ってどうやればなれるの?」
「うーん……。確かに高校に行って、大学に行って、免許とって〜とかそんなイメージしかないわね」
「高校かぁ……。渚はどこ行くの?」
「蛍雪大学附属高等学校ってところだよ」
「かなりの難関校では?」
「あはは………だから猛勉強中」
渚も進路は決まっていたのか。ってか、違うな。俺が進路を決めるのに時間をかけすぎたんだよな。早ければ先行入試は始まるだろうし。普通ならとっくに希望が決まってるだろう。
「乃咲は?随分悩んでるって聞いたけど」
「俺もこの前決めたよ。外国だから学校名を言ってもわかんないだろうけど……」
「………え?先輩、海外留学するんですか?」
「そんなとこ。父さんの知り合いで高校を経営してる人がいてさ。うちの理事長の後輩で一応は系列校扱いなんだって。そんで父さんの知り合いで、系列校の主席って縁で声を掛けられたんだよ。向こうじゃ1学期の始まりは日本でいう秋からで、日本の学校を卒業した後で入学すると1学期スタートまでに間が空きすぎるから、テスト受けて、一定以上の点を取れれば、出席日数とか諸々を捩じ伏せて飛び級扱いで進学することになってる」
少し説明すると、3人とも面食らったような表情になった。
「飛び級って本当にあるんだ……」
「……そっか。決めたんだ」
さくらちゃんは創作でしか聞いたことのない様な単語に驚いた様な反応を示し、渚は感慨深そうな、寂しそうな声を出す。
ただ、綾香ちゃんだけが何とも言えない顔をしていた。驚いてるし、複雑だし、寂しそうでもある。
「…………少し……いえ、かなりショックです」
「そう?」
小首をかしげると、渚から肘で小突かれた。
いや、流石にここで綾香ちゃんの気持ちが分からないほど人の心を捨ててはいないぞ。そら仲良くなった人が会おうと思って会えない場所に行くとなると寂しいし、ショックだろう。
でも、ずっと向こうにいるわけではないし、いつかは帰ってくる。ヒナにも会いたいからちょいちょい帰国するだろう。それに、LINEなりなんなりで連絡もいつでも取れる。
「先輩と同じ高校に行けたらって思ってましたから……」
「…………そっか」
俺と同じ高校か。確かにそれはそれで楽しかったかもな。正直に言えば嬉しいものだ。後輩が自分を慕って同じ進路に進もうとしてくれていたと言うのは。
「大学はどこに〜とか考えてます?」
「うーん、正直な話し、行かないより行ったほうがいいんだろうとは思ってるけど、大学に行ってまで学びたいこととか思いつかないしなぁ………。将来の夢とかあんまりないし。漠然と何でも屋とかやってみたいな〜って程度」
話しておいてなんだけど、後輩に進路をあんまり考えてないのとをカミングアウトしてるよな、これ。情けない。
しかし、そう思っていたのは俺だけの様で、彼女はと言うと身を乗り出して、思いもしないことを宣言した。
「なら、私は先輩の何でも屋で働きたいです」
——いや、止めておいた方がいいぞ。本当に漠然と考えてるだけだし、何でも屋なんて多分、儲からないぞ。普通に大学行って、普通に就職した方が絶対にいいよ。
なんて野暮なことは言わないでおこう。まぁ、流石に冗談だろうし、そう言えばこんなこと言ってたなぁ〜と思い出せるくらいに自分の中で留めて記憶しておこう。
「分かった、その時が来るのを楽しみにしてる」
「はいっ!」
力強く頷く後輩が微笑ましい。
微笑ましいのだが……正直、彼女がどうしてここまで慕ってくれるのかが分からない。俺はただ、ちょっと勉強に興味を持つための方法を試行錯誤して伝えたに過ぎない。
それとも、案外、こんな感じの距離感が普通なんだろうか。俺が烏間先生を尊敬してるのも、あの人からみたらこんな感覚なのかな。どうしてこんなに懐いてくれるんだろう?みたいな。
「ははは、じゃあ綾香ちゃんもしっかり勉強しないとだね」
「頑張りますっ、せめて大学は同じ所に行けるくらい学力をつけたいです」
「へ〜。いいなぁ。ねぇ、じゃあ渚は先生になったら私を生徒1号にしてよ」
「え?さくらちゃんはもう生徒1号だと思ってるよ?」
「そうじゃなくて!私の学校の先生になって!」
「えっと、さくら……。それはちょっと厳しいんじゃないかなぁ……歳の差的に。あーいやーうん………」
「だったら綾香ちゃんだってそうじゃん!私と渚以上に歳近いんだから!1歳差でしょ?乃咲が会社作ってもまだ学生じゃん!」
この2人は結構仲が良いらしい。姉貴分と妹分って感じ。
「うぅ……先輩っ、海外に行っても勉強教えてくださいねっ!先輩が大学にいくなら、私も同じとこ目指しますからっ!」
「っじゃあ私もっ!渚!私も先生になるからっ!」
「お、落ち着こうか2人とも!」
荒ぶる歳下の女の子たちを渚が宥める。
結構、ありふれた光景なんだろう。きっと珍しくもない。仲のいい子供同士で将来は〇〇になる!と語り合う光景は。
………でも、その"将来"を守る為には殺せんせーを助けるか、殺すか。それを選ばなければならない。
可能なら助けたい。でも、どうしても俺の頭は前向きにはなれない。可能性というのは、あるだけで問題だから。
殺せんせーを助ける方法が見つかったとしても、それが"確実"と言えるものでなかったら?世間は納得するか?
殺せんせーを助ける方法を探す途中、もしも失敗してしまったら?探す方法によっては、俺たち自身が暗殺から離されてしまうかもしれない。俺たちが何をどんなに訴えてても、世間から見た俺たちは、超生物に洗脳された子供たちに見えるんじゃないのか?だって、その方がマスコミのネタになるだろう?そういう偏向報道をされる可能性の方が絶対に高い。
殺せんせーを助ける為に動くこと自体、本来ならリスキーだ。だって、政府的にも殺すのが確実なら、そっちを取るだろう。そんな中、助けようと動いてる奴らは邪魔でしかない。
俺たちが政府の思うシナリオに必要な間はまだしも、必要ないと判断されたら、殺せんせーと接触すら出来なくならかもしれない。そして、悲しいことにそれはないとは言えない。
その場合、本当に最悪な展開としては、いざとなったら俺が殺せんせーを殺すというプランすら出来ず、地球が滅亡してしまうだろう。それこそ、殺せんせーが自殺でもしない限り。
……分かってる。殺せんせーは確実に、本当にその日までに誰も彼を殺せず、3月13日を迎えたら……自殺するだろう。
それが、何より不幸な結末だ。だからこそ、俺には何が何でも助けるなんて選択肢は選べない。選べるもんか。
そんなことになるくらいなら、暗殺期限まで必死にやってる姿を見せて、最後まで暗殺の協力者としてのポジションを確保し続け、殺せんせーの側にいる方がいい。少なくとも、助けるという選択を強行した時よりは不幸な結末を迎える可能性は低い。
でも、これはみんなに話すべきなのか?似た様なことは話したことがある。でも、いろんなモチベーションに関わる部分だろう。助けようと動いてることを否定するみたいになりかねない。
————駄目だ。考えが頭に溢れて気持ち悪い。
殺せんせーを助けられないから殺す。それは確かに選択の一つだけど、でも、それは、目の前で何気なく未来が当たり前にくると思ってる後輩たちを見てないし、選んですらいないと思う。
なら……。彼女たちや家族や友人の未来を守る為に殺すという選択の方が、よっぽどマシだと思ってしまう。
俺は、死にたくないし、そんな想像なんてしたくない。だから、これは完全な綺麗事だ。でも、それを承知の上で言うのなら、何をしても死を待つだけの状況で誰かに俺が殺される理由で聞かされるなら、助けられないから殺すと言われるより、みんなを守る為に殺すと言われた方が救いがあると思う。
それに、父さんの言葉で心が軽くなったのは事実だけど、それでも、俺たちが責任を背負わない理由にはならないだろう。選ぶと言うのは、責任を背負うと言うことのはずだ。
でも、これもきっと言い訳だ。
——俺は、きっと……怖いんだ。
ここまで考えた上で、殺せんせーを選ばないという選択をした。
殺せんせーを助けられないから、と少しでも前向きな意見を出す為に色々と理屈をつけていたのに。もし、殺せんせーを助けられる方法が本当に見つかったら?
俺は、何をしていたのか分からなくなる。
自分なりに良い方向を目指す為に選んだこと、考えたことが否定されるような気がして。それが……怖い。
「ねぇ、乃咲。この後はまだ時間ある?学校にいかない?」
考えるほどに論点がズレる。情緒がおかしくなってる自覚はある。俺は、俺の考えや思いや懸念は……間違ってるのかな。
——違う、間違いなわけが無い。
——なんで周りの為に、より不幸にならないで済む方向を目指すことを間違ってると言われなければならない?
——それも違う。そういう話では無い。
渚たちに可能性を示してほしいと言っておいてこれなんだから笑えない。自分が無様で仕方ない。
「俺は別に構わないよ」
情けない話、俺は自分の意見に自信が持てなくなっていた。
そもそも、自分の意見が間違っているのではなく、考え方に大きな見落としがあるのだと。今の俺は気付きもしなかった。
あとがき
はい、あとがきです。
圭一の悪いところが出てますねぇ……。
それを口に出せって思考をすぐにするし、口に出そうにも、話せる状況じゃ無い場面や、話せる相手がない場面でやりがち。
間違ったことはしてないし、言ってないし、考えてもいないのに、圧倒的に報連相不足というか。
悩め、青少年!
ご愛読ありがとうございます!