暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想ありがとうございます!

思ったよりA組の乃咲を楽しんで貰えたようで安心しました(笑)

今回も投下しますのでお付き合いください!
少しだけ短めになってますが…………。


197話 対話の時間 4時間目

 

 息も絶え絶え、疲労困憊。 

 死屍累々とひとまずようやく休むことにした俺たちは、まだ寒い風の吹く1月だと言うのに校庭にブルーシートを広げてスポドリを飲みながらぐったりと座っていた。

 

 あー、この乾いた冷たい風が心地いいなぁ……。

 

 頭を預けてくるヒナに肩を貸しながら、空を見上げて感慨に耽っていた。久しく忘れていた、息を切らしながら、喉から血の匂いがするくらいに走り続ける感覚。まだ、あんな風に感じることができるんだな、俺も。

 

 スポコン物の様な青春に憧れたことがないわけではない。でも、少なからず今の俺にはそんな爽やかな思いはできないだろうと思っていた。だから、やっぱり嬉しいな。こうやって体を動かして疲れることができるのは。

 

「………渚くん」

 

「………なに?」

 

「………ごめん。正直、舐めてた」

 

 ヒナの頭を撫でながら、青空を眺めて爽やかな気持ちを味わっていると、カルマと渚の声が鼓膜を叩く。

 2人は物理的に向かい合うことはしていなかったが、お互いに話す意思はあるのか、ブルーシートに寝そべりながら、相手の反応に耳を傾けている様だった。

 

「走り切るなんて無理だ。どっかで根をあげる。そう思ってた。だから、驚いたよ……。まさか、俺と同じくらいまで走って、乃咲クンが終わるまで一度も止まらなずに本当に走り切れるなんて、考えもしなかった」

 

「………それをいうなら、僕もだ。乃咲が終わるまで走る。カルマくんならそうすると思って、僕も意地を張ってた。でもさ、実際に走ると……想像以上にキツかった。乃咲やカルマくんが考えてることは、ここまで単純なことじゃないのかもしれない。けど、アイツと同じ覚悟を背負うって意味がさ、なんとなく分かった。そりゃ怒るよね……こんなキツい思いをすることも覚悟してるのに、具体的なことを何も考えずに力を貸して、なんで貸してくれないの?って言われたら。ごめん、無神経だったよ」

 

 カルマも渚も、相手の本気具合が分かった。

 渚の殺せんせーを助けたいという願いの強さも、カルマの俺と同じ覚悟を背負いたいって気持ちも、お互いに理解した。

 

「雨降って雨降って地固まる……っていうにはまだ早いな」

 

「かも……。お互いの気持ちとか、覚悟みたいなのは分かった。結論を急ぐわけじゃないけど、結局のところ、この後どうするか。それが決まってないんだもんね」

 

 そう、お互いに理解はした。本当の意味で、相手の本気具合は理解できたことだろう。しかし、ここで分かったのは、それだけ相手は本気で、譲れない部分もあるってこと。

 悲しくて、難しい話ではあるけど、理解するとか分かり合うとか。それは何も、良い意味だけではない。

 極端な話、お互いに分かり合えないことを理解するのだって、一緒の分かり合えたと言える状態なのだ。

 

 宇宙世紀系のガンダム世界でも、人類が全員ニュータイプになったら、争いが起こらなくなる。みたいな話は良く出るがそれは単に、誤解なく分かり合えた結果、みんな仲良しになった。とかではなく、誤解なく分かり合えた結果、お互いに相容れないことを分かり合ったので、関わり合わない様にした。だから、争う必要がなくなった。そんな世界になるんじゃないかな。

 

 つまるところ、理解することで相容れなさを知ることもある。殺す、助ける。この真逆な意見は、そんな危うさがある。

 

 何気なく空を見上げて、ヒナを抱えながら横になる。そういえば、これまで何度か同衾してるのに、ヒナに腕枕とかしたことなかったなぁ〜とか思いながら、初めての腕枕をしてみる。

 

「……イチャイチャしやがって」

 

「ま、特権だわな」

 

 突き刺さるいくつかの視線を軽くいなして見上げた空は蒼い。

 愛しの言葉とはといえば、腕はちょっと居心地悪かったのか、俺の身体を抱き枕の様に扱って、顔を肩と胸筋の辺りに運んで具合を確かめるように動いていた。

 

 ちょっとくすぐったいけど、本人は何処となく楽しそうなので好きにさせておきつつ、俺は俺で考えていた。

 

 実際、相入れなさを知ることはあるだろう。

 だが、みんなだからと言って相手の主張も、自分の主張も無碍にするつもりはないようで、それぞれの居心地のいい体勢やポーズで考えているのが見えていた。

 

 うん。そうだ。少なくとも、お互いの本気や、やり切る覚悟を見せた今となっては、考え足らずだとか、口だけだとか、楽な方を選んだとか、そんなことを思う余地はない。

 

「………俺は、殺せんせーを助けたい」

 

 空を見上げながら、呟く。

 俺の声に、みんなが耳を傾けるのが分かった。

 

「探す場所の目処は付いてた、でも、実行するのは現実的ではないと思っていた。だけど、今は渚たちが考えたプランや、こうしてみんな同じことをやり切るためについて来てくれるんだって分かったから、可能性はあると思う」

 

「思うところがないわけじゃない。実際にやるとして、誰が責任を持つのか。こればっかりは、俺たちみんなで背負うとか言っても、最終的な責任者は烏間先生になってしまうし、最悪は俺たちの親にまで飛び火するだろう」

 

「ただ、それでも殺せんせーを助けたい」

 

「そう言った責任とか、小難しいことを一旦置いておくとして、実際に宇宙に行くとする。でも、また疑問は出てくる。今度は、そこに行ったからといって、殺せんせーを絶対に助けられる保証はないってこと」

 

「助ける方法はあるかもしれない。ないかもしれない。あったとして、確実な方法ではないかもしれない。そうなったら、今度はどうすればいいんだろう?」

 

「暗殺期限まで時間はない。そもそも、暗殺期限ギリギリまで、俺たちが暗殺に関われる確証はないもしかすると、国が、世界が、最後の一大作戦に打って出るかもしれない。そうなれば、俺たちは殺せんせーと会うことすらできないかもしれない」

 

「まして、暗殺期限までの2ヶ月間、暗殺をせず、助ける方法ばかりを模索しているとなれば、もっと早くに俺たちへ撤退命令が出るかもしれない。俺たちが殺せんせーと関われるのは、国が暗殺依頼を出しているからだ。その命令を撤回されたら、俺たちには大義名分がなくなる」

 

「この山も、理事長の所有している土地ではあるけど、元を正せば国のものだ。地球の命運が掛かってる状態では、流石の浅野先生も部が悪い。戦ってくれるだろうけど、1国だけでなく、世界中の首脳相手となれば、流石にな」

 

「もう、現実的じゃないから、最悪の場合を考えて、みんなで殺そうとも言わない。我儘を通せるなら助けたいって思ってるから。でも、それはそれとして、線引きは必要なんだと思う。いつまで探すのか、探した内容で満足するのか」

 

「もし、このまま3月までこの教室を続けたいのなら、俺たちは、殺せんせーを助けるのが目的ではなく、助けるのは最終手段だと考えるべきだ。手を尽くしたけどダメでした、もう殺せないし、このまま地球が終わるくらいなら、殺すことはできないけど、超生物を助ける方法を試してみよう。こんな感じの状況に運ぶしかない。難易度はクソ高いがな」

 

「これが今の俺に考えられる今後の展開だ。少し悲観的かもしれないけど……なにか、意見はないか?」

 

 みんなに声をかける。

 すると、カルマが反応を示した。

 

「そうだと思うよ、実際に」

 

「今回、みんなも最後までやり切る気持ちとか、覚悟があるって改めて理解した。もう助けることを選ぶこと自体は否定するつもりはなくなったけど……。でも、理想論だけじゃどうにもならないからね。殺せんせーを助ける方法を探すまではみんなで出来ることかもだけど、見つけられるかは別問題だよ」

 

「殺せんせーを助ける方法は探す。でも、やっぱりタイムリミットは作るべきじゃない?」

 

 今度は渚が口を開いた。

 

「2人の言うことは何も間違ってないと思うし、僕もそう思う。実際、宇宙に行っても助けられる確証が持てるかは分からないのは事実だから。だから、やっぱり、助ける方法の探すのは宇宙に行った結果に賭けたい。それでダメだったら諦めるし、見つけられても、乃咲の言う通り、最後まで暗殺を続けるよ」

 

「宇宙に行く意外だと、通信施設を襲撃するか、世界の何処で、だれがやってるかも分からない取引を見つけだして奪うかしかないけど、流石に無理があるもんね」

 

「カルマくんの意見に僕も賛成かな」

 

 2人が話し終わったのを見計らって、まとめる。

 今回は、これまでの様な、その場の流れや、なんとなくではなく、自分で進行する意思で主導権を持つ。

 

「今の所の懸念点は2つ」

 

「宇宙に行っても確実に助けられる保証はないこと」

 

「暗殺期限ギリギリまで探し続けると、任務遂行の意思なしってことで、最悪の場合は殺せんせーと会うことすら出来なくなる可能性があること」

 

「それを踏まえた行動方針は3つ」

 

「殺せんせーを助ける方法を探す手段は、現状では一番可能性が高くて俺たちの手が届きそうな、宇宙に行くことに絞る」

 

「仮に助ける方法を見つけられても、暗殺は続ける」

 

「もし、見つけられなかったら、諦める」

 

「補足として、期限は……多分、今月一杯くらいが妥当かな」

 

「ざっくり俺とカルマと渚で出した話をまとめたが……みんなはどうだ?言いたいこととか、気になることは?」  

 

 俺の問いかけに答えたのは、ぶっきらぼうな寺坂の声だ。

 面倒くさそうに、けれど、いやいやという様子もなく、彼は俺の問いかけに真正面から応答した。

 

「ねぇな。カルマや乃咲の意見は、俺たち殺したい派の総意っつても差し支えねぇし、殺したくない派の奴らも渚の意見に異論はねぇだろ。その3人が考えて、出した結論だってんなら、文句はねぇ」

 

「……うん、寺坂くんと同意見かな。あれだけ必死に走って、喰らい付いて、みんなへの心配を振り切って信じて走ってくれた3人の答えだもん。私も文句も異論もない。みんなは?遠慮しないで言ってくれていいんだからね?」

 

「わ、私もっ。3人に賛成ですっ!」

 

 口々に俺たちの意見に同意する声が聞こえる。

 どうやら今回のシャトルランは俺がみんなを過度に心配する必要はないのだと考え直すのと同時、想像以上に互いの信頼を強固にすることにつながったらしい。

 

「………」

 

「圭ちゃん、嬉しそう」

 

「……うん。走り切った甲斐があったってね」

 

「そっか」

 

 俺の答えにヒナは納得した様だ。

 そう、俺が自分の基準のズレを直すために始めた体力テストであったが、みんなが参加してくれることは予想外であったけれど、結果的にやって良かったと本気で思う。

 

「ヌルフフフフ、みなさん。どうやら改めて団結することができた様ですねぇ。先生を助けるか、殺すか。それを考えて苦しい思いをさせてしまっていることを申し訳なく思うと同時、嬉しくもあります」

 

「しかし、この際です。とことんまでやってみませんか?」

 

 殺せんせーは俺たちに微笑むと、要領を得ない提案をしてくる。

 

「なにを?」

 

「キミたちはお互いの決意と覚悟の硬さを理解した。なら、折角ですし、背中を預ける仲間の実力が如何程か。それを知るのもきっと楽しでしょうし、大切なことです」

 

「……実力?」

 

「えぇ。キミたちは実際に組み手をすることはある。チームに分かれて対人訓練をすることもある。しかし、実践形式でお互いの実力を見る機会はなかったでしょう?仲間の暗殺技術を見たことはあるけれど、使われたことはない。そんな具合のはずです」

 

「確かに」

 

 言われてみるとそうかもしれない。

 仲間に対して暗殺技術を使ったことはない。

 

「木村くんの機動力は相対するとどれほど厄介なのか、岡野さんの柔軟な動きの有用性や、千葉くんと速水さんの怖さ、磯貝くんと前原くんのコンビネーションは実際にどれほど強固なのか、カルマくんの戦闘技能はどれほどのレベルなのか、渚くんの暗殺技能はどれだけ恐ろしいのか、先生を単独で殺せてしまう乃咲くんの実力にどこまで食い下がれるのか」

 

「これからも背中を預ける仲間、ともに大きな目標に向かっていく同胞、信頼して共に駆け抜ける戦友。その強さと心強さと恐ろしさを知る。間違いなく君たちのプラスになるはずです」

 

「友を知り、自らを知り、足りないものを考え、仲間の力を自分ならどう使うのかを考えることで連携は強固になるでしょう」

 

「そこで提案です。みんなでサバイバルゲームをしませんか?」

 

 殺せんせーが何処からともなくカンペを取り出すと、提案されたのはまさかのサバゲー。あのモデルガンで撃ち合って相手の旗を奪ったり、相手を全滅させると勝ちっていうBB弾を使った銃撃戦。

 

「面白そうだし、いいんじゃないか?」

 

 千葉が同意した。

 まぁ、サバゲーなら、千葉や速水さんの得意分野だろう。

 

「ルールは……そうですね。チーム戦もいいですが、今回はバトルロワイアルで行きましょう。その方がより仲間の実力をはっきりと感じることができるでしょう」

 

「……そうだね。なんなら、バトルロワイアルが終わったらチーム戦でもいいんじゃない?」

 

「それ採用で!」

 

 ビシッと殺せんせーが頷く。

 

「バトルロワイアル形式で、攻撃手段は自分のペンキが付いた攻撃を当てること。モデルガン、ナイフ、その他隠し装備があるのならそれも使ってよし!どんなにカスあたりでも、自分以外のペンキが付いたら即脱落なら殺し合いです」

 

「範囲はこの山からでないこと。あとは先生が触手を伸ばして簡易的なフィールド線を作るので、それを出たら即時失格。チーミングはあり。この山にトラップを仕掛けているなら、使ってもよし!」

 

「開催は次回の体育!主審は事情を話して、烏間先生にも引き受けて貰いましょう」

 

 殺せんせーがちらりと俺を見る。

 分かってる。この話は烏間先生を抜きでやっていいものではない。何せ、俺たちの監督者で、この一年で最も苦労した人で、もっとも迷惑をかけた人だ。何も言わないのは選択肢としては絶対に存在しない。

 

 俺は、ヒナを撫でながらこれからのことを考えて様々なプランを作り出すと同時、自分にも原因はあったとはいえ、ようやく息がしやすくなり、肩が軽くなったことを感じながら、1人で背負い込まない程度でなんとか頭を働かせるのだった。




あとがき

はい、やっと冬休み編が終わりそうです。
何ヶ月続いたんやろうなぁ…………。

サバゲーは原作通りのチーム戦ではなく、バトルロワイアル形式にしてみました。その方が主義主張関係なく、いろんなキャラを絡ませることができそうですし……。本編でそこまで手がまわなかったとしても、番外編とかで、〇〇vs〇〇みたいな形で拾えそうかなぁ。と……ご容赦ください……!

ご愛読ありがとうございます!
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