暗殺教室 不良児は認められたい   作:ZWAARD

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それから高評価や誤字報告、ありがとうございます!

因みに、大切なお知らせがあります。
ヒロイン作る予定とか何とか言って早19話。そろそろヒロイン作ろうと思いまして、今のところ一番絡みある倉橋さんをヒロインにしようと思います。何だかんだ、この子と絡ませるのが楽しいので。  

と言う訳で、タグに『ヒロインは倉橋』を追加します。

——追記——
誤字報告ありがとうございます!

何卒、今後もよろしくお願いします!


18話 旅行の時間 その2

 

 修学旅行当日、俺たちは新幹線の乗り場に居た。

 

「うわっ、A組からD組までグリーン車だぜ?」

 

「うちらだけ普通車。いつもの感じね」

 

「うちの学校はそういう校則だからな。入学時にも説明しただろう? 忘れたのか、流石E組だな」

 

「学費の用途は成績優秀者に優先される」

 

「おやおや、君たちからは貧乏の臭いがするねぇ」

 

 嫌味を言うD組の担任と愉快な二人組を尻目に俺は駅の観察をしていた。

 

 遠目にド派手な格好をしているビッチ先生を視界から除外して見て見ても普段は出会わない様な人や外国人がチラホラと見ることができるこの場所は旅の始点か中経地点、あるいは終着点である。

 そんな多種多様な人で溢れて混沌とした駅の様相を見るのは嫌いではなかった。  

 

 嫌いでは無かったのだが……チラホラと視界の端にハリウッドセレブの様な格好をしたビッチ先生がキャリーバッグを転がして颯爽と歩いてくるのが二重の意味で気になって仕方ない。

 アンタ、修学旅行ってことは一応の役回りとしては俺らの引率なんだろうけどずっとその派手な格好で東京の街中やら清水寺の階段を歩き回れるのか? って疑問とそもそも修学旅行の引率にしては目立ち過ぎなんじゃないかって疑問。

 烏間先生的にあの格好はどんな判定なのかと思って横目でチラッと彼を見るが、目と眉毛が鋭く吊り上がっていた。どうやら烏間先生的にもあの悪目立ちする格好はアウトだったらしい。

 

 つか、あれ? 殺せんせーは? 

 あの人も違う意味で悪目立ちするタイプだから見失う筈がないんだけど、パッと見でこの乗り場にいる様には見えない。もしかして遅刻か? 

 

「ご機嫌よう、生徒達」

 

「ビッチ先生、なんだよ、そのハリウッドセレブみたいな派手な格好はよ……」

 

 木村も流石にドン引きしたような顔でツッコミを入れているので彼に激しく同意する。

 するとビッチ先生は得意気に語り出した。

 

「フッフッフッ、女を武器としてしてる暗殺者としては当然の心構えよ。狙ってる暗殺対象(ターゲット)からバカンスに誘われるって結構あるの。ダサい格好でそんな旅に臨めば幻滅させるかもしれない。折角のチャンスを棒に振ってしまうかもしれない。だからこそ良い女は旅ファッションにこそ気を使うのよ」  

 

 なんか、普段プロとしてどうこう言っている人がこうして体験談を交えながらプロっぽいことを言っていると馬鹿に出来ない凄い説得力があるよな。

 だがしかし、これは確かに修学旅行という名の暗殺旅行ではあるが、今回のメインはあくまで狙撃。しかも相手は色仕掛けで殺せる相手ではない。となると。

 

「着替えろ。目立ち過ぎだ。どう見ても引率の先生のカッコじゃない」

 

 烏間先生(この人)が黙っちゃいない。政府と俺たちとターゲットと学校との間で四つ巴の板挟みになっている、この烏間先生(苦労人)が見逃す筈なかった。

 青筋を浮かべて恐ろしい形相をしている先生に気付かないビッチはその派手な格好を見せつける様に『硬いこと言ってんじゃないわよ!』とチャチャを入れるが、そんなこと、烏間先生が許す筈もなく。

 

「脱げ、着替えろ……!」

 

 もう、物凄い形相で一喝していた。

 渋々顔で新幹線に乗り込み、トイレの方へ向かうビッチ先生を見送りながら俺たちも乗り込もうとするが、結局、殺せんせーはどうなったんだろう。

 

「あの、烏間先生」

 

「どうかしたか」

 

「殺せんせーは?」

 

「…………奴め…………!」

 

 あ、これはなんも連絡受けてないパターンですわ。烏間先生の青筋がより一層深い物になった。

 眉間に皺を寄せながらスマホを取り出し、苛立ちを隠しきれない手付きで電話を掛ける。

 

「おい、今、何処にいる。間もなく新幹線が出発するが。今日は欠席ということ良いんだな?」

 

『にゅゃぁっ!? 少々お待ちを!?』

 

「俺にどうこう出来るわけないだろうが……! 先に出ている。次の駅に先回りして乗り込んで来い!」

 

 電話する烏間先生と少し離れていても聞こえてくる殺せんせーの慌てた声。

 これもある意味では暗殺のターゲットを呼び出す電話だと考えるとなんだか凄いシュールな絵面だ。

 つか、殺せんせーと烏間先生ってビッチ先生が俺たちの授業をしてる間は職員室でどんな会話してるんだろう。ひたすら無言を貫く烏間先生と気にすることなく話しかけ続ける殺せんせー、あるいは殺せんせーが気不味そうに沈黙している姿も容易に想像できる。

 

 ていうか、この2人は連絡取り合ってるんだろうか。一応連絡先は知ってるみたいだが、LINEか? 

 なんとなく烏間先生のスマホのLINEに友達として登録されてる殺せんせーと彼とのトーク画面を想像してみるとミスマッチ過ぎて吹き出しそうになるが、ゾーンに入り、素数を数えて必死に堪えた。

 

 その後、新幹線に乗り込んだ俺たちは乗り換えまで各々やりたいことをやって過ごした。デュエマとかのトランプだったり、折り畳み盤で囲碁やってみたり、カメラいじったりとやっていることは様々だ。

 俺たち修学旅行1班は何をしているのかと言うと。

 

「の、乃咲……」

 

「トランプ弱ぁ…………」

 

「くっ……、可笑しい。何故だ?」 

 

 ババ抜きに興じていたのだが、俺は何故か知らないが尽くビリっけつ。ひたすらに惨敗し続けていた。

 不思議だ。何か因果律的なものが働いているのでは? と思いたくなるレベルで必ず俺がビリになる。

 

「乃咲くんって意外と顔に出るんだね?」

 

「く、倉橋さんが異様に強いだけじゃないのか?」

 

 隣に座った倉橋さんに揶揄われる。

 何を隠そう、行われたババ抜き第5戦目、俺は倉橋さんにババと最後の一枚の2択を迫り、そして最後の一枚を躊躇いなく引かれ、5連敗を喫した。

 ここまで負け続けると俺がカードゲーム弱い見たいなイメージがついてしまうじゃあないか。

 

「も、もう一回……」

 

「もう一回ってこれで6戦目だぞ?」

 

「頼む、先っちょだけで良いから」

 

「トランプの先っちょって何よ!?」

 

「圭一もちょいちょいよくわからない下ネタ挟むよな。触手関係然り、今回の先っちょ発言然り」

 

「仕方ないな、もう一回だけだよ?」

 

「そして倉橋も動じないな……」

 

 倉橋さんのお陰でもう一度、再戦することに。

 ここまで来たんだから次ビリの奴は罰ゲームな、と木村の野郎の提案により次の敗者は1班全員分のジュースを買ってくるはめになった。

 なんでこんな言い方してるかって? 

 

「圭一ぃ……」

 

「見るな、そんな目で俺を見るな、磯貝」

 

 案の定、俺はまた負けたのである。

 やっぱりというか、これも案の定というか、最後まで残った俺はいつもの様に磯貝に2択を迫り、そして見事、当たりを引かれて敗北した訳である。

 ちなみに、今回に限ってはジョーカーが初めから俺の手札に来た。流石に6回目の付き合いになると従順にも初めから手札に混ざって来た彼はその忠心を見せつけるかの様に最初から最後まで他のプレイヤーの手に渡ることなく俺の手の中に居座り続けた。

 途中、あまりにも俺は顔に出ていたらしく、不憫に思ったらしいメンバーが引く順番をシャッフルしたりしてくれたが、どいつもこいつも尽く華麗にジョーカーを避けて引きやがる。

 

 いや、可笑しいだろう。俺、そんなに顔に出てる? 確率的に考えてそろそろ俺が一度もジョーカーに遭遇しないで勝てるパターンが来てもおかしくないよね? 

 負け続けて6回目、流石に俺ってトランプ弱いのでは? と良い加減に思い始めていた。

 

「乃咲、流石に手伝うぞ」

 

「良いよ、前原。トランプ最弱王の俺が行ってくるから気にしないでくれ」

 

 前原の優しい提案を丁重に断り、席を立ってジュースを買いに行こうとした時、ちょうど停車駅に着いたらしく、殺せんせーが乗って来た。

 

「いやぁ、疲れました。目立たない様に旅をするのも大変ですねぇ」

 

 目立たない様にしているつもりなのか、苦労顔をしているが、俺たちの身長と横に2人並べた位の大きさのリュックと曖昧な関節とよく見れば人間じゃないことが丸わかりな変装。正直、目立たない様にとはどの口が言うか、とツッコミを入れたかった。

 

「そんなクソでかい荷物持って来んなよ」

 

「殺せんせー、ただでさえ目立つのに」

 

「てか、国家機密がこんなに目立つのヤバくない?」

 

「にゅやぁっ!?」

 

 生徒達からの容赦ない指摘に過剰反応した殺せんせー。その反応の大きさから変装として顔の中心に着けていた着け鼻がポロッと落ちた。

 

「その変装もよくみると人間じゃないのバレバレだしさ。もうちょいどうにかならないの?」

 

「にゅ〜……」

 

 殺せんせーが何やら本気で考えこんでいると、菅谷が落ちていた付け鼻を拾い上げてちゃちゃっと加工を始めた。見守ること数分。随分と丸くなった着け鼻を殺せんせーに投げ渡す。

 

「殺せんせー、ほれ。まずはすぐ落ちる着け鼻から変えようぜ」

 

「……おお! 凄いフィット感!」

 

「顔の曲面と雰囲気に合うように削ったんだよ。俺、そんなん作るの得意だからさ」

 

 投げ渡された鼻を早速つけると、確かに鼻に関しては『まあ、こんな感じの人もいるよな』程度の感想を抱ける程度には違和感が消えていた。

 生徒からの思わぬ贈り物にご満悦なのか、手鏡を見てニヤニヤと笑みを浮かべる殺せんせーと事も無気に席に戻る菅谷を他の面子が囲う。

 

「凄いな菅谷!」

 

「うん、焼石に水くらいにはなった」

 

 確かに驚いた。人には意外な特技があるもんだ。

 ……いや、意外と思っているのは俺たちだけで当人にとっては元々出来たこと。つまりは俺たちの知らない一面だったりするのだろう。

 この修学旅行でそういう俺たちの知らない一面や本人ですら知らない、気付いていなかった一面を見つけることがあるかもしれないな。

 俺がトランプ最弱王だった様に。

 

 俺はそんなことを思いながらポケットに手を突っ込み、自販機のある車両に向かう。

 金は預かってるし、それぞれのリクエストも頭に叩き込んだ。欲しいものがなければお茶にするという話もしてあるし、自販機前で戸惑うことはないだろう。

 

 自販機のある車両を目指していると、次の客席の区画の手前で招かれざる客が正面からやって来た。

 

「お、派手な髪してんじゃん」

 

 滲み出るDQN感。見るからに頭の悪そうなモヒカン。着崩した見知らぬ学校の制服。

 新幹線の中で遭遇し、絡まれるということは恐らくは旅先でおいたをするタイプの輩だ。

 

「あの、すんませんけど通してくれません? 友人が待ってるんで」

 

「おっ? 強気じゃん? お前何年? つか中坊?」

 

 見たところ強面の高校生が絡んでくる。

 馴れ馴れしく肩を組み、顔を近づけてくる。

 

 ……いや、どうしてこうなる? 

 俺、ただトランプに負けた罰ゲームを執行しに来ただけなのになんでこんな見るからに頭の悪いDQN高校生に絡まれてるの? 

 もしかして俺って烏間先生ほどではないけど少し苦労人気質だったりする? 今まで考えない様にしてたけど思った以上に巻き込まれ体質? 

 

 ただ、なんかほんの少しだけ懐かしい。

 最近はこう言う馬鹿に絡まれることは殆どなくなっていたから、この面倒くさい絡み方された苛立ちよりも物珍しさの方が勝つ。

 しかし、正直に言うと邪魔臭い。

 

 カルマ式喧嘩術で、先手必勝を取っても良いのだが、曲がりなりにも烏間先生というプロから技を教わっている身である以上、正当な理由なく先に手を出すのは良くないだろう。

 少し考えていると、俺がビビっていると思ったのか、軽く肩を押されて壁際に押し込まれた。

 ここは車両間のスペース。他の乗客には普通には見えない位置。なんか、手慣れてるな、コイツら。

 

「なあ、少し金貸してくれないかな」

 

「うわぁ……」

 

 古典的な恐喝だった。いや、どちらかといえばカツアゲか? 絵に描いたようなダル絡みに思わず声を漏らす。

 

 よし、次に手を出されたらやり返そう。

 

「なに、その反応? ナメてるの?」

 

 肩を組んで来た奴が手を離し、代わりに右肩をどついて来たのでつい、思わず、相手の右足を踏み、手早く鳩尾の当たりを小突いてやると咳き込みながら仰向けに倒れてしまった。

 しかも何人か巻き込みながら。

 

 想像以上の被害を出してしまったが、ここらで一つ、脅しておこう。戻ってくる時に待ち伏せされて絡まれるのは嫌だし、炭酸買ってくる様に言われてるから万が一にでも衝撃を加える危険は避けたい。

 

 何やら目元に傷のある、リーダーらしき目付きの悪い男がたまたま近くに居た上に、通路に転がってえずいている仲間を呆然と眺めていたので、現実に引き戻す様に顔を鷲掴みして、壁に押し付ける。

 

「何処の誰か知らないけど、どうする? アンタらも修学旅行でしょ? 折角の旅行を病院のベットの上で過ごしたい?」

 

 烏間先生との訓練が始まって1月と半ば。元から喧嘩で鍛えられていた腕力は以前喧嘩していた頃よりも強くなっている。そんな腕力を動員して掴んだ顔を握り潰す勢いで手に込める。

 掴んだ部分から本当にミシミシと嫌な感触が伝わってくる。このまま力を込めて掴み続ければコイツの頬骨を粉砕できるだろう。

 

「わ、分かった。もう何もしないから許してくれ」

 

 流石にこのままだと顔が変形すると悟ったのか、降参宣言が来たので手を離し、車両を進む。

 無駄に時間を使ってしまった。

 

 数歩、歩いたところで気配を感じたので振り返るとリーダー格が拳を振りかぶっている所だった。

 ゾーンに入り、拳の軌道を見切ってから、抜け出し、拳を正面から受け止める。

 

「なっ!?」

 

「何もしないのでは?」

 

 拳ごと相手の体を引っ張り、体勢を崩させ、鳩尾に膝をぶち込んでやってから踵を返す。

 

「その制服……、椚ヶ丘の……?」  

 

 あ、まずい。身バレした。

 

「お前、中坊だろ……? お前が銀の死——」

 

「知りません」

 

 銀の死神とやらは俺じゃない。そう言うことにするべく、全部言い終わる前に食い気味に否定して、俺は今度こそ自販機に向かった。

 つか、銀の死神って呼び名は何処まで広がったんだよ。つか、そもそも誰が言い出した? 

 もう嫌だ。なんで修学旅行でまでこんな恥ずかしい思いをしなきゃいけないんだ? 

 

 ぶつぶつと言いながらみんなから預かった金を自販機に突っ込んでボタンをポチポチしていると、後ろから茅野、奥田さん、神崎さんがやって来た。

 

「あれ? 乃咲、どうしたの? そんなにジュース買って」

 

「罰ゲーム。トランプで6連敗したから」

 

「6!?」

 

「あ、あははは、乃咲って案外カードゲーム弱いんだ? 少し意外かも」

 

「俺も驚いてるよ。予想以上に顔に出るタイプだったらしくてさ。倉橋さんにも弱いって揶揄われた」

 

「そ、それも意外です。乃咲くん、顔に出るんですか?」

 

「みたいだね。茅野たちは?」

 

「私らは神崎さんの付き添い。飲み物欲しかったし!」

 

 どうやら茅野たちも目的は同じだったらしい。

 一通り買い物は終わったので、買ったジュースをポケットというポケットに突っ込んでいると、茅野がやって来た方を振り返る。

 

「そういえばここに来るまでに顔色悪い高校生くらいの人たちがふらふらしてたけど乃咲みた? 神崎さんがぶつかっちゃってさ」

 

「シラナイヨ。ケイイチ、ケンカ、シナイ」

 

「なんでカタコト?」

 

 アイツらまだ居たのか。ジュースも買ったし、ちゃっちゃと戻ろうと思ったが、神崎さんがぶつかったらしいし、一応、女子だけにしない方がいいだろう。

 ああ言う奴は一度ぶつかったことを理由にひたすらに絡んでくるからな。

 俺にだって、そのくらいの気遣いはできるのだ。

 

 彼女らが買い終わった様なので、後ろに続く。先頭を歩くべきかと思ったが、あの手の連中は背後から不意打ちしてくるからな。事実、さっき背後から殴られそうになった訳だから。

 

 ただ、案外、奴らは何もしてこなかったので、俺たちは無事に自分らの車両に戻ることが出来た。

 

「あ、乃咲遅いぞ〜」    

 

「悪かった、7本もあるとどう運んだもんかと考えてしまって」

 

 などと嘯きながら皆んなに要求されていたジュースを配り、席に座る。なんだか、ちょっと飲み物を買いに行っただけなのにどっと疲れた。

 

「乃咲くん、どうする? 7戦目する?」

 

「あ、いいや。帰りに取っておくよ。少し寝るから着いたら起こして」

 

「おっけー」

 

 倉橋さんからの魅力的な提案を先延ばしにして寝ることを選ぶ。今日は早朝集合だった所為でいつもより早起きだったし、さっきの騒動で疲れたことも手伝って眠たいのだ。

 

 だから、これは決して負け続けたことによる不貞寝ではない。不貞腐れて眠るわけではないのだ。かなり大事なことなので2回言った。

 

 不貞寝じゃない、不貞寝じゃないぞ。

 

⬛︎

 

⬜︎

 

⬛︎

 

 

「おお〜! 窓が無いから凄い迫力!」 

 

「だな、しかも時速25kmだから風も結構入ってくる。涼しくて気持ちいいな」

 

「あはは、乃咲くんが爽やかなこと言ってる」

 

 時は飛んで修学旅行2日目。俺たちは嵯峨野トロッコ列車に乗っていた。理由は2つ。

 一つ、修学旅行の自由行動のプランに設定していたこと。そしてもう一つ……。

 

「これだけ開放感があれば酔いません! それにしても時速25kmとは速いですねぇ」

 

 八ツ橋を食べながら外を眺める殺せんせー。

 二つ目の理由は彼の暗殺だ。俺たち修学旅行1班はこの嵯峨野トロッコ列車の名所の一つ、保津峡。そこで列車が停車した瞬間が俺たちの勝負どころ。

 

『鉄橋の上で少しの間、停車します。保津峡の絶景が一望できますのでどうぞごゆっくりご覧下さい』

 

 来た。暗殺タイミング。

 俺たちの暗殺プランはここで実行される。

 

「あ、見て見て殺せんせー! 川下りしてる!!」

 

「どれどれ……? おおっ!!」

 

 鉄橋の上で一時停止するこのタイミングで川下りしている船と鉢合わせるのは下調べした通りだ。

 このタイミングで倉橋さんが注意を下で川下りしている船に惹きつける。

 

「あっ! 手振ってるよ! ほら!」

 

「本当ですねぇ」

 

 狙撃は倉橋さんが指差した船を殺せんせーが覗く為に身を乗り出した瞬間——! 

 

 緊張の余り、思わずゾーンに入った俺の視界に猛烈なスピードで飛来する弾丸が写り込む。

 タイミングは完璧、殺せんせーの注意は倉橋さんの的確な誘導で橋の下の船に向いている。

 これはやったか? などと思った瞬間、殺せんせーはとんでもない超スピードで弾丸を察知。俺たちの方をみてニヤリと笑いながら高速回転する狙撃弾をモチモチと柔らかい八ツ橋で受け止めた。

 

「おっと、八ツ橋に小骨が。危ないこともあるもんですねぇ」

 

 ニヤニヤしながら俺たちに止めた弾丸を見せつけて来る殺せんせー。本当にさり気なく止めてやがるが、どんだけの早業が必要だと思ってるんだ? このタコ。

 高速回転する弾丸と同等以上の速度で逆回転しながら触れないと八ツ橋なんかで受け止めることは出来ないだろう。やはり殺せんせーの底は測りきれないな。

 

『列車が動き出します』

 

 どうやら俺たちの暗殺は失敗したらしい。

 動き出した列車に再び揺られながら殺せんせーを殺せる隙を考えてみるが、さっきの光景を見ると流石にパッと殺せる策を思い付きはしなかった。

 

 

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