それから沢山の高評価ありがとうございます!
皆さんからの応援が私の創作・妄想を掻き立ててくれるファクターになっておりますー!
いやー、クリスマスですね!
まあ、クリスマスは嫌いって訳じゃないけど自分は蚊帳の外なんで、もしかすると17話も今日中に投下するかもしれません。出来たら18:00くらいには投下しようと思いますのでお付き合いくだされば幸いです……。
——追記——
少し思う所があったので描写追加します。
申し訳ありません。
——追記——
すみません、殺せんせーのセリフを間違えていたので、修正します。
顔負け・・・×
顔向け・・・◯
迎えたテスト当日。
僕らはアウェイの校舎にいた。普段は用がなければ立ち入りを禁止されている本校舎だが、テストは全校生徒が本校舎で受ける決まり。
だから、僕らはE組はアウェイのフィールドで戦うことになる。
けれど、そんなアウェイな校舎で戦っている僕らの中でも一際アウェイな立ち位置にいる生徒がいた。
(乃咲、大丈夫かな。あんなこと言ってたけど)
昨日の乃咲の啖呵で彼は一瞬のうちにE組の大半の生徒を敵に回すことになった。
彼の言っていることはなんとなく分かる。なんとなく乃咲らしくない言動だったけど、アレはみんなに発破を掛けたんだろう。ビッチ先生もそれを分かっていたから彼の言葉に乗っかったんだ。
ただ、少し気心知れて来た相手の土下座を見るのは正直なところ辛いと言うか、キツい。
乃咲、大丈夫だよね?
僕はカンニングにならない程度に一瞬だけ彼を見てテストに集中した。
コツコツコツコツ、D組担任の立てる耳障りな音が周りの生徒たちの集中力を妨げる。
ただ、気にしてはいられない。昨日、あんな啖呵を切った以上は皆んなよりも良い点を取らなければ格好がつかない。クラスメイトたちの前で土下座はしたくない。なによりカッコ悪い。
だから、この害悪教師を気にしている暇はないのだが、どうしてもこの男に一つだけどうしても問いただしたいことがある。
「……これは————」
テストの問題を進めていたのだが、どうにも殺せんせーから習ったテスト範囲から外れている問題が複数ある。
殺せんせーは少しそう言うことはあるかも知れないと、テストの範囲外の解き方も教えてくれたが、これは明らかに"少し"の範疇を超えている。テストの半分以上がまだ習っていない部分だ。
どうしてこんなことになるのか、と考えていたが、何となく心当たりがある。恐らくは浅野理事長だ。
あの時に言っていた『スピードでは解決できない事がある』はこう言う意味だったのかも知れない。
だが、既に出来上がったテストに対して生徒の俺が今、やれることはテストの問題を解く事しかできない。だから今は問題と向き合おう。
ひとまず解答欄は半分は埋まってる。普通に考えればここまでで50点は取れることだろう。
だが、問題はその後だ。殺せんせーのお陰でその後の問題も数問は解けたが、とうとう殺せんせーからも教わってない範囲が出て来てしまった。
流石に習っていない問題は解けない。
解けないが、殺せんせーに言われたことを思い出す。
数学は前のページの応用が次のページの新しい問題として出る事が多い。なら殺せんせーに教わった部分を駆使すれば解くまでは出来なくても部分点を貰える程度には持っていけるかも知れない。
俺は一気に集中してゾーンに入り、考える時間を確保する。すこしズルをしている気分になっだが、テスト勉強もこうして頭に詰め込んだのだから今更だろう。数分が数時間に感じる感覚の中で一心不乱に問題を解き続ける。
いつの間にかD組担任の立てる耳障りなノック音も聞こえなくなり、緩やかに感じる時間の中でペンだけが俺の視界で動き続ける。
そう言えば、前にカルマが崖から落ちた時は精々一歩踏み出す事が限度だったのに、今は指くらいなら少し緩やかではあるが自在に動かせるようになったな。
まあ、今はそんなことはどうでも良いか。
俺はその後も出来る限りの範囲で踠き続けた。
これまでこんなに必死になったことはない、そう思えるくらいにフルに脳を働かせて、必死こいて問題を解き続ける。
そんなことを5時間繰り返して、テストは終わった。
休み休みやっていたとはいえ、5時間もゾーンに入っていると流石に頭がパンクする。俺は、その日、家で知恵熱を出す事になった。
そして迎えたテストの返却日。
E組の教室はどんよりと暗い雰囲気だった。
当然だ。急なテスト範囲の変更。それに対する連絡を俺たちは受けていない。表向きの担任である烏間先生ですら何も連絡を受けていないのだから、誰も知りようがなかった。
いや、知る術はあったのかもしれない。例えば本校舎の生徒との情報交換だ。……いや、無理か。基本的にE組とまともに接する奴はいない。そもそも、情報交換自体、テスト範囲がズレることを前提にしているから、そんな動きが出来る筈がない。
今回はどう足掻いても詰みだったのか。
浅野理事長……ここまでやるのか。
……いや、これは言い訳だ。
結果が全てだ。受け入れよう。
「51位か……」
手元の紙を見る。自分の5教科全ての点数とクラス内、学年での平均点や順位が記されている。
そしてもう一枚の紙を見る。そこには1〜50位までの生徒の名前と点数が書かれていた。
俺の一個上の順位にいるのは名前も知らなかった奴。しかし、そいつとの点数差は2点。
かつて、浅野に負けた時と同じ点差だ。
俺は負けた。しかも名前も知らなかった奴に。
この前の全校集会で浅野との因縁に決着をつけられるかどうか云々と考えていたが、この体たらくだ。それで誰と誰の因縁を終わらせるって? 総合1位の浅野と51位の俺が決着を着ける?
……差があり過ぎてもはや笑えない。
いや、そもそも。今回は浅野との決着をつけるだなんて考えてなかったけれど、浅野に負けた時の再現にも似た現状に対する言い訳にしか思えない。
総合順位51位が俺の順位。
E組の中では2位。
泣きっ面に蜂。殺せんせーからのミッションも達成できなかった上に土下座も確定してしまった。
……2点差か。
問題数に換算すると1問の差、あるいは数学の証明の問題で取り逃がした部分の点数。
俺は後一歩、届かなかった。
しかし、その後一歩が今はかなり遠く感じる。
——悔しい。
こんなに悔しいと思ったのはいつ振りだろう? などと自分に問い掛けるまでもない。2年ぶりだ。こんなに悔しいと思ったのは……いや、心の底から悔しいと思ったのは1年の中間で浅野に負けた時以来だ。
————悔しい……!
悔しさのあまり、思わず順位表を握り潰し、勢いのままに机に拳を叩きつけたくなるのを必死に抑える。
あとで殺せんせーに解けなかった部分の質問をしに行こう。んの前にまずは土下座か。
などと思いながら殺せんせーを見ていると彼もまたどんよりとした空気を纏っている者の1人。
なんだか、とてもじゃないが、テストの解き方を聞きに行ける雰囲気じゃない。
「これは一体、どう言うことでしょうか。テストの公平さを著しく欠くと感じましたが」
烏間先生も流石に苦情の電話を本校舎に入れている。
「伝達ミスなど覚えがないし、そもそも普通じゃない。テスト2日前に全教科のテスト範囲を大幅に変えるなんて」
烏間先生の声から怒りが伝わってくる。
そう、これは俺たちの成績の問題だけじゃない。殺せんせーを殺せるチャンスが失われるかどうかの瀬戸際なのだから。
俺たちの中で50位以内に入れたのは1人だけ。
それ以外のメンバーは50位に入れなかったのだから。殺せんせーからのミッションを遂行できなかったことになる。
つまり、昨日の約束が殺せんせーのはったりでもない限り、殺せんせーはこのE組校舎を平らに手入れして出て行くと言うことだ。
「……先生の責任です。少し、この学校の仕組みを甘く見過ぎていました。君達に顔向けできません」
殺せんせーの言葉に誰もが返す言葉を失っていると、カルマが徐に立ち上がり、殺せんせーの後頭部目掛けてナイフを投げた。
「にゅゃぁ!?」
「いいのー? 顔向けできなかったら、俺が殺しにくるのも分からないよ?」
「カルマくん! 先生は今、落ち込んで——」
カルマの態度に抗議する殺せんせーだが、そんな彼に構わず、カルマはテストの答案を放り投げた。
それを受け取った殺せんせーは絶句する。
「俺、テストの問題変わっても関係なかったし」
そう。何を隠そう、カルマは唯一、このクラスで50位以内に入った生徒だ。しかもギリギリ、辛うじて50位とかではなく——。
「うわっ、数学100点!? それ以外も軒並み95点以上だよ」
カルマの順位は総合4位。
喧嘩仲間とすら俺はこんなに差があったのだ。名前の知らない誰か、総合50位の誰かなんかよりも差が開いたE組中での点数差に俺は絶句していた。
「俺の成績に合わせて、アンタが余計な範囲まで教えたからだよ。乃咲クンもでしょ、殺せんせーからテスト範囲外も少し教わってたんだよね?」
「……まあ」
手招きするカルマに従って前に出て、答案を殺せんせーに見せるとそれを一緒に覗き込んだ最前列の磯貝と倉橋さんが息を呑んだ。
「総合51位……?」
「見てよ、殺せんせー。ついこの前まで学年最下位のドンケツだった奴がここまで登って来たんだ。しかも元々のテスト範囲だった部分は全問正解してるし、範囲外に関してもアンタに習った部分は当たってるし、習ってない部分も部分点を貰ってる」
「……マジだ」
「んで、乃咲クンに質問だけどさ。仮にあと2点足りて50位に入ってたら元のクラスに戻ってた?」
カルマの問い掛けに少しだけ考える。
考えて答えた。
「戻らない」
戻ったところで、向こうには俺を認めてくれる人はいないし、殺せんせーの正体やらが気になってそれこそ勉強どころじゃなくなるだろう。
なにより、今のまま本校舎に戻ったところで自分は何も変わりはしない。殺せんせーの言う第二の刃って奴を身につけられはしないだろう。
今、殺せんせーみたいな卓越した環境を逃したら、俺は今後、ずっと変わることは出来ないだろう。
「だよね、俺も戻る気ないもん。ここにいる方が楽しいし」
俺の答えに満足そうに頷くと殺せんせーに避けられたナイフを拾い上げて、挑発するように彼に向き合う。
「んで、殺せんせーはどうするの? 全員50位以内に入れなかったって理由でシッポ巻いて逃げちゃうの? 乃咲クンに関しては今回の伸び幅的に次こそ50位以内に入れるかもしれないのにほっぽり出して逃げ出しちゃうの?」
「イラッ……」
「それってさ、先生の第二の刃ってなんなのって話にならない? 俺らに教えるんだから、先生だって第二の刃っての持ってる筈だよね? でもそれをしないってことは逃げるだけなんじゃないの? それってさ、結局、殺されるのが怖くて逃げるだけじゃね?」
「イライラっ!」
これでもかと煽るカルマ。
そんな彼に肘で突かれた俺と、片岡さんに突かれて煽るモードになった前原が後に続く。
「なんだ、怖かったんですか。お可愛いこと」
「んじゃあしゃーねぇーな。俺たちも追いかけないから逃げちゃってくれよ、殺せんせー」
俺と前原に続く様に口々にクラスメイトたちが便乗して殺せんせーを煽りまくる。
「それなら正直に言えばよかったのに」
「イライライラッ……!」
「ねー? 『怖いから逃げたいです』ってさ」
最後の一言を受けた殺せんせーがとうとう爆発する。顔を真っ赤に、目に見える青筋を立てて動物の威嚇姿勢のようなポーズで爆発した。
「にゅゃ──! 逃げるわけありませんっ!! 期末テストでアイツらにリベンジです!」
殺せんせーの爆発はカルマの計算通りか否か。
何はともあれ、暗殺対象の喪失の危機を彼の起点で乗り越えた俺たちはリベンジを誓うことになった。次こそは本校舎の連中に痛い目に見せてやる、と。
因みに、俺の土下座の件だが……。
「つーか、お前、本当にやる気になったんだな」
帰り際、磯貝が話しかけてくる。
磯貝が話しかけてくると同時に直ぐに帰らなかった面々が集まって来た。
「ほんと、よくドンケツから登って来たよな」
「なぁ。186人中186位だった奴がいきなり51位って初めは何言ってるか分からなかったぞ」
「ほんと凄いよ、お前」
「ってことは土下座は?」
「カルマにするのか?」
「んー? あぁ、乃咲クンが啖呵切ったって話しね。俺は聞いてなかったからしなくていいよ〜。渚くんから概要聞いただけだし。ね、渚くん」
「う、うん」
「不器用だよね、乃咲クン。発破かけるにしろもっとやりようはあっただろうにさ」
「……すまん」
と、カルマのイケメンムーブによって辛うじて恥をかかずにすみましたとさ。
家に帰ったと同時に祖父母への挨拶もそこそこに圭一は部屋に引き篭もる。
結果として土下座はしなくて済んだが、心中は決して穏やかではなかった。
机の上に投げ出す様に置いた鞄から取り出したテストの答案。今回のテストで間違えた部分を穴が開く程に見ては、これまた雑に広げたノートに書き写して解き直し、盛大にため息を吐く。
少し期待していた。自分に。やる気さえ取り戻せば自分は昔のようになれるのではないか? と期待していた。浅野学秀と成績で鎬を削ったあの頃に、と。
しかし、現実は公平だった。
そう、現実は非情でもなければ優しい訳でもない。どこまでも公平な事実があるだけだった。
2年間、やる気なく、怠惰に過ごして来たツケ。それを今回のテストで思い知った。
つい、悔しさに唇を噛みながら、思わず握り潰してしまった数学の問題用紙を今度は抑えることなく、拳ごと勉強机に叩きつける。
長いこと使われていなかった勉強机の上に溜まっていた埃が舞う。塊になった大きな埃が圭一には自分がサボっていた時間の様に見えた。
今回のテスト、結果としてはよかった部類に入るのだろう。186人中186位だった成績が51位まで上がった。130人以上も抜き去って、成績も全体で見れば上位に返り咲く事ができた。
殺せんせーはE組を去ることはなかったし、圭一が土下座をすることもなかった。先日に切った啖呵も皆に発破を掛けるためだったと解釈されて、許された。
今回、テスト範囲がズレることがなければ上位を取れていたかもしれない。結果として散々な結果だったテストを握りしめてそんなことを思う。
習ってない範囲の方が多かった中でむしろよく諦めずに食らいつき、部分点をもぎ取れたとすら思う。
だが、それでも圭一にとってこの結果が最善のものであるとは思えなかった。
きっと、あと2点足りて50位以内に入っていたとしても圭一の心境は変わらなかっただろう。仮にテスト範囲がズレてなかったとしても浅野と並ぶ点数でなければ圭一の心境は今と変わらないだろう。
浅野に負けた、カルマに負けた。
方やかつてライバル視していた者。
方や喧嘩友達。
全力で望めば2人に追いつけるかもしれないという見栄があった。圭一の中にはそんな見栄があったのだ。テストが返ってくるまでは。
テストが返って来てからも、今ほど荒れてはいなかった。今日の帰り際に『お前、やっぱり凄いよ』と沢山のクラスメイトに褒められて少し気分が良くなったが、1人になると心情は荒む。
頭の中が白く染まるほどの悔しさと震える手ですっかり埃をかぶった教科書を全て引っ張り出す。1年の中間から今学期に至るまでに使っていたモノを全て。
悔しさで耳鳴りがする。
悔しさで指先に力が入る。
悔しさで視界が滲んだ。
こんな思いをするのは2年ぶりだ。
初めて浅野に負けたあの日、圭一は同じ悔しさを味わって、諸々の事情が加わり、挫折した。
また挫折するのか? そんな自問を否定する様に拳で自分の頬を殴り、喝を入れてまだ成績優秀と言われていた頃に出来た問題に取り組むが、かつて満点を取ったはずの問題すら満足に解けなくなっていた現実に打ちひしがれる。
本当に期待していた。今はダメでも昔出来たことなら今でもできる筈だと心のどこかで期待していたのに、自分に裏切られた。
心の何処かで余裕があった。元A組だったという自負はあった。今はやる気がないだけ。やる気を出した自分はすごい奴なんだ、そう思いたかった。
そんなカッコいい自分に期待した。
裏切られた。
自分はどうしようもない奴になっていた。
土下座するといたら話をした時も、心の何処かで何とかなる。今は自分はやる気があるから、と。
全て甘い妄想だった。
『ほんと凄いよ、お前』
クラスメイトたちに投げられた言葉が胸に刺さる。こんな不甲斐ない結果を認められても、嬉しくない。
圭一は2度、机に拳を叩き付ける。
「——次は絶対ぇ、一位になる」
震える声で圭一はリベンジを誓った。
かつて浅野に敗れた時の点差は2点。
浅野に勝つために体調を崩すレベルで努力をして、テスト当日に体調を崩して一問だけ外した。
結局は自分の自己管理が甘かったから負けたのだ。だが、その時負けるまで何者にも劣らない努力をして来た自負はある。
あの時の自分に戻るにはまずは努力しないといけないだろう。銀髪の不良児は一年生の教科書を開く。かつて自分が敗れ、今、新たに敗れた問題を
今度こそ、一位を取る。
不良児はただ、認められたかった。
認められたい彼はただ、負けず嫌いなだけなのかもしれない。
口に出すのは実行する時だ。
あとがき
はい、後書きです。
圭一は1位にはなれませんでしたね。
まぁ、努力してなかった奴がそう簡単に1位を取れるわけがないという事で、圭一、相当悔しがってます。
今回の敗北が圭一を強くすることでしょう。
それでは今回はここまでと言うことで。
ご愛読ありがとうございます!