暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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皆様、ご愛読ありがとうございます!

先週に軽く触れさせていただいた、本作休載について活動報告に投稿させていただきました!6月から番外編のハナコトバの時間を、本編はこのバトルロワイヤル編が終了しましたら、誠に勝手で申し訳ございませんが、宇宙に行く前に1ヶ月ほど休載させて頂きます。

詳しい事情などは活動報告に記載させていただきましたので、ご興味あれば覗いてみてください。

それでは今回も投下します!

最後までお付き合いください……!


204話 バトルロワイヤルの時間 4時間目

 

「ぼちぼち人数減ってきたね」

 

「だねー」

 

 流される情報を見ながら、僕は目の前の相手に視線を向けた。飄々とした立ち振る舞いで周りを煙に巻くこともあれば、本質を突いたり、歯に衣着せぬ言い方でズバズバと現実を突き付けたりしてくる、このクラス、学年でも一際目立つ癖者の友人。

 人ごとのように言いながらも、彼のことだからどんな風に戦ったのか、誰と戦ったのか、そう言った部分に目を向けてるんだと思う。カルマくんは夏休み明けくらいから周りが結果的に何をしたのか、よりも、何をしようとして、何をして、そうなったのかを重視するようになった。

 

「カルマくん、僕は……」

 

「…………悪かったよ、ごめん」

 

 だからこそ、内心では理解していた。

 殺せんせーを助けるかどうかを巡る、数々の言い合いで対立するような形で何度か睨み合った。

 どうして一緒に考えてくれないんだろう、どうして頭ごなしに殺そうとするんだろう。そんなことを思っていたのも事実だけど、どうしてそれを選んだのかも、理解できる。

 

 カルマくんは過程を重視するようになった。

 

 そんな彼が僕が助けたいと言うまでの過程を蔑ろにするはずもない。あの話し合い、言い合いで僕がカルマくん以外に対立していたのは乃咲だった。たぶん、彼なりに天秤に掛けた結果なんだろう。それは、今にして思えば今日までの日々を思い返してみると納得できるものだった。

 

「ケジメとして謝っておきたくて。あの時は言いすぎたよ」

 

 カルマくんの言葉に脳裏をよぎるのは、シャトルランをやる前。乃咲の体力測定に付き合う時に言われたこと。

 

『そうじゃねぇんだっての!!あの時の俺らは殺せんせーを殺すって漠然としか考えてなかった。だから、今になってみんな必死こいて考えてんだろ!?それを乃咲クンはあの時点でとっくに考えてたんだよッ!自分と同じだけの覚悟が無い奴に、本気で頼れるわけないじゃん!!!いい加減に分かれよッッッッ!!』

 

 耳に痛くて反論できない内容だった。

 実際、その通りだと思ったから。

 

 乃咲が不良をやってた頃からの付き合いで、何かと彼のフォローに回ることが多いカルマくん。そんな人の言葉だったから言い返せなかった。自分が同じ立場だったら?もしもカルマくんと同じ目線で乃咲を見ていたら?もしも僕が乃咲と同じ立場だったら、周りを本気で頼れただろうか?

 

 今なら彼から反発が来るのは当然だって思える。

 だから、カルマくんに謝って貰う理由はなかった。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

 渚くんと乃咲クン。この教室で俺が一緒にいたり絡んだりすることが多い友達で、それと同時、俺から見た2人に共通して言えるのは、友達なのに、どこか末恐ろしさとでも言うべき気配があると言うこと。人にはないチカラ、才能があった。

 

 2人を一言で表現するなら"気が合う友達"だった。

 気が合う、と言ってもちょっとベクトルが違う。

 

 渚くんとは趣味が合った。そこから話すようになって友達付き合いが始まった。好きなアニメ、漫画、映画とか。その辺がひたすらに被っていて、話していて楽しかった。

 

 乃咲クンとはウマが合った。渚くんほど趣味が合うってわけじゃないけど、なんとなく行動が読めるというか、分かるというか、"俺ならそうする"って行動の方針が合った。だから、話したり一緒にいるのが楽だった。

 

 でも、彼らと過ごす中でふと感じる違和感。

 

 渚くんからは、油断できない雰囲気、気を抜いた時に背中からナイフを突き立てられそうな漠然とした恐怖というか、今にして思えば暗殺の才能だったんだろう。空気に同化して意識の裏を突くように話しかけてくることが多かった。それをさも当たり前のように意識せず、日常の一コマのように振る舞っていた。

 

 乃咲クンからは、言葉で表現しきれない強大さみたいなものを感じることがあった。自分と同じくらいの背丈なのに、まるで目の前に大きなクジラでもいるかのような、存在感とでも言うのか。喧嘩をしてる時とか特に顕著だったと思う。周りが何をしても動じない、まるで羽虫でも払い除けるみたいに他のヤンキーを薙ぎ倒し、踏み潰していく。

 

 俺にとって2人は友達であると同時に、理解の範疇を越えた得体の知れないナニカのような存在だったのかも知れない。

 

 だって、思えばおかしいことだらけだった。喧嘩慣れしてて、それなりに強い自負はあったのに、そんな俺の背後をあっさりと何でもないみたいに取っていく渚くん。一対多数の喧嘩に当たり前のように勝っては、連携取れてない奴らが群れても無意味だと吐き捨てる乃咲クン。言いたいことはわかるけど、口で言うだけならまだしも、実行できる奴が世界にどれだけいるのか。それを喧嘩なんてロクにしたことなかった奴が言うか?

 

 だからか、よく遊ぶのに、周りに比べたら仲の良い部類なのに一歩引いたような呼び方をしていた。

 大体の奴らは呼び捨てにするのに、彼らに対しては半ば意図的にくん、クンと付けて呼んでいた。

 それがいつの間にか癖になって、違和感を覚えなくなって。だからこそ、ふとした瞬間に思い出す。自分がどうして彼らをそう呼んでいたのか。日常中で埋もれて、たまに忘れてしまう、気味が悪いと思うほどの常人離れしたチカラや才能を。

 

「僕だってそうだよ。言いすぎたというか、好き勝手なことを並べすぎたから。ごめん。でも、この前のシャトルランで僕が言葉だけじゃないって認めてくれたし、カルマくんがどんな覚悟で乃咲と同じ道を選ぼうとしたのかも身を持って経験したから。これについてはもう言いっこなしにしようよ」

 

「そうだね。これについてはもうお終い」

 

 渚くんは俺が呼んだ。みんなと一緒に乃咲クンを倒そうとしてるところを呼び止めて、こうして向き合った。

 

「それで、どうしたの?カルマくんなら、みんなと一緒に乃咲を倒そうとすると思ってたんだけど」

 

「もちろんそのつもりだけど……渚くんと勝負したくなってさ」

 

「……勝負?」

 

「そ、先に相手に攻撃を当てた方が勝ち」

 

「えと……急にどうして?」

 

 突拍子のない提案に流石に渚くんも首を傾げた。

 まぁ、そうだろうね。俺も同じことを言われたら相手の意図が分からなくて同じことをするだろう。

 なんて言えばいいのか。彼と勝負したくなった理由を言語化しようとして少しだけ悩む。

 けど、ここで言い淀んで首を傾げても彼にこちらの心情が何一つとして伝わらないことは確かだと口を開いた。

 

「勝ちたくなった、からかな」

 

「勝ちたいって………」

 

「正直ね、自分の実力を正確に評価するならさ。乃咲クンとか烏間先生を除いたら人間の中では俺がいっちゃん強いと思うんだ」

 

「僕もそう思うけど」

 

「でもさ、一番強い=一番才能があるって訳じゃ無い。強いからなんでもできるわけじゃ無い。俺にはない才能がみんなにあって、補い合えるから、殺せんせーを殺せるかもしれないって俺は思ってる」

 

「うん。単独で殺せるなんて言い切れるのは乃咲くらいだもん」

 

「だよね。それはいいんだ。けど、正直に言えば悔しさもある。特に渚くんと乃咲クンには。E組に来る前からつるんでて、周りよりも付き合いが長いのに、周りに比べて距離が近い様で遠い。くんって付けて距離をとってさ。昔から薄々気付いてた2人の才能を気味悪がってた」

 

「……気持ちは分かるよ。僕だっていつの間にか距離を取ってた。平然とうちの学校とか他校の生徒とか関係なく喧嘩してボコボコにできる所とか、僕より要領が良くて勉強にもさして苦労してなさそうに見えてさ、何処かで思ってた。"あぁ、僕とは違うんだ。なんで僕なんかと仲良くするんだろう"って」

 

「あははは……。不思議に思って遠慮し始めた渚くんと不気味に思って距離を取り始めた俺。嫌な方向で需要と供給が噛み合ったわけだ。その結果、見事にE組で俺が復帰するまで疎遠になってたと」

 

「…………だね」

 

 渚くんが過去を振り向くように呟き、苦笑して俺の会話にのって、意見というか方向性が一致した。

 分かってる。趣味や好きなもの以外にもこんな風に話が合う奴だから仲良くしたかったし、自分とは決定的に違う才能を感じた時に違う場所にいる様な疎外感のような、違和感を感じて、それを気味が悪いと表現した。

 

「……この教室で、2人のチカラを見た。俺には無い暗殺の才能と俺じゃあ遠く及ばないスペックの高さ。これまで、なんとなくで気味悪さを感じてた2人の才能が、この教室では異物じゃなくなった。殺せんせーを殺すって目標には2人とも欠かせないピースで、渚くんの才能が殺すために俺に向けられることも、乃咲クンがチカラで俺を叩き潰すことは絶対にないんだって、この教室に来て、みんなと過ごして、ようやく実感できた」

 

「この教室が、殺せんせーがそれを教えてくれた。だから、みんなで先生が一番望む形で卒業したかった。だから、先生を殺したいって思ってた。だから渚くんの意見に反対してた。まぁ、その果てに険悪な雰囲気にしちゃったことは反省だけど」

 

「でも、なんとなく思ったんだ。この前のシャトルランで、俺と同じだけの距離を同じくらいのペースで走り切った渚くんや、みんなの想いに応えて最後まで走り切った乃咲クンを見てさ、案外、2人の才能は特別じゃないのかもって」

 

「この教室じゃ、みんなが色んなものを武器にしてる。生き物の知識、手先の器用さ、科学の見識みたいな一般的な才能だけじゃなくて色っぽさ、エロさ、プリンで爆殺を考えたりとか。そんなぶっ飛んでる武器に比べたら、暗殺の才能も高すぎるスペックも、さして特別じゃないのかもって」

 

「だから………うん、長くなったけど、正面からぶつかってみたくなった。この前、渚くんに、乃咲クンに言葉以外でぶつからないのは甘えだ〜!とか言ったのもあるけど、俺の持ってる才能で、俺が持ってない才能を超えたいって、そう思ったのかもしれない。上手く言葉にできないけどね」

 

 思ってること全てを口にすることを言語化するとは言わない。思ってたことを相手に伝わる様に取捨選択して、分かってもらえる様に話すことを言語化という。そう言う意味で、今の俺は赤点だったかもしれないけど、どうやら、渚くんにはしっかり伝わってくれたらしい。

 

「………うん、そういうことなら気持ちがわかるよ」

 

「ありがと。俺が渚くんをここに誘ったのはそう言う理由だよ。もちろん、ここでよーいドン!で始めるつもりはないけどさ」

 

「いや、気持ちは一緒だから僕もそういう理由ならカルマくんに勝ちたい。そのよーいドンでね」

 

「………いいの?自分で言うのもなんだけど、俺に正面から勝てる奴の方が少ないよ?」

 

「覚悟を示すには言葉だけじゃ足りないって、この前知ったからね」

 

 そう言われては引き下がるしかなかった。

 自分としても同じ気持ちで、渚くんに好きなポジションを取らせることで初めて俺の視点ではフェアな戦いかになると思っていたけど、こっちが言った言葉を使って応えられたら受け入れるしかなかった。

 

 けど、流石にこのままではフェアでないことは確かだろう。そう思って俺はホルスターごと銃を放り投げる。

 俺はナイフだけで行く、そんな宣言のつもりだったのに、渚くんはこちらに倣う様に同じく銃を捨ててしまった。

 

 あぁ、コイツは本当に対等な条件でやろうとしてるんだ。

 

 ここに来てようやく彼の覚悟を理解した。

 そう言うことなら、遠慮はいらないだろう。

 

「律、悪いけど号令頼める?」

 

『お任せください。それでは2人とも背後に2歩下がって。暗殺——スタート!』

 

 みんなが乃咲クン撃破のための布石を整える中、俺たちはぶつかり合った。

 

 

 






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