暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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加えてたくさんの高評価、感想などありがとうございます!

遅れてすみません、本日分を投下します!
倉橋さんvsあかり……の前のちょっとした会話です。
GWも明けてしまいましたが、みなさん、頑張りましょう(号泣)


202話 バトルロワイヤルの時間 2時間目

 

「あぁ……黄ばんでく……」

 

 圭一は地面に横になって干からびていた。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

「んで、彼氏があんなところで干からびかけてるけどいいの?」

 

「いいのいいの。悩むか頭を抱え続けるかの2択よりよっぽど健全だって」

 

「健全……健全………?」

 

 健全ってなんだっけ?と首を傾げるあかりに陽菜乃は苦笑しながら遠目に誰も襲ってこなくて不貞腐れている圭一を眺めた。だーれも襲ってこねぇ、なんて呟きが律を通して聞こえて来る。

 ちなみに圭一の様子が筒抜けな理由は烏間の判断である。律を通してでも隙を見つけなければ太刀打ちできないだろうという判断だった。それ自体は妥当というか、それでも足らないレベルだったが。

 

 陽菜乃自身、圭一があんな隙だらけな様子であってもそう簡単にやられないだろうと分かっているから心配してないのだけれど、あの締まらない有様はどうにかならないかなぁ、と眺めてる。

 

 けれど、それを正面から見るあかりは複雑そうだ。

 

「やっぱり、陽菜乃ちゃんは乃咲を信じてるよね」

 

「そら彼女だし」

 

 その一言に顔を顰めてしまうのは仕方ないだろう。

 シンプルに恋敵という話でなかったとしても、目の前で惚気られたら大体のものが顔を顰めるはずだ。

 

「前から気になってたけど、陽菜乃ちゃんって愛が深いって言うのかな。びっくりするくらい乃咲のこと好きだよね」

 

「え?前に淑女協定結んだ時に話さなかった?」

 

「そうなんだけどね」

 

 確かに覚えはある。共感もしてる。努力して、自分の言葉に責任を持とうとする姿が好きだと言っていた。やっていることが暗殺やその為の訓練でなければ、年頃の恋愛といか、好きになった理由に動機という言葉を使うのなら、中学生らしい動機だと思う。

 それは、あかりから見ても自分の感情は抜きにして眩しいと思えるし、同時に羨ましいと思える。

 

 ただし、もちろん自分が圭一に好意を向ける理由も陽菜乃から見たら相当特別なものだと言う自覚がある。

 色々と迷惑をかけた申し訳なさもある、危険な目に合わせた負い目もある。でも、現実は小説より奇なりというか、どうして好きなの?と聞かれた時に彼とのやりとりを一つ一つ自分の視点で語って聞かせたのなら、共感してもらえるだろうと言う自負がある。

 

 あかりが圭一にされたことを端的に語るなら……いや、端的に語ることは案外難しいのかも知れない。助けて貰った、寄り添って貰った。このたった二言で終わらせるのは彼女的に納得できないというか、語り足りない。

 

 姉を失ってどん底にいた、命を賭けて精神を蝕まれながら、名前を変え、容姿は似ていない自覚があり唯一姉と揃いだった髪の色を変え、E組の友人たちを騙して復讐をしようとしていた。

 そこに対して、姉と自分の共通点を容姿ではなく雰囲気で気づき、無理して笑ってることを見抜かれ、自分と共に姉の死を悲しみ、死に掛けながら復讐を果たそうとする自分を止めてくれた上、一度も語ったことがない自分の本名を過去の姉との会話から思い出して呼びかけられた。

 

 列挙してみると、そら好きになるでしょう。と我がことながら腕を組んで頷きたくなる。

 寄り添われて気になっていた所に命も心も救われたこと恩も感じている。うん、そりゃあね、好きになるよね。

 

 正直な話、今回の殺せんせーを殺すかどうかという話題で万が一、圭一が孤立するようなことがあっても自分は味方でいるつもりだった。仲間と喧嘩して、最悪そのまま袂を別けることになったとしてもだ。

 盲目的過ぎると後ろ指刺されたとしても、そうするだけの動機、理由が自分にはあるのだとあかりは思っていた。

 

 けれど、逆に言えばそれだけの物語の様な劇的な理由がある自分と違って、年頃の女の子の恋愛そのままのような動機で圭一を好きになり、そのまま付き合って恋人になった陽菜乃の彼に対する想いは眩しいと同時、どうしてそこまで出来るんだろう?と考えてしまうことがあった。

 

 あかりから見ても、圭一は迷走してるように見えた。

 無論、気持ちは分かる。自分とて殺せんせーに助けられたし、教師としての彼を慕っているのは同じだ。

 圭一が殺せんせーを慕っている理由も理解してる。彼と殺せんせーの関係を自分と圭一に置き換えるとしたら、自分は答えを出せる自信はない。色んな感情がぐちゃぐちゃに入り混ざって、どうすればいいのか分からなくなって、何をしたいのか混同して、きっと、自分の意見に一貫性を出せなくなるだろう。

 

 圭一の意見は殺すべき、と一貫していた。

 しかし、時間が経つにつれて色んな感情を出すようになっていた。助けたいけど方法が見つけられないだろ。だったら一番可能性がある俺が最後に責任を持って殺す。だからみんなで暗殺を期限まで続けよう。

 助けたいと言う本音、でもどうしようもないという葛藤、もっと考えてよと求められる息苦しさ。

 

 悩むだろう。むしろ意見を一貫させていただけでも自分からしたら上等すぎると思う程だ。

 

 けれど、周りから見たらそうして悩んでる姿はうじうじと言い訳を並べて考えてるフリをしてるように見えることも重々承知している。

 加えて圭一のチカラは自分たちの目線では限度に底が見えない。一言で言えば、なんでもできる人に見えるのが更に印象を形作る。

 

 やろうと思えば、なんでもできる癖に、なんでそんなに悩むんだろう、自分にできないことができる癖に、なんでできない理由ばかり並べるんだろう?

 

 そういう意味だとあかりは気持ち的には渚の気持ちも理解はできた。

 

 だからこそ、一貫して圭一に対する態度を変えずに終始寄り添う姿勢を崩さなかった陽菜乃があかりには……言葉を選ばなければ異質に見えた。それこそ、年頃の女の子の恋愛程度ではそこまでできないだろう、と思えるほどに。

 

 厳しい言い方をすることもあるけど、必要な時は甘やかしてる。あかりが復讐を仕掛ける前なんか、付き合う前と付き合った後でもバカップルのようなやり取りも多かったし。その癖、彼氏に対する飴と鞭が上手い。

 あのビッチ先生の弟子だと思えば不思議ではないが、それはそれとして、中学生らしからぬ抱擁感があるというか。頑固な夫に寄り添う妻というか、陽菜乃の圭一への扱い方はそんな熟年夫婦感があった。

 

「うーん、確かに圭ちゃんは基本的に悩んでばっかりだからね」

 

「でしょ?ちょっと時代錯誤かもだし、私はそんなこと思ってないけどさ。悩まず、もしくは悩みを見せずに答えを出してみんなを引っ張る!みたいな男らしさって言うのかな。そう言う場面も少ないじゃん。覚悟決めてる時は凄く頼もしいんだけどさ」

 

「あかりちゃんの言うことも分かるかなぁ。誰もが思う男らしさ!みたいなのはないよね」

 

「いや、うん。"ない"とまでは言わないけど……」

 

「いや、ないでしょ」

 

「容赦ないね!?」

 

「当たり前だよ!?告白2ヶ月くらい保留されるし、いざ返事する時もめちゃくちゃ日和ってるし、こちとら心臓バクバクしながら一緒に寝てるのに、やることと言ったら抱きついて来るくらい。それも熱烈なハグとかじゃなくて甘えるみたいな。それ以外だと指一本触れてこないし、いや、分かるよ、まだ早いよね、でもそれはそれとして期待と不安はあるわけで、複雑というか何というか。本人も我慢してるのは分かるけどね。もうちょっとグイグイ来て欲しいというか、『お前の"やめて"は"もっと"だろう?(ねっとり)』みたいなこと言えとは言わないから、せめて"やめて"って言える状況に持っていって欲しいというか、うん、即断即決弱さを見せずに突き進んで欲しいものは手に入れてたまにドキッとする優しさとか可愛さみたいな萌えポイントを持ってるみたいな誰もが想像する"男らしさ"というか"漢らしさ"みたいなのはないかな」

 

「お、おおぅ……………」

 

 随分と溜め込んでたんだなぁ、なんて少し引きながら思わず声が溢れた。

 

「でもね。正直、まだうちら中学生じゃん?」

 

「うん」

 

「普通に考えたら、そんな漢らしさみたいなのある方が珍しくない?」

 

 まぁ、言いたいことは分かる。

 

「あとはビッチ先生も言ってたんだけどね、圭ちゃんってアレもやらなきゃ、これもやらなきゃって感じで色んなことに責任責任言ってるけど、そこのところを取捨選択できるようになれば、凄い良い男になるって」

 

「ビッチ先生からの評価もそんな感じなんだ?」

 

「うん、だって責任感も強いし、決めたことはやり遂げようとする姿勢もあるし、最古の男らしさっていうのかな、多分、万国共通で男らしさって何?って聞いたらパッとイメージされる腕っぷしの強さがあるし、そういう意味だと誰よりも"強い"じゃん。それはあかりちゃんが誰よりも知ってるんじゃない?だって、うちらの中で唯一、ゾーンまで使った圭ちゃんと戦って助けられたんだし」

 

「……………うん」

 

 イトナくんもなんじゃ?と喉まで出そうになったけど、たぶん、そういうことじゃないんだろう。

 それを理解して言葉を飲み込んだ。実際、陽菜乃の言いたいことは理解できた。頭痛と吐き気に苛まれながら、それでも迸る殺意を向けて、復讐を邪魔された怒りを全力でぶつけたのに、彼には届かなかった。

 掠りもしなかった上に、たった一撃で、復讐者の茅野カエデは殺された。殺せんせー、つまりは初代死神から3代目を名乗ることを許されてしまった少年がそれを許された所以を身をもって知っているのは確かにあかりだけだろう。

 

「それでも、私は陽菜乃ちゃんは我慢強いって思うよ。いつか絶対に良い男になるって信じて待てるの」

 

「今でも十分だと思うけどね。周りからそう見えてるかは分からないけど、自分が殺せんせーを殺しかけた時に苦しんだから、周りに同じ思いをして欲しくない、殺せんせー自身がうちらの手で殺されることを願っていて、地球の未来と恩人の命を天秤にかけて、そうするべきって前者を選べる人もそうはいないもん。答えを出せずに思考停止して、なんであれ選んだ人を結果だけみて非難する人よりよっぽど男らしいって思うし」

 

「…………そうね」

 

「男の子ってさ、ヒーローもの好きじゃん?少なからずそういうイメージあるし」

 

「あるね、戦隊とか、ライダーとか、海外のヒーローモノとか。なんか、ヒーローとか子供っぽいって小馬鹿にしそうなカルマくんですらそういうの好きだって言ってるし」

 

「うん、実は圭ちゃんがそういうヒーローものにあんまり興味がないのは想定外だったけど、仲良くなりたいなあーって思ってた時にさ、その辺も観てみたんだ。あかりちゃんはそういう映画とか出たことない?」

 

「端役なら何度か……」

 

「たまにあるじゃん。ヒーローなんだから助けて当たり前、大いなるチカラには大いなる責任が伴うみたいな」

 

「切っても切り離せない話題だもんね……」

 

「なんとなくさ、重ねちゃうんだよ。自分が一番可能性あるからって、責任責任言ってる圭一が。背負いたいんじゃなくて、背負わなきゃいけないって感じ。それが嫌。なんで?なんでチカラが周りより強いからってそんなことまで背負うの?」

 

 歯に衣着せぬ物言いに、あかりは俯いた。

 

「正直さ、気持ち悪いんだ。圭ちゃんがじゃないよ?圭ちゃんを取り囲む空気っていうか、環境っていうかさ。元々はシロの研究の所為、そしてその研究を承認して資金まで出してた国の所為、研究が失敗して、殺せんせーが超生物になった。もちろん、殺せんせーのことは好きだし、出会えて良かった。そこに嘘はないけど、私らが暗殺するようになったのって、そういう大人の尻拭いじゃん」

 

「そうだね………」

 

「なら、どうしてそこに圭ちゃんが責任を背負う必要があるの?おかしいでしょ、って言いたいのに、そのシロの研究の大元には圭ちゃんの両親が関わってて、シロ自身も、圭ちゃんから見たら叔父さんで。身内であることに変わりなくて。圭ちゃんが『俺は関係ないじゃん、俺に押し付けんなよ、俺はこれやりたいんだよ、じゃあこれやってよってついでみたいにしんどい事ばっかりいいやがって』って投げ出さないのが不思議だもん」

 

「…………」

 

「分かるよ、理屈はね。本人が言ってたけど、一番可能性がある奴がやるって当たり前だよね。けどそれ周りが求めるのはおかしいよね、他人事すぎるよね。強い人になら押し付けていいの?自分は何もしないの?何もしないとまでは言わなくても、一方的に求めるだけで許されるの?って、思うんだよね。大いなるチカラには〜って言葉には」

 

 陽菜乃の口から出る疑問。

 E組に思っているわけではないのだろうけど、自分の内側に溜め込んでいたであろう本音。

 

「ま、抱え込みすぎるのは良くない癖だと思うし、だから私もその辺には厳しい事をいうこともあるけど、我慢できないってことはないかな」

 

「……大人っていうか、うん。バカにしてるわけじゃないけど、陽菜乃ちゃんって中学生相応な恋愛だったのに、気構えが若年夫婦っていうか、一周回ってお母さん感あるよね」

 

『ヒナァは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!』

 

『ヒナァがお母さん……!?うわっ……!!?』

 

『……何してるんですか、乃咲さん』

 

『暇すぎて暇がヒナァになってそう言えばこんなこと言ったことあったなぁーと思って、ゾーンに入りつつ、頭の中でファーストから逆シャアまでのセリフを暗唱しつつ、口に出してみた』

 

『……それ、全140話×30分+映画120分で4320分。合計72時間掛かるやつでは?』

 

『俺の体感で72時間なら現実では5分くらいだぞ?余裕だ』

 

『誰か乃咲さんに攻撃してあげてください……この人の中では3日経ってます……』

 

 スマホから聞こえて来る、圭一と律の不可解な会話。何やってんの、あの2人。あかりが陽菜乃を見ると、呆れたように頬をぽりぽりと掻いて苦笑いしていた。

 

「……あの通り、変人なのか超人なのか微妙に分からなくなることがあるけど、まぁ、悪人ではないしね。呆れることはあっても嫌いになったりする部分はないかな。それはあかりちゃんもでしょ?」

 

 陽菜乃が追いかけると、あかりは頷いた。

 

「じゃあ、そろそろ始めよう?まさかこんな長話するためにバトルロワイアル中に2人になったわけじゃないでしょ?」

 

「まぁね……」

 

 2人は臨戦態勢を取った。

 

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